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LGWAN/LGCSとは?
ガバメントクラウドとLGWAN/LGCSについて

Government Column

こんにちは。NECで主に官公庁・自治体のお客様向けのご支援をしている堀田です。
これから複数回に分けて、デジタル庁が整備するガバメントクラウドについて、お客様からよくいただくご質問を中心に解説します。今回は、ガバメントクラウドとLGWAN/LGCSに関して、公開資料をもとにわかりやすくご説明します。なお、今回もガバメントクラウド対象クラウドサービスのうち、AWSの利用を前提としています。

LGWAN(総合行政ネットワーク)について

LGWANは、Local Government Wide Area Networkの略であり、総合行政ネットワークを意味します。このネットワークにより、許可された通信に限り、各地方公共団体内の庁内LANが相互接続されて通信が可能な状態となっています。本ネットワークは、J-LIS(地方公共団体情報システム機構)によって運営される地方公共団体向けの専用線ネットワークとなります。J-LISでは、LGWANの概要について下記のように説明されています。

総合行政ネットワーク(Local Government Wide Area Network)(以下「LGWAN」という。)は、地方公共団体の組織内ネットワーク(以下「庁内LAN」という。)を相互に接続し、地方公共団体間のコミュニケーションの円滑化、情報の共有による情報の高度利用を図ることを目的とする、高度なセキュリティを維持した行政専用のネットワークです。

new windowJ-LIS LGWANについて より抜粋

LGWAN運営組織

LGWANの運営組織構成は下図のようになっています。

LGWANの運営は運営主体であるJ-LISが取りまとめを行っています。また、LGWAN上で様々なサービスを提供する、LGWAN-ASPについても同様にアプリケーション提供者からの接続申し込みの取りまとめをJ-LISが行っています。なお、今回のコラムではLGWAN-ASPについては割愛します。

参考:new windowJ-LIS LGWAN-ASPについて

LGWANの構成

LGWANの構成について、もう少し詳しくみていきたいと思います。LGWANは、令和7年現在「第五次LGWAN」の運用が開始されています。第四次LGWANとの構成を比較しながら、第五次LGWANの構成をみてみましょう。

単に、地方公共団体を結んでいるだけでなく、外部機能(LGWAN-ASP)や外部ネットワーク(GSS G-Net)とも接続していることがわかります。第五次LGWANでの大きな変更点は、やはりガバメントクラウドとの接続です。LGWANからガバメントクラウドへ接続するための専用経路が新設されました。それが、LGCS(LGWANガバメントクラウド接続サービス)です。

LGCSについて

LGCSは、LGWAN Government cloud Connection Serviceの略であり、LGWANガバメントクラウド接続サービスを意味します。
これにより、LGWANを介してガバメントクラウドに接続を行うことができます。

クラウドへの閉域接続に詳しい方ならば、この時点である程度構成の予測はできるのではないでしょうか。ガバメントクラウド(AWS)に接続するのであればAWS Direct Connectサービスで接続する感じですね。ただ、今回はもう少し詳しく掘り下げてみたいと思います。

LGCS接続方式

ここでは、LGCSの接続方式をご説明します。ここからは、少し技術的な内容に入っていきます。クラウドに閉域接続するためには、クラウドへの接続拠点(接続ロケーション、POP)を経由する必要があります。クラウド接続サービスを提供する回線サービスの多くは接続拠点の選定・接続をセットにしている場合がほとんどです。このため、利用者は接続拠点を意識することはないかもしれません。しかし、LGCSではそこから考慮する必要があります。

ガバメントクラウドへの接続は東京または大阪から

ほとんどのクラウド事業者が、東京及び大阪にクラウドリージョンを設けています。このため、クラウドへの接続拠点も東京と大阪に用意されています。LGCSを利用する場合は、まずは東京・大阪の一方または双方の利用を選択します。接続方式は下記3方式となります。

