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DX人材不足で注目される「リスキリング」とは?

DX推進に本格的に取り組む企業が増える一方で、DX人材の不足が大きなハードルとなっています。しかも、日本の社会全体でもDX人材は不足傾向が続いており、採用が難しいのが現状です。そこで、人材不足解消の切り札として期待されているのが社員の「リスキリング」です。リスキリングの基本から、DX人材との関係性を紐解くとともに、その進め方などを解説します。
DX人材育成でも注目される「リスキリング」とは
リスキリングとは、「今後新たに発生する業務において、役立つスキル・能力を学び、身につけること」です。近年、AIなどのデジタル技術の普及などを受けて、業務のあり方が大きく変化しています。その結果、これまでの知識や技術が通用しなくなったり、既存の業務自体がなくなってしまうケースも考えられますが、新たに必要とされるスキルを身につければ、ニーズの高い業務へと配置転換することも可能になります。
リスキリングの定義として、新たに身につけるスキルはデジタル技術に限りませんが、デジタル化がビジネスに大きく影響していること、またDXが企業の大きなテーマとなっていることから、DX人材育成の観点でリスキリングに取り組むケースが増えています。
リスキリングが注目される理由
2020年1月に開催された世界経済フォーラム(WEF)の年次総会では、2030年までに全世界で10億人をリスキリングするという目標が掲げられ、「リスキリング革命」の推進が表明されました。日本国内でも注目を集めるようになり、2022年10月には、当時の首相がリスキリング支援として5年間で1兆円の投資を表明するなど、日本企業での取り組みの後押しにもなっています。
また、DX人材不足解消の目的はもちろん大きな要因ですが、もう1つ、人材資本の最適化という観点も見逃せません。今後、廃止・削減となりかねない業務に従事している従業員をどう再配置するかは大きな課題ですが、リスキリングにより需要の大きい業務・部門への再配置が可能になります。社内での人材配置を最適化できることに加え、従業員のキャリアを考えてもメリットが大きく、有効な選択肢として注目されています。
リカレント教育、OJT、アンラーニングとの違い
社会人の教育・研修に関連する言葉はいくつもあり、リスキリングと類似した概念もあります。ここでは、リカレント教育、OJT、アンラーニングの3つをピックアップし、リスキリングとの違いを解説します。
リカレント教育
リカレント(recurrent)とは「循環する」という意味で、人生100年時代を迎える今、スキルアップやビジネスの専門性を高め、自身のキャリアを構築することを目的とし、必要なタイミングで教育を受け、就労と学習を繰り返すことです。
仕事やキャリアに関する学習という観点では、リスキリングと共通していますが、リカレント教育はあくまでも個々人が人生を再設計し、経済社会の大きな変化に対応するため、自身のキャリアのために学び直す・必要な教育を受けることを指します。主に業務で必要なスキルの習得を目的に、企業の人材戦略の一環として行われることも多いリスキリングとはこの点が異なります。
OJT(On the Job Training)
業務について、実際の仕事をしながら学ぶ・トレーニングのことで、日本語では「職務訓練」や「職場内訓練」と呼ばれています。実際の業務を通じて、上司や先輩社員が後輩社員に知識やスキルを指導する人材育成方法です。OJTは、机上の学習とは異なり、実務の中で必要となる知識やスキルを実践的に学ぶことができます。
アンラーニング
アンラーニングは、身につけたスキルや知識を、場合によっては捨てて、学びや成長につながる新しい知識・スキルを取り入れることです。時代の変化などに応じて、必要なスキル・知識を身につけること自体はリスキリングに通じる点がありますが、アンラーニングは特に「従来のスキル・知識を捨てる」点に主眼が置かれます。新しいものを学び直す際に、これまでのやり方やルーティン、常識などに縛られず、新しいものを取り入れることを重視した考え方・学び方と言えるでしょう。
企業がリスキリングを導入・推進するメリット
DX人材不足を解消し、DX推進を加速
リスキリングによって、自社のビジネスに関する知識・経験を持つ従業員がデジタル技術に関するスキル・知識を身につけることで、業務のデジタル化が進み、効率化・生産性向上につながっていきます。DXも一気に加速し、新製品・新規事業のアイデアが生まれ、イノベーションにつながるでしょう。また、社内のDX人材不足が解消できるので、採用コストも削減できます。
人材資本の最適化とともに、従業員の満足度向上
リスキリングにより、「縮小されていく業務だが、担当する従業員が多い」「今後、注力したい領域だが、スキル・知識を持つ人材がいない」といった社内でのアンマッチを解消し、人材資本の最適化を実現できます。スキルアップ・キャリアアップにつながることから、従業員の満足度やエンゲージメント向上にも効果があります。
リスキリング推進のステップ
リスキリングに取り組む際には、「どのスキルを身につけるか」を急いで決定するのではなく、まずは企業としての戦略を立案し、目的を明確にすることが重要です。DX人材育成を目指す場合でも、DXで何を目指すのか、どのようなスキルを持つ人材が必要かを定義することが必要となりますし、現状の課題や必要なスキル、社内で不足しているスキルを整理し、「誰がどのスキルを身につけるのがよいか」「その先に得られる成果は何か」といった点も考慮する必要があります。ここまで整理したうえで初めて、不足しているスキル・知識に関する教育プログラムを検討することになります。
また、教育プログラム・研修を終えた後も、実務でどのようにスキルを活かすかが重要です。身につけたスキルや知識を実務で活用できる環境を整えることや、評価する仕組みを構築することが欠かせません。
リスキリング推進における注意
教育プログラムが、実務にマッチしない
教育・研修プログラムの内容は特に重要であり、「求められる領域の知識を学べる」というだけでは不十分です。「概要や基礎知識ばかりで、実務につながる実感が得られない」「内容があまりに難しい」となると、挫折・離脱につながりかねません。学習意欲低下を避けるためにも、短期間で効率的に学べる、実務に直結するプログラムをお勧めします。
従業員の負担が増加し、モチベーションが低下してしまう
現状の業務に加えてリスキリングで新たな知識を学ぶとなると、従業員の負担増加が懸念されます。「忙しくて研修に時間が割けない」「新たな知識の学習は後回し」などモチベーション低下を避けるためにも、戦略・方針を社内に周知し、理解を促すとともに、組織内での協力体制を整えることが大切です。
あわせて、人事評価制度を整え、給与への反映、インセンティブなど努力に対して得られるものを明示することも有効です。
リスキリングにも有効。NECの「DX人材育成サービス」
DXは事業・ビジネスの変革(トランスフォーメーション)を目指すものですが、ビジネスの現状を知らないまま取り組むのは難しいです。もちろんデータサイエンティストなどを新たに採用する方法もありますが、「文化が合わない」「業務の詳細がわからず、うまくDXが推進できない」「データ分析をしても、実際のビジネスに活用しづらい」といった課題もあります。現状のビジネス現場を知る内部の人材がDXに必要な技術を身につけるリスキリングは、DX人材不足を解消する方法として、十分効果を期待できるでしょう。
NECでは「DX人材育成サービス」として、ビジネス現場の知識を持つ従業員が、データ活用に必要な知識を身につける研修プログラムを提供しています。AI自動化ソリューション「dotData」を活用することで、短期間で効率的にDX人材を育成するプログラムとなっており、集合研修のほか、実務データを用いたOJT研修により、実践的なスキル・知識を身につけることができます。