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社長メッセージ

森田 隆之

Purpose経営のもと、社会とお客様の未来を共に考え、社会全体のDXを推進し新たな社会価値を創造していきます。

2020年に拡大した新型コロナウイルス感染症は今もなお世界に大きな影響を及ぼしています。この新型コロナウイルス感染症は私たちの生活に大きな変化をもたらし、様々な恩恵と課題を浮き彫りにしました。デジタル化の加速や働き方改革、キャッシュレス決済の拡がりといった前向きな変化をもたらした一方で、日本の社会のデジタル化の遅れや、デジタルディバイドといった課題も明らかになり、改めてテクノロジーが与える影響の大きさを実感することとなりました。

図らずも次の時代への変化が加速し、我々が向かうべき方向性を垣間見たことで、今後は社会のデジタル化が大きく進展するのではないかと期待しています。今回の経験は、デジタル化を進めていくために必要なのは技術だけではなく制度や社会のシステムの変革、そして変化を受け入れる人の心の変革が重要であることを教えてくれました。人の心の変革には、弱者を取り残さないこと、デジタル化に対する国民の信頼を構築すること、そして自助も含め国民一人ひとりがデジタル化に適応していく意思を持つことが重要だと考えます。

デジタル化への取り組み次第で国の将来や、私たちの生活は大きく変わります。NECは、社会価値創造型企業として、これからも継続的な研究開発(R&D)と、高い信頼性を持つ実装技術をベースに社会全体のデジタル変革を推進し、社会とお客様のより良い未来に向けて新たな社会価値を創造していきます。

NEC WayとNEC 2030VISION

誰もが人間性を十分に発揮できる持続可能な社会の実現へ

NECは創業時から一貫して社会課題を解決することで価値を創造し、社会に貢献してきました。創業の精神として「ベタープロダクツ・ベターサービス」を掲げ、1977年には「C&C(コンピュータと通信の融合)」を提唱し、今日のインターネット世界を予見したその概念は現在の社会に広く浸透しています。

NECが目指す将来の方向性を定めるため、改めてNECは何の会社なのか、何をしていくのか、過去の歴史や培った強みを振り返り、我々の存在意義(Purpose)を考え直しました。NECの強みである日本のインフラやミッションクリティカルなシステムを支えてきた技術と実績を再認識し、その強みを新たな価値に変え社会に貢献する。これこそがNECの存在意義であるという想いから、2013年に社会価値創造型企業への変革を宣言しました。

2020年4月には、私たちNECグループが共通で持つ価値観や行動の原点をNEC Wayとして再定義しました。その中で「Orchestrating a brighter world、安全・安心・公平・効率という社会価値を創造し、誰もが人間性を十分に発揮できる持続可能な社会の実現を目指す」ことを、NECのPurposeとして定めています。

NEC Way-Purpose,Principles,Code of Values,Code of Conduct

NEC 2030VISIONを経営の羅針盤に

我々のPurposeに対して社会からの共感があれば、信頼され、NECが存在する価値を認めていただけると考えています。このPurposeで実現するものをより具体化するため、2030年の目指す未来の姿をNEC 2030VISIONとして策定しました。

NEC 2030VISIONは、未来の生活者を思い、ありたい「環境」「社会」「暮らし」を、NECの進む道筋や事業の方向性を示す羅針盤として設定しています。未来への方向性が共有できれば、実現に至る様々な困難も乗り越えていけるはずです。

NECは事業活動を通じNEC 2030VISIONを実現していくことで、未来の共感を創っていきます。

2025中期経営計画

戦略と文化が一体となったPurpose経営

今回の2025中期経営計画は、NEC WayとNEC 2030VISIONの実現に向けた事業計画として策定しています。5年間の計画としたのは、このような変化の時代であるからこそ、従来の延長線ではない企業変革のための投資を行い、結果を出すまで責任を持って実行するべきであるとの考えからです。そのために事業戦略と財務戦略をより一体化し、5年後の事業の姿を実現するためのリソースプランも徹底して検討しました。

