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欠勤控除とは?飲食店が知っておくべき計算方法とトラブル防止のポイント

「従業員の欠勤時の給与をどう計算すればいいのだろう」「欠勤控除の正しい方法がわからない」「法律上問題のない欠勤控除の運用方法を知りたい」など、飲食店経営者の方々はスタッフの勤怠管理に関してさまざまな悩みを抱えていることでしょう。

飲食業界は特にシフト制を採用していることが多く、スタッフの急な欠勤や遅刻・早退は日常的に発生します。この「欠勤控除」を適切に行わなければ、労使間のトラブルに発展したり、法令違反となったりするリスクがあります。

本記事では、欠勤控除の基本的な考え方から、適用されるケース・されないケース、具体的な計算方法、そして実務上の注意点まで、飲食店経営者が知っておくべき情報を体系的に解説します。

適切な欠勤控除の運用方法を理解し、スタッフとの信頼関係を保ちながら適正な給与計算を行うためのヒントをご提供します。飲食店経営において人材確保が課題となっている今だからこそ、ぜひ最後までお読みください。

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欠勤控除とは

欠勤控除とは、スタッフが欠勤した場合に、働かなかった時間分の賃金を給与から差し引くことです。この仕組みは「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づいており、民法第624条第1項で「労働者は、その約した労働を終わった後でなければ、報酬を請求することができない」と定められています。

参考元:new windowe-Gov 法令検索(民法)

飲食店のような勤務シフト制を採用している業態では、シフトに入るはずだったスタッフが欠勤した場合、その日の賃金を支払う必要はないことになります。ただし、単に給与から減額するだけでなく、適切な計算方法と手続きに従って処理する必要があります。

また、欠勤控除はスタッフの欠勤だけでなく、遅刻や早退の場合にも適用されます。働くべき時間に働いていない分の賃金を減額するという点では、これらは同じ原理に基づいているためです。ただし、有給休暇を使用した場合や会社都合による休業の場合など、欠勤控除が適用されないケースもあるため、適切な区別が重要です。

欠勤控除の適用範囲

欠勤控除が適用される場面と適用されない場面を明確に区別することは、飲食店の労務管理において非常に重要です。

適切な運用を心がければ、スタッフとの信頼関係を保ちながら、公平な給与計算を行うことができるでしょう。

欠勤控除が適用されるケース

欠勤控除は、スタッフが就業規則で定められた勤務時間に労働を提供しなかった場合に適用されます。ただし、その理由や状況によって判断が異なるため、個々のケースを適切に区分する必要があります。

まずは欠勤控除が適用されるケースについて見ていきます。

私的理由による欠勤の場合

スタッフが私的な理由で出勤せず、有給休暇も使用しなかった場合、これは欠勤控除の対象となります。たとえば、飲食店のシフトに入るはずだったスタッフが体調不良を理由に休み、有給休暇を使わなかった場合や申請しなかった場合は欠勤扱いとなります。また、有給休暇を使い切っているスタッフが休んだ場合も同様です。

飲食業では突発的な欠勤が発生しやすいため、欠勤理由を適切に記録し、有給休暇との区別を明確にしておくことが重要です。また、就業規則で「有給休暇の事後申請」を認めている企業も多いため、自社のルールを確認し、スタッフにも周知しておくことで、後々のトラブルを防止できます。

遅刻・早退の場合

スタッフが遅刻や早退をした場合も、働かなかった時間分の賃金は欠勤控除の対象となります。飲食店では特にランチやディナーなどの繁忙時間帯に合わせた勤務体制が組まれていることが多く、遅刻や早退はサービス提供に直接影響します。

たとえば、シフトが18時から23時までのスタッフが19時に出勤した場合、1時間分の遅刻として欠勤控除が適用されます。ただし、時間単位の有給休暇を取得できる制度がある場合で、後日遅刻や早退分を有給休暇として申請したケースでは、欠勤控除は適用されません。労使協定に時間単位での有給休暇取得についての定めがあるか確認しておきましょう。

欠勤控除が適用されないケース

欠勤控除が適用されないケースには、法的に保護された休暇や会社の責任による休業などがあります。これらのケースでは、給与を全額または一部支払う義務があります。

ここでは、欠勤控除が適用されないケースについて解説していきます。

有給休暇を使用した場合

年次有給休暇を取得して休んだ場合、これは欠勤扱いにはなりません。労働基準法では、一定の条件を満たした労働者に年次有給休暇を付与することを義務付けており、その取得を理由に不利益な扱いをすることを禁止しています。

