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コラム
市場変化に臨機応変に対応するには
製造業では、同じ企業内で事業や製品ごとに業務プロセスやコード体系が異なるケースが多く見受けられます。多くの企業では事業部制をとっており、各事業部の売上や収益を最大化することが企業収益の最大化になるという考え方から、企業としての全体最適よりも事業部や製品ごとの個別最適が優先されてきたからです。逆に言えば、事業を横断した意思決定を行うカリスマ経営者により、大胆な意思決定を行ってきた企業が大きく成長した要因とも、言えるでしょう。
しかし、カリスマ経営者の判断に依拠した経営は魅力的ではありますが、企業にとって、諸刃の剣ともなりえます。成長事業や成長市場が激しく変化する現在において、競合を凌駕するスピード感で変革や意思決定を行うには、適切なタイミングで、判断を支援する情報が必要不可欠です。もちろん意思決定を行うのは人ではありますが、少なくともその時々で最善な意思決定を下すための判断材料となる情報が必要です。
これまで、設計と生産の情報連携の必要性及び、経営者の意思決定を支援する情報の必要性について言及しました。つづいて、情報があれば必要十分なのか?という観点に立ち考察します。
新興国市場を中心としたグローバル競争を勝ち抜くためには、市場の変化に柔軟かつ迅速に対応することが必要です。企業の生き残りを生き物の進化論になぞって、「この世に生き残る生き物は、最も力の強いものか。そうではない。最も頭のいいものか。そうでもない。それは、変化に対応できる生き物だ」と言われているように、「変化に対応できる」ことが繁栄の一要素であると考えられます。
それでは、「変化に対応できる」必要十分条件とは、何でしょうか?
まず、正しく状況を把握するために情報は必要です。一方で、情報があれば、「変化に対応できる」という必要十分条件にはなりません。そして、意思決定をするのは、あくまでも人です(最近は、経営判断にAIを適用するなどの動きもありますが)。
企業は、「人」「組織」で構成され、人や組織は、その企業が継続的に提供する経済活動(製造業では、生産・販売・サービス等)を支えます。人や組織が行う経済活動(生産・販売・サービス等)とは、何か?を細分化していくと、「業務プロセス」、そして、業務プロセスを構成する、製品や部品、工程や設備・治工具などの各種マスター情報、さらに、マスター情報を整然と管理するための、コード体系に至る一連の情報やモノの連鎖だと考えることができます。
少し話が飛躍かつ発散してしましたが、お伝えしたいことは、情報とは、「変化に対応できる」の必要条件であっても必要十分条件ではないということです。情報に加えて、「業務プロセス」や、業務プロセスの構成要素の1つである、コード体系などの標準化が必要であり、重要です。全体最適視点でシンプルに集約化された業務プロセスやコード体系は、全社レベルでの業務の重複や無駄も省きます。また、事業部単位に導入されているシステム(PLMやCAD)などのITインフラの統合も可能と考えます。
市場変化に臨機応変に対応できるために、自社において、意思決定に最低限必要なもの(情報、業務プロセス)とは何か?から紐解いてみてはいかがでしょうか。カリスマ経営者の出現を待つよりも、日々刻々と変わる世の中の動きに柔軟に対処可能な仕組み(統合化されたシステムであり、標準化された業務プロセス)を整えることが現実的な気がしませんか?
新興国で売れる製品を作りこむには
新興国の現地ニーズに適合した製品を作るために 「海外での商品企画」や「海外設計」を推進している企業が増えています。しかし、現地ニーズを反映させた商品を企画しても、商品コンセプトが製品開発プロセスを通して首尾一貫性が保てなくなるという問題も発生しています。具体的には、商品企画部門が立案した新商品のブランドやコンセプトが、開発フェーズの進行に伴って微妙に変化し、出荷が近づくころには、当初のコンセプトと異なる商品になった、といった事象です。
せっかく現地でマーケティングしてお客様や市場からの要望(VOC: Voice of Customer)を反映させた製品を企画しても、それが的確に具現化され、その意図が設計や生産まで正確に伝わらなければ、期待した売上成果は得られません。
問題点として、VOCを製品開発やBOM(部品表)に引き継ぎにくい、市場や顧客要望と仕様・機能・構成の関係が見えず、市場や顧客要望に対して機能が網羅されているのかわかりにくい等が挙げられます。
VOCにもとづく仕様を定義、要望・仕様・機能・構成の関係を見える化し、企画構想段階の情報を企画時点のBOMとして具現化し、設計や製造など後工程にBOMとして引き継げるようにすれば、当初のコンセプトと異なる商品になってしまったといった事象は回避できます。また、製品を市場投入後に、狙った市場において、リリースした製品機能が当初の狙い通りの市場評価を得ているか否かについても、フィードバックすることで製品の市場競争力を継続的に向上させることができるのです。
その結果、「売れる製品」をスピーディに市場投入し続けることも可能となるでしょう。