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PLMコラム ~品番連載シリーズ~
<執筆者>
NEC マネジメントコンサルティング統括部
ECMグループ ディレクター 杢田竜太
2002年より、20年以上に渡って、製造業:特に設計を主体としたエンジニアリングチェーン領域におけるデジタル技術を活用した業務革新(PLM/BOM/コンカレントエンジニアリング/原価企画等)支援に従事。製造業を中心とするお客様に対して、設計開発プロセスにおける業務コンサルティングを手がけている。

2026/7/22
2.なぜこんな課題が生まれたのか?
さて今回は、「なぜ21世紀に入り四半世紀が過ぎたいま、このような課題が顕在化しているのか」について、前回説明した以下の2つ
【1】桁数破綻課題
【2】管理品番レス課題
に分けて解説していきたいと思います。
【1】桁数破綻課題はなぜ生まれたのか?
結論から申しますと、この課題は「事業拡大」が原因で発生しています。
資本主義経済における企業の重要な要件は、売上・利益を拡大し、企業として存続し続けることです。(様々な見方があると思いますが、ここでは一旦このように考えます。)
企業にとって「事業拡大」は当然の取り組みである一方で、「品番」がその変化に適応してこなかった、あるいは硬直化して適応できなかった、というのが私の考えです。
そのため、この品番課題は、多くの企業で1990年代頃から発生していたのではないかと、経験的に感じています。
30年も前から課題は発生していたものの、表面化してこなかったのは、「部分最適」によって何とか凌いできたからです。
しかし、現状はそれも限界に近づいており、「品番を何とかせねば!」という機運がより一層高まっているのだと思います。
それでは、「事業拡大」が、どのように「品番問題」を生じさせているのか、そのメカニズムについて考えていきましょう。
メカニズムは同じなのですが、3つのケースに分けて解説していきます。
1.事業拡大 〜新事業への進出〜 のケース
2.事業拡大 〜グローバル化〜 のケース
3.事業拡大 〜M&A〜 のケース
1. 事業拡大 〜新事業への進出〜 のケース
「多角化」は事業拡大戦略の重要な施策であり、当たり前のように実行されている経営行動です。
最近では、「両利きの経営」が重要だと言われていますが、「知の深化」と同時に行うべき「知の探索」はそのための活動と捉えても良いのだと思います。
古い話で恐縮ですが、例えば1980年代に、日本企業は、こぞって半導体事業に進出しました。
NECもそうでしたが、組立製造・加工製造のいずれにおいても、半導体は特殊で、品番には独自の番号体系が必要となります。
例えば、商品型番として一般的には、
・製品ファミリー
・性能
・品質水準(選別水準)
・パッケージ種類
・包装形態(リール、トレイ、マガジン等)
等の識別性が必要となりますが、これは既存事業製品の品番体系とは全く異なるものになるのが自然です。
中間品についても、前工程から後工程までの各工程において、どの工程を完了したものかを識別することが一般的であり、これも特殊な品番を生む原因となります。
1980年代の半導体事業進出ブームは、既存事業とのシナジーを考えたものとは言えず、どちらかというと財テクに近い投資案件だったので、半導体事業独自の品番を設定すれば良かったのですが、昨今の新事業進出は、既存事業とのシナジーも考慮したものが多くなっていると思います。
そうなると、既存品番を拡張する必要が生じ、結果として既存品番の桁数破綻を引き起こしてしまう、というメカニズムになっています。
2.事業拡大 〜グローバル化〜 のケース
日本の製造業は、元々は「国内販売×国内製造」からスタートした企業が一般的です。
そこからグローバル化の流れの中で、一般的には「海外販売×国内製造」、つまり「輸出」から始まり、その後、様々な要因によって「海外販売×海外生産」へと移行する、という順を辿っています。
その過程の中で、特に「海外生産」を始めた際に、品番の桁数破綻が発生しやすくなっています。
例えば、私が過去に品番実態調査を行ったケースでは、
・国内調達品と海外調達品で、仕様や図面は全く同じだが、品質管理上、品番を分けている
・国内調達した部品を、国内工場で使うケースと海外工場にノックダウンするケースとで、品番を分けている
といった理由で、品番拡張を行っているケースを見てきました。
3.事業拡大 〜M&A〜 のケース
これは、1.の派生形だと思います。
M&A元とM&A先では、当然ながら品番体系は異なります。
1.でも述べたように、既存事業とのシナジーを重視しない財テクに近い投資案件であれば、別々の品番で運用すればよいのですが、シナジーを考える場合には品番統合が必要となり、それが桁数破綻のきっかけとなります。
例えば、M&Aのシナジー効果として、部材の集中購買による資材費の低減を狙ったとします。
その際には、M&A元とM&A先の品番が統一されていることが求められます。同じ部材を、同じものとして認識するためです。
一般的には、M&A元の品番に合わせることになりますが、M&A先の品番要件として、M&A元にはない追加要件が含まれていた場合、桁にその意味を追加することになり、桁数破綻の要因となります。
具体的には、互いに部品分類が異なり、より細かい分類の管理が業務上・システム上必須となるケースなどが該当します。
【2】管理品番レス課題はなぜ生まれたのか?
こちらの課題は、「情報管理精度の向上」に伴い、課題として認識されるようになっています。
簡単に言うと、これまでは管理品番がなくても、情報システムではなく人手で対応できていたのです。
例えば、前回説明した下図のように、B&Cの部組に品番がないケースを、棚卸業務を例に考えます。
①部品A,B,Cがそれぞれ10個
②部組B&Cが5個
③総組A&B&Cが7個
この場合、①③は品番があるので、そのままそれぞれ10個、7個と計上すればよいのですが、部組B&Cは品番がないため、「部組B&Cが5個」として棚卸することができません。
そのため、一旦この部組B&Cは、部品BとCがそれぞれ5個ずつあるものとみなして棚卸をしているケースが多々ありました。
この場合、実際には部組B&Cを組み立てた際の加工費が発生しているはずですが、それはデータ上に反映されません。また、情報システムのデータ上は、部組B&Cが5個あるとは誰も認識できない、いわゆる情物不一致の状態になってしまいます。

図1:組立製造業での組立順のイメージ
やや単純化した例でしたが、これ以外にも、情報システム(生産管理システムや在庫管理システム)では管理していない一方で、現場では人手で管理されているものは多数あると思います。
少し異なる例では、いわゆる「副資材」なども同様の課題が発生しがちです。
これまでは、副資材は現場管理の間接材扱いで問題ありませんでした。しかし、高額な副資材が出てきて個数や重量を管理したい場合や、有害化学物質を含むため、特定の製品にどの程度使われているのかを確認したい場合などには、品番がないと対応が難しくなってしまいます。
「情物一致」は、DXの一丁目一番地です。
間違った情報をいくら見える化・分析しても、正しい判断や次の行動が取れるとは思えません。
次回は、いくつか具体的な事例を取り上げて、品番改革の難しさについて説明したいと考えています。
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