  • ガバメントクラウド(AWS)に接続する場合、東京①/②はAWS Direct ConnectパートナーリストとLGCS構築時期からそれぞれEquinix TY2データセンタ、アット東京 中央データセンタが利用されていると推測されます。
  • 同様に大阪地域の二つ目の接続拠点となる「Telehouse Osaka OS2データセンタ」が2024年12月からサービス開始したことから、大阪①/②については共にEquinix OS1データセンタを利用されていると見受けられます。
  • 接続帯域は50Mbps(プラン1)/100Mbps(プラン2)/1Gbps(プラン3)から選択ができます。
  • 接続拠点とリージョンは一致する必要はありません。AWSの場合、AWS Direct Connect ゲートウェイを利用することでマルチリージョン接続が可能です。

参考:new windowAWS Direct Connectパートナー

LGCSのネットワーク稼働率、AWS Direct Connectのサービスレベルアグリーメント
参考:new windowLGWANガバメントクラウド接続サービスの整備状況について

参考:new windowAWS Direct Connectサービスレベルアグリーメント


なお…現在のLGCSでは利用できませんが、東京地域では3つ目のAWS Direct Connect 接続拠点として、NEC 印西データセンタが稼働しています!

参考:NEC DXネットワークサービス

自治体からガバメントクラウドへの経路

自治体からガバメントクラウドへの経路概略は以下のようになります。中継ルータの置かれるクラウド接続拠点からクラウドにつながる経路には、仮想ルータが自治体ごとに用意されるため、通信の論理的な分離がなされたままガバメントクラウドへ接続されます。ただ、LGCS範囲に関しては、J-LISと自治体双方で役割分担が必要な構成となっています。LGCS利用時にはJ-LIS、自治体、接続対応事業者間で各種調整や整合が発生することになります。

さいごに

今回は、LGWAN/LGCSについてご説明しました。各自治体からガバメントクラウドへの接続概要が何となくご理解いただければ幸いです。LGCS接続に関しては、自治体LANから閉域接続を行うことができます。これにより自治体のネットワークをガバメントクラウド内に延伸することができます。その反面、自治体LANとクラウド間でのネットワークルーティングやアドレス設計を考慮する必要があり、高度なネットワークスキルが求められると感じています。これは通常のAWSクラウド構築とは別の観点や考慮、ノウハウが求められます。また、接続元となる自治体LANの状況も考慮する必要があり、ステークホルダが多岐にわたります。接続に際しては、しっかりとした体制を組んで臨む必要があるということも感じていただけるのではないでしょうか。

また、ガバメントクラウドへの接続については、GMCN(Government Multi Cloud Network)と呼ばれるマルチクラウド接続機能も用意されています。この機能についてもいずれ触れたいと思っています。

皆様のガバメントクラウドの理解と円滑な利用への一助になれば幸いです。

公開日 2025/11/13

本コラム内容は公開日時点の情報をもとに記載しています。


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執筆者紹介

堀田 佳宏(ほった よしひろ)

NEC
パブリックビジネスユニット
官公ソリューション事業部門
官公インテグレーション統括部
上席プロフェッショナル
2025 Japan AWS Ambassadors
2025 Japan AWS Top Engineers(Services)


学生時代に見た「serial experiments lain」に感銘を受け、ネットワークエンジニアを夢見て上京。民需、金融、官公庁・自治体のネットワークを中心としたプラットフォーム領域のシステムインテグレーションに従事。プラットフォームシステムインテグレーションの魅力にハマる。2017年より官公庁領域でのクラウド技術検討を開始。官公庁領域におけるクラウド移行の提案や技術支援、情報集約を行うチーム Cloud Architect Team(CAT)を立ち上げ活動中。クラウド移行の提案や技術支援、情報集約から得られた知見を活用したクラウド関連サービス企画も実施中。趣味はDIY、ビリヤード。学生時代にやっていたライフル射撃(エアライフル)を再開する機会をうかがう日々を送る。

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