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NECオフィスにて並んで立つNEC スマートファクトリー戦略グループ ディレクター山下元彦とNEC PLMソリューショングループ ディレクター 笹田幸恵NECオフィスにて並んで立つNEC スマートファクトリー戦略グループ ディレクター山下元彦とNEC PLMソリューショングループ ディレクター 笹田幸恵

PLMが製造業の未来を変える
──NECのダイナミックマニュファクチャリング構想

『Obbligato』がつなぐ5つのチェーン【2025.09.17】

カテゴリ:PLM/CAD設計・開発・技術DX・業務改革

製造業を取り巻く経営環境が激しく変わる中、企業には、変化を捉え、柔軟かつ迅速に対応する力が求められています。NECは、こうした製造業の未来を支えるため、PLMソリューション『Obbligato』を“ものづくりマスター基盤”と位置づけ、「ダイナミックマニュファクチャリング」構想を推進しています。
本記事では、NECのPLM事業を牽引する山下元彦と笹田幸恵が、構想の背景と未来への展望についてお話します。

NEC スマートファクトリー戦略グループ ディレクター 山下元彦
入社後からPLMパッケージ「Obbligato」のシステムエンジニアとしてキャリアをスタートし、多様な顧客への導入を担当。 その後プリセールスとなり幅広い製造業顧客にObbligatoの価値を訴求、販売活動を強力に支援。現在はPLM事業(Obbligato、CAD、環境関連)の戦略担当として、市場ニーズを捉えた革新的なソリューションの提供を通じ、製造業DXと事業成長を牽引している。

NEC PLMソリューショングループ ディレクター 笹田幸恵
システムエンジニアとしてキャリアをスタートし、財務PKG導入支援から建設業向け基幹システムサービス開発や再構築など多様なシステム導入・運営に従事。近年では新規事業企画を経て、建設現場向けサービス、製造プロセス向けや飲料メーカ向けのサービスなど、業界のデジタル化を推進してきた。本年よりPLM事業へ参画。過去の経験を活かし、30年蓄積されたノウハウと共に育ってきた「Obbligato」を、単なる設計管理システムから製品ライフサイクルの全工程を最適化する戦略的基盤へと進化させる。製造業が直面する生産プロセスの複雑性やサプライチェーンリスクに対応し、持続可能なものづくりを支援する。

[目次]

1.NECのPLMが目指すもの──“助奏”としての『Obbligato』

NECのPLM事業について説明するNEC スマートファクトリー戦略グループ ディレクター 山下元彦
NEC スマートファクトリー戦略グループ ディレクター
山下元彦

NECでは、PLMソリューション『Obbligato』を、1991年発売以来、1,000社以上の製造業のお客様にご提供し、製品力・競争力の強化をご支援しています。『Obbligato』とは、イタリア語で、主旋律(メロディ)を引き立てる「助奏」を意味する音楽用語。製造業における主旋律──すなわち「業務・情報・人」をつなぎ、引き立て、その価値を最大限に発揮させる「助奏」でありたいという想いが込められています。
NECはこの『Obbligato』を核に、製造業の変革(DX)を支えるPLM事業を展開。自らが製造業であり、SIベンダーでもあるNECだからこそ提供できる価値を、現場の声に寄り添いながら磨き続けています。
NECのPLM事業では、次の“MVV(Mission、Vision、Value)”を掲げています。

●Mission(使命・存在意義):日本のものづくりを世界へ響かせる
日本の製造業の高度な技術力を、デジタルツインで融合・コネクトし、技術革新や環境変化への柔軟な変革を支援。顧客価値の最大化を目指す。

●Vision(ありたい姿):NEC製だからできる、NEC製しかできない
幅広い日本の製造業のお客様の声を聴き、自らが製造業であり、SIベンダーでもある強みを活かし、未来に渡り価値を提供し続ける。

●Value(提供する価値):「NECの変わらぬ原点」を体現
お客様や社会にとって「よりよいものを追求する」をモットーに、情熱を持ち価値を創造。お客様と共創・協奏し伴奏する。

製造業はデジタル化の進展、サステナビリティへの取り組み・サプライチェーンの再編など、急激な変化の波にさらされています。こうした状況において、『Obbligato』は、従来の枠組みを超え、お客様の変動対応力を強化する中核的な基盤として進化を続けてまいります。

2.製造業の環境変化と広義のPLMへの進化

製造業は今、次のような多面転記な変化に直面しています。
政治:地政学リスクの高まり(例:ウクライナ紛争、関税問題)
経済:顧客ニーズの多様化とマス・カスタマイゼーションの進展
社会:労働人口減少に伴う省人化・技術伝承の課題
技術:AIやロボットによる生産工程の自動化
法律:欧州バッテリー規制など環境規制の強化
環境:脱炭素への対応など環境問題への要請の高まり
レジリエンス:自然災害やパンデミックなど突発リスクへの対応力の強化

製造業は複雑かつ連続的な変化の中で、PLMの位置づけは、従来の設計領域におけるQCD(Quality:品質、Cost:コスト、Delivery:納期)向上を中心とする“狭義のPLM”にとどまらず、生産プロセスやサプライチェーン、環境面までをカバーして全体最適を図る“広義のPLM”へと進化していきます。

3.5つのチェーンでつなぐダイナミックマニュファクチャリング

取材中のNEC スマートファクトリー戦略グループ ディレクター 山下元彦の様子

経済産業省の『DX銘柄 選定企業レポート』によると、日本企業のDXは現場主導の「ボトムアップ型」が9割を占め、経営層による「トップダウン型」の取り組みは1割にとどまるとされています。これを打破し、グローバル水準の経営モデルに近づくには、経営層が中長期ビジョンを描き、全社的にDXを推進することが求められると山下は指摘しています。

