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AI時代の経営を支えるインテリジェントハイブリッドクラウド

Vol.77 No.1 BluStellar特集 BluStellarが牽引するDXの未来 ~AI・セキュリティ・データマネジメント・モダナイゼーションで拓く価値創造モデル~

AIの進展に伴い、企業におけるデータ量の増加や機密情報の管理、ガバナンス強化、各国の法規制対応、コスト最適化の重要性がますます高まっています。こうした背景から、複数のクラウドとオンプレミス環境を組み合わせたハイブリッドクラウドが主流になっています。NECは、AI時代の経営を支える次世代プラットフォームとして、AIによる自律的な運用・最適化によってクラウド環境をシームレスに連携する「インテリジェントハイブリッドクラウド」を提唱しています。実現に向けたキーポイントとして、クラウドオーケストレーション、データマネジメント、統合管理の3つに着目し、NECの具体的な取り組みについて詳述します。

1. はじめに

AI活用の進展により、企業が扱うデータ量や機密情報の取り扱いが増加しています。これに伴い、ガバナンス強化やコスト最適化、更には各国のデータ主権への対応の観点から、パブリッククラウドへの依存を抑え、目的に応じてクラウドを使い分けるハイブリッドクラウドが主流になりつつあります。AI時代の経営においては、経営から業務の隅々までAIを浸透させるために、ITインフラの進化が不可欠です。NECは、AI時代の経営を支えるプラットフォームとして、複数のクラウド環境をシームレスに連携し、AIによる自律的な管理・最適化を実現する「インテリジェントハイブリッドクラウド」を提唱しています。

本稿では、インテリジェントハイブリッドクラウドの全体像とキーポイント、更にそれを実現するためのNECの取り組みを詳述します。

2. インテリジェントハイブリッドクラウドとは

インテリジェントハイブリッドクラウドは複数のクラウド環境をシームレスにつなぎ、横断AIによる自律的な管理・最適化を実現することで、AI時代の経営を支えるプラットフォームです(図1)。複数のクラウドに分散配置されたワークロードを、横断AIを用いて自律的に管理し、オーケストレーション技術を活用して有機的に結合することで統合的に制御します。これにより、ダイナミックなビジネス価値創造や経営スピードの向上が可能となります。

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図1 インテリジェントハイブリッドクラウドの概念図

現状のハイブリッドクラウドは、ガバナンス強化、データ主権への対応、コスト最適化などの目的やデータ特性に応じて、オンプレミスやプライベートクラウド、パブリッククラウドなど、複数のITインフラを使い分けている状態です。この状態からインテリジェントハイブリッドクラウドへ進化させるためには、複数のITインフラ利用やAI活用の加速に伴い、次のような課題への対処が必要となります。

  • ITインフラを意識させずにシステム間連携・オーケストレーションを実現すること
  • 複数のITインフラにまたがる多数のお客様のシステムを、トータルコストの最適化を含めて統制すること
  • より複雑化・煩雑化する運用管理を、AIを用いて効率化・高度化すること
  • データ主権やセキュリティを考慮したデータマネジメントの仕組みを統一し、企業の持つデータの価値を最大限に発揮させること
  • セキュリティレベル・ポリシーを高水準に統一し、企業活動を守ること

NECは、これらの課題に対して、クラウドオーケストレーション、データマネジメント、統合管理をキーポイントとして、インテリジェントハイブリッドクラウドの実現に取り組んでいます。

3. インテリジェントハイブリッドクラウド実現のキーポイント

インテリジェントハイブリッドクラウドの実現には、いくつかの重要な要素があります。第3章では、そのなかでも特に重要な「クラウドオーケストレーション」「統合管理」そして「データマネジメント」について解説します。

3.1 クラウドオーケストレーション

クラウドオーケストレーションは、複数のクラウド環境を連携させ、クラウドネイティブなアプリケーションを開発・運用するために必要な機能です。

企業は、特定のクラウドに依存することなく、自社の要件に最適なクラウドサービスを選択し、活用することが求められています。しかし、異なるクラウド間には技術的な差異が存在するため、これらの差異を吸収し、シームレスな開発・運用を実現することが重要な課題となっています。また、従来のオンプレミスとクラウド間のデータ通信においては、インターネット経由のVPNやSSL-VPNを用いる構成が一般的でしたが、接続の不安定性や従量課金による想定外コストが深刻な課題となっていました。

