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PLMコラム ~PLM導入の進め方~

<執筆者>
NEC エンタープライズコンサルティング統括部
PLMグループ ディレクター 杢田竜太
2002年より、20年以上に渡って、製造業:特に設計を主体としたエンジニアリングチェーン領域におけるデジタル技術を活用した業務革新(PLM/BOM/コンカレントエンジニアリング/原価企画等)支援に従事。製造業を中心とするお客様に対して、設計開発プロセスにおける業務コンサルティングを手がけている。

執筆者

6.PLM導入の進め方と注意点について

さて、ここまでの話で、なぜ(何のために)PLMを導入するのか、という目的が、特に改革初期において非常に重要であることはご理解いただけたかと思います。
今回は、PLM導入の進め方と注意点について、話を進めて行きたいと思います。

早速ですが、図9に、PLM導入の標準的なステップを示します。

図9:PLM導入の標準的なステップzoom拡大して大きくする
図9:PLM導入の標準的なステップ
1.プロジェクト体制構築フェーズ

まだPLM導入プロジェクトが公式には立ち上がっていない段階です。
プロジェクトが立ち上がっていない訳ですから、誰が検討を始めるか、は非常に重要なポイントとなります。
例えば、
 ① 情報システム部門あるいは技術管理部門等、レガシーのPLM/PDMシステムの運用/保守部門が、老朽化を起点に検討を開始する
 ② DX部門など、事業部門内あるいは全社横串改革部門が、組織ミッションとして検討を開始する(役員層からの指示があることが多い)
 ③ 設計部門や生技部門など、現場の意識あるメンバーが集い、現場課題を起点として検討を開始する
といったケースなどがあります。

この段階で、私たち(NEC コンサルティング部門)の所に相談が来るのは、②のケースが多いですが、NECのPLMソリューション部門に相談が来るのは①のケースが多いです。
コンサルタントの立場から、①のケースで重要と考えるポイントは、「システム刷新」を第一目的に行うのか、「業務変革」を第一目的に行うのか?という定義と社内の合意です。
ここを曖昧なままプロジェクトを進めて失敗しているケースを多々見受けますので、ご注意ください。

もうひとつ、非常に重要な注意点があります。
それは、改革対象となるスコープ(範囲)を、この段階で明確化しておく、と言うことです。
範囲が決まれば、その範囲の関係者をプロジェクトメンバーにアサインしますが、範囲が決まっていないと体制も曖昧となります。
結果的に、途中で息切れしたり、うまく改革活動に巻き込めなかったりすることを、これまでのご支援の中で経験しています。

さて、話は横に逸れますが、先日(2025年1月25日)敬愛する野中郁次郎先生が逝去されました。
野中先生は、1995年の共著:知識創造企業にて「ミドル・アップ・ダウン」の重要性を説いておられます。
誰がこのPLM導入という変革プロジェクトをリードするのか、誰が何のためにやるべきなのかは、今一度考えるべきかと思います。
私の個人的意見ですが、それは将来短いトップではなく、これからの自社を背負うミドルであるべきだと思います。
Japan As No.1と称された時代には、この「ミドル・アップ・ダウン」という手法は、日本企業が得意とするマネジメント手法だったはずです。
個人的には、経験的に、ミドルが本気でPLM導入の必要性を想い、トップが共鳴して、結果としてトップダウンで進めて行くやり方が最も望ましいと考えています。
そのために参考となる書籍についてもご紹介しておきます。
ダークサイド・スキル | 日経BOOKプラス

2.改革構想企画フェーズ

PLM導入の目的や、改革方針が決まり、トップとも合意を得て、プロジェクト体制が整った段階です。
トップと合意を得られている訳ですから、会社の中でも正式なプロジェクトとして検討が始まります。

近年、ERPベンダーがFIT to Standardという概念を提唱し、標準機能ベースで導入し、アドオンは許さないという導入方法を示し、成功事例が公開されています。
これまでアドオンで自社業務にシステム機能を合わせてきて、QCDに不満を持ったユーザー側もこの考え方に賛同し、あちこちでこの手法でのプロジェクトが進んでいます。
PLM導入についても同様の傾向があるのですが、それでも、というか、だからこそ、この改革構想段階では、綿密な「現状分析」の実施を提言いたします。
稀に、「このパッケージソリューションに合わせれば、効果が得られるんだよね?」、「OOTB(※)だと聞いたよ。ウチには時間が無いんだ、導入期間が短いこのベンダーを採用しよう!」と盲目的に信じている(信じてしまっている)方々を見受けますが、それは完全な妄想です。
PLMソリューションの持つ機能を最大限に活用し、TOBE像を定義する。その上で、現状分析から現状とのギャップを正しく把握し、自分たちが現時点からどのように変革しなければならないかを組織として認識する。これが、改革構想企画フェーズの最大の目的となります。
(※ERPのFit to Standardはプロセスと機能に合わせるのに対し、PLMはプロセスではなく、機能とデータモデルに合わせる方式となります。エンジニアリングチェーンにおける各組織機能毎の業務範囲やプロセスは、製造業としての企業競争力その物だからです。)
(※OOTB : OUT of the BOXの略。製品を入手後すぐに使える、という意味で使われている。)

