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CFOメッセージ

長期利益の最大化と短期利益の最適化の循環を回し、中期経営計画の達成により持続的な企業価値向上を目指します。 代表取締役 執行役員常務 兼 CFO(チーフフィナンシャルオフィサー) 藤川 修

「長期利益の最大化と短期利益の最適化」

2025中期経営計画(2021年度~2025年度)では、成長の原資となるキャッシュを事業活動により継続的に創出し、適切なキャピタル・アロケーションにより「長期利益の最大化と短期利益の最適化」を図り、その利益のサイクルを通じて企業価値の向上を実現していくことを基本的方針に定めています。目標指標としては、EBITDAの年平均成長率9%に加え、2025年度のROIC6.5%を設定し資本効率も高めていくこととしています。財務的な側面に加え、非財務基盤の強化も方針として掲げ、非財務の領域における投資も実行し、持続的な企業価値向上を目指します。

初年度となった2021年度は、部材不足によるマイナス影響を受けたものの、5G基地局の出荷拡大や、コアDXでのアビームコンサルティング(株)との連携をはじめとする成長事業の拡大が寄与し、売上収益は増収となりました。利益面では、オペレーションの大幅な改善はあったものの、部材不足の影響や戦略的費用の増加、2020年度の一過性利益の減少等のマイナス要因により、調整後営業利益は前年度比72億円の減益となりました。調整後当期利益は、税金費用の減少により、3期連続で過去最高益を更新しました。この結果を受け、株主還元としては期初の予想から1株当たり10円の増配となる、1株当たり年間100円の配当を実施しました。

2021年度は、調整後営業利益の期初計画を達成することができました。これは、前中期経営計画の3年間で実行した投資の刈り取りに加え、長期利益の最大化と短期利益の最適化に向け、長期的展望に立った投資と、年度計画の確度を高めるための徹底した事業管理を両輪とした仕掛けが、好循環を描きはじめているものと評価しています。この循環を回し続けることで、かつて常に計画が未達で終わっていたNECが有言実行の企業へと変わってきていることを示し、市場の信頼を回復していきたいと考えています。

戦略的な投資に向けたキャッシュの創出

営業活動によるキャッシュ・フローは、2021年度から2025年度までの累計で1.3兆円を目指しています。投資の機会損失を避けるために一定の余力を確保し、好機には積極的な投資を実行していく方針です。

2021年度は、夏頃から顕在化した部材逼迫が、業績へマイナスのインパクトを与えましたが、全社的な努力によって影響を営業損益で80億円程度に抑制することができました。一方、部材逼迫への対応として戦略的に棚卸を積み増したため、フリー・キャッシュ・フローは、前年度比683億円減少の841億円となりました。2022年度は、部材逼迫が沈静化することを前提に棚卸の正常化を進めていくことで、1,800億円の収入を計画しています。

こうした一時的な要因に対しても適切にコントロールしながらも、基本方針に従い、引き続き成長事業の拡大、ベース事業の収益性改善、資産効率の向上、保有資産の現金化を通じて、キャッシュの創出を推進していきます。

ベース事業の収益性改善によるキャッシュ創出

ベース事業では年度計画の確度を高めるため、CFOである私が低収益事業のモニタリングを徹底しています。この低収益事業は営業利益率7%を事業継続のためのハードルレートと設定し、ハードルレートに満たない事業については7%以上まで営業利益率を高めるべく、まずは私が事業部門とともに計画を策定し、改善に向けた施策を遂行しています。2025年度までにハードルレートに至らない場合、事業ポートフォリオの整理なども選択肢に入れていく方針です。これまでの取り組みの結果、確実に全社の収益力は底上げされており、2021年度は低収益事業の調整後営業利益率を2.6%改善させました。2022年度はこの活動を加速し、一部事業の縮小判断やリソースシフト含む事業構造の最適化を図ることで、さらに1%強の利益率改善を計画しています。

資本効率向上によるキャッシュの創出

資産効率の向上に向けて、前中期経営計画中から取り組んできたCCC(Cash Conversion Cycle)の改善活動の結果、CCC日数は2019年3月末の72日から毎年6日ずつ改善し、2021年3月末には60日となりました。2022年3月末は、戦略的な棚卸の積み増しという経営判断に伴い66日となりましたが、当該特殊要因を除けば58日に改善となりました。2020年度まではコーポレート主導で改善をサポートしていましたが、2021年度は各事業部門のリーダーが自律的に取り組みを進め、改善を果たしました。こういった資本効率に対する意識や文化の改革が着実に実行力の強化をもたらしていることを実感しています。

2025中期経営計画では、PL経営から資本効率も重視する経営への転換を図ります。資本効率を測る代表的な指標としてROICが挙げられますが、ROICだけではなく人的資本効率や生産効率など、事業活動の中における様々な効率性を重視していきます。ただし効率性を重視しすぎると成長事業や新規事業のトップラインの成長を抑制してしまうことになります。したがって、全社一律で効率性をモニタリングするのではなく、長期的な視点で事業特性に応じた指標の適用を拡大していきます。2022年度は、例えばフリー・キャッシュ・フローやEBITDAなど事業ごとに最適な経営指標で、それぞれロジックツリーを構築することで最適な管理指標を設定し、2023年度の計画策定と運用につなげていく方針です。

その実効性ある運用のために、部門長レベルの資本コストへの意識の浸透に努めています。資本コストを上回る利益を生み出すことが、資本市場や金融機関に対する責務であり企業として存続を許されるための条件であるという認識の共有を図りながら、2023年度の目標設定を通じて、全社のさらなる資本効率向上を目指していく考えです。

