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未来を創造する「ソートリーダーシップ活動」
世界の知を結集、「共感できる構想」を発信し社会実装へ

Vol.77 No.1 BluStellar特集 BluStellarが牽引するDXの未来 ~AI・セキュリティ・データマネジメント・モダナイゼーションで拓く価値創造モデル~

NECグループは今、「共感できる未来の姿」を構想・発信し、ステークホルダーとともに社会実証・実装を進める「ソートリーダーシップ活動」を推進しています。その牽引役を担うのが、NECグループの独立シンクタンクである国際社会経済研究所(IISE)です。人工知能(AI)技術が社会に深く浸透し、人々がそれを自然に活用する「AIネイティブ社会」の出現が迫るなか、BluStellar戦略とソートリーダーシップ活動により、日本を再び世界で輝く国にしようと動いています。IISE理事長の藤沢久美に、その道筋をお聞きしました。

国際社会経済研究所(IISE)理事長
藤沢 久美

大阪市立大学(現:大阪公立大学)卒業後、国内外の投資運用会社勤務を経て、1995年に日本初の投資信託評価会社を起業。1999年、同社を世界的格付け会社スタンダード&プアーズに売却後、2000年にシンクタンク・ソフィアバンクの設立に参画し、2013年から2022年3月まで代表。2020年3月に早稲田大学大学院スポーツ科学研究科を首席で修了。2022年4月から現職。政府各省の審議委員、日本証券業協会などの公益理事といった公職に加え、トヨタ自動車、しずおかフィナンシャルグループ、メルカリなど上場企業の社外取締役なども兼務する。

素晴らしい技術があっても、1社だけでは社会課題を解決できない

──NECグループの独立シンクタンク、国際社会経済研究所(IISE)は「ソートリーダーシップ活動」を推進しています。はじめにソートリーダーシップ活動とはどういうものかを教えていただけますか。

私たちはソートリーダーシップ活動を「未来の構想をつくり、共感を生み、社会実装を行う一連の流れ」と定義しています。

「ソートリーダーシップ」という言葉は、海外では主にマーケティング領域で使われてきました。考えや思想(ソート)をビジョナリーに語り引っ張っていく人を「ソートリーダー」、ソートリーダーとともに未来をつくっていく行動を「ソートリーダーシップ」と称しています。

NECグループは、このソートリーダーシップに「活動」をつけた「ソートリーダーシップ活動」という言葉を経営戦略として推進しています。未来の構想をつくるだけでなく、実際に社会実装につなげることを目指しています。

──今、ソートリーダーシップ活動が重要なのはなぜでしょうか。

NECは優れた技術を持っていますが、そうした技術を単体で使うことはほとんどありません。技術によって社会課題を解決して市場を創造するには、未来の構想を描き、仲間とともにルールをいっしょにつくったり、使い方を考えたりすることが必要です。NECの技術を良い形で社会実装するために、ソートリーダーシップ活動は不可欠なのです。

ソートリーダーシップ活動が必要なのはNECグループに限りません。「VUCA」(Volatility(変動性)/Uncertainty(不確実性)/Complexity(複雑性)/Ambiguity(曖昧性))と言われる今は、先行きが不透明で、過去の知見や体験が通用しない時代です。信念に基づく未来像を提示し、それに共感するステークホルダーとともに社会実装へと動くソートリーダーシップ活動は、企業が持続的に成長していくうえで重要な要件です。

──ソートリーダーシップ活動は従来の経営戦略とどのような違いがあるのでしょうか。

デジタル革命が起き、特に人工知能(AI)が普及してから、技術進歩のスピードは加速度を増しこれまでの常識は通用せず、従来のように「この順番で取り組んで目標を達成する」という戦略は打てなくなっています。

また、これまでは「北極星を示す」ことが重視されてきましたが、多様性を包含する未来のゴールは1つではなく、仲間とともに未来を描く「星座」を示すことが求められています。

