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飲食店のカスハラ(お客様からのハラスメント)対策とは?事例から対応策、相談先まで徹底解説

「お客様からの理不尽な要求や暴言に困っている」「スタッフがお客様からのハラスメントで精神的に参ってしまった」など、カスタマーハラスメント(カスハラ)に悩まされている飲食店経営者の方は少なくないのではないでしょうか。

近年、カスハラは深刻な社会問題として注目されており、2025年4月に東京都でカスハラ防止条例が施行されたなど、法的な対策も進んでいます。しかし、正当なクレームとカスハラの違いが分からない、適切な対応方法が分からないといった理由で、適切な対策を講じられずにいる経営者の方も多いのが現状です。

本記事では、飲食店におけるカスハラの具体例から、クレームとの明確な違い、実践的な対応方法まで詳しく解説します。さらに、タイプ別の具体的な対応例や、困った際の相談先についてもお伝えします。

最後まで読むことで、カスハラからスタッフを守り、安全で働きやすい職場環境を構築するための知識と実践的なノウハウを身につけることができます。大切なスタッフと店舗を守る経営を実現するため、ぜひご一読ください。

また、POSシステムはもちろん、モバイル・セルフオーダーシステム、テイクアウトやデリバリー、ポイント管理、予約システムなど、周辺サービスとの連携を含めた飲食店のDX推進に関するご相談は下記よりお問い合わせください。

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カスタマーハラスメント(カスハラ)とは

カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、お客様からの不適切な言動や要求により、スタッフの人格や尊厳を侵害し、精神的苦痛を与える行為を指します。

近年、この問題は深刻化の一途をたどっています。厚生労働省の調査によると、パワハラやセクハラは減少傾向にある一方で、カスハラのみが増加傾向を示している状況です。このデータは、現代社会におけるカスハラ問題の深刻さを如実に物語っています。

参考元:PDFカスタマーハラスメント対策起業マニュアル|厚生労働省(PDF)

これは飲食店においても、例外ではありません。些細なミスに対する執拗な謝罪要求、無理な値引きの強要、さらには「SNSで悪評を拡散する」といった脅迫的な言動まで、その手口は多様化しています。

こうした行為は、スタッフの心身に深刻なダメージを与えるだけでなく、店舗運営にも大きな支障をきたすため、経営者としては適切な対策を講じることが不可欠となっています。

飲食店側はカスハラ対策を講じる必要がある

飲食店経営者にとって、カスハラ対策はもはや選択肢ではなく、必須の取り組みとなりました。その背景には、法的な枠組みの整備が大きく関わっています。

東京都では2025年4月1日より「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」が施行されました。この条例により、事業者は「カスタマー・ハラスメントの防止に主体的かつ積極的に取り組む」ことが求められています。さらに、「必要な体制の整備、カスタマー・ハラスメントを受けた就業者への配慮、カスタマー・ハラスメント防止のための手引の作成その他の措置を講ずるよう努めなければならない」と明記されています。

参考元:new window東京都カスタマー・ハラスメント防止条例

東京都が全国初となるこの条例ですが、このような取り組みは今後、全国的に広がっていくものと考えられます。したがって、飲食店経営者の皆様には、法的義務としてだけでなく、スタッフの働きやすい環境づくりと店舗の持続的な発展のために、早期のカスハラ対策着手をおすすめします。

飲食店におけるカスハラの具体例

飲食店で発生するカスハラは、その手口や内容によって複数のパターンに分類できます。特に典型的なパターンには次のようなものが挙げられます。

  • 理不尽なクレームや過度な謝罪要求
  • 無理な値引きや無料提供の強要
  • SNSや口コミを利用した脅迫

実際の現場で起こりうる事例を理解することで、適切な対応策を講じることが可能になります。ここでは、これらについて詳しく解説します。

理不尽なクレームや過度な謝罪要求

このパターンは、飲食店で最も頻繁に発生するカスハラの一つです。些細なミスや通常の営業範囲内の出来事に対して、社会通念を大きく超えた謝罪や対応を執拗に求める行為が該当します。

具体的には、「料理の提供が5分遅れた」という程度の問題に対し、店長や責任者の呼び出しを要求し、土下座での謝罪を強要するケースがあります。また、「接客態度が気に入らない」として、特定のスタッフの解雇を求めたり、長時間にわたって説教を続けたりといった行為も含まれます。

