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南信州広域連合 飯田下伊那診療情報連携システム(ism- Link)様

拡大する全国統一クラウド型地域医療連携サービスID-Linkとクラウド型電子お薬手帳の連携
1市3町10村の広域連合を事業主体に多職種連携の地域社会インフラとして活用

業種:
  • 医療・ヘルスケア
業務:
  • その他業務
製品:
  • その他
ソリューション・サービス:
  • クラウド
  • 働き方改革

事例の概要

課題背景

  • 中核病院5施設を中心に運用を開始した「飯田下伊那診療情報連携システム(ism-Link)」だが、システム更新を迎え持続的な運営を実現するための運営形態を模索
  • 在宅医療・介護連携推進事業の体制整備に伴い、診療情報連携の仕組みに加えて地域包括ケア実現を支援する医療・介護情報連携への対応が求められた
  • 高齢患者の残薬問題、ポリファーマシー対策が求められる中で、既存の「お薬手帳」では一元的な服薬管理が困難。保険薬局主体の調剤情報共有の仕組みが求められた

成果

広域連合に事業主体を移管し、地域社会インフラとして新たにスタート

1市3町10村で構成する広域連合が事業主体となり、行政と医師会が維持費用などを分担することで持続的な運営への道筋をつけた。地域の社会インフラとして成長させる可能性を見出した

ID-Linkのノート機能の活用で多職種連携支援を実現

在宅医療・介護連携にノート機能を利用することで、特化したシステム導入をすることなく多職種コミュニケーションを実現。多職種によるケアの質を向上

クラウド型電子お薬手帳とID-Linkの連携で調剤情報を一元管理

保険薬局向けクラウドサービスとID-Linkを連携することにより、ID-Link上で各薬局が提供する調剤情報の一元的な参照が可能となり、薬局薬剤師の服薬管理を容易にした。また、独自システムの構築と比較して初期投資5,000万円が不要となり、ランニングコストを6分の1圧縮することができた

導入ソリューション

飯田下伊那地域では診療情報連携システムとして、ID-Linkを採用した「飯田下伊那診療情報連携システム(ism- Link)」が2011年から本格運用を開始。2016年のシステム更新を機に1市3町10村で組織する南信州広域連合に事業主体を移管、地域包括ケア時代に即した医療・介護の多職種間情報連携に重点を置いてシステム構成を一新しました。2018年には薬剤師会が主体となり、ID-Link上で薬局からアップロードされた調剤情報を一元管理できる仕組みとして、ファルモクラウドID-Link連携サービスを導入しました。

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事例の詳細

導入前の背景や課題

南信州広域連合
事務局次長
松江良文氏

診療情報連携システムの持続的な自立運営へ

長野県の飯田下伊那地域は、飯田市を中心とした1市3町10村からなる二次医療圏を形成しています。医療圏の括りが明確で商業圏も生活圏も同地域で完結している地域。患者の医療圏外への流出・流入も非常に少なく、一部の診療科を除いて二次医療圏内で機能分化が比較的できている地域ともいえます。しかしながら医療資源は限られ、市部周辺と郡部で大きく異なっており、機能分化も医療機関関係者の長年の取り組みによって出来上がってきたものです。その取り組みの一つとして「飯田下伊那診療情報連携システム」(ism-Link)による医療連携があります。

ism-Linkのスタートは、2009年に飯田市立病院が事務局を担当し、5病院による診療情報連携を行うためにID-Linkを導入したときに遡ります。多くの地域医療連携ネットワーク同様に、当時の地域医療再生基金を活用し、それぞれの病院の負担でシステムを構築。ID-Linkサービス利用料を含む運用費も5病院で分担していました。2011年9月の本格稼働後、参加施設・登録患者数とも徐々に増えてきましたが、2016年のシステム更新を前に更新・運用費用をどう賄うかが大きな課題となっていました。

また、2015年度に介護保険の新たな支援事業である「在宅医療・介護連携推進事業」の取り組みが開始され、2018年4月までにすべての市区町村で事業推進体制を整備することが義務付けられました。下伊那地区の自治体規模は小さく、各町村で事業推進体制を構築することは困難な状況だったといいます。また、同推進事業ではICTを活用して医療・介護関係者の情報共有支援という事業項目もあり、ism-Linkを病診情報連携システムから地域包括ケアを支援する医療・介護情報共有システムとして活用する必要性にも迫られていました。

こうした課題を解決するため飯田下伊那地域では、ism-Linkの運営および在宅医療・介護連携推進事業を1市3町10村の広域連合で推進する道を選択しました。「システム更新に際し、新たなシステム構築を地域医療介護総合確保基金で賄うことを想定しましたが、その申請には広域連合のような行政体が主体であることが条件でした。加えて病診連携だけでなく、地域包括ケアシステムを組み込んで医療・介護の質を上げていこうという考え、圏域の社会システムとして運用を支援していくこととしました」。運営主体である南信州広域連合 事務局次長の松江良文氏は、ism-Linkの事業主体移管の経緯をこう説明します。