そのため、スタッフが有給休暇を取得した場合、通常通りの給与を支払う必要があります。飲食店では繁忙期に有給休暇の取得を避けてほしいという事情もありますが、法律上はスタッフの時季指定権が保護されています。ただし、「事業の正常な運営を妨げる場合」には時季変更権を行使できることもあるため、就業規則に明記しつつも、スタッフとの円滑なコミュニケーションを心がけましょう。

参考元:new windowe-Gov 法令検索(労働基準法)
参考元:PDF厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署(年次有給休暇についてのリーフレット)

会社都合による休業の場合

店舗の改装工事や営業不振による臨時休業、設備故障など会社都合でスタッフを休ませる場合、これは欠勤控除の対象にはなりません。むしろ、労働基準法第26条により、使用者の責任による休業の場合、休業手当(平均賃金の60%以上)を支払う義務があります。

飲食店では、予約キャンセルやイベント中止などで急に営業を取りやめることもあるかもしれませんが、そうした場合でもスタッフに対する休業手当の支払い義務があります。ただし、台風や大雪などの自然災害で休業する場合は、不可抗力による休業として休業手当の支払いが免除されるケースもあります。

感染症による休業の場合

感染症による休業は、その原因や状況によって取り扱いが異なります。飲食業、特に食品を扱う現場での感染症対策は重要です。

スタッフ自身が季節性インフルエンザに罹患した場合、法律上の就業制限はないため基本的には欠勤扱いとなりますが、飲食店では食品安全の観点から会社判断で休業させることが多いでしょう。その場合、会社都合の休業となり欠勤控除が適用されません。

一方、新型インフルエンザ等の特定の感染症に罹患した場合は、保健所の指示による就業制限が出ることもあります。こうした場合は、健康保険の傷病手当金の対象となる可能性があるため、スタッフに案内することも大切です。また、店舗での集団感染防止のため全員休業させるケースでは、会社都合の休業として休業手当が発生することに注意が必要です。

参考元:new window厚生労働省(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)

その他の認められた休暇

会社独自の休暇制度として慶弔休暇、リフレッシュ休暇、育児・介護休暇などがある場合、これらは欠勤控除の対象となりません。

たとえば、スタッフの結婚や近親者の不幸があった場合に付与される慶弔休暇を取得した場合、就業規則でその休暇が有給と定められていれば、通常通りの給与が支払われます。また、長期勤続者へのリフレッシュ休暇や、育児・介護のための法定休暇なども、欠勤控除の対象外です。

飲食店では短時間労働者が多いことも特徴ですが、パートタイマーであっても一定の条件を満たせば各種休暇を取得する権利があります。特に育児・介護休業法による休暇は法的に保護されており、違反すると罰則の対象となることもあるため、各種休暇制度について正しく理解し、適切に運用することが重要です。

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欠勤控除の計算方法

欠勤控除を行う際の計算方法は、会社によって異なります。主に次のような方法がありますが、どの方法を採用するかを就業規則に明記し、一貫して適用することが重要です。

  • 月平均所定労働日数を用いる方法
  • 欠勤した月の所定労働日数を用いる方法
  • 欠勤した月の暦日数を用いる方法

飲食店においては、シフト制やパートタイマーが多いため、計算方法を明確にしておくことで給与計算のミスを防ぐことができます。

月平均所定労働日数を用いる方法

月平均所定労働日数を用いる方法は、年間を通して欠勤控除額を一定にするために、月ごとの労働日数の変動を平均化する手法です。具体的な計算式は次のようになります。

欠勤控除額 = 月給額 ÷ 月平均所定労働日数 × 欠勤日数
月平均所定労働日数 = 年間所定労働日数 ÷ 12

たとえば、月給が25万円で年間所定労働日数が240日(月平均20日)のスタッフが3日欠勤した場合の欠勤控除額は次のように計算できます。

25万円 ÷ 20日 × 3日 = 37,500円

この方法の最大の利点は、1日あたりの控除額が一定であるため、計算が簡便でスタッフにも説明しやすい点です。また、月ごとの労働日数が変わっても控除額が変動しないため、スタッフ間の公平性が保たれます。さらに、飲食店のように月ごとの営業日数が変動する業態でも、安定した計算が可能です。

ただし、月の所定労働日数と月平均所定労働日数に大きな差がある月に多数の欠勤があった場合、欠勤控除額が月給額を超える可能性があるため、そのような場合の対応も就業規則に定めておくといいでしょう。