これまでもエコシステムを意識する必要性は説かれてきましたが、デジタル革命によって、より規模が大きく複雑性を増し、広く産官学から集まる仲間たちと柔軟に戦略を変化させながら、いかにして「星座」を構成していくかが大切です。

AIネイティブ社会をつくるには文化人類学者や哲学者の知見も必要

──社会の変化のなかでとりわけインパクトが大きいのがAIの普及です。AIネイティブ社会の到来に対して、ソートリーダーシップ活動はどのような役割を果たし得るでしょうか。

かつてインターネットが普及し始めた時代には、米国で成功したビジネスやサービス、システムを輸入すれば間違いがありませんでした。ところが、AIネイティブ社会は誰も経験したことがなく、お手本がありません。日進月歩で進化し、世界中で同時多発的にさまざまな未来の姿が生まれています。こうした状況では、ソートリーダーシップ活動が重要になります。

AIが人間を代替できるとなれば、どのようなインフラを持つべきか。AIが決定したことに従って良いのか。AIとどう付き合い、どう制御するのか。AIネイティブ社会のあり方を、倫理面も含め多角的に考えなくてはならないからです。「人間とは何か」という深い議論も必要になりますから、官僚や政治家だけでなく文化人類学者や哲学者などを交えて深みのあるソートリーダーシップ活動を展開することが求められます。

──IISEは「プラットフォーム型シンクタンク」を目指しています。どのような姿を思い描いていますか。

未来像を描く際になくてはならない議論の場を提供するのがプラットフォーム型シンクタンクの役割です。AIネイティブ社会の未来像はNECやIISEだけでは到底描けるものではありません。世界中の幅広い分野の知を集めることが重要です。

未来を議論するうえで、日本はどこよりもふさわしい国です。高度な技術があり、一定の人口を背景とした市場が存在する。そして宗教的な片寄りもありません。歴史を見ても島国という閉じられた空間で2000年にわたって天皇制を継続するなど、上手にサステナブルな仕組みを構築してきています。

日本の特異性はダボス会議など世界のさまざまな場でも注目を集めつつあります。AIで言語の壁もなくなった今、サステナブルな世界をつくるなかで強みを発揮できると思います。

「AIネイティブ社会の未来の姿」を中心テーマに議論

──現在のIISEの取り組みを聞かせてください。

2025年度には、アドバイザリーボードを活用し、実験的にNEC幹部と外部の有識者が議論する場を設けました。そこでは「AIネイティブ社会の未来の姿」「モビリティ社会の行方」「プラットフォームのあり方」という3つのテーマで討議しました。

外部から招いたのは、AIのルールづくりにかかわる政府関係者やAIガバナンスを研究する学者、AIエンジニア、科学技術系のジャーナリスト、ベンチャーキャピタリスト、医療政策を研究する専門家です。意識的に、NEC幹部がこれまで話したことがないような40代の若手有識者を中心に招聘しました。

──2026年度以降はどのような活動を行っていきますか。

より多くの議論の場を設けるつもりです。「AIネイティブ社会の未来」を中心テーマに据え、細分化して議論を深めていきます。ただちにソートになるテーマもあれば、時間を要するテーマもあると思います。

1年目は小さく始めて形をつくり、2年目である程度実装し、3年目でブランディングして「NECグループがプラットフォームをつくっている」と国内外で認知される状態に持っていく。そんなイメージを描いています。
  
AIについて突き詰めると、「知とは何か」「AIは心を持てるのか」といった問いも出てきます。こうした哲学的な議論も進めつつ、それに終始することは避けます。私たちの目的はあくまでも未来の社会をつくること。つまり市場をつくることです。事業化して利益を上げるという視点を忘れないようにしなくてはなりません。

経営者は「何を経営アジェンダにすべきか」と悩んでいる

──プラットフォームに参加した方は、そこでの議論をどのように生かせるでしょうか。

さまざまなパターンがあり得ます。ソートが見えてきた段階で自社の経営戦略を構築するというのも1つの活用方法です。議論を通じて自分の仮説を確認することもあるでしょう。事業アイデアを獲得したり、ネットワークを広げたりすることも可能です。ソートを描くうちに課題が見え、ホワイトペーパーや書籍を出して世に問うこともあるかもしれません。

