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クラウド利活用における、消費財メーカーのお悩みを解決!
~第2弾 消費財メーカー向けセミナーレポート~【2025.09.17】
カテゴリ:DX・業務改革推進品質・環境・物流その他
近年、消費財メーカーにおいても、多様な環境変化に柔軟に対応し、DX推進によって競争力を高めるため、スピード感と拡張性を備えたクラウドサービスの導入が欠かせないものとなっています。顧客へのサービス品質向上や、IoT・AIなどを活用したDXの実現を進める上では、業務を止めない安定したクラウド利用環境の構築と、クラウド活用を推進する組織体制の整備が急務です。
そこで、NECでは2025年8月22日(金)、NEC本社ビルに消費財メーカーのお客様をお招きし、「DXを成功に導くクラウドサービスの利活用」をテーマとするセミナーを開催いたしました。
本セミナーは、2025年5月23日に開催した消費財メーカー様向けリスク・マネジメント対策セミナーに続く第2弾となっており、NECのクラウド利活用の取り組み内容のご紹介と、お客様におけるクラウド利活用に関する課題についてディスカッションするラウンドテーブルの2部構成で進行しました。
ここでは、その概要をご紹介いたします。
[目次]
【第一部】基調講演1:NECの社内DXの全体像
NECコーポレートITシステム部門 経営システム統括部
ディレクター 馬場 大輔
これまでにイベント運営企画からブランド戦略、デジタルマーケティングまでコミュニケーション領域を中心に幅広く経験。現在はNEC社内のIT戦略構築・推進と社内DXの価値の発信を担当。「クライアントゼロ」戦略にもとづく自社での実践知とその価値を、様々な方法を通じてお客様や社会にお届けしている。
前半は、馬場が登壇してNECの社内DXの全体像についてお話ししました。
はじめに、NECの社内DXはコーポレート・トランスフォーメーションそのものであるというNECの変革の歴史に触れました。2010年代のはじめに経営が非常に厳しい状態に陥ったことを受け、構造改革を断行。2018年頃から「変わり続けることが文化」の会社にカルチャー変革するとともに、経営がコミットしてDXに着手したのです。
2021年にCIO直下の「トランスフォーメーションオフィス」を設置して、本格的なコーポレート・トランスフォーメーションを加速させました。同オフィスでは、社内ITの仕組みづくりと業務変革を推進する機能、およびシェアードサービスセンターも併設させる形で実効性を高めたのです。
NECにおけるDXは単なる“デジタル化”ではなく、本質的な変革を意味しています。このため、9つの変革ドライバーを起点として成果に繋げる施策を立案・推進。
そして、この取り組みの成果をお客様に提供するために、まずはNEC自身をゼロ番目の顧客として試行錯誤する“クライアントゼロ”戦略と位置付けているのが特徴的です。
うまくいかないことも含めた“活きたナレッジ”をお客様や社会のDXに役立てていただくというものです。

この社内DXは、「働き方のDX」「営業・基幹業務のDX」「運用統合/運用のDX」という3ステップと、「統合エクスペリエンス」「DATAプラットフォーム」「ITインフラ&セキュリティ」という基盤構築による枠組みで進めています。そして、あらゆる領域にAIを取り込むこともポイントとなっています。
「働き方のDX」は、様々なデジタルツールの導入・活用が主。特に入退館やフリーアドレス、ロッカーなどが顔認証で利用できるところは、大きな特色でしょう。
「営業・基幹業務のDX」は、経営データを見える化する経営コックピットやダッシュボードの構築が主です。経営層は、働く環境の可視化やサイバーセキュリティ、社内IT、事業継続といった様々なダッシュボードで状況を把握することができます。また、社員は下記のプラットフォームにて同じデータを共有できるので、迅速な意思決定をスピーディーなアクションに繋げることが可能となりました。
「運用統合/運用のDX」においては、NECの生成AI「cotomi」と、業務統合プラットフォームの「ServiceNow」を組み合わせて統合エクスペリエンスプラットフォームを構築。デジタルワークフロー上でEnd to Endで業務をデジタル化するとともに、社内の諸情報を自動的に取り込み可視化できるようにして、人が介在する工数を極力減らしています。
AIに関しては、社内ルールなどの仕組みづくりを行った上で、NECの「cotomi」の活用だけでなくグローバルパートナーとの協業も行い、これらを確実に推進するためのAIカルチャーづくりも行うといった取り組みを行っています。
【第一部】基調講演2:クラウドインフラ整備とガバナンスの取り組み
NECコーポレートITシステム部門 基盤運用統括部
ディレクター 山本龍也
社内ITにおけるアプリケーション開発、インフラ構築・運用を経て、2015年からNECグループのクラウド共通基盤整備・運用・移行を統括。現在はこれらの取り組みに加え、AIOpsや「クライアントゼロ」として蓄積したナレッジをお客様へお伝えする活動を推進中。
後半は、山本がクラウドインフラ整備とガバナンスの取り組みについてお話ししました。
クラウドのパワーを最大限に享受しDXを加速するためには、“ビジネスを止めない”安全・安心でセキュアなインフラを実現し運用していくことが求められます。
そこで、NECでは4つの大きな指針で社内ITインフラの高度化を進めています。
① ハイブリッド・マルチクラウド活用
・クラウドのパワーを最大限に活用しDXを加速
・ビジネスを止めない、安全・安心なインフラを構築
② 運用DX
・一気通貫型の運用システムで、運用を最適化
(可視化、プロセス変革、自動化、コスト・性能最適)
③ データドリブンセキュリティ
日々直面しているリスクと脅威をダッシュボードで全社公開
・「リスクの可視化」から、早期アクション(防御、検知・対処・復旧)
・「脅威の可視化」から、カルチャー変革へ(一人ひとりの意識改革)
④ ①~③を加速するグローバル戦略協業
・NEC単独では実現できない新たな価値を創造
国内におけるクラウドの構成としては、NEC印西データセンターを中心に、自社DCとAWSやAzureといったハイパースケーラー、および各種クラウド(SaaS)を組み合わせて事業環境変化に柔軟に対応できるプラットフォームに進化させています。
社内には約1,000システムを約1万6,000台のサーバーで運用していますが、このモダナイゼーションを推進。2024年度においてはIaaS(Infrastructure as a Service)、SaaS(Software as a Service)のクラウド比率は計78%で、2025年度には90%まで高まる見通しです。

