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Visionary Track セッションレポート

NEC Visionary Week 2022

2022年9月12日〜16日、10月4日~7日の2Trackで、NECはグループ最大のイベント「NEC Visionary Week 2022」を開催しました。「Truly Open, Truly Trusted」をテーマに、各界の第一人者や有識者、NEC社員による84のセッションをライブおよびオンデマンドで配信し、そのうち9月12日から16日にかけて行われた「Visionary Track」から技術視点の高い4つのセッションを紹介します。

NEC Visionary Week 2022とは

社会変化のスピードがますます加速し、先行きがなかなか見通せない「VUCA時代」の到来を受けて、NECでは「Truly Open, Truly Trusted」というキーワードのもとに企業活動を推進しています。「Truly Open」、すなわちオープンな市場環境におけるパートナーとの共創を通じてイノベーションを生み、そして「Truly Trusted」という言葉が示す通り、社会からの継続的な信頼を得ながら持続的な企業活動を展開していく。NEC Visionary Week 2022では、このビジョンを実現すべく、さまざまな分野で進めているNECの活動の一端を、外部の有識者も交えた多彩なスピーカーによるセッションで発信しました。

「エッジコンピューティング」がDX実現への道を切り拓いていく

エッジプラットフォーム統括部 統括部長 廣瀬剛司が登壇したセッション「DXを加速するエッジコンピューティングの未来」では、NECが現在力を入れているソリューション領域の1つである「エッジコンピューティング」についての講演を行いました。

エッジコンピューティングが求められている背景について、廣瀬は「多くの企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組んでいますが、IoTの普及で増え続けるデータの処理に苦慮しています。この課題を解決するにはダイナミックかつフレキシブルなITの仕組みが欠かせません。これを実現するうえで重要な鍵を握るのがエッジコンピューティングです」と述べました。

エッジコンピューティングは、人間の五感に相当するIoTデバイスと頭脳に当たるクラウドの間に位置し、情報が脳に届く前に処理する脊髄の役割を果たします。これにより大量のIoTデータが通信ネットワークの帯域やクラウドのリソースを占有してしまう事態を防ぎ、「通信遅延減」「通信コスト減」「障害リスク減」といった効果をもたらします。

NECでは現在、「NEC Edge Platform」と呼ばれるソリューションを提供しています。NEC Edge Platformはエッジデバイス、共通ソフトウェア、各種アプリケーション、開発環境、ネットワークの各レイヤで構成されており(図1)、それぞれ複数の製品を提供、多くの分野で成果を上げています。

図1 NEC Edge Platformが提供する範囲

一例を挙げると、倉庫内で利用されるフォークリフトに画像認識用のカメラとAIエッジデバイスを搭載、人との衝突事故を防ぐ仕組みなどを実現しています。農業分野においては、スマートグラスとローカル5G、AIを組み合わせて、ブドウ農家の「匠の知見」を反映した高品質なブドウ栽培を、誰もが簡単に行える仕組みを実現しています。

こうした成果は、NECが単独で成し得たわけではありません。廣瀬はエッジコンピューティングにおける「共創」の重要性について、次のように述べています。「NECが持っている技術だけですべての社会課題を解決できるわけではありません。お客様やパートナー企業とNECが知見を持ち寄って、新たな価値を作っていくことが重要だと考えます。多くの企業に、エッジコンピューティングのパートナーとしてNECを選んでいただければ幸いです」

量子コンピューティングはもはや未来技術ではない

社会と生活の未来を切り拓く技術革新のなかで、最も注目されているのが「量子コンピューティング技術」です。NECフィールディング 取締役執行役員常務 山崎正史とNEC量子コンピューティング事業統括部 シニアディレクター 泓宏優が登壇したセッション「量子コンピューティングによるバリューチェーンの加速」では、量子コンピューティングの最前線と将来についての議論が行われました。

量子コンピューティングには、従来型コンピュータの論理単位を量子ビットに置き換えた「量子ゲート方式」と、統計力学的に最適化問題を解く「アニーリング方式」があります。さらにアニーリング方式には、量子の性質を利用した「量子アニーリング方式」と、量子の挙動を擬似的に通常のコンピュータ上で再現する「シミュレーテッドアニーリング方式」があります。NECはいずれの分野においても研究開発を進めており、特にアニーリング方式に関しては国内屈指の実績を上げています。

「シミュレーテッドアニーリング方式は組合せ最適化問題への適用に期待されており、膨大な行列計算を高速処理する必要があります。NECが開発・販売しているベクトル型のスーパーコンピュータはそうした用途に最適で、既にNECグループ内では実業務への適用が進んでいます」と泓。

例えば、NEC 製品をはじめとしたICT 機器や非ICT 機器の保守業務全般を担当しているNECフィールディングでは、保守部品を届けるための配送計画を、ベテラン社員2名が人手で策定していました。これに量子コンピューティングを適用したところ、2時間かかっていた計画の策定を12分と極めて短時間のうちに終えられるようになりました。

NECフィールディングは検証結果を受け、この仕組みの本番稼働を2022年10月に開始しました。「当初は、翌日の配送計画の策定から始めますが、将来的には1時間おき、30分おきなど、最新の状況に応じた配送計画を策定できるようになるのではないかと考えています」と山崎は大きな期待を寄せています。

