サイト内の現在位置を表示しています。

NECの考えるデータドリブンによる社会価値創造の未来

Vol.77 No.1 BluStellar特集 BluStellarが牽引するDXの未来 ~AI・セキュリティ・データマネジメント・モダナイゼーションで拓く価値創造モデル~

デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展に伴い、データドリブン経営は企業の成長戦略の立案や実行において重要性を増しています。その実現には、企業の持続的な成長を支えるデータ活用基盤の構築が不可欠です。しかし、その実装検討においては多岐にわたる考慮事項が存在し、検討を容易に始められないこと自体がデータ活用基盤の構築の障壁となっています。本稿ではNECの取り組みとして、データドリブン経営の実現に向けた課題策定から運用支援までの全フェーズを支援する仕組み、とりわけ、その中心となるデータ活用基盤のアーキテクチャ検討支援について紹介します。

1. はじめに

1.1 データドリブン経営とは

データドリブン経営とは、事業目的を達成するためにデータに基づいて意思決定を行う経営手法のことです。経験や勘のみに頼るのではなく、データに基づいた客観的な事実や事象に基づいて戦略や施策を立案・実行し、企業成長を継続的に実現することが、データドリブン経営の考え方です。

1.2 データドリブン経営の評価

データドリブン経営の考え方自体は以前から存在していましたが、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展に伴い、備えておくべき経営手法の1つとして再認識されています。近年では各企業での実践結果を踏まえ、その効果が官民で評価されています。

内閣府の政策方針においては、EBPM(Evidence-Based Policy Making)の適用が推進されています1)。統計や指標などの証拠に基づくことで、政策決定や実行の効率化が図れるためです。また、政策効果を測定し広く公表することにより、透明性の向上や継続的な改善が可能となります。

そのうえで、企業の変革度合いやDX推進力を測る評価方法の1つとして、DX銘柄2)があります。DX銘柄とは、経済産業省と東京証券取引所が共同で企業を表彰する制度で、データドリブン経営の実施によって企業価値向上に成果を上げた企業が選出されています。評価基準は、デジタルガバナンス・コード3)と呼ばれ、デジタル技術による社会変革を踏まえた経営ビジョンの策定・公表といった、経営者に求められる対応をまとめた指針になります。2024年に改訂されたデジタルガバナンス・コード3.0では、DX及びデータ活用が企業の成長に欠かせない要素になってきていることを踏まえて、経営におけるデータ活用の重要性が強調された内容となっています。

このように企業のDX実践におけるデータドリブン経営の重要性は、社会的に広く認知されてきています。

2. 企業の持続可能な成長のために

2.1 意思決定の繰り返しを素早く

市場環境や事業状況の変化が激しい現代において、企業が持続可能な成長を遂げるためには、データに基づく意思決定のサイクルを迅速に回すことが効果的です。データから変化をとらえ、施策を立案・実行し、その結果をデータに基づいて評価、新たな課題を見つけて改善する。このプロセスを素早く回すことにより、変化に対応しながら持続的に成長していくことができます。

2.2 データの収集元や活用先の拡張

データドリブン経営を実現するには、まず対象データを明確にする必要があります。例えば、優先度の高い経営指標に基づいてユースケースを特定し、データの収集範囲を決定します。経営指標は多くの企業で集計済みの構造化データとして存在していますが、更に関連する業務データや文書・画像など非構造化データにも範囲を拡張することで、データ活用の幅を広げることが可能です。そのため、データを扱う仕組みにおいては、その収集方法や処理方法がデータによって異なることも考慮しながら、収集元や活用先を柔軟に拡張できる仕組みが求められます。

3. データ活用基盤による実現

データ活用基盤とは、データドリブン経営を実現するために意思決定の根拠となるデータを蓄積・管理する仕組みです。さまざまな活用先に対して効率よくデータを提供する役割も担います。

3.1 データの活用までの段階

データから意思決定に資する示唆を得るまでのプロセスは、大きく「収集」「蓄積」「活用」の三段階となります。このプロセスにおいて、データの状態を論理的な以下の3つの層に分けて管理する考え方として、メダリオンアーキテクチャ4)があります(図1)。

  • (1)
    Bronze層:収集したデータを、加工せず、生データの形式で蓄積
  • (2)
    Silver層:クレンジング・正規化して、データ分析に適した形式で蓄積
  • (3)
    Gold層:ユースケースごとに集計をした状態で、参照に最適化した形式で蓄積
zoom拡大する
図1 メダリオンアーキテクチャ

3.2 データ活用基盤の主な機能

前述したデータの論理的な三層構造をシステムの機能として実装するために、データ活用基盤は次の3つの中核機能を備えています。

  • (1)
    データレイク:生データをコスト効率よく蓄積
  • (2)
    DWH(データウェアハウス):クレンジング・正規化されたデータを、分析に適した形式で蓄積
  • (3)
    データマート:集計された活用対象のデータを、多重な参照要求に対して高い性能で効率的に応答できる形式で蓄積

更に、これらの中核機能を連携させる役割を担うのがデータの処理と移動を担うデータ連携です。生データを構造化・集計・集約して分析可能な形式のデータとし、そのうえで活用のユースケースに応じた集計を行い、次の層へとデータを移動します。

