コラム

グローバルPLM vol1:開発プロセス改革成功の秘訣

製品開発プロセスのここを見直せ!
グローバル開発を指向した製品情報共有基盤のあるべき姿

製品開発プロセスのここを見直せ! グローバル開発を指向した製品情報共有基盤のあるべき姿

巨大マーケットである新興国で売上や収益を伸ばそうとしている企業は多いでしょう。しかし、新興国には既に、中国や韓国、欧米企業なども進出しており、現地ニーズに合った新製品を継続的に産み出せる製品開発プロセスを持っていなければ、この市場の勝ち組になることは厳しいでしょう。今回は、製品開発プロセスの課題を整理しながら、「グローバル開発のための製品情報共有基盤」の方向性について解説していきます。

製品開発プロセスの課題

 1)組織の壁を越えた協調開発がやりにくい
    ⇒その結果、新製品を市場投入する時期が遅れ、十分な市場シェアを獲得できず、売上減少に。  2)拠点や事業ごとに、コード体系や帳票、業務プロセスが異なる
    ⇒その結果、市場変化に臨機応変に対応した、新規事業の早期立ち上げや、事業の統廃合の妨げに。  3)商品コンセプトが製品開発プロセスの過程で変化してしまう
    ⇒その結果、現地ニーズを取り込んだ新製品のコンセプトが正確に反映されず、出荷時には意図と異なる製品に。

組織の壁を越えた協調設計を実現するには

組織の壁を越えた協調設計を実現するには

製造業の多くは縦割り組織であるため、組織の壁を越えた協調開発がやりにくくなっています(一部の企業では、カリスマ経営者の存在により、組織の壁を越えた、意思決定により成果をあげている企業もありますが、それはごく一部です)。結果、開発期間を長引かせ、新製品の市場投入時期が遅れ、十分な市場シェアを獲得できず、売上を損なってしまいます。

製品開発プロセスにおいて、部門間で共有・伝達する情報には、図面(2次元や3次元)や仕様書などの設計成果物に加えて、BOM(Bill of Materials、部品表)があります。BOMとは、ものづくりのマスター情報として、製品開発プロセス全体で共通的に利用される協調開発の要となる情報です。ところが、このBOMは、プロセスや部門ごとに目的や用途に応じてバラバラに管理されており、これこそが協調開発を阻害してきた最大の要因だといえます。
その代表的な例が設計BOMと生産BOMとの相違です。設計部門では機能や構造に着目したBOMを作成しますが、生産部門では在庫管理や発注の都合でBOMを組み換えます。このような状況下で設計変更が発生した場合、設計BOMの変更を生産BOMに、ミスなくタイムリーに反映することは非常に難易度の高い作業を伴います。

これらの問題を解決するには、設計BOM、生産BOMなどの用途別のBOMを、データベースで統合的に管理し、かつ、設計BOMと生産BOMの対応関係をシステムとして保持することが重要です。そうすることで、変更発生時の影響度を迅速かつ正確に把握し、変更が必要な場合は、その変更内容を正確に伝達できます。ものづくりに関連する情報とモノの一致の要は、まさにこの工程だといえます。また、サイバーフィジカルシステム(デジタルツイン)の実現においても要となるのが、設計と生産の情報連携にあると考えられます。
多くの企業は、設計・生産・調達など個々のプロセスをシステム化し、情報のデジタル化を推進してきました。その組織の壁を越えるシステムやデータ連携において、情報の整合性を保つために、人手を介して情報連携(情報のすり合わせ)を実施しているのではないでしょうか?