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気候変動におけるグローバル潮流の理解とNECのリスクと機会

世界が目指す脱炭素社会に向けて、NECは自社やサプライチェーンのみならず、お客さまや社会のカーボンニュートラルも実現したいと考えています。

今回のコミッティでは、社外有識者のみなさまから気候変動における最新のグローバル潮流をご共有いただいたのち、カーボンニュートラル実現に向け、リスクの低減や機会の最大化に向けた取り組みについてディスカッションを行いました。

社外有識者には、コミッティメンバーに加えて、イー・アール・エム日本(株)パートナーの待場氏にもご出席いただきました。

※本ダイアログはオンラインで実施しました。

専門分野から見る気候変動の潮流

NPO法人NELIS
代表理事
ピーター D.
ピーダーセン氏

議長:ピーダーセン氏 昨年に業種別の組織体質調査を実施したところ、ITサービス・ソフトウェアサービスが5年前と比較して一番飛躍していた。ITこそが社会価値に寄与することを所属する従業員自らが認識し、オープンイノベーションにも相当取り組んでいる。

環境的制約を考えると、従来どおりでの市場やサービスの成長実現は不可能。今後の世界市場は、100%の確率で環境負荷の低減につながる大粒の新市場・新事業・新技術・新製品・新サービスが誕生する。これからは社会も市場も人口成長地域と人口減少地域で大きく分かれ特徴づけられる。気候変動が解決されないと中間所得者であるグローバルミドルクラスも食料確保や災害対応に追われることとなり、貧困層に傾くだろう。これがNECの置かれている状況であり、これらの変化をふまえた経営の転換が重要になる。

荒井氏 ESG投資は第3期を迎え、企業へのインパクトが大きくなり、情報開示基準の統合化が急速に進んでいる。現在、ESG投資が株式から他の金融資産へ急拡大している。これまで乱立していた多くの基準の統一化が進み、IFRS財団によるISSB*1の設立によって財務と非財務の開示が統合する。また、日本ではコーポレートガバナンス・コードの改定により、気候変動や人権の具体的な課題が含まれるようになった。投資ファンドでも、「温室効果ガス排出量ネットゼロ」を目指す動きがある。企業は、今後も資金を調達していくためには、これら金融界の動きをふまえた対策が重要となる。

NPO法人
日本サステナブル
投資フォーラム
(JSIF)会長
荒井 勝氏

永井氏 “Climate Justice, Social Justice”など「人権」についてもグローバルで議論になっている。人権に対する考え方は年を追うごとに拡大している。気候変動は基本的人権の問題であり、脆弱な人がより影響を受ける。国連の宣言や海外の判決結果は、「気候変動が起こらず環境や健康を得られる権利を将来世代の若者たちから奪ってはいけない」という考えを示した。企業とESGは互いに密接な関係であるので、統合して考えるべきである。

BSR
(Business for Social Responsibility)
マネージング・
ディレクター
永井 朝子氏

待場氏 企業はネットゼロへの道筋として、バリューチェーン全体での温室効果ガス排出量削減をカバーすることが必要である。目標設定は政府の目標に揃えるだけでなく、企業の経営・投資のサイクルをふまえたものが望ましい。今後、気候変動はさらに見える化・数値化され、新たなビジネスモデルや電化・地域での熱供給などとのインテグレーションが進むだろう。CO2排出量を減らすだけでなく、さまざまなイノベーションの歯車がかみ合わさった形で行動変容を引き起こす必要がある。環境にやさしい生活は必ずしも苦行ではなく、むしろ消費者の生活の質を上げ、市場に受け入れられる形で実現できるかが鍵であり、企業による新しいサービス設計が求められる。

イー・アール・エム
日本(株)パートナー
待場 智雄氏

NECの現状の課題をふまえたリスクと機会

清水 課題としては、2025年までは詳細なアクションプランがあるが、その後の道筋をどのように作るかである。NECがどの分野で貢献しようとしているかロードマップを明確化し、投資を行いながら進めていかねばならない。当社がNEC 2030VISIONで示したお客さま・社会の脱炭素を目指すうえで、既存事業のグリーン化は一層必要となる。現状の課題をふまえた必要な視点は何か。