さらに深刻なのは、過剰なサービスや対応を強要する事例です。通常のメニューにない特別料理の提供を無理に要求したり、他のお客様がいる中で特別扱いを求めたりするなど、営業に支障をきたす要求を繰り返します。

このような行為は、スタッフの精神的負担を増大させ、店舗運営にも深刻な影響を与えることになります。

無理な値引きや無料提供の強要

金銭的な要求を伴うカスハラは、飲食店の経営に直接的な損失をもたらす深刻な問題です。このケースでは、正当な理由がないにも関わらず、料金の支払いを拒否したり、不当な割引を要求したりする行為が典型的なパターンとなります。

よく見られる例として、「料理の味が気に入らない」「思っていたものと違う」といった主観的な理由で料金の支払いを拒むケースがあります。また、食事を完食した後になって「満足できなかった」として返金を要求したり、次回来店時の無料提供を約束させたりしようとする事例も頻発しています。

さらに悪質なケースでは、意図的に料理に異物を混入させて「異物が入っていた」と主張し、食事代の免除や慰謝料を要求する詐欺的な行為も報告されています。

SNSや口コミを利用した脅迫

デジタル時代の到来とともに、SNSや口コミサイトを悪用したカスハラが急増しています。このタイプの脅迫は、店舗の評判に直接的なダメージを与える可能性があるため、現代の飲食店経営者にとって最も警戒すべき問題の一つとなっています。

典型的な手口として、「悪い口コミを書く」「SNSで拡散する」といった脅し文句を使って特別対応を迫るケースがあります。実際に、些細な不満を大げさに表現した投稿をSNSに掲載し、それを理由に謝罪や金銭的補償を要求する事例も増加しています。

さらに深刻なのは、事実と全く異なる内容の悪評を意図的に投稿する「外食テロ」と呼ばれる行為です。料理に異物が混入していたという虚偽の写真を投稿したり、スタッフの接客態度について根拠のない中傷を書き込んだりなど、その手口は悪質化の一途をたどっています。

カスハラとクレームの違い

飲食店の現場では、正当なクレームとカスハラを適切に見分けることが極めて重要です。

両者を混同してしまうと、本来改善すべき問題を見逃したり、逆に不当な要求に屈してしまったりする危険性があります。そのため、次の4点について十分に理解しておくことが大切です。

  • 要求内容の妥当性
  • 表現方法と態度
  • 飲食店への影響と対応方法
  • 飲食店としての対応姿勢

ここでは、これらの観点から両者の明確な違いを解説します。

要求内容の妥当性

カスハラとクレームを区別する最も重要な判断基準は、要求内容に客観的な妥当性があるかどうかという点です。この違いを理解することで、適切な対応方針を決定できるようになります。

正当なクレームは、商品やサービスに関する具体的かつ妥当な不満や意見に基づいています。たとえば、注文した料理と異なるものが提供された、明らかに調理が不十分で食べられない状態だった、予約時間から大幅に遅れても案内されないといった、飲食店側に明確な過失や改善すべき点がある場合が該当します。

一方、カスハラでは事実と異なる主張や言いがかりなど、妥当性のない要求が特徴的です。「料理の味が個人的に合わない」という主観的な理由で全額返金を要求したり、「他店ではこうだった」という比較を根拠に過剰なサービスを求めたりするケースがこれに当たります。

また、実際には問題がない商品に対して「異物が混入していた」と虚偽の主張をするような悪質なケースも、妥当性を欠く典型例といえるでしょう。

表現方法と態度

要求の内容だけでなく、その表現方法や態度においても、クレームとカスハラには明確な違いが存在します。この違いを見極めることで、初期対応の方針を適切に判断できるようになります。

正当なクレームでは、社会通念上許容される範囲内での意見表明が行われます。冷静に問題点を説明し、改善を求める姿勢が基本となっており、感情的になったとしてもその程度は常識的な範囲にとどまります。また、店舗側の説明に耳を傾け、解決に向けた建設的な対話を行おうとする意思が感じられることも特徴の一つです。

対照的に、カスハラでは長時間の説教、執拗な暴言、威嚇的な態度など、社会通念を大きく超えた不適切な行為が見られます。具体的には、大声で怒鳴り続ける、土下座を要求する、「SNSで拡散するぞ」といった脅迫的な言動を用いるなどの行為が典型例です。

さらに、店舗側がどのような説明や対応を行っても聞く耳を持たず、一方的に要求を押し付けようとする姿勢も、カスハラの重要な特徴といえるでしょう。

飲食店への影響と対応方法

クレームとカスハラでは、飲食店に与える影響とそれに対する適切な対応方法が根本的に異なります。この違いを理解することで、店舗経営の質的向上とスタッフの働きやすさの両立が可能になります。

