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生産拠点への再生可能エネルギー導入と効用
Vol.76 No.1 2025年3月 グリーントランスフォーメーション特集 ~環境分野でのNECの挑戦~NECプラットフォームズでは、自社管理の生産拠点から排出するCO2排出量(Scope 1、2)の削減活動を推進するため、NECグループと連携した目標を設定し、再生可能エネルギーなどを利用した「CO2の実質ゼロ化」に向けた活動を進めています。
このため、中期計画に基づき太陽光発電システムから発電した、いわゆる「生グリーン電力」の導入を進めています。また福島事業所では、お客様からの「製造工程で使用するCO2発生量を可能な限りゼロにしてほしい」との要望を実現するため、2024年6月から使用する電力の再生可能エネルギー化100%実施に切り替えました。
これらの生産拠点で実行した太陽光発電の電力導入拡大に向けた取り組みを紹介します。
1. はじめに
1.1 NECプラットフォームズの環境への取り組み
NECプラットフォームズ株式会社(以下、当社)は2014年にNECグループの生産分担会社を統合し発足しました。2017年にハードウェア開発・生産体制の更なる強化で現在の体制となっており、ハードウェア機器の開発・生産から、ITとネットワークを融合したシステムの提供、新たなソリューションの創出まで、幅広いICTプラットフォームを提供しています(図1)。


NECグループでは持続可能な社会の実現に向け、意欲的な環境活動に取り組んでおり、当社も統合前から旧各社が環境活動を推進し、現体制でも全社で活動方針を定め活動を継続しています。
当社の生産拠点の気候変動対策への取り組みは、自社拠点からのCO2排出量(Scope1、21))削減がお客様のCO2排出量(Scope31))削減となることで、お客様の環境配慮製品拡充など環境経営向上に貢献できると考え、併せて当社の環境経営と企業価値の向上につながることを意識しながら活動を推進しています。
ここに、当社の再生可能エネルギー導入とその効用について紹介します。
1.2 気候変動対策に向けた目標
気候変動対策としてNECグループは「2040年までにカーボンニュートラルを実現する」ことを最終目標としています。この達成に向けた活動の1つとして当社は、自社生産拠点からのCO2排出量(Scope1、2)の削減に取り組んでいます(図2)。この目標を確実に達成するため、2030年度と2025年度にそれぞれ中間目標を設定しています。


