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客単価とは?計算方法から飲食店での具体的に単価を上げる方法まで徹底解説

飲食店経営において客単価の向上は、売上アップを実現するための重要な戦略です。「もっと客数を増やしたい」と考えがちですが、同じ客数でも客単価を上げることができれば、効率的に売上を伸ばすことが可能です。
しかし、「どうすれば効果的に客単価を上げられるのか」「客単価が下がってしまう原因は何か」と悩む経営者の方も多いのではないでしょうか。
本記事では、飲食店における客単価の基本的な定義から、計算方法、客単価分析のメリット、客単価が低下する原因、そして客単価を向上させるための具体的な方法まで、体系的に解説します。
アップセル・クロスセル戦略から魅力的なメニュー設計、高原価率メニューの活用方法まで、すぐに実践できる施策を紹介していますので、客単価アップを目指す飲食店経営者の方はぜひ最後までお読みください。
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客単価とは

客単価とは、飲食店経営において最も重要な経営指標の一つで、お客様1人が1回の来店で支払う平均金額を意味します。売上を構成する基本要素「客数×客単価」の片方であり、集客力とともに収益力を測る重要な尺度です。
この客単価という数値は単なる平均値以上の意味を持ち、店舗のポジショニングやターゲット顧客層、サービス価値の適切さを表す指標でもあります。
客単価は経営戦略を立てる際の基礎となるだけでなく、メニュー構成の最適化、価格設定の妥当性、スタッフの接客力など多角的な分析に活用できます。さらに、時間帯別・曜日別・季節別の客単価変動を把握することで、より効果的な経営施策の立案が可能になるでしょう。
客単価の向上は、新規顧客獲得よりも低コストで実現できる売上アップの手法として、特に競争が激しい飲食業界で注目されています。
客単価の計算方法

客単価を算出する基本計算式は非常にシンプルです。
客単価 = 売上 ÷ 客数
たとえば、あるレストランの1日の売上が15万円、来店客数が60人だった場合、客単価は次のように計算できます。
客単価 = 150,000円 ÷ 60人 = 2,500円
計算の際に注意すべき点は、「客数」は注文数ではなく実際の来店人数であることです。このとき、同じ人が複数回来店した場合も、それぞれ別の客としてカウントします。
また、より詳細な分析のためには、時間帯別や曜日別、ランチとディナーなど区分けして計算するとよいでしょう。たとえば、ランチタイムの客単価はディナータイムより低い傾向があるため、それぞれの客単価と構成比を把握することで、より効果的な売上戦略を立てられます。
さらに店舗のコンセプトに合わせた客単価目標を設定することも重要です。過去データの分析を通じて適切な目標を定めるようにしましょう。
客単価を分析するメリット

客単価を定期的に分析することで、飲食店経営に次のようなメリットが生まれます。
- 経営戦略が立てやすくなる
- 商品開発に役立てることができる
- 競合との差別化ポイントが明確になる
- 売上向上に低コストで取り組める
- 売上予測の精度が高まる
客単価分析を習慣化することで、感覚的な経営から数値に基づいた科学的な経営へと進化させることができるでしょう。
経営戦略が立てやすくなる
客単価を時間帯別、曜日別、季節別などさまざまな角度から分析することで、飲食店の経営戦略を立案する際の具体的な根拠が得られます。
たとえば、ランチタイムは客数が多いものの客単価が低く、ディナータイムは客数が少ないが客単価が高いというデータが出た場合、ランチメニューの単価を上げる施策やディナータイムの集客施策など、的確な戦略を立てることが可能になります。
また、客単価データの推移を見ることで、キャンペーンや価格改定の効果測定ができ、どのような施策が実際に効果的だったかを数値で把握できます。たとえば、ハッピーアワーの導入で平日夕方の客単価が20%上昇したなど、具体的な成果を可視化できます。
さらに、客層ごとの客単価分析も重要です。家族連れ、カップル、ビジネス利用など、どの客層が高い客単価をもたらしているかを把握することで、店舗のメインターゲットを明確にし、広告宣伝や店舗設計などの全体戦略を最適化できるでしょう。
このように客単価分析は、感覚ではなく数値に基づいた戦略立案の基盤となります。
