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フリーキャッシュフローとは?飲食店経営での意味から活用方法、改善のポイントまでわかりやすく解説

飲食店を経営されている方の中には、「黒字なのに資金繰りに苦労している」「設備投資のタイミングがわからない」「季節による売上変動で収支が安定しない」といった悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。

こうした問題の多くは、フリーキャッシュフローを正しく理解し管理できていないことに原因があります。フリーキャッシュフローとは、飲食店が本業で稼いだお金から必要な設備投資などを差し引いた、自由に使えるお金のことです。

本記事では、飲食店におけるフリーキャッシュフローの基本的な考え方から、計算方法、活用法、そして飲食店特有の管理ポイントまで、経営に役立つ知識を幅広く解説します。さらに、フリーキャッシュフローの状態別の対処法についても具体的にお伝えします。

最後まで読むことで、資金繰りの改善方法や、長期的に安定した経営を実現するためのキャッシュフロー管理のポイントについて理解を深めることができます。「手元資金を増やしたい」「将来の投資に備えたい」と考える飲食店経営者の皆様は、ぜひご一読ください。

また、POSはもちろん、モバイル・セルフオーダーシステム、テイクアウトやデリバリー、ポイント管理、予約システムなど、周辺サービスとの連携を含めた飲食店のDX推進に関するご相談は下記よりお問い合わせください。

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フリーキャッシュフローとは

フリーキャッシュフロー(FCF)とは、飲食店が本業の活動で稼いだお金から、必要な設備投資などを差し引いた後に残った現金のことです。簡単に言えば、「自由に使えるお金」を意味します。

飲食店経営において、メニュー開発やスタッフの確保など日々の運営に追われると、資金管理の重要性を見落としがちです。しかし、損益計算書で黒字でも、実際に使えるお金がなければ、食材の仕入れができなくなったり、家賃が払えなくなったりする「黒字倒産」の危険があります。

特に飲食業は季節変動や天候の影響を受けやすく、突発的な設備故障にも対応しなければならないため、常に十分な手元資金を確保することが重要です。そのためには、フリーキャッシュフローを正しく理解し、定期的に確認する習慣をつけることが安定経営への第一歩となります。

キャッシュフローの種類

キャッシュフローは大きく次の3種類に分類できます。

  • 営業キャッシュフロー
  • 投資キャッシュフロー
  • 財務キャッシュフロー

飲食店経営を健全に維持するためには、これらのキャッシュフローをバランスよく管理することが重要です。それぞれの特徴を理解して、お店の資金の流れを正確に把握しましょう。

営業キャッシュフロー

営業キャッシュフローとは、飲食店の本業である「料理の提供」に関わる現金の出入りを指します。具体的には、お客様から受け取る食事代金などの売上収入から、食材の仕入れ代金、スタッフの給与、店舗の家賃、水道光熱費などの営業費用を差し引いたものです。

飲食店の営業キャッシュフローがプラスであれば、本業で利益を生み出せていることがわかります。たとえば、月間売上が300万円で、食材費が90万円、人件費が120万円、家賃・光熱費が60万円で合わせて270万円の場合、営業キャッシュフローは30万円のプラスとなります。

逆に営業キャッシュフローがマイナスの場合は、売上が経費をカバーできていないことを示しており、メニュー構成や価格設定、来客数増加策などの見直しが急務です。また、飲食店は週末と平日で売上に差があるため、週単位や月単位で確認することをおすすめします。

投資キャッシュフロー

投資キャッシュフローとは、飲食店の将来的な収益向上のために行う設備投資や資産売却による現金の動きです。新しい調理機器の購入、店舗の改装、POSレジの導入、あるいは2号店出店のための物件取得などが該当します。

飲食店の場合、投資キャッシュフローはマイナスになることが多いですが、これは必ずしも悪いことではありません。たとえば、最新の冷蔵庫を導入すると投資キャッシュフローはマイナスになりますが、食材の鮮度が保たれ、廃棄ロスが減るため長期的には利益向上につながることも期待できます。

