サイト内の現在位置を表示しています。

PLMコラム ~BOM連載シリーズ~

<執筆者>
NEC マネジメントコンサルティング統括部
ECMグループ ディレクター 杢田竜太
2002年より、20年以上に渡って、製造業:特に設計を主体としたエンジニアリングチェーン領域におけるデジタル技術を活用した業務革新(PLM/BOM/コンカレントエンジニアリング/原価企画等)支援に従事。製造業を中心とするお客様に対して、設計開発プロセスにおける業務コンサルティングを手がけている。

執筆者

2025/9/22

6.CAD構成とE-BOMの違いは?

さて、今回は具体的なデータ構造の違いについて解説したいと思います。

NECのObbligatoに限らず、PLMソリューションの紹介では上記のような図を見ると思います。

この図では、「CAD→CAD系PDM/PLM→設計BOM(Obbligatoで管理)」というデータの流れが表現されていますが、具体的にはどういう事なのでしょうか?

データの流れ(連携)を考えるために、各データの構造について考えていくことにしましょう。

まず、設計BOMのデータ構造ですが、企業によって、大きく2つの構造に分かれると思います。
 ① 設計チームごとの構成で管理されている
 ② M-BOMの原案としての構成で管理されている
私の経験では、①の構成で管理している企業と、②の構成で管理している企業の割合は、1:9くらいだと思います。
もう少し詳しく説明すると、②の中も沢山のバリエーションがあり、ほぼM-BOMをE-BOMとして設計者が登録している企業や、手配部品リスト、要は調達BOMを設計が登録しているケースもあります。本件については、「8.M-BOMの管理パターンとは?」で解説したいと思います。

PCBを含めた制御設計を伴う製品を例に、①と②のイメージを提示します。

写真1

元来BOMとは、生産のためのM-BOMですから、②M-BOM原案としての構成が多いのは理解できます。
今回はE-BOMが、この②のデータ構造である前提で話を進めます。

では次に、CADにおけるデータ構造を考えていきましょう。
CADと一口に言っても、PCBを含めた制御設計を伴う製品の場合は、3DCADに加え、エレキCAD(PCB-CAD)が該当しますし、大型の機械であれば、3DCADに加え、エレキCAD(配電盤CAD)が該当するでしょう。
これらのCADのデータ構造は、上記E-BOMのデータ構造とイコールなのでしょうか?
情報システム部門の若手の方なら、うまく答えられないかもしれませんね。
しかし、設計現場の方なら即座に「No」と答えられますね。

それでは、
   1. このデータ構造の違いは何か?
   2. その構造の違いを(PLMの機能として)どう吸収するのか?
について解説していきましょう。
本コラムでは、その目的から、特に1.について解説します。
2.については、是非弊社Obbligato部門へお問い合わせください。

CADとE-BOMのデータ構造の違い

① 3DCADのデータ構造
まず、貴社の3Dモデリングルールは、データ構造についてどう規定しているでしょうか?
構造物は全てモデリングするようになっていますか?例えば、ケーブルやホースのような軟体は?銘板は?バランスウェイトやスペーサーは?
何が言いたいかというと、3Dのデータ構造は構造物の一部しか含まれていないということです。
逆に、設計という作業に必要な余計なデータも含まれる場合があります。
その製品が部品である場合、部品が(お客様製品に)組み付けられた際の取り合いを検証するためのお客様側の構造物が入っているケースもよく見かけます。
また、位相違いのパーツは1つのデータとしてモデリングされることが通常ですし、長さ違いパーツは、パラメトリックに長さ可変の部品として表現されているケースもあります。
多色成形品についてはどうでしょうか?
パーツとしては1つですが、モデリングは色別に複数パーツとしてモデリングしているはずです。
このように、3DCADのデータ構造は、E-BOM(M-BOM原案としての手配構造)としては、過不足あるデータ構造になっている事がわかります。
なお、今回は、その品目の過不足及び管理単位の違いについて記載しましたが、データ構成も異なることが通常です。

② エレキCAD(PCB-CAD)のデータ構造
エレキCAD(PCB-CAD)は、回路CADと、実装CADに分かれます。
通常E-BOMは、回路CADからデータを連携し、実装CADデータも含めて三点照合※1する業務形態を取ります。
 ※1 三点照合:回路CAD、実装CAD、BOM間でパーツが一致しているかどうかをチェックすること。

回路CADでは、例えば、仕向け違いが一つの回路として表現されます。
その場合、例えば、日本仕向けと米国仕向けでは、入力電圧が異なりますので、電源周りの設計・回路・パーツが異なることになります。
回路CADは複数仕向けで一つのデータですが、E-BOMは各仕向け毎のデータですので、差異が生まれることになります。
なお、「その構造の違いを(PLMの機能として)どう吸収するのか?」については、連携したデータをマトリクス部品表でチェックしていく形式が取られていたりします。

③ E-BOMのデータ構造
E-BOMは、必ず、M-BOMの原案という目的を持っていますので、
   ・一つの製品単位にデータ構造を持つ ※2
   ・手配される部品は原則全て構成される ※3
という特徴があります。
 ※2 いわゆるスーパーBOM(150%BOM)という形態のBOMは除く
 ※3 副資材など、例えば工場で2ビン管理されているような部材は含まれないことも多い

「一つの製品単位にデータ構造を持つ」に対しては、エレキCADでの仕向け違いの例が当てはまりますし、「手配される部品は原則全て構成される」に対しては、3DCADでの過不足や管理単位の違いが該当します。
3DCADでは、例えばオイルやグリス、ガスなどの液体や気体は表現されませんので、それらも製品構成に必要な場合は、E-BOMにて追加する必要があります。

今回は、データ構造の違いについて解説しました。
「その構造の違いを(PLMの機能として)どう吸収するのか?」については、Obbligato部門からの製品紹介に場を譲りますが、上記解説をご覧になってお分かりの通り、100%の連携自動化は不可能です。また、CADでのデータモデリングのルールや特徴は各社によって区々ですし、E-BOMのデータ単位や範囲も各社によって異なります。※4
つまり、各個社の現状運用実態をきちんと調査・整理・分析した上で、CAD=BOM連携について考える必要があります。

 ※4:例えば、設計はグレードで指定し、工場でそのグレードを満たす部品を採用する場合、E-BOMにその部品を登録しない企業もありますし、事前に工場にそのグレードの調達部品一覧を入手し、設計側でOR部品としてE-BOM指定している企業もあります。

次回からは、M-BOMについて解説していきたいと思います。お楽しみに。


コンサルティングサービス製品開発

コンサルティングサービス【製品開発】

最先端のデジタル技術に対する知見と、自社および製造業のお客様のものづくり革新の実践経験をベースに、製品開発プロセスの革新をご支援いたします。

詳細はこちら