商品開発に役立てることができる
客単価データは新商品開発や既存メニューの改良においても貴重な資料となります。どのカテゴリーのメニューが高い収益をもたらしているかを分析することで、新メニュー開発の方向性を決定できます。
たとえば、魚料理の平均客単価が肉料理より15%高いことが判明した場合、魚料理のラインナップを強化するのが効果的とわかります。さらに、その中でも特に高級魚を使った料理の評価が高ければ、そうした食材を活かした新メニューの開発が有効でしょう。
また、客単価の低い時間帯や曜日に特化したメニュー開発も効果的です。午後の空き時間帯にカフェタイム限定のスイーツセットを導入したり、平日限定の時間制約のあるビジネスパーソン向けに「すぐに提供できるクイックランチ」を開発したりするなど、時間帯特性に合わせた商品開発が可能になります。
さらに季節変動や特定イベント時の客単価データからは、季節限定メニューの開発ヒントも得られます。
このように客単価分析は、顧客ニーズに合った具体的な商品開発の根拠となるため、メニュー開発の無駄を省きながら効果的な新商品を生み出せる重要な手法となるでしょう。
競合との差別化ポイントが明確になる
客単価を競合店と比較分析することで、自店の市場ポジショニングを客観的に把握できるようになります。たとえば、同じエリアの類似店舗より客単価が高い場合は、提供する価値や品質の高さがお客様に認められている証拠であり、その強みをさらに強化する戦略が有効でしょう。反対に低い場合は、価格帯の見直しやメニューの付加価値向上など、改善すべきポイントが明確になります。
また、客単価の内訳(飲み物の注文率、デザートの注文率など)を分析することで、競合と比較した自店の特徴も見えてきます。たとえば、メイン料理の単価は同等でも、ドリンクやデザートの注文率が低いことが判明すれば、その部分を強化する差別化戦略を立てることができます。
このように客単価分析は、漠然とした「他店との違い」を数値として可視化し、効果的な差別化戦略を構築するための具体的な指標となるのです。
売上向上に低コストで取り組める
客単価向上は、新規客獲得と比較して非常にコスト効率の良い売上増加策です。新規のお客様を獲得するには、広告費や宣伝費などの大きな投資が必要ですが、すでに来店しているお客様の客単価を上げる施策は、メニュー改善やスタッフの接客トレーニングなど比較的少ない投資で実施できます。
たとえば、おすすめのドリンクを声掛けするだけでも、ドリンク注文率が上がり客単価向上につながります。また、定番メニューにトッピングやサイドメニューのオプションを追加する程度の小さな変更でも、大きな効果が期待できます。さらに、メニュー表のデザイン変更やPOPの設置など、低コストで実施できる施策も多数あります。
このように客単価向上は、大規模なリニューアルや広告キャンペーンなどの大きな投資をせずとも、工夫次第で売上アップを実現できる効率的な経営改善手法といえるでしょう。
売上予測の精度が高まる
客単価データを蓄積し分析することで、将来の売上予測の精度が大幅に向上します。単に「何人来店するか」だけでなく「1人あたりいくら使うか」という視点が加わることで、より正確な売上予測が可能になります。たとえば、過去の同時期における客単価と来店予測数を掛け合わせることで、今後の売上をより正確に予測できるようになります。
また、天候や曜日、イベントなどの外部要因と客単価の関係性も見えてくるため、「雨の日は客単価が下がる傾向がある」「花火大会の日は客単価が上がる」といった具体的な予測ができるようになります。これにより、仕入れや人員配置の最適化も可能になります。
さらに、新メニュー導入や価格改定を行う際も、過去の客単価変動データを参考にすることで、その影響をより正確に予測できるようになります。結果として、資金繰りやキャッシュフロー管理の精度も高まり、経営の安定化に大きく貢献するでしょう。
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客単価が低下する原因

客単価の低下は飲食店の収益性に直接影響を与える重要な問題です。原因を正確に特定することで、適切な対策を講じることができるでしょう。客単価低下は一時的な現象と思われがちですが、放置すると長期的な収益悪化につながるリスクがあります。
ここでは、飲食店で頻繁に見られる客単価低下の主要な原因について詳しく解説します。
値下げやセールの無計画な実施