ただし、投資は回収できる見込みがあるかどうかを慎重に検討する必要があります。特に新店舗開業や大規模リニューアルの際は、資金計画を綿密に立てることが重要です。このとき、中古の調理器具購入や一部設備のリース利用などで、初期投資を抑える工夫も検討しましょう。

財務キャッシュフロー

財務キャッシュフローとは、資金調達や返済に関わる現金の動きを表します。飲食店が銀行から融資を受けた場合はプラス、借入金の返済や個人事業主が事業から資金を引き出した場合などはマイナスとなります。

飲食店経営では、開業資金の借入れや設備更新のための追加融資などといった財務活動は避けられないでしょう。たとえば、300万円の融資を受けて店内改装を行えば、財務キャッシュフローは300万円のプラスになります。一方、毎月の返済額が10万円であれば、その月の財務キャッシュフローは10万円のマイナスです。

適切な財務キャッシュフロー管理のポイントは、返済負担がお店の収益に見合っているかを確認することです。過剰な借入れは返済の負担増につながるため、飲食店の季節変動も考慮した無理のない返済計画を立てることが大切です。また、資金繰りに余裕があるときに繰り上げ返済を検討するのも一つの方法です。

フリーキャッシュフローの計算式

フリーキャッシュフローを計算する基本式は非常にシンプルで、次のように表せます。

フリーキャッシュフロー = 営業キャッシュフロー + 投資キャッシュフロー

飲食店の具体例で考えてみましょう。あるラーメン店の1ヶ月の営業状況が次のようだったとします。

1ヶ月の売上 250万円
食材費 75万円
人件費 90万円
家賃・水道光熱費 45万円

このときの営業キャッシュフローは、
250万円 - 75万円 - 90万円 - 45万円 = 40万円
となります。

また、同じ月に、製麺機を20万円で購入したとすると投資キャッシュフローは-20万円です。

よって、この月のフリーキャッシュフローは、
40万円 + (-20万円) = 20万円
となります。

つまり、この月は全ての必要経費と設備投資を済ませた後、20万円の自由に使えるお金が残ったことになります。

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フリーキャッシュフローの活用方法

フリーキャッシュフローは、飲食店がさらなる成長や安定経営のために活用できる貴重な資金です。この資金は次のように活用することができます。

  • 新規事業のための投資
  • 借入金の返済
  • 将来の投資に向けた内部留保

ここでは、フリーキャッシュフローの主な活用方法について解説します。

新規事業のための投資

フリーキャッシュフローを活用して新規事業に投資することは、飲食店の成長戦略として必要な選択肢といえるでしょう。たとえば、主力のラーメン店を経営している場合、テイクアウト専門店やデリバリーサービスを始めることで、新たな顧客層を獲得できるかもしれません。

投資の具体例としては、2号店の出店、ケータリングサービスの開始、オリジナル商品の開発・販売などが考えられます。特にコロナ禍以降、多くの飲食店がテイクアウトやデリバリーなど、店内飲食以外の収益源を確保することの重要性を実感しています。

新規事業への投資がうまくいけば、そこからさらなる収益が生まれ、それをまた次の投資に回せるという好循環が生まれます。ただし、投資はリスクを伴うため、市場調査や競合分析を十分に行い、段階的に資金を投入するなど、慎重に検討することが重要です。

借入金の返済

飲食店経営では、開業時や設備更新時に借入れを行うことが一般的です。フリーキャッシュフローを借入金の返済に充てることで、財務体質を健全化し、将来的な資金繰りの安定につなげることができます。

たとえば、月々の返済額が15万円の借入金がある場合、フリーキャッシュフローが30万円あれば、通常の返済に加えて追加で返済することが可能です。借入金が早く減れば、その分利息の支払いも減少するため、長期的に見ると大きな節約になります。

また、借入金の返済が進むと自己資本比率が向上し、金融機関からの信用度も高まります。これは将来、店舗拡大や大規模リニューアルなどで再び資金調達が必要になったときに有利に働くでしょう。特に飲食業界は景気変動の影響を受けやすいため、好調な時期に借入金を減らしておくことは、将来の不測の事態に備える意味でも重要です。