我々が考えるPurpose経営とは、戦略と文化を一体として取り組んでいくものです。2025中計の戦略として、NECが持つ技術の強みを顧客価値に転換し、グローバルでの事業拡大と国内事業のトランスフォーメーションを加速させ、成長を図っていきます。この戦略を実行しPurposeを実現するのは人であり、高いモチベーションを保つ人材を支える強い文化が必要です。このような思いから戦略と文化を一体として位置づけています。

NECの成長モデル

NECの強みはR&Dと、これまで社会のインフラやネットワークの基盤を支えてきたクオリティの高い実装力です。この強みを顧客価値へと転換するため、生体認証やAIなどの技術を共通基盤として整備するとともに、必要に応じてM&Aにより外部補完し、これらを源泉にグローバルと日本で高い収益とキャッシュを創出する事業を展開していきます。

日本を含むグローバルでは、デジタル・ガバメント/デジタル・ファイナンスとグローバル5Gにフォーカスしていきます。

国内ではIT事業のトランスフォーメーションを進めます。上流のコンサル領域から下流での実装力までを一体化とした強みや、優位性のある技術を共通基盤化し、それらを最大活用することで、社会や企業のDXをターゲットに、新たなマーケットへと拡大し国内事業全体の成長を牽引していきます。

また、既存のIT事業においても、その資産を最大限活用することで全体最適化を図ります。更に低収益事業を改善させることで競合他社を上回る高い収益性を実現させていきます。

事業戦略:強みの技術を顧客価値に転換し成長を実現

①デジタル・ガバメント/デジタル・ファイナンス

グローバルにおいては、前中計期間で買収した欧州のNEC Software Solutions UK社(旧Northgate Public Services社)、KMD社、Avaloq社の3社が中心となります。2025中期経営計画期間では欧州3社とNECの事業によりシナジーを出していきます。販売面やコスト面、アセットの活用によるシナジーだけではなく、行政と金融の融合領域へとシナジーを拡大していくことで事業成長を目指します。

買収をすると、何時その会社を統合するのかとよく聞かれますが、ただ一律に統合するのでは買収した会社が持つ良さもなくなってしまうと考えています。彼らが持っている強みや文化をできる限り活かし、良いところを尊重しながらベクトルを合わせ、健全で持続的なシナジーを創出していきます。

日本国内では、行政のデジタル化を推進していきます。行政のシステムは長く運用し、信頼性が求められるため、技術や実績、財務体質も含めて社会的責任を全うできる会社でなければその推進役にはなりえないと考えています。NECはミッションクリティカルな社会インフラにより貢献してきた実績や、これまでも機微なデータを扱いながらも大きな問題を起こさずに日本を守ってきた自負があります。日本の行政のデジタル化にも大いに貢献していきたいと考えています。

加えてこの領域では、欧州のデジタル・ガバメント先進国で中核、一翼を担ってきた英国のNEC Software Solutions UK社とデンマークのKMD社が培ってきた様々なノウハウや経験も、日本のデジタル化を進めるうえで大いに活用できると考えています。また、NECには、生体認証など個人認証の面での技術的優位性に加えて、これまで地方自治体や中央官庁のビジネスを長い間支え培ってきた信用力といった強みがあります。デジタル化に際しては、システムの安定的な移行のための経験とリソースも含めた総合力が重要であり、ここでもNECの強みを活かせると考えています。

②グローバル5G

グローバル5Gでは、国内での商用実績をベースに、グローバル市場でのシェアを獲得していきます。基地局のオープン化に関する様々なルール化・標準化が成されたことや、ハードウェアの性能が向上したことで、Open RANはグローバルでも実用化の局面に入っています。また、日本電信電話株式会社や楽天モバイル株式会社といったグローバルを志向する会社と国内の5G事業を行っていることは、グローバル市場向け製品の開発にも活きています。

