グループ企業の人事

第三回 人事給与コラム

現在の日本において、グループ内の人材をどのように把握し活かすのか?というテーマは、各企業グループの大きな課題の一つではないでしょうか。グループ内に属する企業の数や業種が多いほど、各企業がもつ悩みや課題の数も増え多様になり、グループ内で人材を共有すると言ってもそれはかなりハードルが高いことだというのが簡単にわかります。

実際に現場で様々な企業のお悩み相談を受けていますと、日本の企業において自社内の人材情報についても、まだまだ上手く活用できていない企業が多いと感じることが多々あります。いわゆるタレントマネジメントという点に関して、そもそもタレントマネジメントの定義も各社によって異なっており、多くの企業が最近になってやっと自社内のタレントマネジメントについて検討し始めてきたというのが現場の感覚です。

自社の人材タレントマネジメントをどんな目的で行い、どこを目指し、どんな情報を集約させ、どんな人材を育てて行くのか、人材戦略そのものがまだまだこれからという企業が多く、人材戦略をどう経営戦略と連動させるのか?と将来に向けた課題への取り組みを検討始めたばかりだと言えます。

しかしながら、人材タレントマネジメントの導入期であるからこそ、チャンスでもあると考えられます。既に完成された人材タレントマネジメントや仕組みを持つ企業は少なく、現在手探りで模索している企業が多いため、これからグループ全体を通じて人材戦略や人事を共有することを前提とした仕組みづくりを行うことは今まさにタイムリーと言えます。

グループ企業において各社がバラバラで自社のことだけを管理するのではなく、企業グループ内で人材情報を共有し、グループ人材戦略を理解し、単なる人材交流ではなく、それぞれの人材の能力を引き延ばす機会を作り、企業グループ全体を通じてのキャリアパス形成など人材育成の幅を広げることで今後のグループ発展の一助に繋がります。

グループ企業のタレントマネジメント

グループ企業の人材タレントマネジメントを考えた際、現在の多くのグループが抱える基本的な課題は、グループ内各社が持つ人材情報の共有だと言えるでしょう。

グループ企業全体で成長していくためには、共有すべき情報項目を明確に定め共有していくことが重要であり、グループ全体で同じ管理共有するためのシステムが必要ということになります。グループ企業内の各社が自社の人材情報をバラバラのシステムにより管理運用を行っていては、グループ内での情報の集約はとても難しくなります。

それを防ぐためには、グループ共通して利用するシステムを統一することが必須となります。単に同じシステムを使うということだけではなく、人材情報、人事制度、評価、人材育成、給与などグループ全体を通して同じ仕組みで運用することが重要だと考えます。また同時に、グループ内には様々な企業が存在しますので、共有すべき項目以外においては、各企業のシステム内における設定や項目の自由度も許容できるといったことも必須になります。

同じシステムと共通の制度や運用方法で人材情報の見える化を進め、適切なタイミングで必要な情報を用いてグループ全体の施策を検討することで、新たなグループ人材戦略を打ち立てていくことが求められます。

グループ間の人材活用を見出す

グループ企業と一口に言ってもその体制や性質は異なっています。親会社からの統制や制約が厳しい場合もあれば、親会社が子会社へ殆ど関与しない自由な企業グループもあります。

人材育成の観点では、親会社と子会社では人材育成へ注力する予算、人材育成の部署や担当の有無などの違いや、個々の人材に様々な経験を積み成長させる機会の数も大きく異なります。またグループ企業内においては、人材育成は各社がバラバラに行っていることが多く、積極的に人材育成に取り組む企業もあれば、まったく注力していない企業もあるといったことも見られ、グループが大きいほどそのばらつきも大きくなると感じます。

これからグループ企業に求められることは、いかにグループ内の人材を有効活用させていくか、いかにグループ全体で人材を育成していくのか、各社が共に連携しあって検討していくことです。一企業内だけでの育成を考えるのではなく、グループ全体の大きな視野で人材育成することを可能にする為に、各社の人事が、または新たに専門の担当者を設置することで、積極的にグループ人材戦略を共有、理解し、グループ内の連動性を高めることも重要だと考えられます。

親会社から子会社へ出向させる一方通行だけでなく、子会社から親会社やグループ内の各企業へといった柔軟な人材の異動を可能にする仕組みづくりも同じく重要なポイントです。それはグループ内の様々な企業を通じて経験を積み、多くのことを学ぶことで、個々の能力を引き延ばし、有能な人材を増やしていくことになります。

またグループ企業内での柔軟な人材の異動は、相互コミュニケーションを活発化させ、それらの相乗効果によりイノベーションをもたらす人材を多く生み出す土壌を醸成させます。それらは現在のVUCAを乗り越え、新たな企業発展を目指す多くの企業が目指すべき場所ではないでしょうか。

筆者プロフィール

社会保険労務士
穂積 完聡氏

貿易商社、一部上場企業のグループ中小企業の製造メーカーで海外および国内営業に10数年間勤務。会社とは?従業員とは?を考え、多くの企業の一助になりたいと思い社会保険労務士として2013年開業。2019年に社会保険労務士法人ティムス代表就任。中小企業から上場企業まで広く対応し、労務相談、手続きや給与計算のBPO、これからの新時代に向けた人事制度構築や人材育成、ニーズ高まる組織開発を中心に人的資本投資へのコンサルティング等幅広く対応。

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