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AI活用による企業活動、企業経営の在り方が変化する時代のコンサルティングビジネス
Vol.77 No.1 BluStellar特集 BluStellarが牽引するDXの未来 ~AI・セキュリティ・データマネジメント・モダナイゼーションで拓く価値創造モデル~従来の「ヒト」依存及び情報の非対称性に基づくコンサルティングモデルは、環境変化の激化と生成AIの進化により限界を迎えつつあります。今後は、AIと知見を組み合わせた「AIアズアサービス」型の共創モデルへと進化し、顧客と伴走しながら継続的に価値を創出することが求められます。コンサルタントは戦略的・創造的な役割にシフトし、業種固有の知見とデータを活用して、持続可能な競争優位の実現を支援する存在へと変革していく必要があります。本稿では、AI活用が企業活動・経営に与える影響と、コンサルティングビジネスの新たな方向性について考察します。
1. はじめに
AIの進展は目覚ましく、企業活動や経営の在り方が大きく変化することが予想されています。企業が競争優位を確立し、持続するためにはAIを単なるツールとして活用するにとどまらず、AIを中心として企業活動全体を変革していく必要があります。このような大きな変革が進むなかで、コンサルティングの在り方も大きく変化していくと考えられます。本稿ではAI活用が企業の変革を促す時代において、コンサルティングサービスがどのように適応していくのかを紹介します。
2. コンサルティングビジネスが抱える問題
これまでコンサルティングは、調査や分析、提案など人に依存した活動が中心であり、発生する人件費にマージンを乗せる形で報酬をいただいていました。このモデルで継続的に成長するためには、投入人員を増加する、あるいはマージン自体を引き上げる、もしくはその双方を実施する必要があります。しかし、顧客企業の期待価値を踏まえると、現在のビジネスモデルは限界に近付いている状況にあります。また、これまでは方法論やテンプレートなどの保有する知財を非公開化し、顧客企業との間に情報の非対称性を産み出すことで差異化や価値提供を行ってきました。しかし、生成AIをはじめとする技術の進化により、有用な情報へ容易にアクセスすることが可能となり、知財の非公開化による効力も薄れてきています。更に、環境の変化が激しいVUCA(Volatility(変動性)/Uncertainty(不確実性)/Complexity(複雑性)/Ambiguity(曖昧性))の時代においては、新たなトレンドや予期せぬ破壊者の出現などによって、策定した戦略の有用性が急速に低下するという事象も発生しており、企業では持続的な成長に向けて、これらの問題への対応を迫られている状況にあります1)。
3. コンサルタントに求める役割の変化
環境変化が穏やかで、業界のありようも大きく変化しない時代には、ある程度時間を掛けてアウトプットを策定し、顧客企業に評価していただき、満足していただくことでビジネスが成り立っていました。しかし、環境変化が激しく予期せぬトレンドやディスラプションが発生する状況においては、策定した戦略が急速に陳腐化することもあり、顧客企業がコンサルタントに求める役割も変化してきています(図1)。

拡大する環境変化が激しい状況においては、解くべき課題を正しく定義することに加え、短期間かつ一定の完成度で課題解決策を立案し、解決策などのアイデアを市場で迅速に検証する必要があります。また、環境変化が継続するため、検証結果を基にプランを更新し、再度アイデアを検証してプランを更新するというサイクルを継続して回していく必要があります。このような活動を推進するために、顧客企業はコンサルタントのアウトカム(成果)を評価するという評価者という立場から脱し、信頼できるパートナーに伴走してもらう、もしくは信頼できるパートナーとともに価値を創造するといった関係性を求めるようになっています。
4. AIの現在、未来と企業活動への影響
現在、運用効率や生産性の向上を目的としたAI活用の取り組みが進んでいます(図2)。製造、物流、顧客サービスなどの産業では、顧客ケア(顧客対応)機能にAIエージェントを活用し、複雑な反復タスクを自動化する取り組みが進められています。ソフトウェアエンジニアリングにおいては、開発期間の短縮による生産性向上の取り組みが進められています。AIの活用は、これらの顧客ケアやソフトウェアエンジニアリングにとどまらず幅広い領域で活用することが検討されています。例えば、AnthropicのCEOは「ホワイトカラーの若手ポジションの半数がAIに奪われる可能性がある」と予見しており、マッキンゼーのレポート2)では「生成AIは高学歴で高収入のホワイトカラーの知識労働者に対して最も大きな影響を与える可能性が高い」と予測されています。今後、AIはツールとしての活用にとどまらず、企業活動全般を大きく様変わりさせていくと考えられます3)。

