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1 厚生労働省発表の「病院の情報システムの刷新に係る方向性について」

徹底解説!病院の情報システムの刷新に関する政府施策のポイント

厚生労働省が令和7年1月22日に発表した病院の情報システムの刷新に係る方向性について、同省がこれまで進めてきた医療DXとともにご紹介します。

厚生労働省発表の「病院の情報システムの刷新に係る方向性について」

令和7年1月22日、厚生労働省は「『医療DX令和ビジョン2030』厚生労働省推進チーム」(*1)を開催し、「病院の情報システムの刷新に係る方向性について」(*2)を発表しました。これは、病院情報システム(HIS、Hospital Information System)の標準化・クラウド化に取り組む方向性を示すとともに、持続可能な病院経営とより安全で質の高い医療の実現を目指すものです。ここでは、この厚生労働省の発表の内容を、同省がこれまで進めてきた医療DXとともにご紹介します。

病院情報システム イメージ図

厚生労働省が目指す病院の情報システムの刷新とは

今回発表された「病院の情報システムの刷新に係る方向性について」には、以下5つの方針が示されています。

(1)オンプレミス型からクラウド型への移行

現在のオンプレミス型のシステムを刷新し、電子カルテ・レセプトコンピュータ・各部門システムを一体的に、モダン技術を活用したクラウド型システムへ移行する方針としています。また、2030年までのできる限り早い時期に、希望する病院がこのクラウド型システムを導入できるよう環境整備を進めることを目標としました。具体的な手法として以下3点が示されています。

  • 複数病院でのクラウドの共同利用
  • クラウドのメリットを活かすためのマネージドサービスの活用
  • 最新技術やサービスを活用しやすくするためのAPIの組み込み等

また、画像管理システム等、クラウド化が適さないと病院が判断する一部の部門システム等でオンプレ型が残存する場合でも、標準化やセキュリティ対策の強化を図ることとしています。

(2)国が標準仕様を策定

国がシステムの標準仕様を示し、その標準仕様に準拠した病院情報システムを民間事業者が開発、小規模病院やグループ病院等から段階的な普及を図るとしています。この標準仕様は2025年度を目途に作成するとされました。また、現在、診療所などを含めた小規模医療機関を中心に普及し始めているクラウド型電子カルテなどの製品の活用も図ることとしています。

(3)共同利用とカスタマイズの抑制

標準仕様に準拠した病院情報システムは、インフラからアプリケーションまでを複数病院(マルチテナント)で共同利用することとし、医療機関ごとに生じていた個別のカスタマイズを極力抑制します。これにより病院情報システムのコスト低減・上昇抑制、病院ごとに生じていたシステム対応負荷の軽減を図るとされています。なお、共同利用に際しては、サイバー攻撃やシステム障害等による全面障害となる事態も想定した上で、システムの標準仕様を検討するとされています。

(4)データ引継ぎの互換性の確保等

標準仕様に準拠したシステムへの円滑な移行のため、データ引継ぎの互換性の確保等を図るとともに、電子カルテ情報共有サービス等とのクラウド間連携を進めるとされています。

(5)標準コード・マスタの整備、維持管理

医薬品・検査等の標準コード・マスタ、及びこれらの維持管理体制の整備を進めるとともに現場における標準コード・マスタの利用の徹底を図る、とされています。

「病院の情報システムの刷新に係る方向性について」発表の目的

今般、厚生労働省がこの発表を行った目的は、医療DX促進を実現するための病院側コスト削減につながる新たな情報システムへの転換を促進するためです。

厚生労働省は「目指す姿」として、情報セキュリティ対策を向上させながら病院情報システムの費用低減・上昇抑制を図り経営資源を医療提供に振り向けられる体制を整備すること、また将来的に各病院等が生成AI等のサービスを活用しやすくすることで医療従事者の負担軽減とより安全で高品質な医療の実現、の2つを掲げています。

医療DX促進に向けた新たな病院情報システムへの転換
(厚生労働省「病院の情報システムの刷新に係る方向性について」の内容を元にNECにて作成)

本発表に先立ち、令和6年12月2日に行われた「医療等情報利活用ワーキンググループ 」(*3)において、有識者による意見交換が行われ、概ね了承を得られました。
同ワーキンググループでは、「病院の情報システムの刷新に係る方向性は、国が示す医療DXそのものである。」といった意見から、「実現に向けた課題は多く、かなり中長期の話であるため、しっかりと議論して進めていくべきではないか。」といった意見を含め、様々な議論が行われました。 厚生労働省では、これらの意見に対し「丁寧に議論を進めていく」考えを示すとともに、「クラウド化」が目的ではなく、「セキュリティの確保、IT人材不足への対応、効率的・効果的な制度改正等対応」などを目指すものであるとの見方を示しています。

これらの背景のもと、デジタル庁・厚生労働省の連名で「病院情報システム等の刷新に向けた協議会」(*4)が開催されることになりました。今年度は、以下の規模の中小病院を念頭に標準仕様を取りまとめ、令和8年度(2026年度)より事業者にて開発を行うとともに、複数医療機関での試行的導入・推進を進めながら、大病院向けに展開できるかどうかの検討を継続していく予定です。

  • 病床規模:100から200床程度
  • 病院機能:地方都市の総合病院のように、一般的な急性期医療から回復期リハビリテーション、慢性期医療までの幅広い機能を有する
  • 部門システム:薬剤部門システム、放射線部門システム、臨床検査部門システム、生理・手術・内視鏡・給食等

次の章では、「病院の情報システムの刷新に係る方向性」を理解する上で重要となる「医療DX」についてご説明します。

(NEC 官公ソリューション事業部門)

「徹底解説!病院の情報システムの刷新に関する政府施策のポイント」 目次

  1. 厚生労働省発表の「病院の情報システムの刷新に係る方向性について」

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