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[コラム] 国の調査から見えてくる!医療機関におけるAIを含むICT活用の効果

医療現場を支援するAI

医療現場を支援するAI
2025年9月25日公開、2026年1月26日コラムを追加公開

本コラムでは、医療現場の課題に対し、AI活用によってどのような改善や効率化が期待できるのかについて、事例を交えながらご紹介いたします。

New [コラム]国の調査から見えてくる!医療機関におけるAIを含むICT活用の効果(2026年1月26日)

医療機関におけるICT活用

医療機関における働き方改革・生産性向上の検討の中で、AIを含むICT活用による業務の見直し・省力化が注目されています。
本コラムでは、厚生労働省の諮問機関の中央社会保険医療協議会(以下、中医協)の関連組織の一つである「入院・外来医療等の調査・評価分科会(*1)」(以下、本分科会)の調査より、医師事務業務や看護業務におけるICTの導入事例や定量的効果をご紹介いたします。

  • (*1)
    厚生労働省の諮問機関として診療報酬等について審議・答申を行う「中央社会保険医療協議会」の診療報酬調査専門組織で、診療報酬体系の技術的課題を継続的に調査・検討を行う。中医協総会(第618回、2025年10月1日開催)で今年度の調査の1項目として「働き方・タスクシフト/シェアについて」を報告。

デジタル技術の発展により、ICT活用はあらゆる分野で生産性向上に大きく貢献しており、この傾向は医療機関においても確認されています。本調査によると、ICTを活用した業務の見直し内容として、「勤怠管理のICT化」・「ビデオ通話による会議の実施(*2)」・「紹介状や診断書の入力支援ソフトの活用」が多くなっています。

  • (*2)
    2018年度の診療報酬改定では、オンライン診療や遠隔画像診断などに対する加算制度が新設、2022年度には情報通信を用いたカンファレンス等に係る要件の見直しが行われ、ビデオ通話による会議が普及。感染症流行の影響もあり、日常の会議や研修会・セミナー参加等の幅広い場面でも利用されるようになった。
ICTを活用した業務見直し・省力化について
(中央社会保険医療協議会総会(第618回2025年10月1日開催)総-1参考4資料(103ページ)|厚生労働省
PDFhttps://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001571790.pdf)

さらに、地域医療体制確保加算(*3)を届出ている医療機関では、届出のない医療機関と比較して、勤務環境の現状把握・分析を実施している割合や、ICTを活用した業務見直しの取り組みを実施している割合が高くなっています。また、2023年度と比較して、2024年度では休日・時間外労働時間の平均値や最大値が減少傾向にあったことが報告されています。

  • (*3)
    地域医療体制確保加算は以下の事項を満たすことで加算可能
    ・救急搬送、周産期医療又は小児救急医療に係る実績を相当程度有していること
    ・病院勤務医の負担の軽減及び処遇の改善に資する体制が整備されていること

医師事務業務におけるICT活用

医療機関におけるICT活用のうち、医師事務業務における効果に注目してみると、「作業効率の上昇」、「労働時間の短縮」が得られる効果の中で最も多かったとのことでした。取り組みの中には、生成AIを活用しているものも見られます。「退院サマリー等の作成補助を行う生成AI文書作成補助システム」や「診療情報提供書の作成補助を行う生成AI文書作成補助システム」です。生成AIを活用したこれらの取り組みにおいては、作業効率の上昇が得られるとの回答が多くありました。(*4)

  • (*4)
    退院サマリーは退院時要約や退院時サマリーとも呼ばれます。本コラムでは退院サマリーと表記します。
ICTを活用した医師事務業務の省力化の取組による効果
(中央社会保険医療協議会総会(第618回2025年10月1日開催)総-1参考4資料(113ページ)|厚生労働省
PDFhttps://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001571790.pdf)

生成AIを活用した文書作成補助における、業務効率化のイメージを次に紹介します。生成AIによる文章作成補助システムを活用した場合、紹介状や退院サマリーの作成において、診療録からの情報収集、情報突合と構造化、要約といったプロセスが自動化されるため、手作業での対応と比較すると作業効率が大きく上昇します。

生成AIを活用した文書作成補助システム等の業務効率化イメージ
(中央社会保険医療協議会総会(第618回2025年10月1日開催)総-1参考4資料(115ページ)|厚生労働省
PDFhttps://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001571790.pdf)
※赤枠はNECにて追加

実際に、国立大学病院や民間病院でも生成AIによる文書自動作成の取り組みが進んでおり、以下のような結果が報告されています。

生成AI等の活用による医師事務業務の負担軽減について
(中央社会保険医療協議会総会(第618回2025年10月1日開催)総-1参考4資料(116ページ)|厚生労働省
PDFhttps://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001571790.pdf)

【国立大学病院(1000床規模)】
退院サマリーの1件あたりの作成時間が、1時間から20分に削減(削減率:66%)されています。同規模の別病院では、診療情報提供書や退院サマリーの1件あたりの作成時間が平均47%削減されており、これは年間1人当たり63時間の削減となります。

