Japan
サイト内の現在位置
長浜赤十字病院様

コマンドセンター導入事例
現場の“忙しさ”や病床の“今”を見える化
病院経営改革に向けた取り組みを前進
事例の概要
課題背景
- 医療水準の維持・向上を図るため、病院経営の効率化・合理化を促進したい
- 看護師の「忙しさ」は定性的な評価なため、なぜ忙しいのかを客観的な指標で数値化したい
- 病床稼働率は算出しているが、それだけでは空床があっても入院受け入れを判断できない
成果
コマンドセンターで“未知”のデータを見える化
- 定性的に評価していた看護師の忙しさを定量的な指標で数値化
- 多角的なデータを統合し、より詳細な病床稼働状況の見える化も実現
看護師の応援体制を強化
- 忙しさを数値化したことで、どこで人手が足りないかが一目瞭然
- 現場の理解とコンセンサスも進む
- 応援要員を出しやすくなり、人材リソースの有効活用が実現
費用対効果が見込める
- 看護師の最適配置による時間外勤務の減少
- 病床稼働状況に基づく適切な入退院支援により、収益の改善効果を見込む
導入ソリューション

電子カルテや医事システムなどと連携し、必要なデータを抽出する。分散したデータを集約・整理し、現場で利用しやすい形にダッシュボード化することが可能になる。ダッシュボードのデータを部門内のディスプレイや病棟のiPadで確認・共有することで、経営指標や業務の改善に活かすことができる。
事例の詳細
導入前の背景や課題
既存のデータや人による主観的評価では“見えない実態”がある

病院長
楠井 隆 氏
「人道・博愛」の赤十字精神に基づき、全人的で高度かつ安全・安心の医療を提供し続ける長浜赤十字病院様は、滋賀県湖北地域医療の中核的機能を担っています。
超高齢社会を迎えた日本の医療は、さまざまな課題に直面しています。度重なる診療報酬の改訂などにより、病院を取り巻く経営環境は厳しさを増しています。医療従事者が不足する一方で、ワークライフバランスの確保も重要な課題となっています。
「こうしたなかで地域医療を支え、医療水準の維持・向上を図るためには、有限な医療リソースを最大限に有効活用し、病院経営のさらなる効率化・合理化を推し進めていかなければなりません。」こう話すのは病院長の楠井隆氏です。

看護部 副部長
感染管理室 副室長
感染管理認定看護師
中村 忠之 氏
例えば、入院受け入れの際は病床の空き状況だけでなく、看護師の「忙しさ」も重要な判断材料になります。入院のカンファレンス準備などの作業があるため、必要なマンパワーの確保が欠かせません。「忙しいかどうかは各病棟の看護師長が判断しますが、主観的な評価にならざるを得ません。」と看護部副部長 感染管理室 副室長 感染管理認定看護師の中村忠之氏は話します。
また入院の際は患者のADL(日常生活動作)情報、患者・家族の希望などを加味した検討が必要です。空床があるから即受け入れとはいきません。「病床稼働率自体は数値化していますが、そのほかの必要な情報が分散していて即座に判断することが難しい。結果的に受け入れ可否の判断が遅れてしまうことがありました。」と入退院支援室 看護師長の坂東喜代氏は振り返ります。
空床があるのに入院を受け入れられないと病床稼働率が低下し、経営的には収益機会の損失につながります。逆に必要な情報を客観的かつリアルタイムな指標で見える化できれば、限られた医療リソースを有効活用できます。「患者本位のより良い医療を提供し、病院経営の効率化にもつながります。」と楠井氏は期待を述べます。
選択のポイント
医療現場に精通したコンサルティング力とシステム開発力を評価

医療情報管理課
医療情報管理課長補佐
兼 医療情報システム係長
兼 DX推進係長
医療情報技師
本田 幸介 氏
医療現場の情報を客観的な指標で見える化したい――。
この実現に向け、同院が着目したのが「コマンドセンター」です。これは電子カルテなどの院内情報システムと連携し、病院内の多種多様なデータをダッシュボードで見える化するシステムです。現場のオペレーションを把握し、タイムリーな意思決定、業務の効率化および質の向上を支援します。
「近隣の病院が既に導入していたため、その効果に期待しました。一方で同じ仕組みをそのまま導入することはできないということも分かっていました。病院の規模や業務フローなども異なるからです。」と医療情報管理課 医療情報管理課長補佐 兼 医療情報システム係長兼 DX推進係長の本田幸介氏は話します。
求めていたのは、課題の把握から改善に向けた検討、その具現化まで一気通貫で対応できるベンダーです。コンサルティングとシステム開発を個別に依頼すると、調整が必要になったり、設計と実際の仕組みにギャップが生じたりするリスクがあるからです。「複数のベンダーの提案を比較検討しましたが、当院の求める要件を満たすベンダーはNECだけでした。」と本田氏は選定の理由を述べます。
同院はNECの電子カルテシステム「MegaOakHR」を利用しています。「経営企画室や医事課、医療情報管理課、看護部などのやりとりを通じて院内の業務や課題にも精通しています。これまでの対応実績に基づく安心感も大きな選定ポイントになりました。」と本田氏は続けます。
コマンドセンターの実現に向けて、同院は主要テーマを掲げて実証実験の実施を目指しました。本格導入の前にその有用性を検証するためです。重視したテーマは入院病棟を担当する看護師の負荷状況(忙しさ指数)と病床稼働状況を把握することです。主観に頼っていた看護師の忙しさを数値化するとともに、多様な情報を包括して病床稼働状況をより詳細に見える化することを目指しました。
看護師の業務は診療科の病棟によって特性や違いがあります。その中から課題を把握するには現場の協力が不可欠です。「NECのスタッフは医療の現場をよく分かっており、システムの言葉でなく“医療の言葉”で対話してくれます。現場に寄り添ったスムーズなやりとりのお陰で、深い部分まで踏み込んで現場の課題や要望を引き出してくれました。」と中村氏は評価します。
導入後の成果
指標に基づく現場改善により、費用対効果を期待
主要テーマの見える化にはさまざまなデータを取得・加工する作業が必要です。なかでも看護師の負荷状況の見える化はハードルの高い作業となりました。それぞれの主観に頼っていた評価を客観的にとらえる、前例のないチャレンジだからです。
忙しさは抱えている業務量だけで計れるわけではありません。ラダー(看護師の臨床能力)、つまり経験値によっても変わってきます。「NECのスタッフは現場に足繁く通い、ヒアリングを重ね、ラダーを加味した独自の計算式を開発してくれました。これにより、誰に・どれだけの労力と時間がかかっているかを客観的に割り出すことが可能になりました。」と本田氏は語ります。
病床稼働状況については電子カルテや医事システムなどと連携を図り、多様かつ詳細な情報を一元的に把握できるようにしました。複数のシステムから情報を取得する必要がなくなり、どの病床がいつから空くかといった先の予定まで分かります。
これらのデータはダッシュボード化され、看護部と退院支援室に設置した50型ディスプレイ、入院支援室に設置した27型ディスプレイ、各病棟のiPadで確認できます。