計画性のない値下げやセールの実施は、一時的な売上増加をもたらす可能性がありますが、長期的には客単価の低下を招きます。特に頻繁に値引きやキャンペーンを行うと、お客様にはセール時のみ来店する「セール待ち」の心理が形成されてしまいます。
たとえば、毎月第一週に20%オフセールを継続的に実施していると、お客様はその時期だけを狙って来店するようになり、通常価格での購買意欲が低下します。またセールを頻繁に行うことで、商品やサービスの価値そのものが低く見積もられる「価値の希薄化」も発生します。
特に高品質・高価格帯をコンセプトとする飲食店では、安易な値引きが店舗イメージを損なう恐れもあります。値下げやセールを実施する際は、「期間限定メニュー」など付加価値を伴う形にするか、年に数回の特別イベントとするなど、ブランド価値を損なわない戦略的なアプローチが必要です。
一人あたりの注文数の減少
客単価低下の主要因として挙げられるのが、一人あたりの注文数の減少です。これは多くの場合、お客様の満足度や購買意欲の低下に起因しています。
たとえば、新メニューを導入したものの、魅力的な説明やビジュアルが不足していると、お客様の関心を引くことができず追加注文につながりません。また、ドリンクメニューの品揃えが乏しい、デザートの魅力が伝わっていないなどの理由で、メイン料理だけで食事を終えてしまうケースも少なくありません。
接客面では、料理の提供タイミングが早すぎると追加注文の機会を逃したり、スタッフが忙しそうにしているとお客様が注文を控えたりすることもあります。さらに、席の回転率を上げることばかりに意識が向いていると、スタッフが無意識に「早く食べて帰ってほしい」という雰囲気を出してしまい、お客様がゆっくり楽しむための追加注文を控えるケースもあるでしょう。
このように注文数の減少は、メニュー構成、ビジュアル訴求、接客タイミングなど複合的な要素が絡み合っていることが多いため正確な分析が必要です。
商品・サービスの品質低下による顧客数減少
商品やサービスの品質低下は、お客様の信頼を損ない、リピート率の低下と共に客単価も悪化させる大きな原因となります。たとえば、原価削減のために食材の質を落としたり、提供量を減らしたりすると、お客様はその変化に敏感に反応します。
特に味の変化や品質低下を感じたお客様は、次回の来店時により安価なメニューを選ぶ傾向が生まれます。「前回よりも良くない」という印象を持ったお客様は、「できるだけ損をしたくない」という心理が働き、高額メニューの注文を控えるようになるのです。
また、スタッフの接客品質の低下も大きな影響を与えます。忙しさを理由に説明が雑になったり、おすすめメニューの提案が減ったりすると、お客様は「このお店では特別な体験は期待できない」と感じて、必要最低限の注文だけで済ませるようになります。
品質低下は短期的なコスト削減には有効かもしれませんが、長期的にはお客様の信頼喪失による客単価と客数の両方の低下を招く、最も避けるべき原因といえるでしょう。
商品ラインナップの戦略ミス
商品ラインナップの戦略的なミスも客単価低下の主要因になります。特に多いのが、集客目的で低価格メニューを増やしたところ、既存の高単価メニューからの流出が起きるというケースです。
たとえば、通常のコース料理(4,000円)に加えて、リーズナブルなお気軽セット(2,000円)を導入したとします。これにより新規客の獲得には成功したものの、これまでコース料理を注文していたお客様までもが安価なお気軽セットに移行してしまえば、全体の客単価は大幅に低下してしまいます。
また、メニュー数を増やしすぎることで「選択肢過多」の状態を生み出し、お客様の選択を困難にしてしまうケースもあります。選択肢が多すぎると決断が遅れたり、満足度が下がったりすることがあり、結果的に「無難な選択」として中・低価格帯の商品が選ばれやすくなります。
さらに、高単価メニューと低単価メニューの価値差が不明確な場合も問題です。品質、量、希少性などといった価格差に見合った明確な価値を示せていないと、お客様は必然的に低価格商品を選択します。商品ラインナップを構築する際は、各価格帯の価値を明確に差別化し、顧客属性を意識した設計が不可欠です。
客単価を上げるには

客単価を向上させることは、顧客数を増やすことなく売上を伸ばせる効率的な方法です。そして、適切な戦略を選択し実行することで、顧客満足度を損なわずに客単価を増加させることが可能です。