この事例以外にもNECグループ内のさまざまな業務への適用が進められています。例えばNECプラットフォームズでは、近日中に、工場での生産計画立案に量子コンピューティングを適用する予定です。

泓は、「NECの量子コンピューティングソリューションは、既に実務への適用を進めている点に大きな強みがあります。今後、AIなど他のデジタル技術と組み合わせ、世界をデジタル化した『デジタルツイン』上で環境や社会、暮らしのリスクの可視化や未来予測などを行うことで、より豊かな社会を実現するための迅速な意思決定を支援していきたいと考えています」と結びました(図2)。

図2 企業に求められる対応

先進ネットワークインフラのうえで新たな価値を紡いでいく

DX 実現に欠かせないもう1つの技術要素が、先進ネットワーク技術です。「企業ネットワークのありかたが変わる!」と題したセッションに登壇したネットワークプラットフォーム統括部マネージャーの久保田一志は、ネットワークの重要性がこれまでになく高まっている現状について次のように説明しています。

「コロナ禍で『デジタルが常態である社会』へのパラダイムシフトが一気に加速しました。この変化に対応するには、デジタル技術を活用したDXへの取り組みが欠かせません。特にひと・もの・ことを“賢く”つなぐためのネットワークが重要になっています」

なかでも、5Gは、「超高速」「超低遅延」「多数同時接続」を実現するネットワーク技術として期待されています。加えて、通信キャリアが提供するネットワークだけでなく、企業や組織が5Gネットワークを独自に構築できる「ローカル5G」が注目されています。NECは、「製造」「建設土木」「物流」「鉄道」「公共」の5領域を中心に、ローカル5Gを活用したDXサービスのメニュー化を進めています。

NECでは、「NEC Smart Connectivity」というコンセプトに基づき、パートナー企業との共創を通じて多様なネットワークサービスをワンストップ、かつお客様のライフサイクル全体で提供しています(図3)。

図3 NEC Smart Connectivityを支えるネットワークとライフサイクルマネジメント

具体的には、ローカル5Gや、NECが強みを持つSDN(Software Defined Networking)技術、Wi-Fiなどのソリューション、ネットワークセキュリティ機能のクラウドサービスである「SASE(Secure Access Service Edge)」を実現するための最新のネットワークインフラなども提供しています。これらを組み合わせることによって、大手製造業や病院、自治体など、さまざまな業種におけるユースケースで成果を上げています。

久保田は「ネットワークに対するニーズは、今後ますます多様化してくると考えられます。NECは、SDN技術を使った高度可視化や構築自動化、ローカル5GとWi-Fi間のローミング、などの先進技術を使って、そのような多様なニーズに対応していきます」と締めくくりました。

技術を通じてグローバルな社会課題の解決に貢献していく

「日本の技術は誰一人取り残されない世界を実現できるか」と題したセッションでは、NECグループのシンクタンクである国際社会経済研究所(IISE) 理事長の藤沢久美と理事を務める野口聡一、そしてビル&メリンダ・ゲイツ財団 日本常駐代表 柏倉美保子氏がパネリストとして登壇。技術を通じた社会課題解決や国際貢献をテーマにディスカッションを繰り広げました。

IISE では、NEC が掲げる未来ビジョン「NEC 2030VISION」の実現に向けた「ソートリーダーシップ活動」をけん引すべく、2022年4月に新たに藤沢を理事長に迎え、そして同年7月には宇宙飛行士の野口が理事に加わりました。

ビル&メリンダ・ゲイツ財団は、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏とメリンダ・ゲイツ氏が共同議長を務める慈善基金団体で、アフリカなど低中所得国における医療問題を中心に、さまざまな社会課題解決の支援活動を展開しています。

同財団日本常駐代表の柏倉氏からは「日本においても、多くの企業リーダーが財団の活動に賛同し、自社が持つ独自の技術やノウハウを生かした低中所得国支援に関与しています。2022年4月には、日本のビジネスリーダー有志の方々とともに、岸田文雄内閣総理大臣に対し、日本の政府開発援助(ODA)においてグローバルヘルスをより重視することを求める提言を行っています」と説明がありました。

3人のトークセッションパートでは、日本には多くの課題があるとの意見が登壇者から出ました。柏倉氏は、「日本では企業が短期的な利益を重視しがちで、グローバルヘルスのような国際的な社会課題に広く目を向け、中長期的な戦略に立って先行投資を行うケースはまだ少ない状況です」と問題点を提起しました。

藤沢も、国際機関を通じた低中所得国支援について「日本は現在、世界第3位*1のODAドナー国であるにもかかわらず、国連の調達における日本企業のシェアは、わずか0.4%*2にとどまっています。日本企業は優れた技術を持っているにもかかわらず、世界できちんと認知・評価されて社会問題の解決に寄与できているとは言えません」と指摘しました。

野口はこうした発言を受け、「日本は、環境問題やダイバーシティといった社会課題の解決に消極的な国という評価に甘んじているのが現状です。このままでは、誰一人取り残されない世界を実現する前に、日本自体が世界から取り残されてしまいます。こうした事態を回避するためには、何のために国や企業を運営し、何を実現しようとしているかを、世界に向けて示していくことが大切です」と総括しました。


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