将来の投資に向けた内部留保

フリーキャッシュフローを内部留保として蓄えておくことは、将来の大きな投資や不測の事態に備えるために非常に重要です。飲食店では、数年に一度の大規模リニューアルや調理機器の更新、また突発的な設備故障などに対応するための資金が必要になります。

たとえば、月に20万円のフリーキャッシュフローを1年間内部留保として積み立てれば、240万円の資金プールができます。これは厨房設備の全面更新や、店内改装などの大型投資に充てることができる金額です。また、災害や感染症流行などの緊急事態に直面しても、しばらくの間は事業を維持できる余裕が生まれます。

特に飲食業界では季節変動や外部環境の変化による影響を受けやすいことを考えると、安定した経営を続けるためには、最低でも3〜6か月分の固定費をカバーできる資金を内部留保として確保しておくことが望ましいでしょう。この安全な資金があることで、日々の経営判断にも余裕が生まれ、長期的な視点で考えることが可能になります。

フリーキャッシュフローからわかる経営状況

フリーキャッシュフローは金額だけでなく、その内訳を分析することで、飲食店の経営状況を的確に把握することができます。

ここでは、営業キャッシュフロー(営業CF)、投資キャッシュフロー(投資CF)の関係から見える4つの典型的なパターンを解説します。

  営業CF 投資CF FCF 経営状況
パターン1 + - +
パターン2 - + +
パターン3 + - -
パターン4 + 0 +

これらを理解することで、自店の現状がどのフェーズにあるのかを客観的に判断できるようになるでしょう。

【フリーキャッシュフローがプラス】業績が安定しているパターン

このパターンは、営業CFがプラスで投資CFがある程度マイナス、さらに財務CFが適度にマイナスという状態です。

たとえば、ラーメン店の月間営業CFが70万円のプラス、厨房設備の更新などで投資CFが30万円のマイナスとなり、フリーキャッシュフローは40万円のプラスとなっている状況です。

このケースでは、本業での売上が順調で適切な投資も行えており、さらに借入金の返済も滞りなく進んでいることを示しています。飲食店として理想的な状態といえるでしょう。営業活動で得た資金の範囲内で必要な設備投資を行い、なおかつ借入金も返済できているため、経営の自由度が高く、緊急時の対応や将来の拡大にも余裕があります。

こうした状態を維持するためには、顧客満足度の継続的な向上、効率的な運営、適切なメニュー構成と価格設定などが重要です。また、好調な時こそ将来を見据えた投資や新たな取り組みを検討する絶好の機会でもあります。

【フリーキャッシュフローがプラス】業績がひっ迫しているパターン

このパターンは、営業CFがマイナスで投資CFがプラス、結果としてフリーキャッシュフローがプラスになっている状態です。

たとえば、売上が落ち込んで営業CFが月に30万円のマイナスになっているものの、古くなった業務用冷蔵庫を80万円で売却したため、投資CFが80万円のプラスとなり、フリーキャッシュフローは50万円のプラスという状況です。

一見するとフリーキャッシュフローがプラスなので良好に思えますが、これは非常に危険な状態です。本業である飲食サービスで利益が出ておらず、店舗運営に必要な設備を売却することで一時的に資金を確保している状況だからです。設備を売却し続けることはできませんし、むしろ将来の収益力が低下する恐れがあります。

このような状態に陥った場合は、早急に本業の立て直しが必要です。具体的には、メニュー構成や価格設定の見直し、原価管理の徹底、人件費の適正化、営業時間の調整などを検討しましょう。また、マーケティング戦略を見直し、ターゲット顧客に対する訴求力を高めることも重要です。