グローバルでの市場環境ですが、モバイルオペレーターは通信機器に関して選択肢を増やすことで競争環境をより高めたい、より効率的な運用を行いたいという強い要望を持っており、サプライヤーが増えることを歓迎しています。このような環境の中で、NECは2021年6月には英国のVodafoneの商用Open RANのベンダに、同じく6月にドイツテレコムの商用プロジェクトに向けたOpen RAN構築のベンダにそれぞれ選定されています。

現在は基地局が中心ですが、今後はソフトウェア・サービスの領域へも事業を拡大していきます。20年程前にコンピュータ市場で起こったような、独自仕様からオープン化されソフトウェアで制御するという変化が、ネットワークの世界でも起こっており、通信機器とソフトウェアは今後もっと融合していくでしょう。このような動向から、基地局だけでなく、効率的にネットワークを運用するためのソフトウェアや仮想化技術の市場も併せて発展・拡大していくと想定しています。ソフトウェア領域であるOSS・BSSに強いNetcracker社の製品も含め、日本を含めたグローバル市場で事業を拡大していきます。

③コアDX

コアDXでは、ABeamコンサルティングを含むコンサルティングからデリバリまで一貫したアプローチによる提供価値の拡大や、ICT共通基盤技術とオファリングの充実化、AWS(アマゾン)やAzure(マイクロソフト)とのグローバル戦略協業による競争力強化、国や自治体・スーパーシティなどのフラッグシッププロジェクトにより事業成長を図ります。

お客様の需要として、コンサルティングからデリバリまで一気通貫のソリューション提供を求める声が増えてきています。日本でトップクラスのコンサルタント数や売上規模を持つABeamコンサルティングをグループ会社に加えたのはこのような状況を見据えてのことですし、NEC自身でも戦略コンサル部隊を立ち上げて戦略パートナーへのアプローチを強化しています。未来の共感という側面でも、技術を実装する時に社会がどう変わるべきか、データの保有や利用の仕方をどうするべきか、それならこういうシステムが必要ということを良い点、悪い点含め提示しなければなりません。今まで以上に、こうすべき、こう変えたらどうでしょう、と利用者側に立ってプロアクティブに将来像を提案する活動を活発化させていきます。

また、NECは自らをDXの実験場とした変革も進めています。これには2つ重要な意味があります。1つは自身のDXにより企業としての競争力を上げること。もう1つは最先端の実証を自ら行うことでお客様に提供できる強力なユースケースを持つことです。これらを進めるため私の直下にTransformation Officeを設置し、3年を目途に業務プロセスまで含めたコーポレートトランスフォーメションを行う計画です。これによりNECは名実ともにグローバルトップレベルのDX最先端企業になります。

難しいのはITシステムそのものを作ることよりも、業務プロセスの変革、そして、データレジストリの整備です。システムの前提となる業務プロセス、そのための働き方や考え方、そしてシステムごとに記載方法が異なっているデータをきれいに整えなければなりません。時間は掛かりますが地道に進めていきます。

過去1年半で変革の青写真はほぼできており、現場へと展開を始めています。

④次の成長の柱となる事業

2025中計では、NEC 2030VISIONで示したありたい環境、社会、暮らしの実現に資する「次の成長の柱となる事業」にも取り組んでいきます。NECが持つディスラプティブな技術を、この10年で培ってきた新事業開発のノウハウや手法に活かして事業化を推進していきます。

具体的な取り組み例として、ヘルスケア・ライフサイエンス事業とカーボンニュートラル関連事業があります。ヘルスケア・ライフサイエンス事業は、2030年度に事業価値を5,000億円とすることを目標に掲げ、AI創薬や内視鏡画像解析、健康状態の可視化によるライフサポートなどに取り組んでいます。また、カーボンニュートラル関連事業は脱炭素経営ソリューションの商品開発やサーキュラーエコノミー分野の事業化により、エネルギーマネジメントの効率化・最適化を実現することで、脱炭素社会へ貢献することを目指しています。

これらの事業の評価にあたっては、IRRを指標として投資回収性を評価して個々の投資の是非を決めるとともに、新規領域全体のリスク規模を鑑みながら継続的にマネジメントしていきます。安定的な既存ビジネスと同一の指標では新規ビジネスを評価することはできません。新しい領域に関しては、定性・定量両方の側面で指標を設定し、進捗をチェックしながらNECの事業価値向上につなげていきます。