これらの課題は、企業のマルチクラウド戦略の実現において大きな障壁となり、効率的なクラウドオーケストレーションの妨げとなっています。

3.2 データマネジメント

AI活用のためのデータマネジメントは、複数のクラウドサービスを組み合わせたシステムの中心となる重要な要素です。近年、企業は異なるクラウドサービスに保存されているデータを効率的に統合し、AIが活用できる形で管理することが必要になってきています。適切な経営判断を行い、AIを効果的に活用するためには、データの管理体制、品質管理、運用方法、セキュリティ対策を総合的に強化する必要があります。データを起点とした経営や意思決定を実現するには、組織全体でデータ管理の仕組みを整備し、データの統一化、品質向上、そして実際の業務での活用を推進することが重要な課題となっています。

3.3 統合管理

近年の企業におけるクラウド利用は飛躍的に拡大しています。その結果、マルチクラウド環境は複雑さを増し、運用コストの上昇、セキュリティリスクの拡大、管理業務の煩雑化といった問題が顕在化しています。特に各クラウドサービスが独自の管理インタフェースや運用ポリシーを採用しているため、統一的な運用が困難となり、担当者の負荷が大きくなっています。更に、サイバー攻撃の高度化により、従来の個別対応では十分な防御を維持できなくなっている点も大きな課題です。

加えて、規制要件の厳格化に伴い、ガバナンスとコンプライアンスを確保する重要性も高まっていますが、これらを手動で管理することは非現実的です。更にクラウド料金体系が複雑化したことで、リアルタイムでのコスト可視化を行わなければ予想外の費用が発生するリスクも増えています。

このような状況に対応するためには、クラウドとオンプレミスを含む複数環境を統合的に管理する枠組みが不可欠です。第一に、統一されたセキュリティポリシーを全環境へ適用し、脅威を包括的に可視化する仕組みが求められます。第二に、運用業務を標準化かつ自動化し、人的リソースを高付加価値業務へ集中させることが重要です。最後に、継続的なコスト最適化を実現するため、リアルタイム分析に基づくコスト管理を行う必要があります。

4. NECの取り組み

NECでは、第3章の3つのキーポイント実現に向けて、図2の全体像のもとでさまざまな取り組みを行っています。第4章では代表的な4つの取り組みを紹介します。

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図2 NECの取り組み全体像

4.1 クラウドオーケストレーション:NECのクラウドマネージドサービス

NECのクラウドマネージドサービスは、複数のクラウド環境において、クラウドネイティブなアプリケーションを開発・運用するためのアプリケーション実行基盤とそのマネージドサービスです。本サービスは、構想・企画段階から設計、構築、運用保守に至るまで、システムライフサイクル全体を通して支援することにより、企業が抱えるクラウド移行及び運用管理の負担を軽減します。

NECが長年培ってきたシステム構築・運用のノウハウを標準化した複数環境(運用、監視、検証、本番、Hubネットワーク)に反映し、セキュリティとガバナンスを担保したうえでクラウド上でのオーケストレーションを効率化します。

更に、マネージドサービスの中核としてセキュリティガードレールを実装し、統一したセキュリティポリシーを全クラウド環境へ自動適用することで、人的ミスや設定漏れによるリスクを最小化します。加えて、クラウドのコストをモニタリングし、利用状況に応じた費用最適化を継続的に実施できる点も特徴です。これにより、お客様はクラウド活用に伴う予算管理を容易に行いながら、本来注力すべきビジネス価値の創出へリソースを集中できます。

結果として、NECのクラウドマネージドサービスは、クラウド運用におけるセキュリティ、ガバナンス、コスト、運用負荷という複合的な課題を同時に解決し、お客様の持続的なビジネス成長を加速することができます。

4.2 クラウドオーケストレーション:シームレスなクラウドHubネットワーク

NECは、クラウドオーケストレーションにおける課題解決のため、シームレスなクラウドHubネットワークを構築しています。現在では各クラウドサービスでBGP(Border Gateway Protocol)を利用した専用回線サービスが一般化し、安定した回線を定額で安価に提供できるようになりました。この技術的進歩を活用し、NECは印西データセンター(千葉県)を起点とした主要データセンター及びクラウドHubネットワークにおいて、クラウドサービスとの閉域接続サービスを提供することで、短いリードタイムで安定した回線を低価格で提供しています。