【フリーキャッシュフローがマイナス】過大投資しているパターン

このパターンは、営業CFがプラスでも投資CFが大幅にマイナスとなり、結果的にフリーキャッシュフローがマイナスになっている状態です。

たとえば、居酒屋の月間営業CFが45万円のプラスだったにもかかわらず、2号店出店のための物件取得と内装工事で投資CFが200万円のマイナスになり、フリーキャッシュフローが155万円のマイナスになるようなケースです。

この状態は必ずしも悪いわけではありません。将来の成長のための投資は必要ですし、一時的に大きな支出があっても、長期的に見れば回収できる見込みがあれば問題ありません。ただし、投資額が営業CFに対して過大になりすぎると、資金繰りが厳しくなるリスクがあります。

重要なのは、投資の回収計画が現実的かどうかを冷静に判断することです。新店舗の売上予測は保守的に見積もり、営業開始までの準備期間や軌道に乗るまでの赤字期間も考慮して資金計画を立てる必要があります。また、必要に応じて段階的な投資や、一部設備のリース活用なども検討すると良いでしょう。

【フリーキャッシュフローがプラス】成長が見込みにくいパターン

このパターンは、営業CFがプラスで投資CFがゼロ、さらに財務CFが大幅にマイナスという状態です。

たとえば、カフェの月間営業CFが65万円のプラスだが、全く設備投資をせず、その資金のほとんどを借入金の返済や経営者の引き出しに充てているケースです。

フリーキャッシュフローはプラスなので一見健全に見えますが、これは将来の成長性という点で懸念があります。なぜなら、必要な設備投資や店舗改装、メニュー開発などを行っていないため、長期的には顧客離れや競争力低下を招く恐れがあるからです。

飲食業界は流行や顧客ニーズが常に変化しており、適切なタイミングでの投資は不可欠です。そのため、営業CFに余裕があるなら、一部を将来の成長につながる投資に回すことを検討すべきでしょう。たとえば、定期的な内装リフレッシュ、新メニュー開発のための試作費用、スタッフ教育、デジタル化投資などが考えられます。

フリーキャッシュフローのプラス金額にとらわれず、安定経営と将来への投資のバランスを取ることが重要です。

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フリーキャッシュフローがマイナスのときの対処法

フリーキャッシュフローがマイナスになったとき、飲食店経営者はまず冷静に状況を分析することが大切です。

一時的なマイナスか継続的なマイナスかによって対応方法は大きく異なりますが、マイナスの状態を放置せず、適切な対処法を実行することで、経営危機を回避し、再び健全な状態に戻すことが可能です。

ここでは、フリーキャッシュフローがマイナスになったときの分析方法から具体的な改善策までを解説します。

マイナスの状態を分析する

フリーキャッシュフローがマイナスの場合、まず原因を特定するために営業CFと投資CFのどちらに問題があるのかを分析します。飲食店の場合は、3〜5年の期間で確認するのが効果的です。なぜなら、長期的に考えることで、季節変動や周年イベント、定期的な設備更新などの影響を把握できるためです。

たとえば、ラーメン店の場合、営業CFがマイナスであれば「月々の売上が少ない」「食材費が高い」「人件費の負担が大きい」「店舗家賃が売上に対して高すぎる」などの可能性があります。一方、投資CFがマイナスの主因であれば「店舗改装への投資」「新規出店の費用」「大型調理機器の購入」などが考えられます。

また、フリーキャッシュフローがマイナスになった時期と、その前後の状況も重要です。たとえば、新メニュー導入のための設備投資直後にマイナスになったのか、それとも特に変化がない状態で徐々にマイナスが拡大しているのかによって、対策は大きく異なります。

一時的なマイナスの場合

フリーキャッシュフローが一時的にマイナスになるケースは、飲食店経営では珍しくありません。たとえば、2号店の出店準備で一時的に大きな支出が生じた場合や、既存店の全面改装を行った場合、あるいは新メニュー開発のために研修費用がかさんだ場合などです。

これらは将来の収益増加につながる投資であるため、過度に心配する必要はないでしょう。重要なのは、投資の回収計画が妥当であるかどうかです。たとえば、店舗改装に500万円投資した場合、月の売上がどれくらい増加すれば、何ヶ月で回収できるかという見通しを立てておくことが重要です。

