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調達活動における人権への取り組みの更なる発展に向けて

NECは、「サプライチェーンサステナビリティ」をマテリアリティに特定し、協働・共創によるお取引先との連携を強化しています。本ダイアログでは、この1年間のサステナブル調達活動について振り返り、人権に関する取り組みでの課題について議論するとともに、欧米を中心に人権に関する法制化が進む中、今後の調達活動において求められる取り組み、および、中長期的な視点でのNECへの期待について、有識者のみなさまからご意見をいただきました。

※本ダイアログはオンラインで実施しました。

2021年度の責任ある調達活動

沖見 2021年度はデュー・ディリジェンス(以下DD)を中心に、お取引先に寄り添う形で活動を発展させてきた。「サプライチェーンにおける責任ある企業行動ガイドライン」を遵守する旨の宣言書への署名取得率をマテリアリティのKPIに設定し、調達金額の80%をカバーするお取引先から宣言書を取得した。SAQ(サステナブル調達セルフチェックシート)で潜在リスクが特定された39社には、あらためて要求事項を丁寧に説明して実態を個別確認し、是正が必要な1社に対しては、是正指導・改善までフォローを行った。さらに、OECDのDDガイダンスに沿ってリスク特定を進め、高リスク領域のお取引先に対し第三者機関による監査を実施した。

NEC 調達統括部
シニアディレクター
沖見 和弘

高橋氏 今回はOECDのDDガイダンスでいうStep1を超えてStep2(リスクベース・アプローチに基づく書類点検・監査)、Step3(是正の働きかけ)といった新たな取り組みが進んでおり、評価できる。

真和総合法律事務所
パートナー弁護士
高橋 大祐氏

田中氏 監査における労働者インタビューは非常に良い取り組みで、人権課題の特定にあたり貴重な情報源にもなるので、声が上がった背景にある労働環境や社会的課題を分析しながら継続されることを推奨する。サプライヤーに対して、SAQを送るだけでなく、規程の見直しなど深いところまで関与し支援・協力しているのも良い。

ILO駐日事務所
プログラムオフィサー
田中 竜介氏
BSR
(Business for Social Responsibility)
マネージング・
ディレクター
永井 朝子氏

永井氏 KPIの設定も大きな進展である。リソースもかかりコミットしづらいものだが、さらにしっかり活動を続けている。

沖見 サステナブルなサプライチェーンを実現するためには、2次、3次サプライヤー以降のサプライチェーン上流での人権リスクの可視化が課題だと感じている。適切なアプローチ方法についてアドバイスをお願いしたい。

高橋氏 サプライチェーン上流でリスクが高いといわれている製品・国・地域にフォーカスすると良い。トレーサビリティについては、1次サプライヤーからマッピングし、コントロールポイントにおける対応を確認することが重要。

田中氏 SAQや契約条項だけでなく、川上からの情報収集が大切で、労働組合やNGOとの対話も求められる。

NEC
シニアアドバイザー*
小幡 忍

小幡 サプライチェーン上の人権に関する情報開示の要請が強化されていることも気になっている。

永井氏 サステナブル・ストック・エクスチェンジ(持続可能な証券取引所イニシアチブ)では人権の情報開示を進めることが合意されている。情報開示を質・量ともにもう一歩進めるべきで、質の面ではSAQや監査の結果や、具体的にどのようなリスクが発見されどう改善できたのかがステークホルダーにとって一番重要なポイントである。

田中氏 事業領域に人権リスクがあることは企業にとって恥ずべきことではなく、それに対して企業としてどのように関わっていくかが重要。救済メカニズム(コンプライアンス・ホットライン)拡充への取り組みは評価できるが、苦情を受け付けた結果どのように解決したかまで情報開示が望まれる。

グローバル最新動向を受けた取り組みの強化

田中氏 日本でも経済産業省にてビジネス・人権政策調整室が新設されたが、国内中小企業の取り組み促進にも課題が残る。法令遵守だけでなく国際基準で社会的責任に対応すべき点に関し、中小企業の理解や資源不足があるため、大企業の役割としてサプライチェーン全体の底上げに向けた支援や働きかけが期待される。

高橋氏 欧州各国での人権DD義務化の動きが広がっている。EUの人権と環境に関するコーポレート・サステナビリティ・デュー・ディリジェンス指令法案は他の法令に比べて踏み込んだ内容で、DDは取締役の義務とされている。また、世界各国でサステナブルガバナンスやサステナビリティを考慮した経営が重視されている。

永井氏 米国における強制労働を含めた人権を理由とした輸入規制の強化も注視すべき。強制労働を理由とした輸入規制では、日本国内サプライヤーにおける外国人技能実習生に関する問題にも留意していく必要がある。また、法制化、社会要請、地政学リスクが大きく変わっていく中で、周囲も驚くべきスピードで進んでおり、3~5年後に目指す姿からバックキャストで計画を立てていかないと遅れてしまう。責任ある調達には戦略が必要で、本来戦略の企画と遂行に必要なリソースを見極め、足りなければ投入する、という経営判断が求められる。

小幡 「サプライチェーンの人権」はNECの重要な経営課題の1つと位置づけて重点的に取り組んでいる。リスク・コンプライアンス委員会により定期的にモニタリング・フォローし、取締役会での議論を増やし、経営層の関与を強くしていきたい。

お取引先と協働での社会価値の創出

田中氏 企業に対し罰則付き法令を課していく欧米の流れはあるが、経済界が求めているのは国連「ビジネスと人権に関する指導原則」(UNGP)に沿った活動をきちんと行っている企業が市場で評価されること。ある程度法律の枠組みに左右されることはあっても、法令遵守とともにUNGPに則った活動を説明できるようにし、関係者にも働きかけることで、持続可能なビジネス環境が整っていく。

高橋氏 「ルール」と「企業の自主的な取り組み」のどちらか一方ではなく、両立させて進めることが非常に重要。DDはやればやるほど是正指導や契約条項の入れ込みに注力しがちだが、本来ステークホルダーのためのもの。NECの協働・共創の考え方を大切に、ステークホルダーとのコミュニケーションを重視して取り組みを進めてほしい。サプライヤー向けガイドブックを作り「なぜ取り組みをすることが自社の企業価値向上につながるのか」という情報を提供することはサプライヤーとの協働・共創にもつながる。

田中氏 サプライヤーのダイバーシティを高めればジェンダー不平などを減らせるし、従業員のスキル開発を行えば生産性向上とより良い労働環境につながる、といった人権へのプラスの影響についてもサプライヤーへ伝えていってほしい。中長期的な観点では、人権尊重の施策のデザイン段階から労働組合や労働者代表、NGOを含めたステークホルダーとのエンゲージメントを行うことも重要。労働組合や労働者代表の意識もまだ高まっていないため、労使対話を通じた啓発や、多様なステークホルダーとの連携による社会価値の協創も心がけてほしい。

清水 今回もいろいろな提案をいただき感謝する。人権尊重をベースに考えるという意味では、NEC WayのPurpose「誰もが人間性を十分に発揮」やPrinciples「人権の尊重」が当社としての起点であり、その上に法規制、社会情勢、地政学リスクへの対策がある。リスクだけで物事を判断するのではなく、NEC Wayをベースとし、お取引先の経営層とも連携しながら、バックキャストで活動をスケールアップしていきたい。

NEC 執行役員 兼 CSCO
清水 茂樹
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    開催時点(2022年3月)では NEC 執行役員 兼 CLCO