保有資産の現金化によるキャッシュ創出

NECは政策保有株式を原則ゼロとするガイドラインを2020年4月に定めています。新市場区分の「プライム市場」に移行したこともあり、より一層、政策保有株式の保有意義についての説明責任が問われています。株式を保有する場合は戦略的な位置づけを明確にし、資本コストの観点等から保有することで得られるリターンを検証するなど総合的に評価したうえで、毎年取締役会において保有の合理性を検証し、その合理性が認められた場合のみ保有することとし、該当しない株式は売却を進めています。2021年度には11銘柄、195億円分を売却し、上場株式の政策保有株式は、2020年3月末(2019年度)の108銘柄から2年間で52銘柄に減少しました。

政策保有株式に限らず、成長領域やシナジーを創出できる分野に資金を振り向けていくために、ノンコア資産の現金化も積極的に進めています。

戦略的費用や投資に向けた余資を保持しつつ、好機には積極的に投資していきます。

グラフ:フリー・キャッシュ・フローの状況、グラフ:政策保有株式の状況

キャピタル・アロケーション

これまでお話してきた施策によってキャッシュを創出し、企業価値向上に向けた戦略的な費用投入や投資に向けた余資を保持していくとともに、今後の成長ドライバーとなる領域には、機会を捉えて積極的に投資していく方針です。一方で財務体質については、自己資本比率やネットD/Eレシオが改善し、格付会社から格上げの評価をいただいた2021年3月末時点の財務体質を中期的に維持すべき目安としていきます。配当については、5年間平均で30%程度の配当性向を目安とする安定した配当を基本的な方針としていきます。

また、2022年8月30日から2023年3月31日の期間において、300億円を上限とする自己株式の取得を実施することとしました。これは財務体質の改善や、2025中期経営計画に基づいた業績見通しに照らした足元の株価水準等を総合的に考慮した結果、市場に対するメッセージとして実施を決定しました。これまで同様に成長に対する投資機会を優先し、前述の配当方針に加え、収益の改善に伴う企業価値向上によるキャピタルゲインで株主の皆様に還元していくというキャピタル・アロケーションの基本的な方針は変わりません。

戦略的費用は、営業活動により創出するキャッシュ・フローの中で、成長事業や既存事業の収益性改善に向けた投資、それを支えるビジネスインフラ整備や人材投資も積極的に行っていくことを基本的な方針としています。2021年度は、前年度比260億円の増加となる総額730億円の戦略的費用を、メリハリをつけて投じました。計画公表時は、年度計画の引き下げにつながる投資額の増額に対し、株式市場でネガティブな反応がありました。それに対して2022年度は、2021年度の水準をベースに、増加させる場合には該当領域の利益改善の範囲内での投入とし、業績が悪化しないようマネージしていく方針です。

企業価値につながる非財務戦略

社会課題の複雑化や開示要請の高まりなどを背景に、年々、統合的思考に基づく経営の重要性が高まっています。外部の要請に対応した非財務情報の開示を行うだけではなく、財務と非財務を明確に関連づけ、企業価値の持続的向上を論理的に説明できる非財務戦略が求められていることに対し、外部評価や2021年に新設したサステナビリティ・アドバイザリ・コミッティでの議論もふまえ、開示や論理的な説明が不足している点を特定し、対応強化を進めていきます。グループ会社のアビームコンサルティング(株)と連携し、企業価値につながる指標と非財務データ、施策の因果分析も進めています。将来的には、データを蓄積しつつ、非財務指標をデータドリブン経営の中で分析し、マネジメントに活かしていきたいと考えています。

図:利益のサイクルとキャピタル・アロケーション

サステナビリティ経営推進による資金調達

2022年7月には、国内社債市場における公募形式により、国内初となる3年限のサステナビリティ・リンク・ボンドを同時発行しました。本社債発行は、ESG視点の経営優先テーマ「マテリアリティ」の1項目である「気候変動(脱炭素)を核とした環境課題への対応」に、資金調達を通じて強くコミットするものとなっています。SDGsファイナンスへの取り組みを通じて、NECグループの「Purpose(存在意義)」を実践するとともに、当社のサステナビリティ経営の取り組みについて、様々なステークホルダーの皆様と引き続き対話・共創していきます。

最後に

2022年度は、売上収益は成長事業を中心に3.8%の増収、調整後営業利益は売上増見合いでの増益を織り込み、1,850億円を計画しています。部材逼迫の問題や為替円安の状況など不透明な事業環境は継続していますが、旺盛なDX需要の取り込みや情勢変化に対する対応力を駆使して確実に事業を遂行していきます。また、2022年度の業績予想からNon-GAAPベースでの開示とさせていただきました。これはM&Aの実行により計上されるPPA(Purchase Price Allocation)を足し戻した指標(Non-GAAP)を本源的な収益力として重視していることによるものです。

経営環境の見通しが立たない不安定な時代に、企業は過去の延長線上では存続することが難しくなっています。逆に、これまでの競争環境が大きく変わり、これまでにないチャンスが生まれやすくもなっています。様々なものがデジタル化され、データが蓄積されていく中で、AIやセキュリティ技術、エンジニアリング力といった技術的なアセットを活用することで、NECが社会的価値を創出できる領域が大きく広がっていきます。かつては誰も想像できず、またNECもかつては関わりを持つことがなかった領域であるAI創薬は、まさにそれを象徴する事業です。

NEC 2030VISIONを見据えながら、NECの強みを掛け合わせ、社会に価値を提供していくことで、2025中期経営計画の達成という結果を出し、企業価値の持続的向上を実現していきたいと考えています。

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