欠勤した月の所定労働日数を用いる方法

欠勤した月の所定労働日数を用いる方法は、欠勤が発生した月の実際の所定労働日数を基準に計算するやり方です。月給制のスタッフの欠勤控除額を算出する際の計算式は以下の通りです。

欠勤控除額 = 月給額 ÷ 該当月の所定労働日数 × 欠勤日数

たとえば、月給が25万円で、その月の所定労働日数が22日、そのうち4日欠勤した場合の欠勤控除額は次のように計算できます。

25万円 ÷ 22日 × 4日 = 45,454円(端数は切り捨て)

この計算方法の特徴は、その月の実際の勤務日数を反映した控除額が算出できることです。特に飲食店では繁忙期と閑散期で勤務日数が大きく変わることがあるため、実態に即した計算ができます。

ただし、この方法では月によって1日あたりの控除額が変動するため、同じ日数欠勤しても月によって控除額が異なります。たとえば、所定労働日数が少ない月に欠勤すると、1日あたりの控除額が大きくなるため、スタッフにとっては不利になる可能性があります。そのため、こうした変動についてスタッフに事前に説明しておくことが大切です。

欠勤した月の暦日数を用いる方法

この方法は、欠勤した月の暦日数(カレンダー上の日数)を基準に計算するやり方です。計算式は以下の通りです。

欠勤控除額 = 月給額 ÷ 該当月の暦日数 × 欠勤日数

たとえば、月給が25万円、5月(31日)に3日欠勤した場合の欠勤控除額は次のように計算できます。

25万円 ÷ 31日 × 3日 = 24,193円(端数は切り捨て)

この計算方法の大きな特徴は、休業日も含めた暦日数で割るため、1日あたりの控除額が他の方法と比べて少なくなる点です。そのため、スタッフにとっては有利な計算方法といえます。実際、飲食店ではスタッフの満足度向上や定着率アップのために採用することも考えられます。

ただし、暦日数は月によって28日(29日)、30日、31日と変動するため、1日あたりの控除額も月ごとに変わります。また、実際の勤務日数と暦日数の差が大きいため、「働いていない日に対して給与が発生している」という不自然さがあります。この方法を採用する場合は、その理由と計算方法を就業規則に明確に記載し、スタッフに周知することが重要です。

遅刻・早退の場合の計算方法

遅刻や早退があった場合の欠勤控除は、時間単位で計算する必要があります。基本的な計算式は次の通りです。

欠勤控除額 = 月給額 ÷ 月の所定労働時間 × 遅刻・早退時間

たとえば、月給が25万円、月の所定労働時間が160時間、2時間の遅刻があった場合の欠勤控除額は次のように計算できます。

25万円 ÷ 160時間 × 2時間 = 3,125円

この計算方法では、1分単位での正確な計算が原則です。10分単位や15分単位での切り上げ計算は労働基準法違反となるため、注意が必要です。

飲食店では特に繁忙時間帯(ランチタイムやディナータイム)の遅刻・早退は、店舗運営に大きな影響を与えることがありますが、罰則的な控除は違法となるため、実際に働かなかった時間分のみを適正に控除することが重要です。また、スタッフの時間管理意識を高めるためには、適切な労務管理と共に、遅刻・早退の結果としての欠勤控除について、明確な基準を定め、スタッフに周知することが効果的です。

欠勤控除を計算するときの注意点

欠勤控除を行う際には、いくつかの重要な注意点があります。これらに留意することで、法令順守はもちろん、スタッフとの信頼関係を維持しながら適切な給与計算が可能になります。飲食店の経営者や人事担当者は、特に次の点に注意して欠勤控除を実施しましょう。

  • 就業規則に明記する
  • 最低賃金を下回らないようにする
  • 控除額の端数は切り捨てで処理する
  • 税金の計算に気をつける
  • 残業代の取り扱い

ここでは、これらについて詳しく解説していきます。

就業規則に明記する

欠勤控除を適用するためには、その計算方法や対象となる手当などを就業規則に明確に記載しておく必要があります。就業規則には具体的に以下の項目を記載するといいでしょう。

  • 欠勤控除の対象となるケース(欠勤・遅刻・早退など)
  • 控除の計算方法(上記で説明した計算式のうちどれを採用するか)
  • 控除の対象となる賃金項目(基本給のみか、各種手当も含むか)
  • 欠勤日数が多い場合の特別な取り扱い方法

飲食店では特にスタッフの出入りが多く、就業規則を詳しく読まないことも多いため、入社時のオリエンテーションで欠勤控除のルールについて丁寧に説明することも大切です。また、シフト制を採用している場合は、シフト確定後の欠勤と確定前のシフト変更の違いについても明確にしておくことで、後々のトラブルを防止できます。