具体的な活動施策として、老朽化設備更新による効率向上(一般的にいうエコ替えの推進)、設備運用改善の省エネ活動と合わせ、再生可能エネルギー(以下、再エネ)導入拡大の3つの大きな施策を5カ年の中期計画として取りまとめて推進しています。
2. 日本国内での再生可能エネルギー化拡大に向けた状況
2.1 再生可能エネルギー調達方法の多様化
再エネの主な調達方法としては次のとおりです(表1)。
- 自社による太陽光発電設備の導入
- コーポレートPPA(Power Purchase Agreement)の活用
- 小売電気事業者の環境付加価値メニューからの購入
- 電力の環境価値2)を証明するため非化石証書2)の購入
表1 再生可能エネルギー電力の主な調達方法
再エネのエネルギー源としての太陽光発電は、比較的容易に導入でき、設置可能な場所が多く、自家消費や地産地消を行う分散型エネルギーとして期待されています。特に自社による発電、またはコーポレートPPA契約により発電された生グリーン電力3)導入と比較的入手が容易な非化石証書購入を基軸に再エネを調達する企業が近年増加しています。
更に、国際的な取り組みであるRE100(Renewable Energy 100%)に適用するためには追加性4)の付加された非化石証書の購入が今後の重要なファクターとなりつつあります。
2.2 生グリーン電力調達方法
生グリーン電力の主な調達方法としては次のとおりです。
- 自社による太陽光発電設備の導入
自社資金を活用して太陽光発電システムを導入保有する方式です。
自社で投資するため発電システムの運用や発電した生グリーン電力利用などに自由度があります。 - コーポレートPPAの活用
他社が保有している太陽光発電システムで発電した生グリーン電力を長期契約に基づいて購入する方式です。
自社の敷地内・外に太陽光パネルを設置する方式で敷地内設置はオンサイトモデル、敷地外設置はオフサイトモデルと定義されています。
オフサイトモデルでは、集中型エネルギーシステムの脆弱性を払拭するため、エネルギー供給のリスク分散や電力会社管轄内への建設に伴う地域貢献(電力の地産地消)の効果も期待されています。
3. NECプラットフォームズ生産拠点への再生可能エネルギー電力導入に向けた状況
3.1 再生可能エネルギー導入に向けた方針
当社は中期計画で再エネ導入拡大として、自社生産拠点の建物屋上に太陽光発電パネルを設置し2025年度までに海外生産拠点を含めて発電容量6,540kW、発電電力量7,577kWh/年を計画しています。
再エネ導入の主な目的はCO2排出量を削減することですが、導入判断時には投資効果を評価することは非常に重要なファクターと考えます。このため当社では投資案件ごとに複数の施工業者から自己投資方式とオンサイトPPA方式の見積もりを入手して比較検討し、投資対効果が最大になる方法を選択することにしています。
併せて、投資案件ごとにリスク評価も行っています。具体的には、自然災害などによる設備故障や天候リスクによる日射量減少による発電量減少リスク、商用電力価格低下などによるコストリスク、及び長期契約による対応力低下のリスクなど各リスクの重みを想定し判断条件としています。
3.2 再生可能エネルギー導入実績
2024年7月までの導入実績(見込みを含む)は表2のとおり16,313MWh/年であり、2023年度発電電力量実績ベースでは全社使用量比で7%が再エネ電力化になっています。
- 自己投資方式 :発電電力量3,059MWh/年
- オンサイトPPA方式 :発電電力量2,116MWh/年
- オフサイトPPA方式 :発電電力量1,855MWh/年
- 非化石証書 :発電電力量9,283MWh/年
表2 再生可能エネルギー導入実績と計画
3.3 福島事業所における再生可能エネルギー100%化の実現
3.3.1 福島事業所における再生可能エネルギー100%化
当社福島事業所では、お客様からの「製造工程で使用するCO2排出量を可能な限りゼロにしてほしい」との要望を受け、次のような効果が期待できることから具体的な導入検討を進めました。
- 当社のScope2削減及びお客様のScope3削減
- お客様と当社、及びNECグループの環境経営(脱炭素領域)における連携強化
- 脱炭素への取り組みのアピールによる企業価値向上
- カーボンニュートラルな製品を生産できる生産拠点としての付加価値拡大
3.3.2 調達方法検討と生産拠点再生可能エネルギー100%化の達成
調達方式の概要(図3)と効果は次のとおりです。
- 再エネ調達方法の選定
福島事業所の再エネ100%化は自社敷地への太陽光パネル設置だけでは賄えないため、オフサイトPPA方式と非化石証書購入の組み合わせで調達する方法を選定しました。 - オフサイトPPA方式の仕様検討
オフサイトPPAの発電容量、供給方法などの仕様をどのように設定するかは電力供給会社での検討事項ですが、全体スケジュール、コストインパクトに大きく関連があるため情報を共有して当社メンバーも連携して仕様検討を進めました。
太陽光発電システムのシステム構成は、太陽光パネル、PCS(Power Conditioning System)、接続方法、及び蓄電池有無など構成機器が多いことから組み合わせは多岐にわたります。また、パネル設置場所の選定においても新規開発として山林開発を行う場合には候補地選定、地主交渉、開発届出など着工までにも長期間が必要です。これらの選択肢のなかから今回のプロジェクトで最適と思われるスキームを4点ほどに絞り込み比較検討しました。 - 導入方式決定と効果
多岐にわたる選択肢のなかでスケジュール感と、コストインパクトを考慮したうえで、お客様製品の製造電力量をカバーできる発電能力を確保しているオフサイトPPA発電量をベースとして、オフサイトPPA発電で不足する電力量は電力小売業者が電力市場から調達した非化石証書電力を活用する方式にしました。
これにより福島事業所は2024年度から再エネ電力100%化が実現され、これによりお客様のScope3低減に大きく貢献しています。福島事業所もScope2はゼロとなり当社が中間目標としている2025年度 CO2排出量削減目標達成にも貢献しています。


4. むすび
当社は2025年度中間目標を達成するために中期計画で立案した施策を確実に実行します。
例えば、生産拠点内での生産設備、生産ライン、生産フロアのCO2排出量削減活動などを加速させるため社内で連携した省エネ活動を強化推進します。
また、次期中期計画(2026-2030年)では、2030年度中間目標達成に向けてステップアップした施策立案が必要と考えており、カーポート型や建物壁面などの太陽光パネル設置範囲拡大、オフサイトPPA方式の他生産拠点への展開、及びNECで実施している生グリーン電力の自己託送を当社に適用させるなどの施策を検討します。
引き続き、NECグループの2040年カーボンニュートラル目標達成に向けた活動を推進します。
参考文献
執筆者プロフィール
NECプラットフォームズ株式会社
環境工務統括部
シニアマネージャー
総務統括部 ワークプレイスグループ
テクニカルマネージャー
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