飯田下伊那薬剤師会会長
つばさ薬局管理薬剤師
熊谷均氏

医薬連携強化へ調剤情報の一元管理

飯田下伊那薬剤師会では、住民の高齢化や独居世帯の増加、老老介護といった地域生活環境の中で、服薬管理が困難になりつつある課題を抱えていました。患者自ら薬の管理ができずに残薬問題が拡大すること、複数の医療機関を受診することによるポリファーマシーも大きな課題です。かかりつけ薬剤師・薬局が服薬管理を一元的に担うことが期待されていますが、そのための重要なツールであるお薬手帳が十分に機能していないことが管理を一層困難にしているといいます。「お薬手帳の意義を理解されておらず、忘れて来局する患者もおり、発行した調剤情報シールを手帳に貼り忘れる。あるいは、医療機関ごとに何冊もお薬手帳を使い分けている患者も少なくありません」。飯田下伊那薬剤師会会長、つばさ薬局管理薬剤師の熊谷均氏は服薬管理の課題をこう指摘し、お薬手帳に依らない調剤情報の一元管理を検討していたといいます。また、一般名処方など後発品転換が進展してきたことから、実際に調剤された後発品が何か把握したいという要望が医師会から上がっていたこともあり、調剤情報の一元管理・共有の仕組みが必要だとも指摘します。

選択のポイント

飯田市医師会 在宅医療
介護保険担当理事
後藤医院院長
後藤暁氏

ID-Linkのノート機能を医介連携に活用

2016年4月のシステム更新を機にism-Linkでは、情報公開病院が設置する情報公開用サーバの維持・システム更新などに掛かる事業費の圧縮や運用負担を軽減するため、情報公開病院のサーバを遠隔地のデータセンターに集約、プライベートクラウド化するなどシステム構成を一新しました。また、ID-Linkを継続利用した背景には、情報公開病院が導入しているさまざまなベンダーの電子カルテシステムと連携できることがポイントでした。

また、在宅医療・介護連携推進事業における医療・介護情報の共有支援では、ID-Linkのノート機能を利用することにより多職種間のコミュニケーションツールとして活用することとしました。その経緯を飯田市医師会 在宅医療・介護保険担当理事、後藤医院院長の後藤暁氏は、次のように述べています。

「在宅医療・介護連携でもID-Linkを活用している先進地域の先生の講演を聞き、私自身も訪問看護師やケアマネージャーとの連携に使ってみたところ、ノート機能で十分コミュニケーションできることを確信しました。在宅医療・多職種連携に特化したシステムも検討はしましたが、これまでも病院医師が在宅医や訪問看護師の入力したノートを頻繁に閲覧している実績があり、同じism-Link上で利用できる方が使いやすいと考えました」

クラウド連携で実現した調剤情報共有

一方、調剤情報共有システムについては、当初、総務省が公募した2016年度の「クラウド型EHR高度化事業」に応募し、各薬局のレセコンからアップロード用PCを介してデータセンターのサーバに調剤情報を集積。ism-Linkと連携する仕組みを検討していました。「構想したシステムの構築には約8000万円の投資が必要でした。採択されれば補助額で賄える費用でしたが、将来の更新費用も負担になることが予想されましたし、もっと低コストで実現できる方法があると聞き、その仕組みを採用することになりました」(熊谷会長)。

それが、ID-Linkのクラウドと電子お薬手帳のクラウドを連携する「ファルモクラウドID-Link連携サービス」による調剤情報共有でした。薬局レセコンから調剤情報が自動的に電子お薬手帳のクラウドにアップされ、同意取得している患者の調剤情報のみをID-Linkに自動送信される仕組みです。ID-Linkで複数の薬局の調剤情報を検査結果や医用画像などの診療情報と合わせて一元的に管理できるようになります。「当初検討したシステムで必要だったアップロード用PCも導入する必要がなく、非常に低コストで実現できました」(熊谷会長)と述べています。

導入後の成果

地域包括ケアの支援として機能

ism-Linkの2018年11月末現在の患者登録数は約2万4000人で、圏域人口の約15%まで達しています。参加施設数は同225施設となっており、病院は全10施設が参加し、2017年4-9月と2018年9月に飛躍的な伸びを見せました。「2017年には在宅医療・介護連携推進事業の整備が進展し、全13事業所の訪問看護ステーションと行政を含む介護関係事業所の52施設が参加しました。また、2018年秋には電子お薬手帳を利用した調剤情報共有が始まり。全63保険薬局のうち、59施設が一気に参加した結果です」(松江氏)とし、2つの事業開始が拡大のきっかけとなりました。

