サイト内の現在位置を表示しています。

BluStellar Scenario事例 セブン‐イレブン・ジャパン

Vol.77 No.1 BluStellar特集 BluStellarが牽引するDXの未来 ~AI・セキュリティ・データマネジメント・モダナイゼーションで拓く価値創造モデル~

本稿では、セブン‐イレブン・ジャパンとNECが共同開発した国内初のフルクラウド型次世代店舗システムの事例を紹介します。従来のオンプレミス型からクラウド型へのアーキテクチャ転換により、アプリケーションのマイクロサービス化や汎用端末の活用などが可能となり、店舗運営の効率化、省力化、そして機能拡張性の向上を実現しました。更に、顔認証とID基盤による認証管理によって安全性と利便性を両立し、EMMによる31万台に及ぶ端末管理も確立しました。加えて、ITSMを活用することでマルチベンダー環境におけるインシデントの一元管理が可能となりました。今後は、AIとSaaSを活用したデータ分析や業務の自動化を推進し、データ駆動型の意思決定による更なる効率化を図る予定です。

1. はじめに

近年、小売業は労働人口の減少に伴う労働力不足や人件費の上昇、人材の教育・育成負荷の増加といった課題に直面しています。特にコンビニエンスストア業界では、消費者の多様なニーズに応えるために数多くのサービスを提供しており、業務が多岐にわたることから、店舗運営における教育や業務負担の軽減に向けたさまざまな取り組みが行われています。

こうした状況のなか、NECはセブン‐イレブン・ジャパンとともに、店舗業務の効率化及び高度化を実現するため、業務システムをフルクラウドで構築しました。業務システムのフルクラウド化は、国内のコンビニエンスストア業界初の画期的な事例です。

本稿では、次世代店舗システムの構築にあたり、価値創造モデル「BluStellar」のアプローチに基づき、構想立案から開発、運用まで一貫して実施した事例を紹介します。

2. 全体像

従来の店舗システムは30年以上にわたり、ストアコンピュータ(ストコン)と専用端末(GOT/ST)を中心としたオンプレミス型アーキテクチャで構成され、7~8年ごとにハードウェア更新と機能拡張が実施されていました。しかし、ハードウェアの性能や機能面の制約により、迅速な機能拡張には限界がありました。

次世代店舗システムでは、国内コンビニエンスストア業界初となるフルクラウド化を実現しました。ストコン機能のクラウド移行とアプリケーションのマイクロサービス化を実現するとともに、端末は汎用端末(iPad/Android)へ統一しました。これにより、ハードウェアとソフトウェアの分離が進み、ハードウェアのEOLや性能制約から解放され、継続的な機能拡張が可能なアーキテクチャへ転換しました(図1)。

zoom拡大する
図1 次世代店舗システムの狙い

また、次世代店舗システムでは、シームレスなログイン機能を実現する「認証認可」や30万台の端末管理基盤である「EMM(Enterprise Mobility Management)」、業務プロセスの標準化を図る「ServiceNow」の導入など、店舗システムを統合的に支える基盤を提供しています。

店舗システムのオンプレミス型からクラウド型への転換にあたっては、NECは現行システムの知見をフル活用するとともに、価値創造モデル「BluStellar」のアプローチに基づき、クラウドネイティブなアーキテクチャ・開発手法・運用手法や、グローバルスタンダードなITサービスの積極採用を行いました。

これらの取り組みにより、現行システムの機能・サービスレベルを維持しつつ、変化への迅速な対応が可能となり、セブン-イレブン・ジャパンの目指す「変化対応し続けるシステム」を実現しています。

3. 特徴的なポイント

3.1 モダナイゼーション

次世代店舗システムは、単なるインフラの移行ではなく、システム全体のアーキテクチャを革新しています。従来のモノリス構造からマイクロサービスアーキテクチャへ転換し、各機能モジュールの独立性を確保しました。発注システムや在庫管理といった中核業務を効率的に再設計することで、変更の影響範囲を最小化し、開発効率の大幅な向上を実現しました。複雑な業務ロジックを詳細に解析し、クラウドネイティブな設計手法を適用することで、高いパフォーマンスを実現しています。

またインフラ面では高可用性を確保するため、マルチリージョン構成と自動スケーリングを導入し、突発的な負荷変動にもスムーズに対応できる柔軟なシステムを構築しました。

更に、従来の専用端末から汎用端末(iPad/Android)を業務端末として導入することで、従来の専用端末と比べ、容易に最新のデバイスを選択することが可能となっています(図2)。

zoom拡大する
図2 モダナイゼーションの全体像

アプリケーション、ハードウェアともに最新ITの進化を常に享受できるアーキテクチャを実現しています。

3.2 認証認可基盤

認証認可基盤では、全店約40万人の店舗従業員が汎用端末(iPad/Android)を活用し、顔認証による業務システムへのログイン制御と、役割に応じた厳密な権限制御を行っています。認証認可基盤は、NECのID管理と顔認証サービスで構成されており、業務アプリケーションと連携することでシームレスなログインと高度なセキュリティ対策の両立を実現しています。

本システムの特長は、コンビニエンスストア店舗での業務を意識した設計思想にあります。幅広い属性の従業員の利用を想定し、ユーザビリティ向上のため、顔認証時の操作ガイダンスの視覚的強化や、顔認証の認証精度や認証速度を高めるための対策を施し、店舗従業員の生産性向上に寄与しています。

