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2016年に新設されたシニアデータアナリストの初代認定者としてNECのAI事業を牽引し、
機械学習を中心とした幅広い知見と30社を超える豊富な実績をもとに
様々な業界のAI実用化を手掛ける本橋洋介氏。
DX Innovators 100の一員としても活躍するNECのAI先駆者に、
DX文脈におけるAIの在り方や今後の可能性、AI導入時に重要視している点などについてお聞きした。

本橋 洋介 Yosuke Motohashi

AI・アナリティクス事業部 兼
データサイエンス研究所
シニアデータアナリスト

人工知能・知識科学・機械学習・データマイニング技術と分析ソリューションを中心に、幅広いAI技術の実問題適用の専門家として30社以上の実績あり。流通・金融・製造・メディア・エネルギー・交通・観光などほぼすべての業界向けのAI適用コンサルティングと分析を実施。DX Innovators 100のAI先駆者として、企業トップ層へのAIロードマップ策定のコンサルティングや社内外でのAI啓蒙活動に注力。

本橋 洋介 インタビューの様子

# AIの道を志したきっかけ

「テクノロジーで
人と人との繋がりを醸成したい」
感情解析の研究が
AIの道を志したきっかけ。

私がAIの仕事を志したきっかけは、大学院の研究として取り組んでいた「感情解析」でした。独居老人と息子夫婦家庭などの「離れている家庭同士の繋がり感をどうやって醸成するか」というテーマのもと、うれしさ、楽しさ、悲しさなどの感情要素を、声や環境音などの音声データや、心拍や脈拍などの生体データから推定するという研究のなかで、「テクノロジーの力で人と人との繋がりを醸成する」ことをライフワークにしたいと感じるようになりました。
例えば、「この人がこの表情だったらちょっと機嫌が悪いのではないか?」という推測は、初対面だとわかりませんが、10回会うと10回目には少しわかってきたりしますよね。基本的にはAIもそれと同じで、曖昧なものでも沢山経験させてあげると少しずつピントが合ってくるんです。はじめはなかなか当たらないのですが、AIのこの「当てっこゲーム」みたいなところが、純粋に面白かったんです。

# AI実装が成功しやすいケース

プロフェッショナルが増えると
価値があるもの。
はじめから完璧を求め過ぎない
高い視座。

「DXにおけるAIの本質とは何なのか?」を紐解くと、データドリブンで人の仕事を楽にしたり、もっと良くしていったりすることだと思います。例えば、コンビニエンスストアには、オペレーションや接客が上手で、売上を伸ばす能力も高い「スーパー店長さん」という方がいらっしゃいます。店長職の方は世の中に何十万人といますので、「AIで店長全員がスーパー店長になること」は、サービス向上や売上向上の観点から見てもとても意味があることですよね。
AI実装を成功させるための重要なポイントは、プロフェッショナルがいること。そしてそのプロフェッショナルが沢山いたら世の中が良くなること。私の経験上、この両方が満たされていることが非常に大切だと考えています。
そして、「はじめから完璧を求めない」ということも重要です。AIだからといって、いきなりスーパーマンのような凄いものができるわけではないので、人間を育てるのと同じ感覚で向き合えるかどうかが意外と重要です。例えば自分の息子をAIとして考えたときに、大人になって成長したら「息子に頼ってみようかな」と思えるときが出てきますよね。でも、自分のほうがまだ優れていると思える領域のことは、頼らず自分でやる。過度には期待しすぎないけれど、ちゃんと役に立つAIになるようにクオリティにはしっかり真摯に向き合う。それくらいの関係性で向き合える方は、結果的にAIと良い伴走ができると思います。

# AI実装において大事なこと

ワンショットの開発よりも
『最新でい続けること』が
AIづくりの本質。

私がAIを社会実装するなかで一番大切にしているのは、「AIが長期的に使われるようにアップデートし続ける」ということです。ビジネスの世界だと「POC=Proof of Concept(概念実証)」といって、トライアルをしてうまくいくかどうかを確かめるプロセスを踏むことが多いのですが、このようなワンショットのAIをつくるよりも、5年、10年とずっと良いものになり続けるようにAIの品質を維持管理するほうがずっと難しい。AIを長い間維持管理したり、AIの品質を保ったりする方法論を総称して「MLOps(Machine Learning + Operations)」といいますが、私はまさにその分野で様々な取り組みを行ってきました。例えば、実際に15年くらい動き続けているAIのシステムがあるのですが、この15年間にはリーマンショックがありましたし、COVID-19の流行も現状続いていますし、世の中にアジャストし続けていくためにはAIに色々な新しいことを勉強させ続けていく必要があるんですね。15年前と今ではテクノロジーの潮流も違いますので、最新のツールやアルゴリズムに差し替えてアップデートしていくのは極めて重要。持続可能であることこそがAIづくりの真髄であり、一番大事なことではないかと思いながら、日々仕事をしています。