財務戦略:長期利益の最大化、短期利益の最適化

財務戦略では、企業価値を更に向上させていくため、持続的にキャッシュを創出し、サステナブルな成長の原資とします。そのためには、従来のPL経営から資本効率重視の経営へと転換し、事業成長を重視したキャピタル・アロケーションの実行により、強固な財務/非財務基盤を維持・強化していきます。

財務基盤は、マーケットの期待に応える事業成長と財務健全性の維持・向上を両立し、非財務基盤は2025中期経営計画を通じてサステナブル経営を更に推進するため、E(気候変動)、S(セキュリティ、AIと人権、多様な人材)、G(コーポレート・ガバナンス、サプライチェーンサステナビリティ、コンプライアンス)、それぞれの観点でKPIを設定し、これらをマテリアリティに特定し取り組んでいます。マテリアリティを中心とした非財務面での取り組み強化と透明性の高い情報開示によって、ESG投資に活用されるESGインデックスに継続して組み入れられることを目標としています。ESGインデックスへの組み入れは、社会および資本市場からの信頼の証左であることに加え、従業員の自社に対する誇りの醸成とモチベーション向上にもつながると考えています。

財務戦略については PDFP.30 CFOメッセージを、マテリアリティについては PDFP.28 2025中期経営計画 財務戦略もご参照ください。

人材と文化

これからの時代、社会価値創造に取り組んでいくためには高い能力を持った人材、そして人材を引き付け、活躍することができる企業文化が鍵になると考えています。人材を確保するためには、外を見て仕事ができるオープンな組織や環境を提供していくことが重要であり、前中計期間での様々な施策によりNEC内のエンゲージメントスコアは大きく改善しました。そして今、力を入れているのはインターナル・コミュニケーションです。従業員と顔を合わせる場や、双方向でコミュニケ―ションする機会を設けるなど、経営層と従業員の距離を近づけることが大事だと思っています。この取り組みの一環として、タウンホールミーティングをオンラインでも開催しており、今年に入って国内だけでなく海外でも既に12カ所で実施しました。よりフラットでよりオープンな組織環境を実現していくことが、組織力の強化に重要だと考えています。

Purposeを経営の羅針盤に、戦略と文化の両面で施策を着実に実行し、新しい社会価値を創造していきます

そして人材のポートフォリオですが、外部からの採用を継続強化するとともに、女性、外国人、そして若年層などのダイバーシティを推進し、やる気のある優秀な人を積極的に登用することで、HR方針である「挑戦する人の、NEC。」にふさわしい会社に変革していきます。

人材については PDFP.40 挑戦する人の、NEC。もご参照ください。

新たな成長へのスタート

2020年度は前中期経営計画で目標としていた営業利益率5%を達成し、財務的な体質改善と事業成長のための布石もしっかりと打つことができたと評価しています。これにより新たなスタートとなる2025中期経営計画においては、グローバル市場で競争していくための将来に向けた戦略を考え、成長に向けた攻めの投資を行い、市場を創っていくことのバランスが取れた、あるべき姿の実現に向けた計画を策定することができました。私自身、中計策定のリーダーとして、策定プロセスの中でそれぞれの重要施策をリードする役員と共同して準備をしてきたことで、地に足が着いた実現性のある計画が策定できたと思っています。そして戦略を実現するための人材については、前中期経営計画から進めた文化の改革を、更に一歩進めていきます。社員のエンゲージメントがグローバルのトップ水準になれば、創造力や生産性、競争力などあらゆる面が、企業としての競争力の大きな差として表れてくるでしょう。

これら戦略と文化、両面での施策を着実に実行することにより、社会価値創造を通じて2025中期経営計画の財務目標と非財務目標を達成し、NECのPurposeの実現につなげていきます。これからもNECが良き市民として、社会に必要な会社として、より良い未来の実現のために、サステナブルに成長し続けられるよう邁進していきます。

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