これらのデータレイク、DWH、データマート、データ連携の4つがデータ活用基盤の主な機能になります(図2)。

zoom拡大する
図2 データ活用基盤の機能領域

3.3 データ活用基盤のオプション機能

要件に応じて、次のオプション機能を実装する場合があります。

  • データカタログ:データを意味ごとに分類・整理することで、利用者が目的のデータをその意味から検索し、容易に分析を始めることが可能になります。また、生成AIによるデータの意味理解の精度向上や、データ管理者による組織内のデータ統制強化も可能になります。
  • データ仮想化:データを物理的に集めることなく、仮想的に統合された状態で扱えるようにします。既存環境を有効活用することで、新規環境の構築規模を抑制できます。

3.4 データ活用基盤の実現パターン例

(1)既存環境の有効活用:データ仮想化(図3
メリット:データの物理移動がなく容量コストが少ないです。
デメリット:利用時にデータソースへ性能負荷がかかります。

zoom拡大する
図3 データ仮想化による実現パターン

(2)新規環境の構築:データレイク、DWH、データマート、データ連携(図4
メリット:集計済みのデータマートを参照することで性能負荷を制御しやすくなります。
デメリット:層ごとにデータの物理移動が発生するため容量コストが増大します。

zoom拡大する
図4 メダリオンアーキテクチャごとの実現パターン

他にも複数の実現パターンが存在しますが、現行環境やデータソースの種別、活用目的などを整理したうえで、最適なアーキテクチャを策定する必要があります。

4. NECの取り組み

4.1 データ活用のすべてのフェーズを支援

NECは、データドリブン経営の実現に向けた課題解決において、自社のデータマネジメント高度化(One Dataプラットフォーム構築)の取り組みや、多数のお客様への支援を通じて、豊富な知見を蓄積しています。これらの実践知を基に、課題策定から伴走支援までを包括するリファレンスモデルとしてBluStellar Scenarioを提供し、システム構築のみならず、データ活用戦略の策定、データ活用基盤の製品選定・実装、更に継続的なデータ活用を支える組織・人材育成まで、すべてのフェーズを支援します(図5)。

zoom拡大する
図5 データドリブン経営を実現するうえでの課題と施策

4.2 中心となるデータ活用基盤の検討支援

特にデータ活用戦略を実現するためには、データ活用基盤の検討において、多岐にわたる考慮事項が存在します。NECは、BluStellar Scenarioを通じて、基盤導入前のアーキテクチャ検討及び製品選定を円滑に進めるための支援を提供しています。

次に、BluStellar Scenario の一部として提供している「データ活用基盤コンサルティング」におけるアーキテクチャ検討支援プロセスを示します(図6)。

zoom拡大する
図6 アーキテクチャ検討支援プロセス

最初にヒアリングを通じてデータ活用基盤に関する要件を整理します。現行環境、データソース種別、その活用目的を踏まえ、お客様が重視すべき要件や考慮事項を明確化します。次に、これらを基にシステムアーキテクチャを検討し、要件に合った機能を担う製品・サービスを比較・選定します。更に、実現構想に向けたロードマップを策定します。新規環境構築の場合、スモールスタートのデータ活用基盤構成を起点として、ユースケースの拡張を見据えた将来構成を設計するのが一般的です。

5. これからのトレンド

データ活用基盤の重要性が高まる一方で、データの活用先は年々多様化してきており、今後も新しいデータ活用手法の登場が予想されます。

5.1 データ活用手法の変化

データの活用手法は、まずは起きている事象の認識を目的としたデータの可視化から始まり、その後、複数のデータを組み合わせて新たな洞察を得るための分析へと発展しました。更に、それを効率化するためのAIの導入が進められています。これに伴い、データ活用基盤に求められる機能は、従来の収集・蓄積・分析に加え、データにより導き出された結果の品質を高めるためのデータ品質管理や、データ整理を支援するデータカタログの重要性が増しています。

5.2 生成AIからのデータ利用

近年における最も大きな技術的変化の1つは生成AIの登場です。自然言語による問い合わせを通じて、データの可視化・分析や施策案の提示が可能となっています。生成AIが正しくデータを扱うためには、アプリケーションレイヤとデータレイヤの間に新たにセマンティックレイヤを整備することが不可欠です。セマンティックレイヤとは、データの意味や構造を体系的に分類・整理する層を指します。これにより、データ活用基盤において、これまではオプションとされてきたデータ品質管理やデータカタログの重要性が一層高まっています。

5.3 データプロダクトの材料になるデータ

新たな概念としてデータプロダクトが提唱されています。データプロダクトとは、利用者に価値を提供する完成されたデータ集合を1つの製品と見なす考え方です。データを材料として、品質の高い整理済みデータを生成するべきという考え方として用いられます。また、データの管理方法の観点からも、データに責任を持つ組織別にデータプロダクトを作ることによって、より高品質で利用者にとって価値のあるデータの提供が可能となります。

6. おわりに

データ活用の形態は、新しい技術の登場や事業環境の変化に応じて進化し続けています。しかし、必須の機能が収集・蓄積・分析であり、そこを流れるのがデータであることは揺るぎません。

そのデータを扱うデータ活用基盤は、企業の持続的成長に対応できるよう、拡張性を考慮したアーキテクチャやロードマップを策定することが望まれます。更に、拡張の範囲を企業内にとどめず、企業間や政府を含めた社会全体で共有することで、新たな社会価値の創出が期待されます。

NECは今後もデータドリブン経営の実現と企業の持続的な成長を支援し、未来の社会価値創造に貢献していきます。

参考文献

執筆者プロフィール

出嶋 琢志
データ基盤サービス統括部
プロフェッショナル
川畠 輝聖
データ基盤サービス統括部
シニアマネージャー
山川 聡
データ基盤サービス統括部
ディレクター

関連URL