正当なクレームは、真摯に対応することで店舗の信頼度向上や商品・サービスの質の向上につながる貴重な機会となります。お客様の指摘により業務プロセスの改善点が発見できたり、新たなサービス開発のヒントを得られたりすることも少なくありません。また、適切な対応により顧客満足度が向上し、長期的な顧客関係の構築にも寄与します。

一方、カスハラはスタッフの心身に深刻な悪影響を及ぼし、最悪の場合は離職につながることもあります。また、不当な要求に応じてしまうと、同様の行為を誘発する危険性があり、店舗運営に長期的な悪循環をもたらします。

したがって、カスハラに対しては毅然とした態度で対応し、必要に応じて警察への通報や弁護士への相談も検討すべきです。場合によっては、お客様の出入り禁止措置も含めた厳格な対応が求められることもあります。

飲食店としての対応姿勢

クレームとカスハラに対する基本的な対応姿勢を明確に区別することは、店舗運営の根幹に関わる重要な方針といえるでしょう。この姿勢の違いをスタッフ全員が理解し、実践できる体制を構築することが不可欠です。

正当なクレームに対しては、誠実に向き合い、改善の機会として積極的に活用する姿勢が求められます。お客様の声に耳を傾け、問題の原因を真摯に分析し、再発防止策を講じることで、店舗全体のサービス品質向上につなげていきます。また、クレームを通じて得られた知見をスタッフ間で共有し、学習の機会として最大限活用することも重要な取り組みです。

一方、カスハラに対しては断固拒絶し、毅然とした対応を貫く姿勢が必要不可欠です。不当な要求に安易に応じることは、さらなるカスハラを誘発するだけでなく、真面目に働くスタッフのモチベーション低下を招く危険性があります。

カスハラの疑いがある場合は、お客様の出入り禁止措置も含めた厳格な対応を検討し、スタッフの安全と店舗の健全な運営を最優先に考えた判断を下すことが経営者としての責務といえるでしょう。

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飲食店のカスハラへの対応方法

効果的なカスハラ対策を実現するためには、幅広い視点で進めることが大切です。

  • 組織としての体制づくり
  • 対応マニュアルの整備と研修
  • カスハラ発生時の対応手順
  • スタッフのケアと再発防止

これらは単発的な対応ではなく、一貫した方針で策定することで、スタッフの安全確保と店舗運営の安定化を両立できます。

組織としての体制づくり

カスハラ対策の成功は、組織全体での一体的な取り組みにかかっています。まず経営者として明確な方針を示すことから始めなければなりません。「カスハラを許さない」という断固たる姿勢を社内に浸透させることで、スタッフが安心して業務に集中できる環境を構築できます。

具体的な体制として、スタッフ1人に対応を任せきりにしない仕組みの構築が重要です。カスハラが疑われる案件については、必ず上司や先輩スタッフが対応に加わり、複数人での対処を原則とします。また、社内に専門の相談窓口を設置し、問題が発生した際の報告ルートを明確化することも効果的です。

さらに重要なのは、いざという時に弁護士や専門機関に相談できる体制の事前準備です。顧問弁護士との契約や、カスハラ専門の法律事務所との連携体制を整備しておくことで、深刻なケースにも迅速に対応できるようになります。

こうした外部専門家との連携は、スタッフにとって大きな心理的支えとなり、職場の安全性向上にも寄与します。

対応マニュアルの整備と研修

実践的なカスハラ対策を実現するには、具体的な対応手順を明文化したマニュアルの整備が不可欠です。このマニュアルには、カスハラの典型例と適切な対応方法を詳細に記載し、どのスタッフでも一貫した対応ができるよう工夫する必要があります。

特に重要なのは、正当なクレームとカスハラを区別する明確な判断基準の設定です。たとえば、「大声での威嚇が5分以上継続した場合」「土下座や謝罪文の作成を要求された場合」「金銭的要求が商品価格を大幅に超える場合」など、具体的な基準を設けることで、現場での迷いを最小限に抑えられます。

また、定期的な研修の実施により、マニュアルの内容をスタッフ全員に徹底することが重要です。ロールプレイング形式での実践練習を取り入れることで、実際のカスハラ場面でも冷静に対応できるスキルを身につけることができます。研修では、感情的にならずに毅然とした態度を保つ方法や、証拠保全の重要性についても併せて指導することが効果的です。