【民間病院(750床・400床・200床規模)】
750床規模の民間病院では、医師事務作業補助者による下書きが30分から0分に削減(削減率:100%)となり、医師による作成時間も10分から5分に短縮 (削減率 : 50%)されるなど、退院サマリーの作成プロセスで大幅な改善が見られました。
400床規模の民間病院では、退院サマリーの作成時間が15分から10分に短縮 (削減率 : 50%)されています。
200床規模の民間病院では、診療情報提供書や紹介返書、退院サマリー、主治医意見書など、多様な文書作成において、医師事務作業補助者による下書き時間が30分から15分に短縮(削減率 : 50%)されています。


医師事務業務のICT活用について、本分科会の委員からは「効率化を促進して作業効率が上がれば、医師の事務作業を更に医師事務作業補助者のほうにシフトして、医師の事務負担を減らすといった方向に持っていくことが重要。」といった意見や「システム導入には多額の費用が発生する。今後人材の確保が難しくなることを踏まえ、こういったICTの導入に関して何らかの支援ということも考慮したらいいのではないか。」といった意見がありました。

退院サマリーとは

退院サマリーとは、患者の入院中の情報を完結にまとめた文書です。患者が入院先から退院する際に、主に医師が作成します。主訴・現病歴・身体所見・検査所見・治療経過に加え、問題点や引継ぎ事項などの記載のほか、バイタル情報や観察項目を診療記録として入力します。

退院サマリーは診療報酬における「診療録管理体制加算1」に関する施設基準として、「全診療科において退院時要約が全患者について作成すること」とされており、更に「全入院の9割以上で、退院日翌日から起算して14日以内に作成すること」が求められています。全患者について、短期間での作成が求められること、また複数の記録から必要な情報を取捨選択し、文章を要約しなければならない煩雑な作業が多いことが、時間外業務増加の一つの要因となっていました。

電子カルテシステム等から生成AIが必要な情報を検索・収集して要約してくれることは、退院サマリーの作成業務において負担軽減の効果が高いことが示されています。

看護業務におけるICT活用

ここまで医師事務業務におけるICT活用についてご紹介してきました。次に、看護業務におけるICT活用についてご紹介します。
看護業務でも、記録作成においてICT活用が進んでいます。看護職員の記録に関する負担軽減の取り組みのうち、ICTを活用した取り組みとしては、「電子カルテシステム等を活用したカルテ様式間の自動転記」、「バイタルサイン等の測定機器からの自動入力」、「文書作成補助システムの活用」が多くなっています。

医療機関における看護職員の記録に関する負担軽減の取組について(全入院科)
(中央社会保険医療協議会総会(第618回2025年10月1日開催)総-1参考4資料(164ページ)|厚生労働省
PDFhttps://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001571790.pdf)

さらに、ICT活用による看護業務の効率化の主な例として、入院、情報共有、診療・治療、患者のケアなど様々な領域における取り組みが紹介されています。AI活用の取り組みとしては「転倒転落アセスメント」と「退院時看護サマリー作成」があげられています。

【転倒転落アセスメント (導入機器:転倒・転落予測システムAI)】
電子カルテに記載された看護記録をAIが解析し、入院患者の転倒転落リスクを評価することで、リスクが高い患者の要因を一目で把握することが可能になります。
転倒転落リスク判定に係る時間は患者1人あたり5分から 0分(削減率:100%)に削減され、転倒・転落インシデント報告件数は導入前460件から導入後284件に減少(減少率:61.7%)しています。

看護業務の効率化の主な例① -転倒転落アセスメント-
(中央社会保険医療協議会総会(第618回2025年10月1日開催)総-1参考4資料(167ページ)|厚生労働省
PDFhttps://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001571790.pdf)
※赤枠はNECにて追加

【退院時看護サマリー作成 (導入機器:生成AIサービス)】
日々の看護記録から退院時看護サマリーを作成する生成AIサービスの活用により、サマリー作成時間が平均42.5%減少し、さらにサマリー作成時の心理的負担が平均 27.2%減少しています。

看護業務の効率化の主な例④ -退院時サマリー作成-
(中央社会保険医療協議会総会(第618回2025年10月1日開催)総-1参考4資料(170ページ)|厚生労働省
PDFhttps://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001571790.pdf)
※赤枠はNECにて追加

看護業務におけるICT活用を推進していくために、本分科会の委員からは「(ICT利用率を)どうやって今後伸ばしていくかとか、そういうことも考えていくことが大事なのではないか。」といった意見や、「現状の評価としては、看護業務の質の向上や効率化に実際につながるICT機器活用が広く普及しているとは言えない状況。それぞれの医療機関の実際の医療・看護業務の状況に応じて、看護の充実や質の向上のために、ICT機器をどう活用するかをよく検討した上で導入されているように思います。病院の看護の状況がよく分かっている看護管理者がキーパーソンとなり、このような取り組みを、ぜひ各医療機関で進めていくとよいと思います。」といった意見がありました。

厚生労働省の本分科会の調査により、医療機関でのAIを含むICT活用は、医師事務業務や、看護業務の業務負担を大幅に削減し、業務効率化に貢献していく可能性が示されたといえます。こうした取り組みが広がることでより質の高い医療の提供が期待されます。

【参考】

(NEC官公ソリューション事業部門)

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[コラム]国の調査から見えてくる!医療機関におけるAIを含むICT活用の効果

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