このフェーズでは、期待効果を推定し、システムリリースの後、新業務を実行した際の成功基準としてのKPIを定義しておくことも重要となります。
例えば、
 ・設計者工数▲30%
が目標だったとします。
どうやって▲30%を達成しようとするのかの道筋を付けるのが、改革構想企画そのものと言うことになります。
現状分析の結果と、TOBE像(改革コンセプト)のGAPが効果になりますので、複数の改革コンセプトのΣが、この目標値:工数▲30%になるよう改革構想を企画します。
それを整理した結果、例えば、
 ・情報探索工数 ▲XX%
 ・設計変更数 ▲YY%(現状値:AA/月⇒改革後:BB/月)
のように、最終目標である工数▲30%を要素分解したKPIを設定していきます。

後述の5.運用・改善・展開段階では、このKPIの達成度合いを元に、改善を進めて行くことになります。

また、これらの改革全体像を組み上げるには、PLMに精通したコンサルタントの活用が有効だと考えます。
自社で検討を進めておられるケースも見受けられますが、実現性に乏しかったり、実現できたとしても非常なコストが掛かる構想をされていたりすることも多々あります。
他社事例等、運用実現性も含めた様々な知見を持つ専門家に支援を仰ぐのは、改革の手戻り最小化、期間短縮において有効な選択肢と考えています。

3.新業務設計フェーズ

改革構想書が完成し、社内で合意が取れている段階です。
改革構想をインプットとして、新業務を設計していきます。
具体的には、新業務フローを策定し、誰が、いつ、何をするのか、そしてその際に新システムはどこでどう活用されるのか、を明確化していきます。

新業務フローにおける、新システムとのタッチポイントで求められる要件が、業務要件となります。
ここでも、PLMに精通したコンサルタントの知見活用が有効となります。
PLMパッケージの持つ標準機能を最大限活用した新業務フローとなるよう新業務設計していくことの近道となります。

4.PLM導入(システム構築)フェーズ

業務要件に従い、PLM導入(システム構築)を進めて行く段階です。
この段階から、本格的にベンダーのSE(システムエンジニア)が参画し、SE主導でシステム設計~システム開発が進みます。
システム設計においては近年、前述のFIT to Standardという概念で、パッケージソフトウェアの持つ標準機能にFittingしていくという手法を取ることもあります。
CRP(Conference Room Pirot)と呼ばれる方式で、今回の要件をどのように標準機能で実現するのかを検討していきます。
本件については、詳しくはまた別の機会にお話ししたいと思います。

また、事務局として注意すべきは、ステークホルダーがどんどん膨らんでくるので、そのマネジメントについて考えることです。
図10は、弊社がコンサルティング支援した事例ですが、当初15名程度で検討していましたが、システムリリース前では100名以上のメンバーのマネジメントとなりました。
メンバーだけでなく、各ポイントポイントで、トップマネジメントとどのようなコミュニケーションを取っていくべきかも重要な検討事項となります。

図10:PLM導入にあたってのステークホルダーの推移zoom拡大して大きくする
図10:PLM導入にあたってのステークホルダーの推移
5.運用・改善・展開フェーズ

新システムをリリースし、無事業務移行を終え、新しい業務のやり方を開始させた段階です。
当然ですが、新システムは、改革構想企画段階で描いた改革コンセプトを実現し、効果を得るための手段ですから、ここから効果獲得が開始される、と言うことになります。

しかし、思うようにいかないのが現実です。
当初推定した効果が100%達成できるケースは、ほとんど見受けられません。
大切なのは、そこで終わるのではなく、「何故、効果がこの程度しか得られないのか」と言う分析から、対策を打つことです。

そのために、改革構想企画段階で設定したKPIが威力を発揮します。
 ・目標値:設計変更数 現状値:100件/月⇒改革後:50件/月と、企画段階で試算し、
 ・実績値:設計変更数 改革後:80件/月だったとします。
すると、GAPは30件(80-50件)と言うことになります。
この30件が、何故削減できていないのかを分析し、新システムがうまく使われていない、当初想定した機能では80件が関の山、といった分析結果から、
前者であれば、追加教育を、後者であれば、新機能追加を検討していき、目標達成を目指すという活動を続けます。

さて、今回はPLM導入のステップと、各段階での実施事項、注意点について話を進めて決ました。
「PLM導入の進め方」シリーズも、次回の「PLMパッケージの選定について」で最終回となります。
次々回からは、PLM導入に欠かせない検討事項である「BOM」について解説していくシリーズを進めたいと思います。お楽しみに。

コラムテーマ

BOM連載
BOP連載
品番連載
BOM-Tips
PLM業種別課題解決
技術/設計開発AI活用
グローバルテクノロジーマネジメント

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