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地域密着型金融の実現に向けたデータ活用基盤導入事例(株式会社大垣共立銀行様)

Vol.77 No.1 BluStellar特集 BluStellarが牽引するDXの未来 ~AI・セキュリティ・データマネジメント・モダナイゼーションで拓く価値創造モデル~

変化の激しいVUCA(Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性))の時代において、データによる予測や分析を基に、高度な意思決定を行う「データドリブン経営」への注目が高まっています。しかし、複数のシステムや媒体にデータが散在している状況では、その価値を十分に引き出すことは困難です。大垣共立銀行様は、地域密着型金融の実現に向けて顧客理解を深めるため、BluStellarが提供するデータ活用基盤を選定・導入しました。導入にあたってはNECとともに検討を重ね、オンプレミスとクラウドを組み合わせたハイブリッド構成を採用し、将来の拡張性にも配慮した柔軟なアーキテクチャを構築しました。本稿では、導入背景、支援内容、成果、今後の展望について紹介します。

1. はじめに

近年、金融業界では顧客ニーズの多様化や市場環境の変化に対応するため、データを活用した高度な意思決定が求められています。特に、予測や分析に基づく「データドリブン経営」の重要性は、VUCA(Volatility(変動性)/Uncertainty(不確実性)/Complexity(複雑性)/Ambiguity(曖昧性))の時代において一層高まっています。

岐阜県大垣市に本店を構え、2026年には創立130周年を迎える大垣共立銀行様(以下、同社)では、2024年度から始まった中期経営計画のなかで「成長戦略」「人財戦略」「経営基盤強化」の3本柱を掲げ、それらを支える横断的な施策として「DX戦略」を推進しています。DX戦略では、あらゆる接点でデータを利活用したパーソナライズなコミュニケーションを行う「顧客接点の変革」、データドリブンな意思決定を中心とする「プロセス改革」を柱に据えており、顧客データや経営に関するデータの活用が大きな鍵となります。

同社は、地域密着型金融の実現に向けて顧客理解を深めるため、NECが提供するBluStellar Scenarioを活用したデータ活用基盤を選定・導入しました。導入にあたってはNECとともに検討を重ね、オンプレミスとクラウドを組み合わせたハイブリッド構成を採用し、将来の拡張性にも配慮した柔軟なアーキテクチャを構築しています。

本稿では、導入に至るまでの検討プロセスやアーキテクチャの工夫、顧客接点の変革、地域社会への貢献に向けた取り組みについて、事例を通じて紹介します。

2. データ活用の取り組みにおける障壁

同社では、顧客理解の深化と業務プロセスの高度化を目的として、データ活用の取り組みを進めてきました。しかし、データドリブン経営を実現するためには、既存環境に内在する構造的な課題を解消する必要がありました。次に、主な障壁とその影響について整理します。

(1)データの散在とアクセス性の課題
業務データが複数のシステムや媒体に分散しており、活用にあたってはまず収集から始める必要がありました。なかには磁気テープなど旧来の媒体に保存された情報も含まれており、検索性や即時性に乏しい状況でした。また、システム更改の過程で一部のデータが失われており、これが顧客対応や商品設計における意思決定の精度低下を招く要因となっていました。

(2)過去データの欠損による分析精度の低下
例えば住宅ローンにおいては、繰り上げ返済の履歴データが十分に残っておらず、顧客行動の傾向分析や予測モデルの構築が困難な状況でした。これは、銀行の主力商品における顧客理解の精度に直接的な影響を与えるものであり、商品戦略の立案にも制約をもたらしていました。

(3)データ形式の不一致による業務負荷の増加
システムごとにデータ形式が異なるため、統合・活用には手作業による標準化やクレンジングが必要でした。顧客属性別リストの作成など、日常業務においても加工に多くの工数がかかっており、業務効率の低下を招いていました。これにより、現場の担当者が本来注力すべき業務に割く時間が圧迫されるという副次的な課題も生じていました。

これらの課題を解決するために、同社ではNECとともにデータの標準化と活用基盤の整備に着手し、BluStellar Scenarioの導入を通じて、業務プロセスの改革と顧客接点の変革を推進しています。

3. 実施内容と工夫

3.1 要件定義初期段階からの伴走支援

同社では、データの散在や欠損、形式の違いといった課題を解決し、将来的な拡張性も見据えたデータ活用を実現するため、新たなデータ活用基盤の構築に着手しました。パートナーとしてNECを選定し、「データ活用基盤コンサルティング」を通じて、プロジェクトの初期段階からNECが同社に伴走し取り組みを進めました。

データ活用基盤の構築にあたっては、現状のシステム環境やデータの所在、活用目的などを整理したうえで、最適なアーキテクチャを策定する必要がありました。特定製品の導入を前提とせず、ユースケースや制約条件に応じた柔軟な設計方針を採用しています。