ここでは、飲食店経営者が明日から実践できる具体的な客単価向上策を紹介します。これらの方法は単独でも効果がありますが、複数の施策を組み合わせることでより大きな成果を得ることができるでしょう。
商品単価を上げる
商品単価を上げることで、最も直接的に客単価向上につなげることができます。ただし、単に価格を引き上げるだけでは顧客離れを招く恐れがあるため、価値の向上と組み合わせた戦略的な実施が重要です。
まず、価格改定の際は必ず「価値の見える化」を心がけましょう。たとえば、「より高品質な国産食材を使用するため」「熟練シェフの手間暇をかけた調理法を導入するため」など、価格上昇の理由を明確に示すことでお客様の納得感を高められます。メニュー表やPOPなどに食材の産地や調理法の特徴を記載するのも効果的です。
また、価格は一度に全メニューを上げるのではなく、段階的に実施するのがおすすめです。特に人気メニューや看板メニューは最後に価格改定するなど、お客様の反応を見ながら慎重に進めましょう。さらに、季節限定メニューなど新商品を投入する際に、今までより少し高めの価格設定からスタートする方法も有効です。
価格と価値のバランスが取れていれば、お客様は高い価格でも満足してくれます。むしろ適正な価格設定は、店舗のブランド価値向上にもつながるでしょう。
アップセルを提案する
アップセルとは、お客様が検討中の商品よりも高単価の商品を提案する販売手法です。たとえば、通常サイズのステーキを注文しようとしているお客様に対して「+500円でグレードの高い和牛に変更できます」と提案することがアップセルにあたります。
アップセルを成功させるポイントは、単に「高い方がいいですよ」と勧めるのではなく、上位商品の具体的なメリットを伝えることです。「食感が格段に良くなります」「希少部位なので香りが際立ちます」など、お客様が納得できる価値を明確に説明しましょう。また、価格差が大きすぎるとお客様は躊躇するため、通常価格の20〜30%増程度の適度な価格差に設定するのが効果的です。
さらに、アップセルのタイミングも重要です。注文時や料理提供前の少し待っている時間などが最適です。お客様が食事を楽しみにしている気持ちが高まっているタイミングで提案すると、受け入れられやすくなります。
なお、すべてのお客様にアップセルを提案するのではなく、お客様の様子や予算に合わせて判断することが大切です。押し売りと感じさせないよう、適切なお客様に適切なタイミングで提案しましょう。
クロスセルを実施する
クロスセルとは、お客様が購入した(または購入予定の)商品に関連する別の商品を追加で提案する販売手法です。飲食店では、メイン料理を注文したお客様にドリンクやサイドメニュー、デザートなどを追加提案するケースが典型的なクロスセルです。
クロスセルを効果的に実施するためのポイントは、相性の良さを強調することです。たとえば「このワインはステーキとの相性が抜群です」「このデザートは食後のすっきり感を演出します」など、組み合わせることでより満足度が高まるというメリットを伝えましょう。そして、視覚的にも訴求するため、メニュー表に「おすすめの組み合わせ」を記載するのも効果的です。
また、提案するタイミングも重要です。ドリンクは料理注文時、デザートは食事の終盤など、お客様の食事の流れに合わせたタイミングで提案しましょう。さらに、スタッフ全員がクロスセルの基本を理解し、自然な会話の中で提案できるようトレーニングすることも大切です。
クロスセルの魅力は、お客様の食事体験を豊かにしながら客単価を上げられる点にあります。押し付けがましくならないよう、お客様のニーズや状況に合わせた自然な提案を心がけましょう。
セット販売・まとめ買いを促進する
セット販売やまとめ買いの促進は、一度の注文で複数の商品を購入してもらうことで客単価を効率良く上げる方法です。たとえば、単品で提供していた料理をドリンクやサラダ、デザートとセットにした「コース料理」や「セットメニュー」として提供するのが典型的な例です。
セット販売を成功させるポイントは「お得感」の演出です。単品で購入するよりも5〜15%程度安くなるように価格設定すると、お客様は「セットの方がお得」と感じて選択しやすくなります。メニュー表にも「単品価格より◯◯円お得!」と明示すると効果的です。
また、ターゲット顧客に合わせたセット内容の設計も重要です。たとえば、ランチタイムの会社員向けには「時間がない」という悩みを解決する「提供1分スピードランチセット」、家族連れには「お子様大満足セット」など、お客様の状況やニーズに合わせたセット設計が効果的です。