経営者だけでなく、例えば官僚の方が議論のなかで「こういう法律の整備が必要」と気付き、省庁内で法律をつくるための委員会を立ち上げてくれてもいい。プラットフォームなので「何でもあり」です。

──NECは企業変革を支援する新たな価値創造モデル「BluStellar」を打ち出しています。ソートリーダーシップ活動をBluStellarとどう関連付けますか。

BluStellarはお客様が抱える経営アジェンダに対し、NECのコンサルタントが戦略策定から実装までをトータルでサポートする価値創造モデルです。ただし日本の場合、経営アジェンダを明確にとらえられていない企業も数多く存在します。

私は複数の上場企業の社外役員やアドバイザーを務めていますが、経営者はさまざまなニュースに触れ、刻々と変わる世の中で「何を経営アジェンダにすべきか」と悩んでいます。以前、ChatGPTを使って時価総額上位50社のパーパスやビジョンを分類した際には、トヨタ自動車とソニーグループを除く48社のパーパスやビジョンがわずか5つに集約されてしまいました。多くの経営者が同じ課題に悩んでいるから、似た内容に行き着いてしまうのでしょう。

IISEは、世界のさまざまな知見に触れる場を提供し、お客様が自社の真の経営アジェンダを把握して最適な戦略を考えていただく。一方NECは、議論に参画し、お客様のニーズを察知して戦略と戦術を構築し、コンサルタントから提案する。それぞれが、このような役割を担えると良いと思っています。

自らを「バージョンアップする」覚悟で臨む

──ソートリーダーシップ活動をしていくうえで、課題はありますか。

最も必要性を感じているのは、ソートリーダーシップ活動の主催者となるNECグループ社員の更なるレベルアップです。世界の有識者と議論しながら未来の構想をつくるのですから、私も含め、必死に勉強して知見を高めなくてはなりません。「自らをバージョンアップする」覚悟を持つことが重要です。今、こうした大きな挑戦にワクワクして「やりたい」と意欲を持てる人を募っています。

2025年度に実験的に行った討議では、私がモデレーターを務めましたが、2026年度以降は外部の方にも入っていただきます。特にNECグループの社員には、運営側で学んでもらいたいと思っています。NECの人事部と連携し、運営への参画を人材教育プログラムの一環とすることも考えています。

──IISEのミッションは「世界知で、未来を照らす」です。未来をどう描いていますか。

生物の進化の系統樹を見ると、生命の起源である原始細胞から種がどんどん広がってきました。進化とは、強い者だけが生き残ることではなく、多様な生物が存在できる状態になることです。未来の姿が1つである必要はありません。あえて未来を描くなら、「それぞれの国・地域・コミュニティが幸せを享受できる社会」ということになります。

古代の人類は、夜空にバラバラに存在する星をつなげて星座を見つけ出し、その動きで種をまくタイミングを知ったり進む方向を決めたりしていました。IISEのミッションは、世界に無数に散らばる知を星座のようにつなぎ合わせ、道標として示すことです。

私たちIISEは星をつなぐ役割を、BluStellarはその星座へと向かう道筋を示す役割を果たす。星座を見た人たちは、自分たちのやりたいことを決めて動いていく。そんな姿を思い描いています。NECとIISEの連携を更に深め、日本を強く元気に、世界でリーダーシップを発揮できる国にすることを目指します。

──ありがとうございました。

IISE FORUM 2026開会あいさつにてー西原社長ー ー藤沢理事長ー

国際社会経済研究所(IISE)は、世界の知の集積で未来の社会価値創りをリードする、NECグループの独立シンクタンクです。ソートリーダーシップ活動紹介やイベントレポート、コラムなど未来の共感につながる、IISEならではの情報を発信しています。ぜひご覧ください。