また、一時的なマイナス期間を乗り切るための資金計画も必要です。現金預金の残高で賄えるか、あるいは金融機関からの一時的な借入れが必要か、そして返済計画は実現可能かなどを事前にシミュレーションしておくと安心です。飲食店は季節変動も大きいため、閑散期と繁忙期のキャッシュフローの違いも考慮した計画が望ましいでしょう。

継続的なマイナスの場合

フリーキャッシュフローが長期間にわたってマイナスの状態が続く場合は、事業の存続に関わる深刻な問題として捉える必要があります。この状態が続けば、最終的には資金ショートを引き起こし、食材の仕入れや家賃の支払いができなくなる恐れがあります。

まず、営業CF改善のために、売上と費用の両面から対策を講じましょう。売上面では、客単価・来客数・繁閑時間帯の分析を行い、メニュー構成や価格設定、営業時間の見直しを検討します。一方、費用面では、食材原価率・人件費率の見直し、無駄な経費の削減などが必要です。

また、投資CFについても、本当に必要な設備投資に絞り、優先順位をつけることが重要です。たとえば、古くなった冷蔵庫の交換は食材ロス削減につながるため優先度が高いですが、店内装飾の更新は少し先送りにするなどの判断が求められます。

さらに、キャッシュフロー改善までの資金繰り対策として、金融機関との返済条件見直しの交渉や、公的支援制度の活用なども検討しましょう。状況によっては、事業モデル自体の見直しや、不採算メニューの廃止など、抜本的な改革が必要な場合もあります。

飲食店での具体的な改善策

飲食店でフリーキャッシュフローを改善するための具体的な施策として、いくつかの効果的なアプローチが考えられます。

まず、売上増加策として、SNSやクーポンを活用した集客施策、ランチタイムやディナータイムの客単価アップメニューの開発、テイクアウトやデリバリーの導入などが考えられます。特に近年は、複数の収益チャネルを持つことがリスク分散の観点からも重要視されています。

原価管理の面では、仕入れ先の見直しや発注量の最適化、季節商品の活用による原価率の改善などが有効です。また、食材ロスを減らすために、POSシステムを活用した需要の予測や、余った食材を活用した日替わりメニューの開発なども検討できます。

また、設備投資においては、一度に大きな投資をするのではなく、段階的に実施することで出費の波を抑える方法が効果的です。さらに、高額な調理機器はリースの活用も検討しましょう。

運転資金の確保のために、売掛金回収の迅速化や、仕入れ支払いサイトの見直し交渉も効果的でしょう。そして、借入金の返済計画見直しや、事業計画の再構築による金融機関からの支援を得るのも選択肢として検討すべきです。

飲食店でのフリーキャッシュフローのポイント

飲食店ビジネスは他業種と比べて独特のキャッシュフロー特性があります。安定した経営を続けるためには、次のような点に注意し、適切な資金管理を行うことが不可欠です。

  • 季節の変動に注意する
  • 食材費が大きく変わることがある
  • 飲食店特有の人件費を考慮する
  • 計画的に設備投資を行う

ここでは、飲食店経営者が特に注意すべきこれらのポイントを解説します。

季節の変動に注意する

飲食店は特に季節による売上の変動が激しい業種といえます。たとえば、夏や年末年始はビールの売上が増える、冬は温かい食べ物がよく売れるなどの傾向があるでしょう。

そのため、キャッシュフロー管理では季節変動を把握することが重要です。このとき、「季節指数」を算出すれば、年間の売上変動パターンが明確になります。

季節指数は次のような計算式で求められます。
季節指数 = 各月の売上高 ÷ 月間平均売上高 × 100

ここでの月間平均売上高は「年間売上高合計 ÷ 12ヶ月」で求められます。たとえば、あるラーメン店の年間売上が1,200万円の場合、月間平均売上高は100万円です。この店の1月の売上が120万円だった場合、1月の季節指数は120%となります。