入退院支援室
看護師長
坂東 喜代 氏
こうした仕組みを整えたうえで、コマンドセンターの実証実験を2025年5月から実施しました。ダッシュボードデータは毎朝のミーティングで活用し、さまざまな効果を実証しました。
中村氏はその効果を次のように語ります。「看護師に確認すると、忙しさ指数は体感の忙しさをある程度反映していることが分かりました。忙しさが数値として裏付けされたので、配置を変えたり、多忙な病棟に応援要員を出すことにも皆が納得してくれます。その結果、医療の質を維持しつつ、看護師の時間外勤務を削減することができました。」
病床稼働状況も現場の改善に役立っています。「例えば、日帰り入院の病床なら、当日の夕方以降は空床になる。患者さんに適切な病床を提案できる幅が広がります。患者さんの容態や治療状況も把握できるので、いつごろ退院できそうかも分かる。入退院支援の最適化につながっています。」と坂東氏は語ります。
実証実験の成果を踏まえ、現在はコマンドセンターの本採用に向けて検討しています。看護師勤務の平準化や病床稼働率向上に取り組むことで、費用対効果が期待できるといいます。今後は手術室やCT/MRIの稼働率などそれ以外の指標の見える化も視野に入れています。
“未知”のデータの見える化とその可能性の大きさを実証した長浜赤十字病院様。今後も新たなテクノロジーを活用した医療DXを推進し、持続可能な地域医療の実現を目指す構えです。
担当者の声
課題分析力とコンサル力で見える化を伴走支援

医療ソリューション統括部
ライフスタイルサポートグループ
バーチャルホスピタルチーム
シニアマネージャー
棟近 茂博
NECは半世紀以上にわたり電子カルテや病院向け情報システムを提供しており、医療現場や医事情報も含めた業務内容について多くの知見を有しています。フロントに立つ営業やSEだけでなく、高度なスキルや経験を有するベテランスタッフが後方支援にあたり、「ワンチーム」となって手厚いサポートを提供します。経営目線での課題分析力と、現場密着型のコンサルティング力を活かし、業務改善につながる提案とシステム化をワンストップかつ短期間で行うことが可能です。
今回の実証実験のポイントは指数の見える化です。そこでまず業務フロー図を作成し、現状を理解したうえで課題を抽出し、その改善のためのロジックを設計していきました。工夫したのは看護師一人が担当する手術や検査、患者の入退院数といった共通的なタスクに絞り込んだことです。これにより、病棟ごとの業務の違いによる忙しさのバラつきを抑えました。

医療ソリューション統括部
ライフスタイルサポートグループ
バーチャルホスピタルチーム 主任
土居 誠
算出の基になるデータは電子カルテや医事システムなどとの連携が必要です。どのシステムの、どのデータを抽出し、どのように見える化するか。そういう知見と技術があることも、開発をスムーズに進めるうえで大きなアドバンテージになりました。
長浜赤十字病院様は今回の実証実験によって、経営の合理化に向けた1つの道筋を付けられました。人材配置の最適化により、看護師の育成やスキルの平準化も可能になると期待されています。
今後はコマンドセンターの同院の取り組みを支援するとともに、培った知見とノウハウを活かし、地域医療連携の発展と医療を巡る社会課題の解決によりいっそう貢献していきます。
お客様プロフィール
長浜赤十字病院
| 名称 | 長浜赤十字病院 |
|---|---|
| 所在地 | 滋賀県長浜市宮前町14-7 |
| 設立 | 1932年4月 |
| 病床数 | 492床(一般病床418床、精神病床70床、感染症病床4床) |
| 職員数 | 955人(2024年1月1日現在) |
| 一日平均外来患者数 | 870人 |
| 一日平均入院患者数 | 352人 |
| 事業内容 | 急性期医療を中心に、高度かつ安全・安心の医療を提供する。滋賀県湖北地域の中核病院として、高度医療、周産期医療、小児医療、救急医療、精神医療の各分野に特に注力。地域医療支援病院として、地域との連携も密に行っている。地域災害医療センターや第二種感染症指定医療機関にも指定され、地域の災害医療および感染まん延防止の役割も担う。 |
| URL | https://www.nagahama.jrc.or.jp// |

本事例に関するお問い合わせはこちらから
https://www.nagahama.jrc.or.jp//
本事例のリーフレット(840KB)