# AI人財に求められるもの

数字やデータと向き合う前に、
お客様のビジネスと
深く広く向き合う。

AIを実装して成功させるには、「お客様の業界や業務に詳しくなければ上手くいかない」と私は信じています。私は普段から、AIの勉強と同じくらいの時間をかけて、各業界の仕事とはどういうものかを研究するようにしています。例えば、お寿司屋さんの仕事をさせていただくなら、寿司の握り方を解説した本などを買って職人の技術について勉強しますし、農業の仕事なら営農方法に関する雑誌や新聞を購読して勉強します。その業界で働いている方々が何を考えているのかを知ることはデータ分析においてとても大事だと考えています。データサイエンティストをはじめ、AIやDXの人財に求められることは、数学の知識ももちろん欠かせませんが、それ以上に「各業界に埋もれているデータと、それが生み出す価値に詳しいということ」だと思います。

# NECのAIの強み

AIの老舗であるNECの強みは
「目・数学・文章」。
社会創造意欲の高い人財と
世界に誇る技術力。

NECが手掛けるAIの強みは、「目・数学・文章」の3つです。人間の身体的機能のようなキーワードですが、AIは基本的に「人間をつくっている」ようなものだと私は考えています。目は「画像認識」、数学は売り上げなどの「数字を予測する技術」、文章は「文章を沢山読んで理解する技術」です。これらのAI分野の技術においてNECには長い研究開発の歴史があり、世界を代表するようなスーパー研究者と呼ばれる人たちが、日本だけではなく、北米や欧州やアジアなど世界中の研究所にいます。NECは特にAI、機械学習、そういった分野に関しては老舗中の老舗です。その長い研究の歴史に裏打ちされた、技術者魂やスーパー技術者たちの技術力。これこそが、NECのDXを語る上で最大の特長だと思っています。
DX Innovators 100のメンバーをはじめ、NECのDX人財は「お客様や社会にとって良いものをつくろう」というマインドが強い人が多いですね。そういう人たちと一緒に働いているとワクワクしますしアドレナリンが出ます。社会価値創造意欲の高い人財が多いということは、NECが社会インフラのDXを数多く手掛けていることとも関係しているのではないかと思っています。

# これからのAIの可能性

AIは「分身」を
つくるようなもの。
いつか、人間の人生を
応援するような
AIをつくりたい。

AI開発とは、「分身をつくる」ようなものなのかなと考えています。エンドユーザーから見れば、接客してくれる人やサービスを提供してくれる人が、とてもハイクオリティで素晴らしい人だったら、それがAIという分身でも構わないのではないかと。
私が生涯でつくってみたいと思ってるAIは2つあって、1つ目は「自分の人生を全部覚えているAI」です。見たものはカメラ、聞いたものはマイクで残せますし、デバイスが発達したら「その人の人生そのものが入った分身」をつくれる気がしています。人という生き物は、忘れたり老化したり、色々と肉体による制約がありますが、それを永続させられるのがコンピュータの良いところで、AIが進化して人間の精神的な寿命を延ばせれば、それは大変素敵なことなのではないかと思っています。
2つ目は、「AIの家」です 。私は衣食住のうち“住”、つまり家が大好きなのですが、歩く家とか、しゃべる家をぜひつくってみたいなと。家は自分や家族を一番知っている物体だと思います。そんな家がAIとして、住む人の体調管理をしてくれたり、相談に乗ってくれたり、今日のニュースはこうだったよと話しかけてくれたりしたらなんだか頼もしいですよね。
AIを「役に立つ分身」にしながらも、AIという言葉に秘められたワクワク感を忘れずに「面白い分身」にする。この2つをバランス良く意識しながら、これからもAIと向き合っていきたいと思います。