カスハラ発生時の対応手順

カスハラが発生した際の対応手順を体系化することで、被害の拡大防止と適切な解決を図ることができます。まず初期対応として、通常のクレーム対応フローに従って冷静に状況を把握することから始めます。この段階では、相手の主張を一旦聞き、問題の本質を見極めることが重要です。

カスハラの疑いが強まった場合は、事前に定めた連絡フローに従って責任者への情報共有と引き継ぎを速やかに実行します。同時に、お客様の主張や言動を詳細に記録し、可能な限り録音や録画による証拠の確保を行います。これらの証拠は、後の法的対応や再発防止策の検討において重要な材料となります。

対応方針の決定については、現場だけでの判断は避け、必要に応じて本部や経営陣と協議した上で店舗としての統一見解を示すことが重要です。不当な要求に対しては明確に拒否の意思を示し、法的措置も辞さない姿勢を伝えることで、相手方の行動抑制効果も期待できます。さらに深刻なケースでは、躊躇することなく警察への通報や弁護士への相談を実行に移すことが必要です。

スタッフのケアと再発防止

カスハラ被害を受けたスタッフへの適切なケアは、組織の責任として最重要課題の一つです。カスハラによる精神的ダメージは想像以上に深刻であり、適切なサポートを怠ると離職や精神的な不調につながる危険性があります。

まず、被害を受けたスタッフとの個別面談を実施し、心理的な状況を丁寧に把握することから始めます。必要に応じて産業医や専門カウンセラーとの面談を行い、専門的なメンタルヘルスケアを受けられる体制を整備することも重要です。また、当該スタッフが安心して業務に復帰できるよう、勤務シフトの調整や業務内容の見直しも検討すべきでしょう。

再発防止については、個別事例の詳細な検証を通じて課題を抽出し、対応マニュアルの継続的な改善を図ることが重要です。過去の事例をスタッフ間で共有し、類似のカスハラに対して一貫した対応ができるよう知識の蓄積と共有を進めましょう。

飲食店におけるカスハラの具体的な対応例

実際のカスハラ対応では、タイプ別の具体的な対処法を習得することが極めて重要です。ここでは、飲食店で頻発する5つの典型的なケースについて、実践的な対応手順を詳しく解説いたします。

  • 時間拘束型カスハラへの対応
  • 暴言・威嚇型カスハラへの対応
  • SNS・インターネット上での誹謗中傷への対応
  • 商品返金要求への対応
  • 商品回収要求への対応

現場での迅速な判断と適切な行動指針として活用してください。

時間拘束型カスハラへの対応

ここでは例として、ファミリーレストランで料理の提供が10分遅れたことに対してお客様が激怒し、閉店時間の22時を過ぎても帰ろうとせず、「責任者を呼べ」「どういう教育をしているんだ」と2時間以上にわたって説教を続けている状況での対応方法をご紹介します。

第一段階として、相手の話を一通り聞き「貴重なお時間をいただき申し訳ございません」と謝罪します。その上で「当店として改善できる点は○○でございます」と具体的な改善策を提示し、理解を求めることが重要です。

次の段階では、同じ話の繰り返しが30分以上続いた場合、「他のお客様のご迷惑になっており、また営業時間も終了しております」と客観的事実を伝え、丁寧に退去をお願いします。この際「本日はお忙しい中お時間をいただき、ありがとうございました」と感謝の気持ちを示すことが重要です。

最終的にそれでも応じない場合は、「これ以上の対応は困難なため、警察にご相談いただくか、弁護士を通じて対応させていただきます」と明確に伝え、実際に110番通報を検討しましょう。

暴言・威嚇型カスハラへの対応

ここでは例として、カジュアルレストランでテーブル席が満席のため待ち時間が発生することを伝えたところ、「ふざけるな!こっちは客だぞ!」と大声で怒鳴り、「お前の上司を出せ!」と威圧的な態度を取り続けているお客様への対応をご説明します。

初期対応では「申し訳ございませんが、大きなお声は他のお客様のご迷惑となりますので、お控えいただけますでしょうか」と冷静に注意します。同時に近くにいる先輩スタッフに目配せし、複数人での対応体制を整えることが必要です。

暴言が続く場合には「念のため、お客様とのやり取りを記録させていただきます」と伝え、スマートフォンでの録音を開始します。「お客様のご意見を正確に把握するためですので、ご了承ください」と説明することで、相手への抑制効果も期待できます。

