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CFOメッセージ

現在、2020中期経営計画は目標の達成に向けて着実に進捗しています。目標達成に向けては、資本配分の源泉となるキャッシュを事業活動により創出し、創出したキャッシュを適切に配分していくキャピタル・アロケーションの考え方が重要です。
キャッシュの創出にあたっては、長期的な事業の成果につなげるという考え方が重要であり、短期的な損益を過剰に重視するあまり開発投資や拡販費用が一時的な判断により不連続に削減されることは適切ではありません。私はCFO就任以来、短期の利益は最適化すべきものであり、最大化すべきなのは長期の利益であるという考え方を社内に発信し、経営に取り組んでいます。
ここではキャッシュ創出の取り組みと、資本配分の考え方について、新型コロナウイルス感染症の影響もふまえてご説明していきます。
キャッシュの創出
前述の資本配分の元手となるキャッシュを創出するためには、「収益性の改善」と「資産効率の向上」が重要となります。加えて「保有資産の現金化」によりキャッシュを創出していきます。
収益性の改善
グローバルでの競争に生き残っていくために必要な投資の継続に向けて、収益体質を強化しています。そのための施策として2019年3月期に構造改革を実施しましたが、その固定費削減の効果は2020年3月期の損益水準に着実に反映されています。
また、事業ポートフォリオの改革として、2020年3月にNECディスプレイソリューションズ(株)を合弁会社化することをシャープ(株)と合意し非連結化を決定し、2020年6月にはグローバルのエネルギー事業の新規受注停止を決定しました。引き続きコア事業に注力することで、収益性を向上させていきます。
収益を押し下げる要因となっている不採算案件については、現在の100億円超の水準から半分以下に抑制することを目標に改善を進めます。不採算案件が発生する原因としては、初めて取り組む領域・案件であることや、契約時に十分なリスク認識ができていないもの、プロジェクト・マネジメントが適切にできておらずリスクが顕在化するものなどがあります。リーガルチェックの強化により一定の抑制効果が表れてきていますが、プロジェクトの上流工程におけるリスクの早期発見を強化することにより一定の改善を進めます。
資産効率の向上
資産効率の向上という観点では、前払い交渉や投入時期の適正化、在庫水準の最適化などのCCC改善施策を全社活動として推進しています。2020年3月期には4事業部を対象にパイロットプロジェクトとして実行し、100億円を超える改善施策の実行を完了することができました。
2021年3月期から全社展開すべく、部門横断の数百人規模の体制を構築し活動を拡大しています。
保有資産の現金化
新たなガイドラインとして、政策保有株式を原則ゼロとすることを2020年4月に定めました。売却方法や時期については、慎重に検討していますが、今後この1年程度で少なくとも500億円規模は売却可能となるように目処をつけていきたいと考えています。株式保有については、戦略的な位置づけを明確にし、資本コストの観点から保有することで得られるリターンを検証したうえで、取締役会において合理性が認められた場合のみ保有することとしています。
また、政策保有株式のみに限らず、売却可能な資産の現金化も積極的に進めていきます。
保有銘柄数

時価(貸借対照表計上額)

