社長メッセージ
持続可能な発展に向けて
NECは、NECグループの経営活動の仕組みを体系化した「NEC Way」の実践をとおして、社会とNECグループの持続可能な発展を追求しています。
企業理念に基づき、「NECグループビジョン2017」に掲げる「人と地球にやさしい情報社会」を実現するためには、企業は社会に生かされている存在であるという認識のもと、従業員一人ひとりが日々の業務の中でコンプライアンスを徹底し、高い倫理観を持って「NECグループバリュー」を実践して、お客さま・社会の課題解決に貢献していくことが重要だと考えています。また、当社の取り組みの成果と課題を積極的にステークホルダーのみなさまに開示し、説明責任を果たしていくことも重要です。6月にはコーポレートガバナンス・コードが適用されましたが、当社は今後も引き続き、実効性の高いコーポレート・ガバナンスの実現を目指し、対話を重視した取り組みの強化をはかっていきます。さらに、ステークホルダーのみなさまとの対話をとおして企業活動を改善し、信頼関係を構築することも重要であると考えています。
グローバル企業としてこれらの考えを実践するため、当社は2005年に署名した国連グローバル・コンパクトの枠組みに基づき「人権」「労働」「環境」「腐敗防止」に関わる10原則を遵守した企業活動を行っています。また、本年9月に国連で採択される「ポスト2015開発アジェンダ」などに代表される国際的な枠組みに積極的に参画し、社会ソリューション事業によって社会課題の解決に努めていきます。
当社がこうした社会課題の解決に取り組むにあたっては、イノベーションが非常に重要な意味を持ちます。イノベーションの創出には、多様な人材がその個性や特性の違いを最大限に活かし、多様なアイデア・意見を提案できる企業文化が大切です。イノベーションを促進し、社会価値の向上を担うことのできるグローバルリーダーの育成・輩出に努めていきます。
ICT(情報通信技術)を通じた価値創造
当社は「2015中期経営計画」において社会価値創造型企業への変革を宣言し、社会ソリューション事業をとおして、「安全」「安心」「効率」「公平」という価値の提供に努めています。

2015年3月期(当年度)は、資源・環境問題、新興国の成長など、世界のメガトレンドから導き出した社会課題に対し、その解決に当社が貢献できる領域として、社会価値創造における7つのテーマを策定しました。これらのテーマは、当社が今後の成長に向けて取り組む領域を明確にして、社会ソリューション事業をより具体的なものにするために策定したものです。
当社が社会ソリューション事業をとおして提供する「安全」「安心」「効率」「公平」という価値は、ICTによって実現されます。これらは、コンピューティング能力の進展、データサイエンスの進化、ネットワーキングの高度化によって実現されるものですが、ここで重要となるのが、「リアルタイム」「ダイナミック」「リモート」という3つのキーワードです。いずれも当社がこれまでに培ってきた技術やノウハウに根差した強みであり、ICTによって「安全」「安心」「効率」「公平」という観点で価値を創り上げていく際の、重要な価値の源泉となるものです。
例えばビッグデータ活用の場面では、大量の情報をリアルタイムに処理・分析して、内容理解とそれに基づく予測を行い、お客さまに提供するソリューションをダイナミックに創り上げ、それをサービスとしてリモートで提供する、という形でICTを活用した新しいサービスが創り出されていきます。その中で、リアルタイム性、ダイナミック性、リモート性の観点で価値を追求することが、結果としてより高度な「安全」「安心」「効率」「公平」につながっていくと考えています。
当社は、分析エンジンや世界一の精度を有する顔認証技術をはじめ、ビッグデータ、SDN、クラウド基盤、セーフティなどの領域で、独自のアセットを数多く保有しています。ICTによってこれらのアセットと個々のインフラを有機的に結合し、新しい価値を持ったインフラの構築に貢献していきます。
企業価値の最大化に向けて
2013年4月に発表した「2015中期経営計画」では、それぞれ、初年度を「準備の年」、2年目を「実績の年」、3年目を「成長の年」と位置づけました。3ヵ年計画の最終年度である2016年3月期(次年度)は、「成長の年」として、次年度以降への持続性のある成長の実現、および収益性改善への取り組みに注力します。
加えて、当社が長期的に企業価値を高めていくためには、企業文化の変革も必要となります。当社には歴史的に、SIビジネスに代表されるような、オーダーメイドでお客さまに優れた価値を提供する文化が根付いています。しかし、当社がグローバルで競争力を持ち、事業を拡大していくためには、より多くのお客さまのニーズを理解したうえで、その中から一つの共通プラットフォームを創り上げ、それを複数のお客さまに展開していくことが必要となります。これを実現して、新しい文化として根付かせていくためのビジネスモデルの確立にも取り組んでいきます。
さらに当社は、中長期を見据えた取り組みとして、公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会とパートナー契約を締結し、「東京2020ゴールドパートナー」となりました。東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会は、日本がさらなる成熟社会へと転換する機会であると同時に、当社にとっても自らの社会価値創造型企業への変革を加速し、「パブリックセーフティ先進製品」と「ネットワーク製品」の分野を中心に社会課題を解決するレガシー*を創出する機会になると考えています。
当社は、顔認証技術をはじめとした生体認証や、世界に先駆け対応製品を発売したSDN(Software-Defined Networking)を活用した製品を、多くのお客さまに提供してきています。これらの提供実績・ノウハウを活かし、多様なパートナーと連携して2020年に向けた社会インフラ整備などのレガシー構築に注力し、ICTで社会インフラを高度化する社会ソリューション事業の展開を加速していきます。
当社は社会価値創造型企業として、「安全」「安心」「効率」「公平」といった価値をグローバルに提供するとともに自らの成長へとつなげ、グループビジョンの実現、さらにはその先にある社会とNECグループの持続可能な発展に向け、新たな価値を創出し続けていきます。
引き続き、みなさまのご理解とご支援を賜りますよう、よろしくお願い申しあげます。
2015年6月
代表取締役 執行役員社長
- *レガシー:
オリンピック・パラリンピック開催を契機に開催都市や開催国において創出されるスポーツ・社会(文化、教育)・環境・都市・経済の各分野での有形・無形の資産