最低賃金を下回らないようにする

欠勤控除を行った結果、スタッフの時給換算額が最低賃金を下回ることがないよう注意が必要です。特に所定労働日数が多い月に、ごく一部のみ出勤して残りを欠勤した場合に問題が生じやすくなります。

たとえば、月給20万円で月の所定労働日数が22日のスタッフが、3日だけ出勤して19日欠勤した場合を考えてみましょう。

欠勤控除額 = 200,000円 ÷ 22日 × 19日 = 172,727円
支給額 = 200,000円 - 172,727円 = 27,273円

このスタッフが1日8時間勤務だとすると、3日間で24時間勤務したことになります。時給換算すると、27,273円 ÷ 24時間 = 1,136円となり、これが地域の最低賃金を下回る場合、法令違反となってしまいます。

このような事態を避けるため、欠勤が一定日数(たとえば半数以上)を超える場合は、欠勤日数による控除ではなく、出勤日数に応じた日割り計算を行うといった特例を就業規則で定めておくことが有効です。飲食店では繁閑の差が大きいため、このような対策は特に重要といえるでしょう。

控除額の端数は切り捨てで処理する

欠勤控除額を計算した際に生じる端数は、原則として「切り捨て」で処理します。これは、切り上げや四捨五入を行うと、実際に欠勤した時間以上の金額を控除することになり、労働基準法違反のリスクが生じるためです。

たとえば、1時間あたりの賃金が1,250円で、45分の遅刻があった場合、控除額の計算は次のようになります。

1,250円 × (45 ÷ 60) = 937.5円

このとき、端数を切り捨てて937円を控除額とします。切り上げて938円とすると、わずかですが労働した時間分の賃金も控除することになり、適切ではありません。

特に飲食店では15分単位や30分単位でシフトを組む場合も多いかと思いますが、欠勤控除は可能な限り正確な時間で計算し、端数は必ず切り捨てるようにしましょう。また、タイムカードや勤怠管理システムを導入して、正確な勤務時間を記録することも、適切な欠勤控除のために有効です。

税金の計算に気をつける

欠勤控除を行う際には、税金の計算順序にも注意が必要です。欠勤控除は、所得税や社会保険料などを計算する前に、総支給額から控除すべきものです。

税金を計算するための具体的な手順としては次のようになります。

  1. 本来の総支給額を算出する
  2. 欠勤控除額を計算し、総支給額から差し引く
  3. 控除後の金額に基づいて所得税や社会保険料を計算する

この順序を間違えると、スタッフの手取り額が正しく計算されないだけでなく、納税額にも誤りが生じる可能性があります。欠勤控除によって給与が減少すれば、当然、所得税額も減少するはずです。

また、欠勤控除は非課税項目ではないため、年末調整や確定申告の際の給与支払金額には、欠勤控除後の金額を記載することになります。飲食店ではスタッフの入れ替わりも多いため、欠勤控除を含む給与計算の流れを正確に理解し、システム化しておくことで、年末の手続きもスムーズに行えるでしょう。

残業代の取り扱い

スタッフが一部欠勤していても、出勤した日に残業があれば、その残業代は通常通り支払わなければなりません。欠勤があることを理由に残業代を支払わないことは認められていません。

たとえば、月給制のスタッフが1日欠勤したが、他の日に合計10時間の残業をした場合、欠勤分の控除を行いつつ、残業分の割増賃金は別途計算して支給する必要があります。

また、固定残業代(みなし残業代)を採用している場合の欠勤控除については、特に注意が必要です。就業規則に定めがあれば、みなし残業代も欠勤控除の対象とすることは可能ですが、計算が複雑になるため、専門家に相談したほうがいいでしょう。

飲食店では繁忙時間帯に人手が足りず残業が発生しやすい一方、閑散期には早上がりになることもあるため、残業代と欠勤控除の両方が関係するケースは少なくありません。こうした状況でも適切に給与計算ができるよう、明確なルールを設定し、スタッフにも周知しておくことが重要です。

適切な欠勤控除で従業員との信頼関係を保ちながら給与計算を行いましょう

欠勤控除は「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づき、働かなかった時間分の賃金を差し引く仕組みです。しかし、計算方法の選択や端数処理、税金計算の順序など、複雑な処理が必要となり、日常業務に大きな負担をかける可能性があります。こうした煩雑な作業に時間を取られると、本来の飲食店経営に集中できなくなってしまいます。

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