威嚇行為がエスカレートし、他のお客様やスタッフの安全が脅かされる場合は「申し訳ございませんが、このような状況では警察にご相談いただくしかございません」と伝え、速やかに110番通報を実行しましょう。

SNS・インターネット上での誹謗中傷への対応

ここでは例として、和食レストランでお客様が「料理に髪の毛が入っていた」という虚偽の写真をInstagramに投稿し、「最悪の店。二度と行かない」「保健所に通報する」といったコメントとともに拡散され、店の評判が急激に悪化している状況での対応策をご紹介します。

まず事実確認を徹底的に行います。該当する時間帯の調理スタッフ、サービススタッフ全員に聞き取りを実施し、実際にそのような事案があったかを検証します。同時に店内の防犯カメラの映像も確認し、客観的証拠を収集することが重要です。

虚偽であることが確認できた場合、Instagramの運営会社に対して「事実と異なる投稿による名誉毀損」として削除依頼を提出します。また、同時に該当投稿のスクリーンショットを保存し、後の法的手続きに備えて証拠を保全しましょう。

削除されない場合や被害が拡大する場合は、弁護士に相談してプロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求を検討します。また「誹謗中傷ホットライン」などの専門機関にも相談し、対策を講じることも必要です。

商品返金要求への対応

ここでは例として、寿司店で1週間前に来店したお客様が「あの時食べた寿司で腹痛になった。病院にも行った」と主張し、レシートは紛失したとしながらも食事代3,000円の返金と慰謝料5万円を要求してきた状況での対応方法をご説明します。

初期対応では「ご体調を崩されたとのこと、心配しております」と相手の体調を気遣った上で、「正確な状況把握のため、差し支えなければ診断書や領収書を拝見させていただけますでしょうか」と資料の提示を求めます。

診断書等の提示がない場合「お客様の安全を第一に考え、まずは医師の診察を受けていただくことをおすすめいたします。初診費用については当店で負担いたします」と提案します。ただし「調査のための費用負担」であることを明確にし、責任を認めたわけではないことを伝えることが重要です。

慰謝料等の法的責任に関わる要求については「そのようなご要求については、弁護士を通じて対応させていただきます」と回答し、安易な金銭的合意は避けます。さらに、同一人物から繰り返し要求があった場合は、詐欺の可能性も考慮して警察への相談も検討すべきでしょう。

商品回収要求への対応

ここでは例として、ハンバーガーショップでお客様が「テレビで見たが、このハンバーグに使われている牛肉は危険な病気の牛のものだ」と根拠のない主張をし、「すぐに全商品を回収して販売を停止しろ。でなければ保健所と消費者庁に通報する」と要求してきた状況での対応をご紹介します。

まず「お客様のご指摘を重く受け止めております」と相手の懸念に理解を示した上で、「当店では食品衛生法に基づき、安全な食材のみを使用しております。使用している牛肉の産地や安全性について、資料をご用意いたします」と具体的な安全証明を提示します。

科学的根拠のない主張が続く場合「食品の安全性については、保健所等の公的機関による検査基準に従って判断されるものです。当店としては、法的基準を満たした食材のみを使用しており、現時点で回収の必要性は認められません」と明確に回答します。

さらに執拗な要求が続く場合「お客様のご懸念については十分にお聞きしました。今後は書面でのやり取りとさせていただきます」と伝え、店舗での直接対応を終了します。実際に虚偽の通報がなされた場合は、偽計業務妨害として法的措置を検討することも伝えることが必要です。

カスハラに悩んだ際の相談先

カスハラ問題の解決には、適切な相談先の選択と活用が極めて重要な要素となります。

問題の性質や緊急度に応じて次のような相談窓口を使い分けることで、効果的な解決策を見出すことができます。

  • 警察への相談
  • 弁護士への相談
  • 店舗内での対応体制の構築
  • その他の相談先

ここでは、それぞれの特徴と活用方法を詳しく解説いたします。

警察への相談

カスハラが犯罪行為のレベルに達した場合、警察への相談は最も即効性のある解決手段となります。脅迫罪、強要罪、恐喝罪、威力業務妨害罪、不退去罪、暴行罪、名誉毀損罪など、多くのカスハラ行為が刑法に抵触する可能性があることを理解しておくことが重要です。