また、SaaSサービスにおいても、クラウドサービス上でシステムが展開されているため、インターネット以外のクラウド接続サービスが求められています。NECはこの動向に対応し、特に需要の高いMicrosoft 365サービスにおいては、閉域接続に加えてDirect Peeringを利用した安定したインターネットサービスも提供しています。これらの取り組みにより、従来の接続の不安定性や想定外コストの課題を解決し、企業のマルチクラウド環境における効率的な運用を実現しています。

4.3 データマネジメント:共通データプラットフォーム

NECは、全社的なデータドリブン経営の実現に向けて、共通データプラットフォームを提供しています。データマネジメントの課題を解決するため、グループ全体のデータ管理を一元化し、データに基づいた意思決定を支援する仕組みを構築しました。「クライアントゼロ」戦略として自社での実践を推進し、データの一元化、標準化、品質向上、利活用促進に取り組んでいます。その成果として、経営判断に必要なデータマネジメント、ガバナンス、セキュリティ体制が強化され、AIが活用可能なデータの一元管理と提供を実現しています。更に、社内経営ダッシュボードでデータを可視化することで一元的なデータに基づく意思決定とアクション実行が可能となり、組織全体にデータドリブンな意思決定を行う文化が浸透しつつあります。

4.4 統合管理:マルチクラウド環境の統合管理

NECではマルチクラウド運用の課題解決のため、「Exastro」や「IBM Turbonomic」を活用した統合運用を実践しています。Exastroはクラウドの統合運用と構成管理機能を提供し、複数クラウド環境の連携と自律的管理・最適化を支援します。IBM Turbonomicはさまざまなクラウドのリソースを自動的に監視・分析し、コストの最適化を支援します。NECでは「クライアントゼロ」戦略として、ExastroやIBM Turbonomicを自社IT基盤に適用し、次の効果を確認しています。

  • 社内ITダッシュボードによる可視化とアクション実行の迅速化:IT運用情報をダッシュボードで一元可視化し、経営層から従業員まで同一データを共有することで、迅速な意思決定とアクション実行を実現しました。
  • 社内IT基盤の統合管理による運用効率化:Exastroを活用して1,000以上のシステムを一元管理し、インシデント検出・対応を迅速化し、運用部門の生産性向上を実現しました。その結果、運用コストを20%削減、インフラ構築リードタイムを従来比2分の1に短縮しました。
  • リソース最適化運用:IBM Turbonomicの活用により、複数のクラウドのリソース・コストを可視化し、定期的に不要なリソースを削減することで、ワークロードとコストの最適化を実現しました。

5. むすび

本稿では、インテリジェントハイブリッドクラウドの全体像、実現のためのキーポイント、NECの取り組みを概説しました。インテリジェントハイブリッドクラウドは、目的やデータ特性に応じて複数のクラウドを使い分け、それらを連携させ、AIによる自律的な管理・最適化を実現するものです。NECはこれまで、多様なシステムニーズに対応してきた経験とナレッジを生かし、お客様の課題を解決するクラウドサービスを迅速かつ柔軟に提供するための共通基盤を整備してきました。今後は、これらの機能を更に発展させ、NECの技術を連携することで、お客様の課題を解決するクラウドプラットフォームの拡充に取り組み、お客様の事業拡大に貢献していきます。

商標

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    Microsoft 365は、Microsoft Corporation の米国およびその他の国における登録商標または商標です。
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    IBM Turbonomicは、世界の多くの国で登録されたInternational Business Machines Corp.の商標です。
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    その他記述された社名、製品名などは、該当する各社の商標または登録商標です。

執筆者プロフィール

高木 健樹
クラウド戦略統括部
シニアディレクター
西村 武史
クラウド戦略統括部
上席プロフェッショナル
坂井 英二
クラウド戦略統括部
ディレクター
辻 篤史
クラウド戦略統括部
シニアマネージャー
小谷 哲郎
クラウド戦略統括部
シニアマネージャー
笈川 豊英
クラウド戦略統括部
シニアプロフェッショナル

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