NEC 執行役員 兼 CSCO
清水 茂樹

永井氏 リスクの低減のため、ネットゼロ目標達成を積極的に打ち出すことが重要。目標年の前倒しも検討すべきである。また、達成に向けては相当な投資が必要であり、確実に実行できるかどうかの検証も必要である。

機会の創出・拡大としては、トップコミットメントや啓発活動など意識づけの取り組みが必要である。製品やサービスを通じていかにインパクトを大きくするか、いかに機会をとらえるかが大切なポイント。変化の兆しは小さいものがたくさんあり、企業側には見えにくい。アンテナを高く張ってキャッチし、事業にどう影響するのか、影響可能性があるか、今・未来それぞれにおいて何をするべきかの見極めが重要である。

待場氏 技術開発のスピードが速いため投資が追いついていない。これに対しては、カーボンニュートラル関連事業の計画を具体化することで、投資を呼び込むことができる。企業は、複数の事業を平等にフォーカスしすぎることで、どっちつかずになる危険性がある。NECが提供する都市OSなどの情報基盤を使ってもらうなど、焦点がニーズにうまく合致すれば、チャンスは無限に広がる。NECはリソースアグリゲーションサービスに力を入れているようだが、メイン事業にどう組み込むかが次のステップと理解している。うまく機会をとらえることが利益の最大化に結びつく。

ピーダーセン氏 企業において、情報感度の低下とスキル不足が最大の脅威であるため、世界に出て最先端を知るべきである。

機会の一例としてClimate smart citiesやClimate smart agriculture、つまりICTを使った農業の営み方や農業の都市化などがある。また、気候変動を含めたサーキュラーエコノミーでは、資源マッチングをICTで行う。このようなサービスは、NECがイニシアチブを発揮できる点ではないか。また、投資家に対してはグリーントランジションを積極的にアピールすべきである。

荒井氏 リスクの低減のために、経営層の理解、従業員の理解を深めるため、社内で知識共有を図るべきである。世界のカーボンニュートラル達成に向けて、有望な技術・事業エリアについて分かりやすくまとめられた文献も出てきている。知識の共有があることで初めて経営層から従業員まで本気になる。

藤川 世界ルールに則らないと事業として広がらない。そのためにどうしたらいいか目下検討している。ICTや農業など事業分野によって時間軸が異なるので、投資を続ける基準を設けたい。

NECはさまざまな技術があるからこそ機会になることがたくさんある。また、欧州でも評価されているKMD A/S*2社の知見や取り組みはさまざまな点で活かすべきであり、気候変動の観点でも見直したい。

NEC 代表取締役
執行役員
常務 兼 CFO
藤川 修

清水 経営層から従業員まで環境の重要性は認識しているが、真剣に取り組まないとどんな負の影響があるのかについて適切な理解はまだ発展途上である。ESGは縦割りの取り組みを超えて統合的に考えるべきであり、全体として何に焦点を当て取り組むかの軸を持ちたい。

事業のロードマップにカーボンニュートラルを乗せていくうえで貢献度をどう明確化するかも課題である。一朝一夕には形にならないが機会をしっかりと作っていきたい。

ピーダーセン氏 率直にいうと、来ることがわかっている未来に対してNECはもっと貪欲に取り組むべきである。現在のイノベーションで「グリーン」や「サステナビリティ」に関連しないものはない。すでに起こることがわかっている未来に向けて、ここからが本気のギアチェンジであり期待する。

未来を見通すうえでは最初は制約条件を考えないことが必要。豊かなイマジネーションなくして、豊かなイノベーションは生まれない。 

藤川 有識者からの話を伺い、2025中計にも掲げているカーボンニュートラル事業や気候変動への取り組みについて、財務面からもリスクと機会をしっかりととらえて、事業への影響を認識すべきであることを再確認した。NEC全社で取り組みを加速させ、より多くの価値を創っていきたい。

  • *1
    ISSB(International Sustainability Standards Board):国際サステナビリティ基準審議会、IFRS財団が国際会計基準審議会に加えて新設
  • *2
    KMD A/S:NECグループの1社、デンマーク最大のIT企業