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NECにおけるデータドリブン経営の取り組み
Vol.77 No.1 BluStellar特集 BluStellarが牽引するDXの未来 ~AI・セキュリティ・データマネジメント・モダナイゼーションで拓く価値創造モデル~NECでは2025中期経営計画として「クライアントゼロ」戦略を遂行しています。その一環として、さまざまなデータを蓄積し、デジタル技術を活用して、ビジネスのあらゆる局面においてデータ主導で意思決定を行う「データドリブン経営」への変革を社内で推進しています。実践を通じて得られた生きたDXナレッジは、お客様や社会への価値提供につなげています。
本稿では、NECの経営コックピットやダッシュボードを基軸としたデータドリブン経営について、その狙いと現状の成果、社内展開の取り組み、そのためのデータマネジメント、更にAIを活用した今後の取り組みについて紹介します。
1. はじめに
コンピュータによる企業の経営意思決定支援の取り組みは、1970~80年代のDSS(Decision Support System)に始まり、その後、1990年代にはBusinessObjectsなどのBI(Business Intelligence)ツールが登場し、2000年代にはTableauなどのModern BIツールの登場へと発展してきました。
しかし、多くの企業では、いまだデータ主導による意思決定を行う経営への変革ができていないのではないでしょうか。データ活用が進んでいる企業であっても、一部の業務にとどまり、経営レベルでの活用には至っていないケースや、BIツールがOAツールのように社内展開されダッシュボードが乱立しているケースが多く見受けられます。
NECは、データドリブン経営に挑戦しており、まだ道半ばですが一定の成果が出てきています。本稿では、NECのデータドリブン経営について具体的に紹介します。
2. NECにおけるデータドリブン経営の全体像
NECでは、これまでの経営管理の課題を鑑み、データドリブン経営の姿として、「経営層から社員までが同じデータでファクトに向き合い、未来志向のアクションへつなげる」というビジョンを掲げ、データを起点とした、ビジネススピードの最大化を目指しています(図1、2)。

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拡大する2.1 経営コックピットとダッシュボード
NECのデータドリブン経営は、経営コックピット(図3)やダッシュボード(図4)を基軸としており、CxO(Chief Officer)がオーナーシップを持って推進しています。
CxOごとにダッシュボードを整備しており、現在10領域98種類が運用され、継続的にブラッシュアップされています。更に上位概念として、CEO(Chief Executive Officer)視点の経営コックピットを構築し、各ダッシュボードから全社の重要指標をピックアップして掲載しています。なお、ダッシュボードはデータや情報を視覚的に表示するツールを意味し、経営コックピットは、アクションに結び付ける操縦室であることを重視したツールと考えています。

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拡大する2.2 データドリブン経営の成果
経営コックピットやダッシュボードは、いわゆる「経営の見える化」を実現するものであり、その効果が期待されています。経営課題の解決には、当事者だけではなく、多くの関係者を巻き込む必要があります。そのため、問題の共通理解が重要であり、見えない問題は解決できません。経営コックピット/ダッシュボードは、経営課題の解決に必要不可欠な基盤といえるでしょう。
例えば、NECの2025中期経営計画では、(1)EBITDA成長率年平均9%、(2)エンゲージメントスコア50%、の2つをKPIとして掲げており、これらの実現に向けて経営コックピット/ダッシュボードが大きく貢献しています。
財務指標については、全社を挙げて取り組んでいる経営・ファイナンス刷新プロジェクトのデータを徹底活用したプライスマネジメントが代表的な事例です。想定売価と実売価をさまざまな切り口でデータ分析し、多くの改善施策を実施した結果、2年間で粗利益率が5.5%向上しました。
カルチャー指標については、従業員サーベイの結果を全社でオープンにし、そのデータを分析したうえで、組織長が現場と真摯に向き合い、改善に向けたさまざまな取り組みを実施しています。また、成功している組織の施策を水平展開して、「組織はオープン、全員で成長できるように」というCode of Valuesを全社で実践しています。その結果、2018年度19%だったエンゲージメントスコアが2024年度には42%まで向上しました(図5)。