拡大する「ヒト」「モノ」「カネ」は競争優位を築くための三大資源といわれてきました。しかし、「ヒト」は属人性によるスケーラビリティの問題があり、製品・設備などの「モノ」は柔軟性に欠けるという課題がありました。また、事業拡大・M&Aなどに活用する「カネ」も、それだけでは差別化が難しいという限界がありました。
AIが進化し企業活動に取り込まれていくことで、競争資源は「データ」「モデル」「エコシステム」へと変化していくと予測されています。顧客の行動や利用状況、取引履歴などの「データ」はAIを動かすための燃料となり、予測や判断支援などの「モデル」はデータを価値に変えるエンジンとなります。更に、パートナーやAPI連携などの「エコシステム」は価値創出における土台となります。これらの資源を活用してデータによる価値創出を行うことが、持続可能な競争優位の構築につながります。
AIを組み込んだ新たな収益モデルの提供や、AI活用を中心に据えて業務をゼロベースで再構築すること、AIを搭載したダッシュボードを基に経営判断の高度化・効率化を推進することは、これからの新たな経営アジェンダとなっていくと考えられます。
5. AIがコンサルティングビジネスに及ぼす影響
生成AIのアウトプットの質は向上しており、リサーチや資料作成、分析など、これまで人に依存していた反復業務はAIへの置き換えが進んでいます。また、顧客企業においてAI活用が進むことで、方法論など非公開化していた知財による差別化はその効力を失っていくことが予想されます。そのような状況においては、コンサルティング企業は、分析などの反復業務を単にAIに置き換えるだけでなく、より戦略的・創造的な活動に注力し、新たな価値を提供していく必要があります。既に、PalantirやOpen AIなどのAIネイティブ企業はAIプラットフォームに知見を組み合わせて価値を提供する「AIアズアサービス」の実践を進めることでコンサルティング市場へ進出しています(表)。コンサルティング企業も持続成長に向けてAIプラットフォームと知見を組み合わせた価値提供を実践していくことが求められます。また、顧客企業がコンサルティング会社に伴走や共創といった役割を求めていることを踏まえると、今後は「費用+マージン」というプライシングではなくアウトカムベースのプライシングへとシフトしていく必要があります。
表 AIアズアサービスの優位性
AIアズアサービスは、ユーザーごとに異なる価値を提供できることや、継続的な学習を通じてアウトプットの質を向上させることができるため、収益の継続や価格(価値)の向上が期待できます。また、成果に紐付けた明確な課金設計や、一度構築したモデルの機能拡張、低コストでの他への展開が期待できることにより、アウトカムベースのプライシングとの親和性が高く、拡張性にも優位性があります。
6. AIによる企業活動の変化とコンサルティング
今後のコンサルティングは、知見を加えたAIアズアサービスを提供し、継続的な学習を通じた顧客価値向上を実現していくビジネスモデルを推進していく必要があります。そのためには、顧客企業の懐に入り込み、共創パートナーとしての信頼を勝ち取るとともに、業種固有もしくは顧客企業固有のナレッジやデータを活用し、顧客企業とともにAIプラットフォームを活用してデータによる価値の提供と創造を推進していくことが重要です。
実際に顧客企業の懐に入り込むためには、顧客企業の業種に対する知識・知見や、顧客企業自体を深く理解することが必要になります。また、NECが実践しているデジタルトランスフォーメーション(DX)の各種取り組み(クライアントゼロ)の知見などを紹介し、NECの取り組みに対して顧客企業から共感を得ることや、クライアントゼロで取得したノウハウや知見を基に、顧客企業が抱える課題の対策検討において地に足のついたディスカッションを行うことも大切な活動となります。このような活動を通じて、NECをDXの共創パートナーとして顧客企業から認めていただくことは、今後ますます重要になります。
7. コンサルティングサービス(CS)事業部門の取り組み
NECのCS事業部門では、これまでの「ヒト」中心のコンサルティングタスクを、コンサルタントとAIが協調する形で進めることを目指し、各種社内実証や顧客企業への紹介を進めています。新規事業開発やサービスデザインといったさまざまなテーマにおいて、マーケット部門のメンバーとコンサルタントが生成AIを活用し、共同で検討を進めることにより業務効率の向上とアウトプットの質の向上の双方を目指しています。社内実証での評価は高く、また、生成AIを活用したアウトプットを顧客企業に紹介することで顧客開拓も進めています。実際にAIを活用して策定したアウトプットに対する顧客企業からの評価は高く、顧客企業のメンバーも参加して検討を進めたいとのリクエストをいただいています。NECでは、このような活動を「Human AI Collaboration」と称しておりAIが協調する今後のコンサルティング像として位置付けています。
8. むすび
AIの進化は、コンサルティングの本質を問い直す大きな契機となっています。これからのコンサルティングは、単なる知見の提供にとどまらず、AIと人が協調し、顧客企業とともに価値を創り出す方向へ進化していくことが求められます。AI活用の具体的なイメージを共有し、納得性を高めることで、顧客企業との信頼関係を築き、伴走や共創の実現につなげることが可能となります。こうした取り組みにより、顧客企業は自社の課題解決や持続的な成長に向けて、より大きな価値を享受できるようになります。今後も、「Human AI Collaboration」として、AIと人の協調による新しいコンサルティングの在り方を追求し、顧客企業の変革と成長を力強く支援していきます。
参考文献
執筆者プロフィール
コンサルティングサービス事業部門
事業部門長

David G. Fubini:Are Management Consulting Firms Failing to Manage Themselves?, Working Knowledge, Harvard Business School, 2024.9
The World Economic Forum:AI in Action: Beyond Experimentation to Transform Industry, 2025.1