警察対応の最大のメリットは、その即時性にあります。110番通報により、危険な状況を迅速に鎮静化できるため、スタッフの身の安全が脅かされている緊急事態では躊躇なく活用すべきです。たとえば、お客様が大声で威嚇し続ける、退去要求に応じずに居座る、物を投げつけるといった行為が継続している場合は、直ちに通報を検討しましょう。

効果的な警察対応のためには、緊急時の連絡方法を事前にマニュアル化しておくことが重要です。「○○区△△町の飲食店○○です。顧客とトラブルになり、退去を求めても応じません。威嚇的な言動が続いており、危険な状況のため警察官の緊急出動をお願いします」といった具体的な通報文例を準備し、スタッフが冷静に対応できる体制を整備しておきましょう。

弁護士への相談

自社での対応が困難な場合や、長期化する不当要求への対処として、弁護士への相談は極めて有効な選択肢となります。法律の専門家として、個別のケースに応じた適切な対処方法についての助言を受けられるだけでなく、必要に応じて直接的な対応を依頼することも可能です。

弁護士活用の大きなメリットは、スタッフを精神的負担から解放できる点にあります。悪質なクレーマーへの対応を弁護士に委託することで、現場スタッフは本来の業務に集中でき、店舗運営の正常化を図ることができます。また、弁護士からの正式な文書による警告は、相手方に対して強い抑制効果を発揮することも期待できます。

さらに、カスハラ対策としての社内マニュアル作成やスタッフ研修についても、専門的なサポートを受けることが可能です。予防的措置から事後対応まで包括的な支援を受けられるため、長期的なカスハラ対策の構築において弁護士との連携は不可欠といえるでしょう。

店舗内での対応体制の構築

外部の専門機関への相談と並行して、店舗内部での対応体制を充実させることも極めて重要な取り組みです。この内部体制の強化により、カスハラの初期段階での適切な対応と被害の最小化を図ることができます。

まず基本となるのは、複数人での対応体制と詳細な記録保存の仕組み作りです。カスハラが疑われる案件については、必ず2名以上のスタッフで対応し、一人のスタッフに過度な負担をかけないよう配慮します。同時に、「いつ・どこで・どのような問題が発生したか」を5W1Hで整理し、会話の内容や相手の態度について詳細な記録を残すことが重要です。

また、意思決定プロセスの明確化も不可欠な要素となります。担当者一人で重要な判断を行わず、必ず店長や経営者との連携を取れる体制を構築します。特に重要なのは、安易に相手の要求を受け入れず、書類の作成・署名・捺印は絶対に行わないという原則の徹底です。

これらの行為は後々の法的トラブルの原因となる可能性があるため、どのような状況でも避けるべき行為としてスタッフに周知徹底する必要があります。

その他の相談先

警察や弁護士以外にも、カスハラ問題の解決に活用できる相談窓口が複数存在します。これらの選択肢を理解し、状況に応じて適切に活用することで、より効果的に問題解決へ向かうことができるでしょう。

保険を活用した相談体制も有効な選択肢の一つです。カスハラ対応に特化した保険商品に加入している場合、専門的な相談サービスを利用できるだけでなく、法的措置にかかる費用の補償も受けられる可能性があります。毎月の保険料は発生しますが、いざという時の安心感と迅速な対応体制を考慮すると、検討に値する選択肢といえるでしょう。

さらに、行政機関による相談窓口の活用も重要な選択肢です。厚生労働省をはじめとする関係省庁では、カスハラ対策に関する相談体制の整備を進めており、今後はより充実したサポートが期待できます。また、飲食業界の業界団体が提供する相談サービスや情報提供も、同業他社の事例や業界特有の対策を学ぶ上で貴重な情報源となります。

これらの多様な相談先を組み合わせることで、カスハラ問題に対する多層的な防御体制を構築することが可能になります。

カスハラへの正しい知識と対応でスタッフと店舗を守る経営を実現しましょう

カスタマーハラスメントは、スタッフの心身の健康と店舗運営の両方に深刻な影響を与える現代的な課題です。

しかし、適切な知識と対応策を身につけることで、この問題は確実に解決できます。組織としての明確な方針設定、実践的なマニュアル整備、そしてスタッフへの継続的な研修により、安全で働きやすい職場環境を構築することが可能です。

また、効率的な店舗運営の実現には、カスハラ対策と併せて業務全体のデジタル化も重要な要素となります。NECが提供するサブスクリプション型POSシステム「NECモバイルPOS」は、多彩な外部サービスとの連携による売上管理や顧客対応の記録化機能で、カスハラ事案の証拠保全や分析にも活用できます。

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