季節変動を理解できれば、繁忙期には売上最大化の体制を整え、閑散期にはコスト削減を図るなど、効率的な経営が可能になります。また、POSシステムを導入すれば、これらの季節指数計算や分析が自動化され、より正確で迅速な経営判断ができるようになるでしょう。

食材費が大きく変わることがある

飲食店の原価の中でも、食材費は市場価格の変動によって大きく変わることがあります。季節や天候、国際情勢などの影響で仕入れ価格が急激に上昇すると、フリーキャッシュフローを圧迫します。

たとえば、生鮮食品は天候不順によって価格が2倍、3倍になることもあります。また、イタリアンレストランでチーズの原価が上がれば、原価率が大きく変動するでしょう。そして、カニやウニなど高級食材を扱う店舗では、市場価格の変動が利益に大きく直結することが考えられます。

このリスクに対処するためには、以下の方法が効果的です。

  • 複数の仕入れ先を確保し、価格交渉の余地を持つ
  • 季節変動を考慮した柔軟なメニュー構成にする
  • 食材ロスを最小限に抑える仕組みを整える
  • 緊急時に代替食材に切り替えられるレシピを用意する

また、支払いタイミングのズレにより実際の現金の動きと、会計上の数字が異なる可能性がある点にも注意が必要です。この場合、複数の支払い方法をうまく使い分けることで、キャッシュフローを改善できることもあります。

飲食店特有の人件費を考慮する

飲食店の経営コストの中で大きな割合を占めるのが人件費です。特に飲食業では、時間帯や曜日、季節によって必要な人員が大きく変動するという特徴があります。

繁忙期と閑散期でシフトに差をつけることは当然必要ですが、予測を誤ると人件費率が悪化し、フリーキャッシュフローに大きな影響を与えます。たとえば、混雑を予想して多くのアルバイトを入れたのに客足が伸びなかった場合、人件費だけがかさんでキャッシュフローが悪化してしまいます。

また、飲食店特有の問題として、アルバイトスタッフの入れ替わりが激しいことがあります。新しいスタッフの教育にはコストがかかり、経験が浅いうちは業務効率も上がりません。よって、これらのコストも考慮に入れておく必要があります。

さらに、社会保険料の支払いタイミングと実際の計上時期のずれによっても、実際のキャッシュフローと会計上の数字に差が生じることがあります。特に繁忙期に残業が増えると、翌月の人件費が予想以上に膨らむことがあるため注意が必要です。

計画的に設備投資を行う

飲食店では、厨房機器などの設備は日々の営業に不可欠です。これらの設備の故障は、営業停止という最悪の事態を招く可能性もあります。そのため、計画的な設備投資と修繕費の予算確保がフリーキャッシュフロー管理において重要です。

厨房機器の定期的なメンテナンス費用は固定費として計上し、突発的な修理費用に対しては予備費として一定額を確保しておくことが望ましいでしょう。特に冷蔵庫や冷凍庫、食洗機などの主要機器の故障は、営業に大きな支障をきたします。

また、飲食店は衛生管理に関わる設備投資も欠かせません。保健所の指導で改善が必要になった場合は、即座に対応しなければならないこともあります。このような突発的な支出に備えて、フリーキャッシュフローの一部を内部留保しておくことも重要です。

設備投資の際には、全額を一度に支払うのではなく、リースやレンタルを活用することで、出費をできるだけ均一にする方法も検討しましょう。特に開業初期は、固定費を抑えてキャッシュフローに余裕を持たせることが大切です。

フリーキャッシュフローを理解して健全な飲食店経営を実現しましょう

フリーキャッシュフローを正しく理解し管理することは、飲食店経営の健全性を保つためには非常に重要です。

また、季節変動や原材料価格の変動、人件費の増減など、飲食業特有の資金変動に対応するためにも、正確な数値把握と分析が不可欠です。さらには、店舗の成長段階に合わせた投資判断と、万が一の設備故障に備えた資金確保も欠かせないでしょう。

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