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PLMコラム ~BOM連載シリーズ~

<執筆者>
NEC マネジメントコンサルティング統括部
ECMグループ ディレクター 杢田竜太
2002年より、20年以上に渡って、製造業:特に設計を主体としたエンジニアリングチェーン領域におけるデジタル技術を活用した業務革新(PLM/BOM/コンカレントエンジニアリング/原価企画等)支援に従事。製造業を中心とするお客様に対して、設計開発プロセスにおける業務コンサルティングを手がけている。

執筆者

2025/6/20

3.E-BOMは何のために必要なのか?

前章で書いた通り、E-BOMは、
 ・M-BOMの原案という目的
 ・試作品の部品手配という目的
 ・コスト積算の目的
 ・含有化学物質チェックの目的
 ・設計変更指示の目的
などなど、さまざまな目的を有します。

このコラムをずっと読んでいただいている方々には釈迦に説法ですが、元来「BOM」とは、M-BOMですから、全てのE-BOMは「M-BOMの原案という目的」を保有しています。
また、そのためには、初回出図以降の変更管理(生産への設計変更指示)を行う必要があり、「設計変更指示の目的」も有しています。

E-BOMが出始めた初期の頃は、上記2つの目的でE-BOMが活用されていたことが多かったと思います。
この場合、E-BOMの初回登録タイミングは、初回出図前となります。
つまり、本当の意味での設計=エンジニアリングプロセスでは、E-BOMは登場しないことになります。

エンジニアリングプロセスを考えた際、
 「①設計→②出図→③生産(調達)」
となり、②→③を繋ぐものとして、E-BOMが生まれました。
同様に、E-BOMを用いて、①→②を繋ごうという考えが出てきます。
その考え方から、「試作品の部品手配という目的」や、「コスト積算の目的」が登場することになります。
しかし、この実装で失敗する企業が多発しました。
教科書や世のBOM書籍には、「①→②→③」と、BOMが成長するイメージで描かれていることが多いのですが、実態は異なります。
例えば、NECでもそうなのですが、PCB-ASSYを伴う製品の場合、PCBの回路検証等のために、製品全体を試作するのではなく、PCBだけを試作するなどは日常茶飯事です。
自動車部品においては、試作図と量産図は異なりますし、図番や品番も異なることが通常です。
こういった自社エンジニアリングプロセスやルールの特徴を踏まえずに、PLMパッケージの持つベストプラクティスに合わせた導入をすれば成功する、という思考停止に陥った企業ではPLMはなんとか導入できたものの、当初期待通りの活用ができていない、ということが多かったと思います。

逆の発想で、自社のエンジニアリングプロセスやルールに合わせて(もっと言うと、業務で活用していた紙帳票/Excel帳票に合わせて)PLMシステムを構築された企業様も多くおられました。
これらの企業様では、まさに2025年の崖で、現在新システムを企画をされていることが多いのですが、レガシーシステムをそのまま作り替えるのではコストが掛かり過ぎる、かといってPLMパッケージにFittingすることもできない、と、意思決定だけがずるずる伸びている企業様をよくお見受けします。

繰り返し申しているように、自社にとってのPLM導入の目的をしっかりと考えることがPLM導入成功の第一歩となります。
自社は何のためにPLMを導入するのかしっかりと社内で検討したうえで、各社PLMパッケージソフトの持つ標準機能と標準データモデルをしっかりと見定めて、自社目的に一番合致するPLMパッケージを選んでください。

PLM

閑話休題。
「E-BOM」というと、階層構造を持つBOMのイメージがありますが、E-BOMは「品目」が重要な意味を持つことになります。
設計者が部品を選定する際の「部品データベースとしての目的」です。
その部品の仕様情報から、コスト情報、調達LT情報、品質情報、環境情報など、あらゆる情報を一元管理して、設計者の部品選定するプロセスを支援します。
この支援に関しては、次の「4.E-BOMで管理すべき情報とは?」でも解説したいと思います。

また、これまで実施されてきた企業様にとっては大昔から当たり前の話なのですが、昨今業界を超えて当たり前になりつつあるのが、「各種規制対応の目的」です。
具体化すると、「含有化学物質チェックの目的」や、「輸出該非判定チェックの目的」などですが、今後は例えば、「CO2排出量のチェック」や、「持続可能性を考慮した材料使用量のチェック(例:プラスチック)」など、益々その活用が期待されています。
ただでさえ、製品が複雑化の一方を辿る中、設計者の負荷は増すばかりです。
本質的な設計業務ではなく、その付帯業務については、少しでもITの力を借りて工数削減に繋げるべきと考えます。

IT化・工数削減

さて、今回はこのくらいにして、次回はE-BOMで管理すべき情報について述べていきます。
お気付きの方も多いと思うのですが、「管理すべき」という「べき論」の根拠には、「目的」が横たわっています。
逆に言うと、目的に応じて、「管理すべき情報」は変わるのですが、王道としてこれだけは考慮しなければいけない情報について、解説していきたいと思います。


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