在宅医療の多職種連携でism-Linkを毎日利用している後藤理事は、訪問看護ステーションの看護師、居宅介護支援事業所のケアマネージャーとのコミュニケーションが密になったといいます。「在宅患者の容体や療養状況を細かくノートに書いてくれるため、訪問診療しない日の様子も日々知ることができます。特に終末期の患者の容体変化が迅速に把握でき、対応しやすくなりました」(後藤理事)。また、ケアマネージャーもチームスタッフ同士のやり取りを頻繁に閲覧しており、ケアプラン変更の反映にも役立っているといえます。

ノート機能は、かかりつけ医と専門医とのコミュニケーションにも活用されており、患者の治療について病院専門医にコンサルトしやすくなったと指摘。「専門的な知見を得ることで、自信を持って在宅医療を行うことができるようになりました」(後藤理事)と話しています。在宅医療チームの患者に関するやり取りは、在宅療養後方支援病院の医師や医療ソーシャルワーカーなども閲覧しており、在宅患者の病状悪化を随時把握でき、そろそろ入院してくる可能性があることを事前に察知できるとの声もあります。「限られた医療資源の中で、患者を中心に関係者が協働しながら効果的なケアしていく環境ができつつあります」(後藤理事)とし、ism-Linkが地域包括ケアシステム実現に寄与していると述べています。

重複処方回避、ポリファーマシー対策へ

調剤情報の共有が実現されたことに関して後藤理事は、お薬手帳を持参しない患者や複数冊を使い分けている患者などの服薬状況を正確に知ることができるようになったといいます。「薬の情報は医療情報の中でも非常に重要な情報です。私たち医師は処方された薬の種類を見れば、何の病気で、どのような治療を受けているか、どんな症状なのか推測することができます。一般名で処方することも多くなったため、調剤情報を共有できることは、とても大切です。ポリファーマシー対策という観点で言えば、減薬する場合に薬剤師と一元化された調剤情報を基に、薬剤師とノート機能でコミュニケーションを取ることもでき、医師に対して意見を言いにくい状況を回避できるのではないでしょうか」と話しています。

薬局薬剤師にとっても、お薬手帳を持参しない患者であってもism-Linkを参照することによって、他の薬局で調剤された薬剤も一元的な服薬管理が可能になり、業務がしやすくなったといいます。「調剤情報の一元化はお薬手帳以上に信頼性が高いので、適正な薬物治療につながり、患者にもメリットが出てくると考えています」(熊谷会長)とも述べています。また、残薬問題やポリファーマシー問題は、高齢・独居化が進む同地域にとっても大きな課題。「調剤情報の一元管理は、こうした問題の改善に役立つと確信しています。ひいては医療費削減により、市町村における国民健康保険の運営負担の削減にも貢献できればと考えています」と熊谷会長は強調しています。

社会システムとして整備・運営へ

こうした新たな事業を展開できたのは、南信州広域連合が事業主体となってism-Linkの持続的な運営体制を作り上げたことです。新たなシステム構築に地域医療介護総合確保基金を活用したものの、データセンター維持管理費を広域連合が負担し、ID-Link利用料は広域連合、飯田市、飯田医師会の3者が分担することとしました。「できるだけ各病院の負担を軽減し、医師会として主体的に関与していく方向に変更したものです」(松江氏)。

そして、広域連合という行政機関の社会システムとして運営するということは、地域住民の税金が投入されることです。「地域の社会インフラとして整備していくためには、地域住民はもちろん、1市3町10村の首長にもism-Linkの価値を理解していただく必要があります。有効性を理解してもらい価値を共有しなければ、共同運営はできないからです」と松江氏は指摘しています。

ism-Linkの価値をステークホルダーに理解してもらうためには検証作業が不可欠だとし、2016年度の更新を機に毎年、ism-Linkの利活用の実態を検証して年度末に報告書としてまとめることを決定したといいます。実際の検証作業・報告書作成は南信州在宅医療・介護連携推進協議会の飯田下伊那診療情報連携システム運営小委員会が実施し、広域連合に報告するものです。2016年度の検証作業では、医師・訪問看護師を対象として利用実績・利活用アンケートおよびアクセスログの集計と解析を実施、2017年度も引き続きアクセスログの集計と解析を行いました。「こうした利活用の結果を積み上げ、地域の医療・介護連携に不可欠なインフラであると判断されるような仕組みにしなければなりません。2021年3月のシステム更新では、こうした実績を基にism-Linkの有効性を立証し、持続的運営に向けた方向性を打ち出していきたいと思っています」と松江氏は述べています。

  • ID-Linkは、株式会社エスイーシーの登録商標です。
  • ファルモクラウドID-Link連携サービスは株式会社ファルモのサービスです。

お客様プロフィール

南信州広域連合 飯田下伊那診療情報連携システム(ism- Link)

所在地 長野県飯田市追手町2-678 長野県飯田合同庁舎
代表者 牧野光夫朗氏
URL new windowhttps://ism-link.minami.nagano.jp/

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(2019年1月18日)

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