キャピタル・アロケーション
2020中期経営計画は順調に進捗し、最終年度の目標である営業利益率5%を達成すべく着実に計画を実行しておりますが、次の中期経営計画ではもう一段高い水準の営業利益率を目標としていきます。
その中では、「財務体質の健全性確保」と、「株主還元」、そして「成長を実現するための成長投資」への適切な資本配分が重要だと考えています。
財務体質の健全性確保
財務体質の健全性について、B/Sは十分に安定的な水準にあると考えていますが、D/EレシオとネットDebt/EBITDA倍率を健全性の指標とし、格付けをさらに1ノッチ改善させるべく、成長投資と並行して財務健全性を高めていきます。
株主還元
次に、株主還元です。配当性向の水準は過去5年の利益に対して配当性向30%程度を目安としており、株主の皆さまが期待する配当を安定的に実現することを方針としています。また、自己株式の取得は行わないことを前提としていますが、それはNECを取り巻く事業環境を考慮すると、M&Aなどの成長投資でより高い企業価値を創出することが可能であり、企業価値の向上がより株主の皆さまへの還元につながると考えているためです。
成長を実現するための成長投資
成長投資の主な資本配分先は、研究開発投資、M&Aになります。
現在の研究開発費は対売上収益比で4%弱の水準ですが、長期的には事業の利益水準を上げることにより5%に近い水準まで増やすことで、研究開発の応用領域を拡げていきたいと考えています。次期中期経営計画に向けては投資効果を検証しながら適切な水準を検討しています。
M&Aでは、2020中期経営計画の期間で約2,000億円を投じNPS社とKMD社を買収しましたが、この2件のPMIは順調に進捗し、シナジー効果も出始めてきており、グローバルのセーファーシティ事業を伸ばしていくための効果的なM&Aであったと自己評価しています。引き続き重点事業の成長実現に直接つながる企業を、財務健全性を毀損しない範囲で実行していくことを考えています。その評価にあたっては、対象会社が一定の顧客基盤と強いプロダクトを持ち、安定的にキャッシュを創出できることが重要だと考えています。併せて会社としてのリスクアセット水準を定期的に確認し、事業継続性を懸念することなく投資できる状態を維持しています。今回の新型コロナウイルス感染症拡大のような出来事が起こっても、自己資本が毀損しない水準を確保していきます。
このように成長投資、株主還元、財務体質の健全化のバランスをとっていくことがNECのキャピタル・アロケーションの基本方針です。
2020年3月期の振り返りと2021年3月期の財務運営
ここまで資本配分の基本方針とその元手となるキャッシュの創出について述べてきましたが、ここからは2020年3月期の業績を振り返りながら、2020中期経営計画の最終年度である2021年3月期の目標達成に向けた取り組みについてご説明していきます。
2020年3月期の業績は、2019年3月期に実施した一連の構造改革の効果の刈り取りと、各セグメントでの改善により、売上収益・営業損益ともに前期比で大幅な改善となりました。直近の2年間を振り返ると、2019年3月期には150億円、2020年3月期には270億円の先行的な費用投入や構造改革を、予算達成の確度が高まった時点で実行しており、2021年3月期以降に備えた投資や収益体質の改善、そして資産のクリーンアップを含めた施策を実行しています。
当期利益では、営業利益の改善に加え、過去の清算法人の手続き完了による税効果もあり、23年振りの最高益更新となる1,000億円となりました。この結果を受けて、株主の皆さまへの期末配当金を当初予定の1株30円から10円増額となる40円とし、年間で1株70円の配当を実施しました。
フリー・キャッシュ・フローは前期比1,903億円改善の1,778億円の収入となりました。これは、IFRS16号(リース)の変更により約560億円増加するなどの特殊要因もありますが、調整後営業損益の改善に伴う759億円の改善や、資産効率化に伴う運転収支の改善が約360億円あります。特に運転収支の改善については、前述のCCC改善活動が徐々に効果を出しつつあると認識しています。
営業キャッシュ・フロー、投資キャッシュ・フロー、フリー・キャッシュ・フロー

このように2020中期経営計画の2年目である2020年3月期は、将来に向けた投資や健全化を実施したうえで、年間予算以上の業績を実現することができました。一方で2020中期経営計画の達成に向けて絶え間ない努力を継続していきます。
今般の新型コロナウイルス感染症拡大のように大きく環境が変化する時期は、売上収益が急変し、キャッシュの見通しが不透明となります。このような危機下には、資金繰りが悪化するリスクに備えて手元のキャッシュを通常時よりも厚く持ち、経営へのマイナスリスクを最小化する必要があります。安定的な資金調達を実施し、資産の流動化を推進することで十分な手元流動性を確保していきます。海外連結子会社では過去のアジア危機において、為替リスクや外貨規制による影響がありましたので、通常よりも余裕を持って国内外の銀行から借入を確保しており、ワーストケースを想定した対応を行っています。
また、長年の課題となっていた米国における当社普通株式の取引の実行等に対する制限(米国1934年証券取引所法第12条(j)項に基づき受けていた命令)の適用が、2020年6月に解除となりました。今後は米国資本市場におけるステークホルダーとのコミュニケーションを活性化させ、さらなる企業価値の向上につなげていきたいと考えています。今後も適切な資本配分により長期的な価値創出と企業価値の向上を実現していきます。