さらに、季節限定セットや記念日向けの特別セットなど、期間や用途を限定したセットを用意することで、通常より高単価のセットでも受け入れられやすくなります。お客様の「特別な体験」を演出するセット設計を工夫してみましょう。
3段階の価格設定を導入する
3段階の価格設定(松竹梅方式)は、同じ種類の商品やメニューを3つの価格帯で提供することで、お客様の選択心理に働きかける効果的な手法です。たとえば、ステーキなら「A5ランク和牛(上)」「国産牛(中)」「輸入牛(下)」というように設定します。
この方法が効果的なのは、人間の心理として「極端な選択を避ける傾向」があるためです。行動経済学では「極端回避性」と呼ばれるこの性質により、3つの選択肢があると真ん中のオプションが選ばれやすくなります。そのため、最も収益性の高い商品を中間価格に設定することで、客単価を効率的に上げることができます。
効果的な3段階設定のポイントは、価格差を明確にすることです。上・中・下の価格帯を「2倍・1.5倍・1倍」程度の比率で設定すると、選択肢の違いが明確になります。また、それぞれの違いを分かりやすく説明することも重要です。単に「上中下」と表記するだけでなく、使用している食材の違いや調理法の特徴などを具体的に記載しましょう。
この手法は多くの業態で活用できる汎用性の高い方法です。コース料理、ドリンク、デザートなどさまざまなカテゴリーで3段階設定を導入することで、全体の客単価向上につなげることができます。
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飲食店における客単価の注意点

客単価を上げる施策を実施する際には、飲食店特有の注意点があります。単に数字を追うだけでなく、お店のコンセプトや顧客体験全体との整合性を十分に考慮しましょう。客単価向上が結果的に顧客満足度の低下や来店頻度の減少につながっては本末転倒です。
ここでは、飲食店経営者が客単価向上の施策を実施する際に押さえておくべき重要なポイントについて解説します。
魅力的なメニュー設計を心がける
客単価向上の基盤となるのは、お客様の心を惹きつける魅力的なメニュー設計です。単に価格を上げるのではなく、メニューそのものの価値を高めることが重要です。
効果的なメニュー設計のポイントは、まず「視覚的な魅力」です。メニュー表には鮮明で美味しそうな料理写真を使用し、フォントや色使いにも気を配りましょう。
次に「ネーミングの工夫」も重要です。「牛肉のソテー」よりも「厳選黒毛和牛の香草バターソテー」のように具体的で食欲をそそる名称にすることで、お客様の関心と期待値が高まります。さらに料理の特徴や食材の産地、調理法などを簡潔に記載すると、商品の価値がより伝わりやすくなります。
また、メニューの配置にも戦略が必要です。メニュー表の左上(縦書きメニュー表の場合は右上)や最初と最後のページは特に目につきやすいため、利益率の高い商品や看板メニューを配置しましょう。季節限定メニューやシェフのおすすめを別枠で強調表示するのも効果的です。
お店の状況を踏まえた単価設定
客単価向上策を導入する際は、自店の現状を正確に把握し、適切な目標設定をすることが重要です。すべての飲食店に同じ方法が通用するわけではなく、店舗の立地、客層、競合状況などに応じたアプローチが必要です。
まず、現在の客単価の詳細分析から始めましょう。時間帯別、曜日別、客層別など多角的に分析し、どの部分に改善の余地があるかを特定します。たとえば「ランチタイムは客数が多いが客単価が低い」「週末は家族連れが多いがドリンク注文が少ない」といった具体的な課題を見つけることが重要です。
次に、競合店のリサーチも欠かせません。同エリアの類似店舗と比較して自店の価格帯が適切かどうかを検証しましょう。過度に高い価格設定は顧客離れを招く恐れがあり、逆に低すぎる設定は収益性を損なう可能性があります。
また、店舗の稼働率も考慮すべき重要な要素です。すでに満席が続くような人気店では、客単価向上を積極的に進めても問題ありませんが、客数に余裕がある店舗では、まず集客に重点を置き、その後客単価向上を図るほうが効果的でしょう。
高原価率の魅力的なメニューを用意する
一般的に飲食店の原価率は30%前後が目安とされていますが、あえて原価率を50〜60%程度に設定した「高原価メニュー」を用意することが、客単価向上の効果的な戦略となります。