拡大するこれらは、全社でデータをオープンに共有し、CxOのオーナーシップと事業責任者のリーダーシップ、現場の取り組みが嚙み合った好例です。これらは一例にすぎませんが、「経営の見える化」によるさまざまな成果が出てきており、現在では、全社の変革プロジェクトが始まる際には、ダッシュボードでの見える化が必ずセットになっています。
3. 社内展開の取り組み
本取り組みは、ゼロから始めた変革であり、社内展開にあたってはさまざまな課題が生じました。そのなかで特に、経営層や現場の巻き込みに関する課題とそれに対する施策について紹介します。
3.1 経営層のオーナーシップ
NECは事業ラインが強く、データ活用に関しても各事業で個別最適が図られていました。全体最適を実現するためには、CxOによる全社ガバナンスの強化が必要であり、データドリブン経営ではCxOがオーナーシップを持って推進しています。
CxOを巻き込むためには、まずは1つの実例で実物をクイックに作成し、見える化の効果を実感してもらうことが効果的でした。経営層は多忙なため時間を掛けすぎると関心や熱量が薄れてしまうことから、スピード感を持った対応が重要です。
3.2 現場の巻き込み
経営層の理解を得た後も、現場への展開は困難を極めました。CxO配下の部門や事業部門など全社展開を進めるなかで、4つの「壁」に直面し、それぞれに対して施策を講じてきました(図6)。
- (1)意識の壁:NECでは総論賛成・各論反対の傾向が多くみられます。そこで、意識改革セッションを実施し、目指す姿への腹落ちと変革への機運向上を図りました。
- (2)スキルの壁:研修と設計支援を通じてスキルアップの支援を行いました。特に気軽に相談できる「駆け込み寺」が効果を発揮しました。
- (3)継続の壁:変革推進者に伴走型の支援を行い、関係者を巻き込みながら、ドライバーとなる施策を継続的に実施することで活性化を図りました。
- (4)活用の壁:ダッシュボードの活用を阻害する要因は、レポートの質だけでなく、利用者側のスキルにもあります。経営層や部門長、職種、キーコンテンツごとに、ハンズオントレーニングを開催し(2023年度は年62回)、2024年度からは、「データを活用して成果を出した方」に講演をいただき、同じ立場の方を集めてワークショップを実施し、成功事例の水平展開を進めています。これら社内展開の最大のイベントとして、コンテストを開催し、CEOやCOO(Chief Operating Officer)などのCxOからの賞を設けることで、取り組みをドライブしています。

拡大する4. データマネジメント
データドリブン経営を推進するうえで、データに関する課題は大きく、データマネジメントの重要性が増しています。これは地道な取り組みであり、経営のインフラともいえるため、意識的に取り組む必要があります。NECでは、「戦略」「仕組み(基盤、分析・AI)」「ガバナンス(組織・統制、人材、文化)」という要素に整理し、データマネジメントを推進しています。
4.1 戦略
データドリブン経営のビジョンとして、経営層から社員までデータを活用し、BIにAIを組み込むことで、人が重要な意思決定と実行に注力できる世界を描いています。この実現に向けて、最も重要視しているのが「データ戦略」であり、次の6つの方向性を定めています(図7)。
- (1)事業経営に関するレポートの一元化:CxO領域ごとにダッシュボードを構築し、全社員がアクセスできるサイトに一元化します。
- (2)標準情報種による共通言語化:CxO領域ごとに共通利用のために結合・加工した標準データと、標準データを迅速に見つけるためのデータ辞書(カタログ)を作成し、一元化します。
- (3)秘匿性を考慮したデータの民主化:個人情報・インサイダーなど法的・倫理的に必要な秘匿性を考慮しつつ、基本的にデータはオープンにします。
- (4)Quick Winと継続的な改善:すべての成果物を迅速に開発・公開し、利用者からのフィードバックを基にブラッシュアップを繰り返します。
- (5)CxOのオーナーシップ明確化:各CxOが自領域のデータ利活用を推進することで、全社展開を実現します。
- (6)データマネジメント組織によるガバナンス:専門組織が中心となり、データマネジメントを推進します。特に「CxOのオーナーシップ」「Quick Winと改善」を重視し、領域ごとにデータ利活用を推進することで、レポートやデータの乱立を防ぎ、全社展開を加速させています。

