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NEC社内におけるAI活用 〜「クライアントゼロ」戦略で推進するDXとAXの実践

Vol.77 No.1 BluStellar特集 BluStellarが牽引するDXの未来 ~AI・セキュリティ・データマネジメント・モダナイゼーションで拓く価値創造モデル~

NECでは、社内DX(デジタルトランスフォーメーション)の加速に向けて「クライアントゼロ」戦略を展開しています。これはNEC自身が最初の顧客としてデジタルソリューションを活用し、実践知を社外に還元する循環型モデルです。2025年度中期経営計画のもと徹底したDXを推進し、データドリブン経営などで一定の成果を上げています。また、2023年の生成AI台頭以降は、AIトランスフォーメーション(AX)を推進し、NEC開発のAIコア技術「cotomi」やOpenAI、Copilotなどを活用して業務効率化・意思決定支援・ナレッジ活用など多方面で成果を上げています。AI活用に向けたルール整備も進められ、NECグループ全体でのAI利活用基盤が構築されつつあります。これらの取り組みは、NECが自らのDXを実証し、顧客や社会の変革を推進する姿勢の表れです。

1. はじめに

NECは、「クライアントゼロ」戦略を通じて、自社を最初の顧客と見なし、最新技術を積極的に導入・検証しています。これにより、社内での実践を通じて得られた知見やノウハウを、顧客や社会のデジタルトランスフォーメーション(DX)に還元しています。

社内DX推進はOne Data、One Place、One Factの実現を目指し、最新のデータ技術を集結させたOne Dataプラットフォームを整備し、経営層から社員まで同じデータでファクトに向き合い、未来志向のアクションへとつなげることを目指したデータドリブン経営を実現してきました。これにより経営コックピットやダッシュボードを基軸にデータを民主化し、迅速な意思決定とプロアクティブな対応を可能にしました。本稿では、このDXをベースとしてNEC社内で進めているAIへの取り組みを紹介します。

2. AIトランスフォーメーション(AX)

NECは2023年の生成AIの急速な発展を受け、社内DXで整備したデータ基盤をベースにAIトランスフォーメーション(AX)を推進しています(図1)。NEC開発のAIコア技術「cotomi」やGeminiなどの外部サービスも積極的に活用し、業務効率化、意思決定支援、ナレッジ活用といった多方面で成果を上げています。

AXを推進するために、(1)仕組みづくり、(2)NECのAI研究技術、(3)グローバル戦略協業、(4)カルチャーを柱として生成AI活用を進めています。

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図1 NEC社内のAIトランスフォーメーション(AX)

2.1 仕組みづくり

NECでは、従業員が安全・安心に生成AIを活用できる社内基盤「NEC Generative AI Service(NGS)」を2023年4月にわずか2週間で構築しました(図2)。NGSは、安全確認済のLLM(大規模言語モデル)を選択的に活用できる機能や、安全にデータ活用ができるRAG(Retrieval-Augmented Generation)機能などを提供しています。また、これらの機能をセキュアなAPIとして公開することで、NEC社内システムやアプリケーション、パートナーソリューションからも安全にNGSを活用できる仕組みとなっています。

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図2  NEC Generative AI Service(NGS)

2.2 NECのAI研究技術

NECでは、早期からAI技術への取り組みが行われており、近年では2023年に独自生成AI「cotomi」を他社に先駆けて開発・提供開始し、その翌年には「NEC AI Agent」を発表しています(図3)。これらの製品・ソリューションを構成するAI技術を社内で評価しNGSへの組み込みを進めています。単純に製品・ソリューションを適用するところから1歩踏み込んで、要素技術を社内で活用する試みを通して、より深いレベルでのクライアントゼロを実践しています。

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図3 NECにおけるAI事業の歴史

2.3 グローバル戦略協業

昨今のAI技術の進化スピードを鑑み、NECでは社内技術に加えてMicrosoft、Google、AWS、SAP、ServiceNowなどのグローバル戦略協業パートナーとの連携を強化し、最新技術を迅速に社内活用し、AI導入を加速しています。社内の活用と並行して、ビジネスの取り組みの合意形成、NGSや「cotomi」との技術連携、更に世界初の取り組みにも挑戦しています。

2.4 カルチャー

NEC社内でAIの利活用を促進するためには、NGSなどの仕組みや社内外の技術適用に加え、カルチャーの醸成がキーファクターとなります(図4)。このため、AIに関するナレッジ共有やアイデアを募る「AX Acceleration Hub」という社内マーケットプレイスを設け、AI活用コンテストなどのイベントを通じてAIカルチャーの醸成を推進しています。

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図4 NECのAI活用カルチャー醸成

3. AI業務変革

NECではNGSの進化やグローバル戦略協業、AIエージェント技術の台頭などと併せて、スタッフ業務を中心としたAI業務改革を推進しています(図5)。これまでのAIを活用した部分的な業務改善ではなく、AIエージェントを活用した抜本的な業務改革を推進しています。

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図5 NEC社内のAIエージェントによる業務改革

AI業務改革は「経営マネジメント」「営業」「BPO」「リスク」「HR」「SI・IT運用」「セキュリティ」の7つの変革テーマを軸に推進しています。この取り組み開始から半年で約65件のAI業務変革プロジェクトが同時に稼働しています。そのうち、14件の本番稼働プロジェクトは実業務に適用され、着実にAIによる業務改革が進んでいます。また、AIエージェントへの投資判断はビジネス貢献度と実現可能性の観点からポートフォリオマネジメントを行い、その情報を社内ダッシュボードに公開しています(図6)。

図6 NEC社内のAIダッシュボード

4. むすび

本稿では、NECのクライアントゼロ戦略によるDXと、それに続くAXの事例を紹介しました。今回の事例では、生成AIを活用する仕組みからカルチャー醸成までをベースとして、AIによる抜本的な業務改革を推進し、成果をマネジメントすることで着実に成果を上げています。今後、真のAI Nativeカンパニーに変貌を遂げるため、社内外のエコシステムを更に高度化していきます。

また、これらのさまざまなデジタル・AIに対する実践知を顧客や社会に還元し、持続的な価値創出に貢献していきます。

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執筆者プロフィール

関 徳昭
コーポレートITシステム部門
上席プロフェッショナル