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サプライチェーン改革による経営効果の創出とは?

サプライチェーン改革による
経営効果の創出とは?

ものづくり共創Webセミナーレポート

2021.04.14

サプライチェーンSCM改革
多様化するお客様ニーズに応えるために、マス・カスタマイゼーションに対応したものづくりが求められています。NECは、ものづくり革新のノウハウとデジタル技術を融合し、お客様でのサプライチェーン全体のスループット向上を実現するためのご支援をしております。そこで、収益力向上を意識したサプライチェーン改革の考え方、取り組みポイントを、2部にわたって事例を交えてご紹介いたしました。

講演に先立ち、200名を超える参加者の地域と所属部門についてその場でアンケートを実施。関東地区が過半数でしたが、海外含め他地域からもお集まりいただきました。所属部門も、生産技術や生産管理をはじめ、情報システムも含めて多様な部門の方にご参加いただきました。

講演① 収益向上を意識したサプライチェーン改革の考え方

(講師:NEC サプライチェーン統括本部 シニアエキスパート 松井聡志)

第1部として、収益向上を意識したサプライチェーン改革の考え方について「いかに早く収益に繋げるか」という視点に絞って解説しました。

収益性を最大化するための適性在庫設計

NEC サプライチェーン統括本部 シニアエキスパート 松井聡志

従来は”利益や売上の最大化”を求めていましたが、昨今は“収益性の最大化”、そして“収益性最大化を支える適正在庫の実現”に向けた大きな「経営のパラダイムシフト」が起きています。かつての“拡大市場追随型経営”では、“顧客要求に対して切らさない”が在庫基準の基本でした。しかし収益性を最大にするには、“収益性を最大化する適性在庫”を設計することが求められます。
この改革には部分最適からの脱却、つまり工場が生産性だけを追求することをやめ、サプライチェーンの全体最適に向けたサプライチェーンの構造改革とそれを支える“交差比率”等の新たなKPI策定が必要となります。

在庫の収益性を判断するには「在庫からどれだけ利益を上げているか」を示す“交差比率”(粗利益率×商品回転率)が判り易いです。この指標は従来流通業で使われてきましたが、現在製造業でも自社製品に交差比率を設定する動きが活性化しています。交差比率を製品群毎に設定することは、想定回転率を設定することになります。したがって、収益向上を意識したサプライチェーン改革では、サプライチェーン上の品目群毎の総在庫量に設定値、若しくは上限値を設けることになります。そしてこの活動は最も儲けを稼ぎ出すべき「主力品(A品)」から行うべきで、実際にはA品の小ロット/多頻度での生産と運搬による回転率の向上活動となります。

この在庫適正化を目指した改革は、倉庫代や物流費用に費やされるサプライチェーンコストの削減にという即効性の高い効果に繋がり、直接利益率の向上をもたらしてくれます。システム的にサプライチェーンを可視化するには、この様な期待収益性を前提とした適正在庫の設定に基づく「在庫と物流コストの可視化」を図ることが有効です。

失敗の積み重ねから学んだNECのSCM改革

ここで、20年以上に亘るNEC自身のSCM改革例をご紹介します。当時のNECでは、まとめて造れば原価が下がる、まとめて買えば安くなると信じて多くの在庫を抱えました。そこで、従来の計画生産(Push)方式から、Pull型生産方式に改めました。狙いはサプライチェーン全体の在庫削減とリードタイムの短縮です。
改革の最初に工程間・工場間における運搬(運ぶ)や保管(貯める)をリードタイムの時間の置換え、大きな課題の発生ポイントを探し出しました。この滞留状況をITで見える化し、原因分析や改善を図ることで全体スループットの向上を実現しました。サプライヤー/購買・工場/生産・営業/出荷を俯瞰し一連結でサプライチェーン全体を「市場ニーズに敏感に反応する一つのシステム」として作り込み、自律的に動く仕組み・仕掛けに落とし込みました。NECはこれらの知見と改革力を活用いただいて最終的にお客様に“スリムなサプライチェーン”を実現していただく改革をご支援してまいります。

講演② New Normal社会におけるスマートファクトリー最前線
~変化に強いものづくりを実現するために~

(講師:NEC スマートインダストリー本部 技術主幹 北野芳直)

NEC スマートインダストリー本部 技術主幹 北野芳直

第2部は、New Normal社会におけるスマートファクトリーの姿についてお話ししました。
“ポスト・コロナ”のNew Normal社会では、
①3密を避けながらの作業など工場の働き方が変わる
②サプライチェーンがスムーズに繋がらない
③製品需要変動が激しい
④新たなビジネスチャンスへの対応
といった4つの課題が挙げられます。

こうした課題に対し、NECが考えるスマートファクトリーでは、IoTを用いてサプライチェーンやエンジニアリングチェーンからデータを収集・蓄積し、生産現場の「見える化」→「分析」→「対処」、というQCD改善サイクルを高速に回し、次の2つの要素を備えたスマートファクトリーづくりを推進しています。
①過去・現在のデータから生産性や変動対応力が高い未来のものづくりを迅速に創り出すしくみ
②人が活き活きと働ける環境を創り出すしくみ

スマートファクトリー実現に不可欠な要素

工場内のスマート化にはステップがあり、まずはデジタルデータ活用によるQCD改善の高速化・自律化からです。
自律化とは、IoTを活用して現場データを自動的に収集し、KPIに照らして問題点を見つけ、その原因をAIと人で高度に分析し、必要な対処を行うという改善サイクルを自律的に行うことです。
デジタルデータ活用による自律改善は、生産性向上や原価低減をもたらし、会社の収益改善に繋げることができます。NECグループ全体では、生産性の50%向上を実現させることができました(2014年度比)。
次のステップでライン自働化や自律制御に進み、最後に製造間接業務の自働化・リモート化を実現します。
さらに、バリューチェーン全体をデータで繋げることにより、在庫やトレーサビリティの見える化・最適化を行い、バリューチェーンのスマート化を図ることができます。


本講演の内容は前回記事『New Normal社会におけるNECが考えるスマートファクトリー』の中でも詳しく説明しておりますので、是非ご参照ください

第3部 参加者へのアンケート

講演終了後、第3部としてモデレーターを交えて、「New Normal社会における主要4課題の関心事」「DX推進の課題」について投票機能を使いアンケートを実施しました。

働き方変革への対応は落ち着いた一方でコロナ禍などでの変化に強いものづくりが求められていることが分かりました。またデータ分析などの新たなスキルが求められている中、人材不足や人材育成が悩みであるとの回答を多くいただきました。人材育成は産業界全体に共通している問題といえます。

DX推進においては、①ビジョンを明確にすること、②トップがDXの価値を理解すること、③DXを理解し推進するリーダーを立て、チームビルディングをしっかり行うことの3点が重要とお話しし、本セミナーをまとめました。

ものづくり研究グループでは、今後もセミナーはじめ、会員同士でディスカッションを行う分科会なども準備していますので、楽しみにしていてください。

NEC ものづくり共創プログラム

【関連リンク】

NEC ものづくり共創プログラム

「NEC ものづくり共創プログラム」は、生産革新やグローバルサプライチェーン改革推進に必要なノウハウやアセットを4つのコンセプトで提供しています。NECはお客様と同じ「ものづくり企業」として、お客様の改革推進に向けた活動を強力に支援します。

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