拡大する4.2 仕組み
データドリブン経営を支える「仕組み」の中核は「One Dataプラットフォーム」です(図8)。このプラットフォームは、「Denodo」によるデータ仮想化や「Snowflake」を用いた一元管理をスピーディに実現し、社内のデータ活用を促進しています。また、「dotData」や生成AIなどのAIツールを活用し、AIによる意思決定を具現化しています。

拡大する「Denodo」を用いて、標準データのカタログ(ビジネスカタログ)とデータソースのカタログ(データカタログ)の2種類を整備し、メタデータ管理に取り組んでいます(図9)。ビジネスカタログは、標準データのプロフィール、テーブル項目の意味を明確にし、ダッシュボード構築時に正確なデータ活用を可能にしています。データカタログは、各システムで利活用できるデータをアセット化しており、必要なデータがどのシステムにあるのかを探す工数を大幅に削減しています。

拡大する4.3 ガバナンス
データドリブン経営の持続的な推進には、強固なガバナンス体制が不可欠です。NECでは、データ専門組織であるデータ&アナリティクス統括部が、データガバナンスのCoE(Center of Excellence)機能を担っています。データ戦略定義書やデータガバナンスガイド、データ品質管理ガイドライン、レポート設計ガイド(デザインガイド、パフォーマンスガイド)、分析テンプレート、ServiceNowによるフィードバック、データ人材育成、データドリブン文化の啓蒙、ワークショップやコンテストなど、さまざまな仕組みの整備や取り組みの実施により、データドリブン経営を推進しています。
5. 経営コックピット×AI
データドリブン経営の目指す姿として掲げていた「BI×AIで人の意思決定を支援する世界」が、生成AIの発展により現実的になりました。NECでは、経営コックピットから意思決定及びアクションまでつながる「経営マネジメント変革の姿」を具現化しました(図10)。この仕組みは、3つから構成されています。1つ目は、全社経営状況に対するCEO AIの見解、2つ目は、部門のAIによる業績予測とそれに対する改善施策のAIによる提言、3つ目は、その施策の実行を支援するAIです。

拡大するこれらを実際に使えるものにするためには、フィードバックループを回してAIを進化させる必要があります。Outputの量的拡充と質的向上のためのInputデータ改善の両面で実際に使い、そのフィードバックを受けながらブラッシュアップを継続し、AIによる経営マネジメント変革を推進しています。
6. むすび
NECのデータドリブン経営の取り組みを紹介いたしましたが、特に重要なポイントは次の4点です(図11)。
- (1)経営層のオーナーシップ:経営層がデータドリブン経営の重要性を理解し、自ら全社的な変革を強力に推進しています。
- (2)ビジョン・方針を描く:データドリブン経営の目指す姿を明確なビジョンとして示し、具体的な戦略とロードマップを策定することで、組織全体が同じ方向を向いて取り組むことを可能にしています。
- (3)Quick Winと改善:小さな成功をスピーディに積み重ね(Quick Win)、その効果を実感しながら継続的に改善していくアジャイルなアプローチを採用しています。
- (4)データ&アナリティクスの専門組織:それらを「強い想い」を持ったデータ専門組織が恒久的に推進していきます。

拡大する今後も、世の中の一歩先を行く、デジタル技術を活用した経営マネジメントによって価値を創出し、それをBluStellarの商材に昇華させ、お客様の経営マネジメント変革へ貢献していきたいと考えています。
商標
- *BusinessObjectsは、SAP SEの米国およびその他の国における商標または登録商標です。
- *Tableauは、Salesforce, Inc.の米国およびその他の国における商標または登録商標です。
- *Denodoは、Denodo Technologies株式会社の商標または登録商標です。
- *Snowflakeは、Snowflake Inc.の商標または登録商標です。
- *ServiceNowは、ServiceNow, Inc.の米国およびその他の国における商標または登録商標です。
- *その他記述された社名、製品名などは、該当する各社の商標または登録商標です。
執筆者プロフィール
データ&アナリティクス統括部
統括部長
データ&アナリティクス統括部
ディレクター
