Japan
サイト内の現在位置
「成果にこだわる」CFOの見据える先は「世界のNEC」
2025年5月8日

NECの代表執行役でありChief Financial Officer(CFO)を務める藤川修の信条は「成果にこだわる」。営業、システムエンジニア(SE)、新規事業開発など自身のキャリアを「ずっと『変化』の連続だった」と振り返る藤川は、CFOとして2025中期経営計画の最終年度を迎えました。NECグループのさらなる進化に向けて、成果を振り返り、これからを見据えます。
海外赴任中に感じた「日本を元気にしたい」
──2021年にCFOに就任しました。
当時の社長から「ファイナンスに興味はあるか?」と聞かれ「あります」と答えたものの、まさかCFOになるとは思っていませんでした。様々な問題も何とか乗り越え、就任5年目、CFOとして中期経営計画の最終年度を迎えることに大きな責任を感じています。
──NECに新卒で入社した後のキャリアも変化の連続でした。
金融機関向けにITサービスを提供する事業部で25年間、営業、SE、事業開発に携わりました。大きな転換点になったのは、シンガポールのNEC Asia Pacific社での経験です。2010年から3年半、グローバル事業推進のために赴任しました。「No.2のポジション」と聞いていたものの、最初は実質一人ぼっち。ビジネスを立ち上げようにも、お客さまも売るものも人的リソースも何もない。コンプライアンスは絶対ですが、問題ない範囲であればどのような手段でも講じて何とか黒字化。引き継いだ皆さんの頑張りで今は同社の一番の稼ぎ頭になっており誇らしく思っています。
帰国後に率いることになったのは新規事業開発。海外赴任中に東日本大震災が起こったことや、東南アジア各国の方々から「日本は最近、元気がないね」と言われ続けたことで、「会社人生の最後に、もう一度日本のために、貢献できることはないか」と思うようになり、自ら希望しました。当時のNECは株価も低迷して厳しい状況にあり、日本とNECが重なる部分もありました。
2018年にはスタートアップをサポートするNEC Xをシリコンバレーに立ち上げ、2019年以降は、AI創薬事業や、アグリテック事業を始動させました。人材発掘から育成、新事業に適した制度への改革、そして新しい事業領域への定款変更など、イノベーションを起こすために必要と思える改革を進めました。

徹底したデータ活用で「数字を作りこむ」
──かつて蒔いた種が育っています。CFO就任後の手ごたえは。
現場での事業経験をベースに、経理・財務・経営企画のスタッフと意見をぶつけあいつつ、ファイナンスのプロフェッショナルとして経営・事業の意思決定に貢献するべくFP&A(Financial Planning & Analysis)部門のビジネスパートナー化に向け変革を進めています。さらに、NECをより成長させるための戦略──次の中期経営計画の準備をしているところです。私は「恩送り」という言葉が好きなのですが、先輩方から受け継いできたものに自分ならではの付加価値を付け、これからの成長の糧となるものをつくって、次世代に渡していきたいと思っています。
──「データドリブン経営」にも取り組んできました。
仕事をする上では、「成果にこだわること」、「過去ではなく、先を見据えてプロアクティブに仕事をすること」を心がけています。予算に対する実績の数字を例に挙げると、「予算に対し、結果はこうでした」ではなく「数字は自ら作りこんでいくもの」だと捉えています。
「いつ頃までに、〇〇の成果をあげる」という最終目標から逆算し、節目ごとにマイルストーンを定め、そのマイルストーンの達成度合いと時間軸をチェックし、ズレがあれば修正する。このプロセスを繰り返すことが、“数字を作りこむ”ことになります。
そこで心強い味方になるのがデータです。NECでは「経営・ファイナンスプロセス刷新プロジェクト」を立ち上げ、全社的なデータをリアルタイムで可視化しています。ある事業の収益に関するモニタリングと現場へのフォローアップを行う場合、データをリアルタイムに総合的に見せることで、現場からも納得感が得られ、自主的に動くようになります。その結果、実際に利益率が上がる、という好循環につながるわけです。
2025中期経営計画の先へ「NECが推進力になるために」
──いよいよ中期経営計画の最終年度です。ステークホルダーからの注目も高まっています。
株価が低迷していた中期経営計画2年目の頃は、投資家から「本当に達成できるのか?」「もっとコストを削減できないか?」といった厳しいご指摘もありましたが、株価の上昇に伴い、私たちの実態を追い越して高い期待値に変わりました。最近では、成長事業に対する投資等についてもポジティブに受け止めていただけるようになったと思います。「(中期経営計画は)ほぼ達成するのでは」と言われ始めた昨夏あたりから、「その先」への期待を強く感じるようになりました。
国内のITサービス事業は好調です。2024年5月に発表した、お客さまの変革を成功へ導く価値創造モデル「BluStellar」により、なぜ国内ITサービスの収益性向上が実現できるのかを丁寧に伝えることで期待値はさらに高まるはず。昨今の安全保障問題を受け、防衛関係を扱うエアロスペース・ナショナルセキュリティ領域への関心も高まっています。ここでは列挙しきれませんが、生成AIやAgentic AI(AIエージェント)、サイバーセキュリティ、海底ケーブル、AI創薬など、NECが保有するユニークな技術や事業領域でも市場からの評価を得るべく力を入れていきます。

──日本だけでなく世界からも注目されています。
2025中期経営計画の初年度から今日に至るまで、ここ4~5年で様々な課題に対峙したことで問題対応力、スピード力が付き、企業としてのレジリエンスは高まっています。今後も予想外のことが起こったとしても、それを乗り越え、何としても目標を達成するという意気込みで取り組んでいきます。目指すのは、日本にも世界にも社会価値を創造して貢献できる会社、そして働く人たちが誇れる会社。日本のトップ企業になり、世界における日本企業のポジションをトップレベルにすることを見据え、次の中期経営計画では、NECグループが、その推進力になれることを目指します。