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サステナ報告、AIで900時間効率化の先にあるもの NECが当事者としてサービス化

環境問題が深刻になるのと比例するように、企業のサステナビリティ情報への注目度は増しています。2027年からは気候変動によるリスクや機会、戦略などについて、有価証券報告書での開示が義務付けられる予定です。対象となるNECも、新たな基準に対応すべく試行錯誤し、気候関連情報開示の担当者たちは、NECが強みとするAIを駆使することでこの課題に挑戦。こうして積み上げた知見によって、自社での実証を経て、サービスを他社に提供できるまでになりました。NECの「秘伝のタレ」とその先に見据える価値創造とは。

膨大な作業量「他の企業も同じ悩みを抱えている」

2025年3月、日本企業のサステナ担当者たちが注視する中、重要な基準が確定しました。それがサステナビリティ開示基準、通称SSBJ基準です。会社の利益や売上にとどまらず、環境負荷や人的資本などについても有価証券報告書への記載が義務付けられます。投資家にとって重要な判断指標となるSSBJ基準の開示は、2027年3月期から時価総額3兆円以上の大企業を皮切りにスタート。NECも対象となります。

言うは易し、行うは難し──SSBJ基準に対応するミッションに向き合ったNECのメンバーたちの率直な心境です。

NECでプロジェクトに携わった(左から)中村匡宏、武田裕輔、日高直哉、井上信也、宇野仁志、黒羽昇一

「まずSSBJ基準を読み解くだけでも膨大な労力がかかります」。開発メンバーの一人、黒羽昇一は振り返ります。「例えば『SASBスタンダードを参照』とあれば、SASBの最新版は?と芋づる式に調べものは増えます」。SSBJ基準だけでも数百頁、関連文書も合わせると読むべき文書は1300頁超。4人がかりで、他の業務もある中、読み解きに4ヵ月かかったといいます。

その先の社内外情報の収集、報告書の執筆、事実確認といった作業も難題。今回のプロジェクトのリーダーの井上信也は、社外の勉強会などに参加しながら、ある事実に気づきます。「NECだけじゃない、ほかの企業も同じ悩みを抱えている」。

ならばNECがまず課題解決してサービス化しよう。こう考えた井上たちはAI活用による業務改善を採り入れて試行錯誤を進めます。完成したサービスによって削減された業務は93%。その業務を時間に換算すると1300頁分の資料読み込みや打ち合わせ時間を含めた約900時間に相当します。

「秘伝のタレ」を駆使して「素人でも使えるAI」に

「私たちの中にはいわゆるAIのエキスパートはいませんでした」というのは、開発メンバーの日高直哉。日高、黒羽、井上ら6人は、これまで培った開発プロジェクト対応力と、徹底した使い手目線でこの取り組みをサービス化へとこぎつけました。

「既存のAIでもそれっぽい文書はつくれます。ただし、よく読むと精度が伴ってない」。この課題を乗り越えるためにつくったのが「秘伝のタレ」、SSBJ基準の要求事項についてポイントを約80項目近くに細分化したものです。秘伝のタレによってAIがつくる報告書の精度はぐっと向上。報告書作成の第一段階の「SSBJ基準判定AI」はこうして出来上がりました。

もう一つの工夫は「適材適所のAIづくり」です。人間と同様、AIも役割分担して強みを磨きます。「SSBJ基準判定AI」、自社の情報を横断的に集める「情報収集AI」、競合の情報に詳しい「他社事例参照AI」、そして報告書を作成する「執筆AI」、最後には「ファクトチェックAI」も稼働します。「秘伝のタレ」も含めた一連の仕組みについては特許を出願中。普通のAIではわからない「どこに着目すべきか」を補えるのが特長です。

井上たちは4月にメディア向けの説明会も実施

経験が浅いメンバーでも使いこなせることは社内で実証しており、2025年度有価証券報告書の一部では既に活用。2026年度にはさらに使用範囲を広げる予定です。

一報告書作成にとどまらない サステナ活動の本質へ

NECの今後の展望は、SSBJ基準対応にはとどまりません。サステナ情報の開示は多岐にわたります。その一つ、ビジネス活動と自然環境との関わりを「見える化」するTNFDレポートでは今回に先立つ2025年、AIを活用して99.7%の業務効率化につなげています。国際的な環境格付け機関であるCDPの調査回答にもAIを活用し始めています。

こうした情報開示は従来、別々のグループで別々の担当者が行うケースが目立ちましたが、その内容には重なる部分も多くありました。そうしたデータを統合するサービスをつかって、サステナ系の様々なスタイルの情報開示に対応する。この道数十年ののベテランしかできなかった経営戦略全体に貢献する働きを、経験の浅いメンバーでも効率よく達成できる。そんな包括的なサービスも視野に入れています。

「報告書作成は、あくまでプロセスの一つ」と井上はいいます。「今回のツールでプレッシャーと労力から解放された分、サステナビリティの本質的な取り組みに使うリソースを増やしたい」。目的は、NECがPurpose(存在意義)に掲げる「持続可能な社会」の実現。NECで積み上げた知見を、社内実証を経て広く社会へと提供する準備が整いました。

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