2017年度C&C賞表彰式典開催

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2017年11月29日ANAインターコンチネンタルホテル東京にて2017年度C&C賞表彰式典が執り行われました。晩秋の午後、約110名もの多くの方々にご出席いただきました(写真1)。

写真1 C&C賞表彰式典

式典は矢野理事長による開会の挨拶から始まり、C&C賞は今年が33回目で、過去67グループ110名にのぼる受賞者を輩出したことなどの活動が報告されました。次に青山友紀審査委員長による選考経緯と受賞2グループの発表があり、グループAの受賞者として、「脳科学と人工知能、及び情報工学の高度な融合による先進的研究開発並びにその精神医学への革新的応用に関わる貢献」に対し、株式会社国際電気通信基礎技術研究所 脳情報通信総合研究所 所長でATRフェローの川人光男博士、また、グループBの受賞者として、「計算機科学分野における基礎理論の構築と、同分野に関わる多数の優れた著作活動を通じた教育面での多大な貢献」に対し、コロンビア大学のアルフレッド V. エイホ教授、コーネル大学のジョン E. ホップクロフト教授、そしてスタンフォード大学のジェフリー D. ウルマン名誉教授の業績が紹介されました。受賞者の方々には、矢野理事長より、表彰状、C&C賞牌と賞金とが贈られました(写真2)。

写真2 受賞者の川人博士、エイホ教授、矢野理事長、ホップクロフト教授、ウルマン教授(左から)

続いてご来賓の経済産業省商務情報政策局長の寺澤達也様からは、日本の抱える超高齢化社会における課題の解決に対し、川人博士が先導された脳波を活用した情報通信技術による介護や医療分野への応用努力と貢献に、敬意を表されました。また、今日の情報通信社会の著しい発展に対し、プログラミング技術に関わるエイホ、ホップクロフト、ウルマン3教授の貢献が果たされた大きな役割にも感謝を述べられ、その業績の社会へのインパクトの大きさを称えられました。次に電子情報通信学会次期会長の安藤真様からは、長年の研究の積み重ねによって未踏の領域をディシプリンにまで高められてきた川人博士の偉大さを称えるとの言葉をいただきました。更に、グループBの3名の教授に対しては、情報通信インフラの基盤構築に関わる研究業績に加え、その発展を支える人材育成への貢献についても国連のSDGsとの関わりなどを交えつつ感謝と敬意を表され、贈呈式は滞りなく終了しました。

受賞記念講演では、グループAの川人光男博士からは、受賞業績である脳科学と人工知能、及び情報工学の高度な融合による先進的研究開発並びにその精神医学への革新的応用と題して講演が行われました。そこでは人工知能がブームとなっている現在でもロボットやコンピュータは人に比べてずっと劣っており、実は脳のことはよく分かっていないという現実が紹介されました。更にそのことを踏まえ、計算論的神経科学の研究進展が紹介されました。計算論的神経科学とは脳の機能を脳と同じ方法で実現できる計算機のプログラムと同程度に、深く本質的に理解することを目指すアプローチです。そして精神疾患・発達障害の診断と治療の現状と脳科学・人工知能技術の可能性について、これまでの研究を振り返りご説明いただきました。続いてグループBの3名の教授の講演では、まずエイホ教授からThe Evolution of Algorithmsと題したお話をいただきました。講演では今日社会におけるソフトウェアの重要性の認識に始まり、最近のトピックスとしての量子コンピューティングにおけるアルゴリズムの役割などもご紹介いただきました。次にホップクロフト教授からはMy Careerとして、教師のキャリアはその博士課程学生たちの質と関わりに大いに影響されるという経験をもとに、現在も中国を始めとする多くの国々で自身が楽しみながら大学教育に携わっていることを、多くの事例も交えお話いただきました。最後にウルマン教授はTheory Meets Databasesと題して、データベース理論研究の歴史を振り返り、リレーショナルモデルやロスレスジョインなどの紹介とデータベース理論の将来展望を語られました。いずれの講演の内容も、現代社会の発展の原動力として、また課題の解決に対し欠かすことができない重要な技術として、今回の受賞業績のC&Cに関わる認識を新たにするものでありました。受賞講演の後、受賞者を囲んでのカクテルパーティの場が設けられました。短い時間ではありましたが、和やかな雰囲気のなかで、参加者が受賞者にお祝いの言葉を述べ、また参加者同士が懇親を深める交歓の場となりました。ご来賓の方々との晩餐会では、情報処理学会会長の西尾章治郎様による祝辞と乾杯のご発声に始まり、宴の最後にはそれぞれの受賞者のお客様代表からのご祝辞と、受賞者による返礼を頂戴し、和やかな雰囲気のなか閉会となりました。

今回のC&C賞は、人工知能に代表されるC&C技術の精神医学への新たな応用と、情報科学を支える基礎となる理論的計算機科学分野の学術的教育的貢献にそれぞれ与えられましたが、いずれも更なるIT社会の発展にとって欠くことのできない重要なC&C技術であり、その創出に係る長年の貢献を称えるものであったと言えます。


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公益財団法人NEC C&C財団について

NEC C&C財団は、C&C技術分野、すなわち情報処理技術、通信技術、電子デバイス技術及びこれらの融合する技術分野における開拓又は研究に対する奨励及び助成活動を通じて、世界のエレクトロニクス産業の一層の発展を図り、経済社会の進展と社会生活の向上に寄与することを目的としています。1985年3月に設立された財団法人であり、その基金はNECからの寄付金に依っています。

この目的を果たすための活動として、現在、顕彰事業及び研究助成事業を行っています。

顕彰事業としては、「C&C賞」に加え、本財団の国際会議論文発表者助成を受けて海外で発表された論文のなかから、毎年おおむね3件以内の優秀論文に対して「C&C若手優秀論文賞」と賞金を授与しています。

研究助成事業としては、日本在住の大学院所属の学生で、海外で開催される国際会議で論文発表などをされる方々への会議参加費用の助成とともに、日本の大学院に滞在中の外国人研究員に対する研究費用助成を行っています。