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PLMコラム ~PLM導入の進め方~

<執筆者>
NEC エンタープライズコンサルティング統括部
PLMグループ ディレクター 杢田竜太
2002年より、20年以上に渡って、製造業:特に設計を主体としたエンジニアリングチェーン領域におけるデジタル技術を活用した業務革新(PLM/BOM/コンカレントエンジニアリング/原価企画等)支援に従事。製造業を中心とするお客様に対して、設計開発プロセスにおける業務コンサルティングを手がけている。

執筆者

製造業では、需要変動・自然災害・サプライチェーンの断絶など、突発的環境変化に対応し、変化に強いものづくりを実現するため、そのカギとなるPLM導入を検討する企業が増えています。今回コラムでは、まず、PLMとは何か?について、歴史も交えて解説いたします。

1.「PLM」とは何か?

改めて、PLM(product life-cycle management)とは何を意味するのでしょうか?

Wikipediaにおいては「商品ライフサイクルマネジメント」の欄に、「PLMとは、製品/商品のライフサイクルを考慮したマーケティング手法のこと。事業会社において、これを実行する部門が製品戦略部である。」と書かれていますが、その定義に疑問を持った人も多いのではないでしょうか?
同じくWikipediaの「製品情報管理」の欄には、「製品情報管理(PDM)とは、PLM:製品の設計・開発・保守・廃棄・リサイクルなど、製品のライフサイクル全体を通して、製品関連情報を一元管理する考え方)の実現を支援するシステムである。」とあり、こちら方がイメージに合っているという方が多いと思います。

私の認識では、PLMとは大きく下記2つの意味で使われていることが多いと考えています。
①各種ITベンダーが提供するPLMパッケージソフトウェアのこと (Wikipediaでいう「製品情報管理」)
②製品/商品のライフサイクルを売上/利益といったビジネス指標としてマネジメントするためのコンセプトのこと (Wikipediaでいう「商品ライフサイクルマネジメント」に近いが、マーケティング手法というより製造業の事業戦略そのものを指していることが多い)

これらの2つの意味が混同されているケースがあるため、例えば経営者から「(上記②の意味での)PLMを検討せよ」と指示を受けた担当者が①のPLMシステムを検討し始め、話が噛み合わないという笑えない話もあります。

本コラムでは、上記①のことを「PLMソリューション」、②のことを「PLMコンセプト」と定義して話を進めたいと思います。

図1:PLMとは?
図1:PLMとは?

2.「PLMソリューション」の歴史

今でいう「PLMソリューション」は、1980年代からの「PDM」が発展したソフトウェアです。

コンピューター能力の発展により、PCでもCADが扱えるようになり、1980年代に一般企業での製図作業がドラフターからCADに置き換わっていきました。
それ以前は、図面は図庫と呼ばれる図面の倉庫で管理されており、設計者が描き上げた図面は、上司の承認印を押してもらった上で技術管理部門へ持って行き、技術管理部門が配付用のコピーを取って工場他へ配付した上で、図庫で正式図面を管理していました。
過去の図面を参照したい場合は、図庫から図面を持ち出すことから、現在でも過去の正式図面を取り出すことを「チェックアウト」と呼んでいます。(図庫という図面のホテルから、図面がチェックアウトする、とイメージするとわかりやすいですね。誰かが持って行くわけですから、その原図にはロックが掛かり、編集はできません。)

CADでの製図が進んでいくと、図面はまずは電子データ(2D図面)として作成されることになります。
これを管理するシステムとして、PDM(PDMシステム、PDMソリューション)は提供されました。
当時のPDMでは、図面管理機能(ステータス:仕掛/正式、履歴管理)、承認ワークフロー機能、配付機能などが主要機能で、これまでの上司席へ「承認お願いします!」と図面を持って行く業務や、技術管理部門の図庫管理業務が電子化されました。

コラムのコラム:とはいえ、当時の電子データとしての図面(2D図面)は、企業規程上、正式図としては扱われておらず、相変わらず紙の図面が正式図として扱われていました。主たる理由は電子データは「押印」が無いから。
そんな理由で、電子データ(2D図面)の図面管理(PDM)と、紙データの図面管理(図庫)の二重管理で業務効率化どころか、業務が増えてしまったケースが多々ありました。折角電子データで作った図面を印刷し、紙で押印し、それをまたスキャニングしてPDMに入れるという無駄な業務をやっていた企業も多いと思います。
実は、現在の2D図面⇒3D図面でも同じことが起こっています。
紙⇒電子データの図面(2D図面)において、当時も「押印が無いから」に加えて「サプライヤーはPDMを使えない、電子データ(2D図面)を参照できない」と言った理由で紙と2D図面の両方の管理が続けられてきましたが、現在も3D単独図(2D図面レス)に移行できず、結果的に非効率な業務になっていることが多いのではないでしょうか?過渡期である以上、止む無しという部分もありますが、今後来る3D単独図が当たり前の世界を見据えて取り組みを始めることが重要と思います。

その後、1990年代後半には、部品表管理機能がPDMに追加されることになります。
部品表とは「BOM」と呼ばれるもので、1980年代に発展したMRPⅡ(資源所要量計画)という生産計画/生産指示をするために必要なマスターデータとして考えられたデータモデルです。(詳細は、今後のコラムテーマ:BOM連載シリーズで解説します。)

図2:MRPとBOM
図2:MRPとBOM
図3:図面を読み取ってM-BOMを登録
図3:図面を読み取ってM-BOMを登録

元々「BOM」は、図面上の図枠に「部品構成欄」として記述されていた情報です。
集合記号であらわすと「図面⊃BOM(部品構成欄)」でした。
設計者が出す図面を生産部門が読み取って、生産管理システムに「BOM」を登録するということが一般的なシチュエーションでした。
しかし、「図面」はイメージ図である特性がある一方、「BOM」はメタデータとして管理することができる特性があり、当時発展してきたRDB(リレーショナルデータベース)での管理親和性が高く、BOMは図面から切り離して管理されることになってきました。このころから、E-BOM(設計BOM)、M-BOM(生産BOM)と言った概念が出てきたり、それらを一元管理する統合BOMといったコンセプトも登場しました。
PDMのBOM管理機能は、図面からBOMを独立させることにより、それまで設計部門は図面、生産部門はBOMといった考え方を崩し、BOMで設計⇒生産を繋ぐ(そのBOMに図面が関連付いている)という管理方式に変化していきました。

図4:BOMと図面
図4:BOMと図面

2000年代には、プロジェクト管理機能、3DCAD連携機能、含有化学物質管理機能、コスト積算機能など、PDMに様々な付加機能が登場し、この頃から「PDM」は、「PLMソリューション」と呼ばれだしました。
現在、様々な機能を持った「PLMソリューション」は、もはや設計部門のシステムではなく、企業全体、あるいは企業間コラボレーションを実現する基幹プラットフォームとしてのシステムになっています。

図5:NECが目指すPLMプラットフォームzoom拡大して大きくする
図5:NECが目指すPLMプラットフォーム

第1回は、PLMの定義とPLMソリューションの歴史について解説しました。
次回以降、成功のためのPLM導入の進め方、あるいは失敗しない進め方についての考察を続けていきたいと思います。


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