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学生のみなさんへ2022インタビュー:渡邉 和浩
2022年1月31日
AIを駆使して診断を支援する

バイオメトリクス研究所
渡邉 和浩(わたなべ かずひろ)
医用画像を扱う医工学で修士号を取得後、2020年4月にNECへ入社。機械学習を利用して、内視鏡に映る食道の細胞から食道がんを判別する研究に取り組んでいる。
機械学習で食道がんを早期発見
私は学生時代、MR(磁気共鳴)検査に用いる医療画像の研究を行っていました。NECへ入社を決めた理由は、関心のあるAIの研究に力を入れていて、かつその技術で医療の分野に参入しているからです。
現在は、バイオメトリクス研究所のメディカルイメージングチームに所属しています。主に研究しているのは機械学習を利用した内視鏡画像の解析です。
対象としているのが、バレット食道にできるがんの発見を自動判別する技術です。バレット食道とは、食道の粘膜が胃の粘膜に置き換わる一種の病気です。逆流性食道炎で胃液が食道に逆流して炎症を繰り返すと、食道がんになるリスクが高まります。ポリープ状に腫れて炎症を起こしている部位は見た目に腫瘍とわかりますが、初期の段階では、病変部位の形が平坦なため、熟練の医師でないと発見は難しいのです。
バレット食道の患者さんは、食道がんになっていないか定期的な観察を推奨されています。初期の病変が見つかれば摘除し、がんを防げますが、見逃してがんが進行してしまえば、患者さんの負担は増えてしまいます。そこで私たちは、機械学習を利用して医師の診断をサポートする検知技術を製品化しました。
開発にあたっては、欧州消化器内視鏡学会(European Society of Gastrointestinal Endoscopy)研究委員会委員長のPradeep Bhandari(プラディープバンダリ)教授(英国)と共同研究を実施しました。その結果、100万枚以上のバレット食道の画像をAIに学習させて90%以上の腫瘍の検出に成功しました。バレット食道がんの自動判別技術として世界で初めてCEマークを付けています。
多様性に富んだアイデアの宝庫

この1年を振り返ってみると、大学院の研究室では専門領域の学問だけを専攻していましたが、研究所には実にさまざまなバックグラウンドを持った研究者が集まっていると実感させられました。
NECは同じ研究チームのなかにも異なる分野の知識を備えた人が数多くいます。物理や数学、生物学などの引き出しから、研究推進のヒントになる思いもしないアイデアが飛び出し、自分の抱えていた研究の疑問点が一気に解決することがしばしばあります。多様性に富んだ知見の吸収は、研究を進めるうえでの糧になります。
さらには、直属の上司と気兼ねなく相談できる環境が整っています。最近では、NECのフェローである今岡さんに、ご自身の専門分野である顔認証技術の見地からたくさんの気づきをいただきました。一分野の非常識は、異なる分野では常識になるものです。世界トップレベルのAI研究者が、直面する課題に対して新しい視点を与えてくれるのは嬉しいかぎりです。内視鏡研究の未知の領域をめざして積極的に取り組めるのも、快く支えてくださる方々とのつながりの結果だと思います。
研究開発のゴールを常に意識する

直近の目標は、自分の研究を製品化して世に送り出すことです。今はまだ研究を深める段階で、自分が何に向いているかを働きながら模索しています。今後は、研究者としてのキャリアを積んで、専門家として独り立ちできるようになりたいです。
企業の研究者として走り始め、製品開発に携わるようになってから、あることに気をつけています。常にゴールを意識すること。そして忘れないようにすることです。そうしないと、途中で手段と目的が逆になって、研究のための研究になりかねません。研究は、何を目標にしていたのかを忘れると、おもしろいけれども役に立たないものになります。企業の研究である以上、そのあたりのバランス感覚は必要です。
NECには、働く時間の20%を好きな研究に当てられる「20%ルール(注)」があります。たとえば、医療を専門とする研究者が別の分野の基盤研究に目を通してみる。医療画像以外の論文を読んで、書かれているプログラムを試してみる。すると、思わぬところで自分の研究に役立つヒントが転がっていたりするものです。
学生のみなさんも、専門分野から少し外れて、さまざまな方向へアンテナを張ってみましょう。ふとしたきっかけで、予想を超える発見が舞い込んでくる可能性が高まるので、意識してみてください。
(注) 研究所によって15%~20%と割合が異なる

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コロナ禍で外出を控え、体が重たくなってしまったので、最近は少しずつ体を動かすように心がけて、空いた時間を見つけてはスポーツジムに出かけて筋トレをしています。夜は、時々大学時代に同じ研究室だった仲間とオンラインでつながり、ゲームを楽しんだりしています。ゲームは、親しい友人たちとの大切なコミュニケーションツールですね。
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