3.2 実践知による信頼度の高い導入アプローチ

NECは、自社でのデータマネジメント高度化の取り組み(One Data Platformの構築)や、複数企業への支援経験を通じて得た実践知を生かし、アーキテクチャ設計における意思決定支援を行いました。現状のシステム構成、データの連携状況、活用目的の具体度などを踏まえ、短期・中長期の視点で実現すべき内容を整理しながら、同社への最適なアーキテクチャの提案につなげています(図1)。

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図1 データ活用基盤コンサルティング概要

同社では特に、クラウドとオンプレミスのどちらで構築するかが重要な検討ポイントとなりました。データレイクやDWH(Data Warehouse)、ETL(Extract/Transform/Load)などの構成要素では、クラウドサービスの機能性や拡張性を評価しつつ、運用コストや将来的な利用状況も考慮した設計が求められました。

NECは、各製品・サービスの特徴や課金体系を整理したうえで、6パターンのシステム構成案を提示し、活用ロードマップとともに検討を支援しました。

3.3 ハイブリッド構成による柔軟な基盤設計

こうした議論を重ねた結果、同社のデータ活用基盤は、オンプレミスとクラウドを適材適所で組み合わせたハイブリッド構成を採用するに至りました(図2)。

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図2 大垣共立銀行様 次世代データ活用基盤

具体的には、過去データの取り込みや対象システムの追加、今後のデータ量増加を考慮し、データレイク及び多くのユーザーが利用するDWHはコストやセキュリティを考慮しオンプレミスに配置しています。一方、データサイエンティストなど限られたユーザーが利用するDWHには、高度な分析と機能拡張が容易であるメリットを優先しクラウドサービスを採用しています。ETLについては、既存資産を活用しつつ、ハイブリッド構成に適した複数の製品を使い分けることで、柔軟性と効率性の両立を図っています。

4. ここまでの成果と今後の展望

4.1 データ活用基盤の導入効果と今後の発展

同社では、データ活用基盤の構築を通じて、業務データの統合・加工・分析に向けた環境整備を進めてきました。これにより、従来は手作業で行っていたデータ収集や加工の工数の削減を実現しました。

更に、最新の業務データをダッシュボード上で可視化することで、データ整理工数の削減や経営判断の迅速化などが期待されています。

4.2 AI活用に向けた基盤整備

データサイエンティストを中心としたAI活用に向けた環境も整備が進んでいます。データ準備にかかる工数が削減されたことで、予測モデルの構築や業務への適用が容易になっています。整備されたデータは、NECが提供する先進的なAIソリューションへインプットされ、事業予測モデルの構築やヘッドライトオペレーションの実現に向けた期待も高まっています。

AIによる予測結果を業務に落とし込むためには、更なるシステムインテグレーションが必要となります。NECは、データ活用基盤の構造を熟知しているだけでなく、AI・ガバナンス・セキュリティなどの領域にも専門性を有しており、今後の高度化に向けた伴走支援を継続する方針です。

4.3データ活用基盤の活用を想定した組織とオペレーションの変革及び期待

今後の重点テーマとして、現場との連携強化が挙げられます。同社では、デジタル技術の活用やDXによる企業価値向上を目的に、IT統轄部とシステム部を統合し、「デジタル統括部」を新設しています。更に、部内には現場との連携を強化するための「DXセンター」を併設しており、実行力のあるDX推進体制が整備されています。

現場を動かすためには、業務部門の課題やニーズを的確にとらえ、現場主導でのデータ活用を支援する仕組みが必要です。こうした現場と経営をつなぐ仕組みの実現への期待も高まっており、NECは活用フェーズの広がりに応じた支援を進めていく予定です。

同社では、データ活用基盤の整備を起点として、今後は現場との連携を強化しながら、AI活用や業務改革を段階的に進めていく予定です。NECとの継続的な協働を通じて、データドリブン経営の定着と高度化を目指していきます1)

5. おわりに

同社では、データ活用基盤の整備を起点として、データドリブン経営の実現に向けた取り組みを本格的に開始しました。今後は、現場との連携を強化しながら、業務部門における自律的なデータ活用の定着を目指していきます。

NECは、このようにして構築したデータ活用基盤を、お客様の事業環境の変化に合わせて、お客様自ら使いこなせるよう伴走し、継続的な変革の実現につなげていきます(図3)。

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図3 BluStellar Scenario によるデータドリブン経営の伴走支援モデル

参考文献

執筆者プロフィール

山家 里佳
BluStellarシナリオ統括部
プロフェッショナル
中司 豊
バイオメトリクス・ビジョンAI統括部
ディレクター

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