また、経済産業省およびNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が2024年に発表した『スマートマニュファクチャリング構築ガイドライン』では、製造業における全体最適のDXの重要性が強調されています。変化を的確に感知し、適切な意思決定と柔軟なリソースの再配置を可能にする仕組みが不可欠であり、そのためには、製造機能だけでなく、設計・調達・生産・サービスなど4つのチェーンで構成される、ものづくり全体のプロセス──マニュファクチャリングチェーン──をデジタルでつなぎ、最適化することが重要であると言及しています。
日本はカーボンニュートラル目標を掲げており、企業活動における環境配慮が強く求められています。NEC自身も2040年までのカーボンニュートラルを宣言し、環境対応ソリューションの提供を進めています。そこで、NECは独自の視点として、「サステナブルチェーン」を加えた、以下の5つのチェーンを連鎖させる構想を打ち出しました。

①エンジニアリングチェーン:
製品・工程設計を中心に技術と情報をものづくり各機能に遡及させる連鎖

②サプライチェーン:
最終需要者に商品供給するための、材料調達から商品納入までの「もの」を中心とする業務連鎖

③プロダクションチェーン:
自社の製造リソース(人・製造・工法・ノウハウ)により、原材料を加工し商品として仕上げる一連の工程連鎖

④サービスチェーン:
提供する商品品質の顧客への認知による魅力の向上や、納入後の商品価値を維持向上させるさめのサービスを中心とした業務連鎖

⑤サステナブルチェーン(NEC独自):
製品の環境対応、資源循環、人権問題、生物多様性など、地球環境に貢献するための「環境配慮」を中心としたグリーントランスフォーメーション(GX)情報連鎖

現状においては、各チェーンを横断したものづくりが行えている製造業はほとんど存在しておらず、これらのチェーンを『Obbligato』でつなぎ、分断されたデータを一元化することで、変化を捉え、必要な対応を動的に実行できる「ダイナミックマニュファクチャリング」を実現する未来構想を推進しています。

4.NECのあるべきサービスの方向性

取材中のNEC PLMソリューショングループ ディレクター 笹田幸恵の様子
NEC PLMソリューショングループ ディレクター
笹田幸恵

このように、製造業を取り巻く環境変化は複雑化し、変化に柔軟かつ迅速に対応するには、全体最適を見据えたデータ活用がこれまで以上に重要になっています。従来の「個別最適」から「全体最適」へ──すなわち“狭義のPLM”から“広義のPLM”への転換が、今まさに求められています。
しかし、PLMを提供するグローバルベンダーは、3DCADデータを軸に包括的なツールを展開していますが、日本市場での展開は限定的です。また、SIer(システムインテグレーター)もツールとしてのPLM導入が中心であり、製造業全体における価値提供には至っていないのが現状です。
こうした背景を踏まえ、NECは、『Obbligato』を従来の“狭義のPLM”の枠を超えた“広義のPLM”として再定義し、バリューアップさせる構想を描いています。個別最適を超え、ものづくり全体のDXを支える中核基盤として、製造業のお客様とともにその構想を具体化させていく段階を迎えています。

5.『Obbligato』の新たなコンセプト──5つのチェーンをつなぎ、循環させる基盤へ

『Obbligato』の新たなコンセプトは、5つの チェーンを連鎖し循環させる“ものづくりマスター基盤”に変革し、環境変化に即応できるダイナミックマニュファクチャリングの実現をご支援するものです。

下図のとおり、現状のBOMやSCMなどのサブシステムはそれぞれ個別のマスターを保持していることにより、データの分断や重複が多く、活用することが困難です。これを“ものづくりマスター”として、あらゆるサブシステムのデータを一元化・連携を可能することで、データを最大限に活用できるようにします。この“ものづくりマスター基盤”としての『Obbligato』がダイナミックマニュファクチャリング実現の核となり、資本生産性重視の経営と環境経営の実現を目指します。

「新たな価値・強みの創出:ものづくりマスターの必要性」に関する説明スライド

NECが考えるダイナミックマニュファクチャリングの姿は、次の図のとおりです。

「NECが考えるダイナミックマニュファクチャリングの姿」に関する説明スライド

例えば、サーキュラーエコノミーを見据えた製品設計、災害対応力を高める生産マップフリーの構築、エンジニアリングチェーンにおける品質基準とプロダクションチェーンにおける実績とのギャップ解消など、ものづくりのあらゆる局面で、チェーンを連鎖させて“全体最適”を目指す構想です。

6.おわりに──BluStellarとつながるObbligato未来構想

NECでは、お客さまの変革(DX)を成功へ導く価値創造モデルとして『BluStellar(ブルーステラ)』を展開しています。これは、NECが誇る先進テクノロジーと積み上げてきた知見をもとに、1万人のDX人材が戦略策定から実装までをEnd to Endでご支援するというものです。
『BluStellar』には業種共通や業種別の多様なシナリオを用意されていますが、今回ご紹介した『Obbligato未来構想』は『BluStellar』の製造業向けシナリオとして位置づけられています。

これからの製造業には、変化に柔軟に対応し、持続可能な発展を遂げながら、新たな価値を生み出せる仕組みが求められます。NECは、お客様のビジョン実現のパートナーとして、『Obbligato』を通じて、未来の製造業の姿を共に創造していきます。

笑顔で談笑するNEC 山下と笹田

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PLM「Obbligato」

PLM「Obbligato」は、企画~設計~生産~保守に至る製品ライフサイクル全般に渡り、ものづくりの基準情報であるBOMとBOPを核に情報を連鎖・集約・共有し、エンジニアリングチェーンとサプライチェーンをつないで、変動対応力・競争力を強化します。

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