どうしても10%は残るオンプレは、製造ラインとのリアルタイム性が求められるシステムや、航空宇宙防衛産業など機密性が高い情報を扱う領域に用いられます。
IaaSの活用モデルとしては、メガクラウドをインターネットからセキュリティガードレールやユーザー権限制御で遮断し、イントラネットとしてセキュアに使える共通基盤を構築しているのが特徴的です。
また、クラウドベンダーとの契約や接続環境、セキュリティ対策を共通化することで、ガバナンス強化とコストダウンを実現させています。具体的には、専用線による閉域化やユーザー権限制御、モニタリングの組み合わせによるセキュリティ確保が挙げられます。ガバナンスにおいては、共通基盤の整備に加え、各種ガイドラインの整備と社内各部門などとのコミュニケーション確立による定着化が挙げられます。
なお、IaaSを構成するそれぞれのクラウドには、各特性に応じた基本方針を定義して選定し、使い分けています。
クラウド活用価値の向上事例としては、IaaS上で稼働する600システムのバックアップ運用のRubrik活用が挙げられます。これによって、ランサムウェアの検知自動化と迅速なデータ復旧を実現させています。
また、Turbonomicを活用し、クラウドリソースの最適化を前提とした継続的なシステム運用体制も構築しています。
さらに、老朽化したオンプレ490台のVM(仮想マシン)を70日という短期間でVMware Cloud on AWSにリフトさせ、移行コストの90%、インフラコストの20%(3年で5.7億円)の削減を実現させました。
AWSアカウントの払い出しも自動化し、アカウント構築時間を6時間から1時間に大幅に短縮させています。
最後に、これまでの歩みについて、まとめました。
現状の問題点として次の3点を挙げ、境界型防御による高度なセキュリティはクラウドのアジリティ低下に繋がり、共通基盤の運営負担増加になっていると指摘しています。
①境界型セキュリティによって自由なアーキテクチャを実装できない
②クラウドの新サービスをすぐに利用できない
③共通基盤の維持に労力やコストがかかる
●Q&A
ご参加頂いた複数の企業様より、メガクラウドの選択ポイントについてなどのご質問があり、NECの状況についてご回答しました。
【第二部】NECのクラウド専門家とお客様とのディスカッション
2つのグループに分かれ、それぞれお客様とNECのクラウド専門家が、お客様のクラウド利活用の状況や課題についてディスカッションを行いました。
Aグループは、「シャドーITとガバナンス」「AIとCopilotの活用」「クラウド利用とセキュリティ」「コスト管理と契約形態」「ツールの使い分けと運用」、Bグループは「クラウド選定と運用」「クラウド移行とコスト最適化」「オンプレミスからクラウドへの移行戦略」「クラウド設計とセキュリティ」をテーマに設定。各社の状況や考え方をご紹介いただき、課題や工夫点などを共有する場となりました。「“ルールは誰のためのものか?”」という視点で、汎用的なルールよりも育てる意識が重要」といった洞察も得ることができました。

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