高原価メニューの魅力は「お客様に得した感覚を与えられる」点にあります。たとえば、通常3,000円で提供するステーキの原価が900円(原価率30%)だとします。一方、特別メニューとして5,000円のプレミアムステーキを提供し、あえて原価を2,500円(原価率50%)に設定した場合、お客様はその品質の高さを実感でき、「値段以上の価値がある」と感じるでしょう。
このようなメニューを「数量限定」「本日のおすすめ」などとして提供することで、希少性と特別感が生まれ、客単価の向上につながります。ただし、すべてのメニューを高原価率にしてしまうと収益性が著しく低下するため、通常メニューと高原価メニューのバランスが重要です。
また、高原価メニューを導入する際は、使用している高級食材や特別な調理法などをしっかりとアピールすることも大切です。お客様に価値を正しく理解してもらうことで、より効果的な客単価向上が実現できるでしょう。
接客時の追加提案は「お客様視点」で行う
客単価向上のためのアップセルやクロスセルを行う際、最も重要なのは「お客様視点」での提案です。店側の「売りたい商品」ではなく、お客様にとって「価値のある提案」を心がけることが成功のカギとなります。
具体的には、お客様の様子や会話から好みや予算を察知し、それに合わせた提案をすることが大切です。たとえば、白ワインを注文したお客様には「こちらの白身魚のカルパッチョが今日は特に美味しいです」など、相性の良い組み合わせを提案するのが効果的です。逆に、すでに十分な量を注文しているお客様に対して追加の主菜を勧めるなど、明らかに不要と思われる提案は避けるべきです。
また、提案の仕方も重要で、「〇〇はいかがですか?」という単純な質問よりも「このワインはチーズとの相性が抜群なので、一緒にお楽しみいただくのがおすすめです」というように、具体的な理由や価値を伝える提案の方が効果的です。
さらに、スタッフ全員が商品知識を持ち、自信を持って提案できる環境づくりも欠かせません。「これはどんな味ですか?」と聞かれて答えられないようでは、信頼性も効果も半減してしまいます。
デザートメニューを充実させる
デザートは「別腹」と言われるように、メイン料理を十分に楽しんだ後でも追加注文される可能性が高いメニューです。客単価向上の観点から見ても、デザートメニューの充実は非常に効果的な戦略と言えます。
デザートメニューを魅力的にするポイントは、まず「ビジュアルの訴求力」です。メニュー表に美しい写真を掲載したり、他のお客様が注文したデザートが目に入るよう店内レイアウトを工夫したりすることで、「見た目の誘惑」を生み出します。実際、鮮やかなデザートが店内で提供されるのを見ると、他のお客様も注文したくなるという心理効果があります。
また、「バリエーションの豊富さ」も重要です。チョコレート系、フルーツ系、和スイーツなどさまざまな種類を揃えることで、どのお客様の好みにも対応できるようにしましょう。季節限定デザートを定期的に入れ替えることで、リピーターも飽きずに注文してくれるようになります。
さらに、デザートを注文しやすい雰囲気づくりも大切です。料理の後に「デザートメニューをお持ちしましょうか?」と声をかけるだけでも注文率は高まります。テーブルを片付け、清潔な状態にしてからデザートメニューを提示するという工夫も効果的です。
客単価を戦略的に向上させて収益力アップを実現しましょう

客単価向上は飲食店経営において売上増加を実現する効率的な手段です。本記事で解説した商品単価の見直し、アップセル・クロスセル戦略、魅力的なメニュー設計などを組み合わせることで、顧客満足度を維持しながら収益力を高めることができます。
これらの施策を効果的に実行するには、客単価や売上データの継続的な分析が不可欠です。NECが提供するサブスクリプション型POSシステム「NECモバイルPOS」は、客単価・時間帯別売上・商品別売上などを簡単に分析できる機能を搭載し、データに基づいた客単価向上戦略の立案をサポートします。NECモバイルPOSは、メニュー管理や在庫管理とも連携し、高原価メニューの収益性管理や3段階価格設定の効果測定も容易に行えるため、経営判断の精度向上に貢献します。
客単価向上による収益力アップを目指す飲食店経営者の強力なパートナーとなるでしょう。まずはお気軽にお問い合わせください。
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