また、24時間365日の運用を考慮し、システムメンテナンス時も業務への影響を最小限に抑える設計により、高い可用性を実現しています。

3.3 端末管理基盤

従来は専用ハードウェアで安全性を確保してきましたが、次世代店舗システムでは汎用端末の採用に伴い、EMMを中核とした端末管理基盤を新たに構築し、外部接続や不正なアクセスへの耐性を強化しました。NECはコンビニエンスストア業務運用の知見とEMM製品の知見を統合し、全国約21,000店舗・31万台(iOS 9万、Android 22万)のマルチOS環境を一元管理しました。EMMと端末OS、ネットワーク構成を含む多層防御を設計し、端末の管理ポリシー共通化やデバイス制御フレームワーク及び運用保守アプリケーションとの連携でリスクを最小化しました。更に、地域・店舗・端末・OSバージョンなど数百パターンに及ぶ配信グループを精緻に制御し、業務継続に必要なアプリケーション更新を確実かつ迅速に展開可能な環境を構築しました。ハードウェア面でもキッティング、設置・撤去、センドバック交換、OS更新をEMMと既存ノウハウで標準化かつ効率化しました。結果として、止まらない店舗を支える堅牢なセキュリティと安定したサービス提供を支える端末管理基盤を確立しました。

3.4 マルチベンダー運用

従来のシステムは、ハードウェアからアプリケーション、そして現場保守に至るまで、単一のベンダーによる垂直統合型で提供されていたため、設計から運用まで一貫性を保ちやすいものでした。次世代店舗システムではクラウド化が進んだことにより、ハードウェアとアプリケーションが分離され、マルチベンダーによる水平分業型での提供となり、システム全体の統制や管理が複雑化することが想定されました(図3)。

zoom拡大する
図3 運用体制の変化イメージ

この変化に伴い、領域間やベンダー間のコミュニケーションが増加し、情報の分散やインシデント対応時間の長期化といった運用上の課題が顕在化するリスクが高まっていました。更に、障害の発生箇所や原因が多様化することで切り分けが困難となり、複数の運用・監視対象の増加によって管理負荷も拡大することが予見されていました。

こうした課題に対し、NECは官民の多岐にわたる領域で培ったITILベースの運用設計ノウハウを活用し、上流企画から保守運用まで一貫対応を実現しました。運用段階ではServiceNowのITSM(IT Service Management)を導入し、チケット管理やプロセス管理、ダッシュボードによる可視化を推進しました。更に、コールセンターで利用するSalesforceと連携し、自動起票を実装することで年間20万件を超える問い合わせを一元管理し、リアルタイムでの状況把握とマルチベンダー環境における迅速な対応を可能にしています。

4. 今後の発展

次世代店舗システムは「変化対応し続けるシステム」をコンセプトとし、クラウドネイティブな基盤を活用することで、継続的な機能拡張と運用の高度化を実現します。その中核となるテーマは、データ活用による店舗業務のDXとSaaS活用によるシステム運用のDXです。

店舗業務DXにおいては、発注・在庫などの膨大な業務データをAIや分析基盤と連携させ、リアルタイムで分析を行います。これにより、各業務アプリケーションへ情報を連携し、店舗ごとの特性に応じた最適な運営が可能となります。結果として、店舗業務の省力化・効率化を図るとともに、売上拡大とオペレーション品質の均一化を実現します。

運用DXにおいては、クラウド化によって最新テクノロジーとの親和性が高まったことを背景に、SaaSやAIを積極的に導入し、運用の効率化と自動化を加速します。システム全体の多様なデータをリアルタイムで収集・分析し、ITSM基盤とAIによるインシデント予兆検知を組み合わせることで障害対応の迅速化と人的負荷の低減を図ります。更に、自動化の推進によって定型的なオペレーションやリカバリー手順を自動実行し、人的介入を最小化します。また、運用データの分析を通じてプロセス改善やコスト最適化を継続的に実施することで運用の高度化を推進します。

これらの取り組みにより、次世代店舗システムは単なるクラウド基盤にとどまらず、データとSaaSを活用した変化に強い、持続的な価値創出のプラットフォームとして進化し続けます。

5. むすび

セブン‐イレブン・ジャパンにおける取り組み事例としてBluStellar Scenario化され、流通業界のみならず他業種への展開も期待されます。NECは今後も、データとAIを活用した業務革新を支援し、店舗業務の効率化及び高度化に貢献していきます。

商標

  • *
    ServiceNowは、ServiceNow, Inc.の米国およびその他の国における商標または登録商標です。
  • *
    iPhone、iPadはApple Inc.の商標です。 iPhone 商標は、アイホン株式会社のライセンスに基づき使用されています。
  • *
    Androidは、Google LLC. の商標です。
  • *
    ITIL(Information Technology Infrastructure Library)はAXELOS Limitedの登録商標です。
  • *
    Salesforceは、Salesforce,Inc.の米国およびその他の国における商標または登録商標です。
  • *
    その他記述された社名、製品名などは、該当する各社の商標または登録商標です。

執筆者プロフィール

前田 泰宏
第一リテールソリューション統括部
プロフェッショナル
神谷 晃史
第一リテールソリューション統括部
プロフェッショナル
伊藤 善弘
第一リテールソリューション統括部
ディレクター
山崎 晋哉
第一リテールソリューション統括部
ディレクター
村上 大介
第一リテールソリューション統括部
上席事業主幹
佐藤 義之
第一リテールソリューション統括部
統括部長

関連URL