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「三層の対策」の今後(その3)
~地方公共団体の現状から考えるDX推進のポイント~
デジタル・ガバメントコラム
2026年9月24日公開
本コラムでは、地方公共団体の「三層の対策」の現状を総務省の公開資料から分析し、地方公共団体の取組の支援策など、DX推進のポイントを解説します。
INDEX
1 連載の振り返り
「三層の対策」に関するこれまでのコラムでは、デジタル庁「国・地方ネットワークの将来像及び実現シナリオに関する検討会」の最終報告書、「令和7年度国・地方ネットワークの将来像の実現に向けた検証事業」、及び筆者の知見から考える想定論点を挙げてきました。今回は、目線を現場に移し、地方公共団体の現状について、総務省の公開情報をベースに見ていきたいと思います。
2 「三層の対策」の現状について
「三層の対策」における地方公共団体の現状について、総務省の公開資料を見てみます。ゼロトラストアーキテクチャの考え方に基づく「β'モデル」の導入率は、都道府県で約3割、政令指定都市で約4割である一方、中核市・特別区は「βモデル」「β'モデル」合わせてもその導入率は2割未満、その他市町村は1割未満とあります。このデータから、中小規模自治体は現時点でも多くの団体が「αモデル」(境界防御を基本とするモデル)を採用していることがわかります。

(
https://www.soumu.go.jp/main_content/000907082.pdf)、6ページ3 サイバーセキュリティ上重要な対策の実施率について
地方公共団体におけるサイバーセキュリティ上重要な対策の実施率を、総務省の公開資料から見てみます。

及び実効性確保の検討に係るワーキンググループ 報告(令和8年4月)」(総務省)
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https://www.soumu.go.jp/main_content/001069311.pdf) 、5ページこの資料によると、実施率が低い対策が存在していることがわかります。これを「三層の対策」の現状と照らし合わせて考えると、「αモデル」は境界防御を基本とするモデルであり、インターネットから分離されている重要情報がサイバー攻撃を受ける可能性が低いという判断のもと、財政面や人材面の制約も踏まえながら、限られたリソースの中で他の施策との優先順位を調整してきた可能性があると想像します。
4 テレワークの導入状況について
続いて、地方公共団体におけるテレワークの導入状況を見てみます。
都道府県及び政令指定都市では全団体でテレワークを導入している一方、市区町村の導入は1,057団体(61.4%)であり、約4割の団体がテレワーク未導入であることがわかります。こちらも「三層の対策」の現状と照らし合わせて考えると、「αモデル」を前提としたネットワーク構成では、テレワーク環境の整備に追加コストや運用負荷が生じやすく、人材面の制約もあり導入が進みにくい中小規模自治体もあるのではと想像します。但し、テレワークの導入は人事制度、業務特性、庁内文化等、様々な課題が想定されるため、一概にαモデルのみが原因であるとは言い切れません。

(
https://www.soumu.go.jp/main_content/001023303.pdf)、63ページ5 全国知事会からデジタル大臣・デジタル行財政改革担当大臣への要請
令和8年7月30日、村岡山口県知事(全国知事会デジタル社会推進本部長)が、デジタル大臣・デジタル行財政改革担当大臣に対して要請活動を行っています。
本コラムに関連する項目のみを抜粋すると、「三層の対策」を見直し、ゼロトラストアーキテクチャを導入するにあたり地方公共団体の裁量を確保しながらGSS(ガバメントソリューションサービス)の共用化の検討を進めることや、国での導入事例の紹介及び技術的な助言等を通じて、地方公共団体の取組を支援することが要請されています。前段で説明した地方公共団体の現状を考えると、このような要請が行われている背景も理解できます。
国・地方ネットワークについては、全体最適かつ効率的な将来像の実現に向け、GSS基盤の共用化や自治体におけるゼロトラストアーキテクチャの導入に関し、更なる分析・検討を進めるとされているが、自治体の裁量を確保できるような将来像の検討を進めるとともに、ゼロトラスト基盤の共同調達や共同運用など、コスト負担の在り方や効率的な運用方法についても検討を進めること。
出典:「デジタル社会の実現に向けた提言※」(全国知事会)
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https://www.nga.gr.jp/committee_pt/item/youseibunsyo.pdf) 13ページから抜粋
地方公共団体においても、業務システムのスマートなクラウド利用を推進するため、境界型防御のみに依拠した「三層の対策」を見直し、ゼロトラストアーキテクチャの考え方を導入する必要があることから、セキュリティ対策や国での導入事例の紹介及び技術的な助言等を通じて、地方公共団体の取組を支援すること。さらに、エンドポイント・セキュリティについては地方公共団体が実施するものではあるが、その基準や規格については国が一定の見解を示すこと。
出典:「デジタル社会の実現に向けた提言※」(全国知事会)
(
https://www.nga.gr.jp/committee_pt/item/youseibunsyo.pdf) 16ページから抜粋
- ※「デジタル社会推進本部から松本デジタル大臣・デジタル行財政改革担当大臣へ要請活動を実施しました(令和8年7月30日)」(全国知事会)
https://www.nga.gr.jp/committee_pt/honbu/informatization/r08/post_1132.html
に掲載
6 まとめ ~地方公共団体の現状から考えるDX推進のポイント~
今回は、公開資料をベースに「三層の対策」に係る地方公共団体の現状を見てきました。これらの現状から読み解けるのは、都道府県や政令指定都市と、中小規模自治体では取組スピードに差が生じている現実です。これまで挙げた各種の取組は、今後のDX推進・AX推進のベースとなるものです。今後、国による中小規模自治体への支援をどのように行っていくかがポイントとなると考えます。
ひとつの対策として考えられるのは、全国知事会の要請にもあるように、府省システムにおけるリソース・ノウハウを地方公共団体に共有することです。具体的には、ガバメントクラウドやGSS等を国と地方公共団体の共通基盤として地方公共団体の裁量(選択肢)を確保しつつ共同利用していくことでしょう。現在、中小規模自治体の基幹系システムのガバメントクラウドへの移行は、ほぼ終了している状況にあります。ガバメントクラウドと同様にGSSを中小規模自治体に展開することで、当該自治体のDX推進環境の充実が図られ、日本全体での「均衡あるDX推進」が実現することとなるのではないでしょうか。
執筆者紹介
小松 正人 (こまつ まさみ)
NEC官公インフラDX事業部門 常務理事
国際社会経済研究所(IISE) 研究主幹
NECにて国内の中央官庁・地方公共団体市場における営業、事業推進業務に携わる。2026年4月からNEC官公インフラDX事業部門 常務理事に就任。NECグループで、国内行政DXにおけるソートリーダーを務める。

- ※本コラムは、政府が公表している資料等に基づき、現時点での検討状況を整理したものです。実際の制度運用やシステム構成については、今後の政策決定や各団体の業務特性・環境により異なる場合があります。
■国・地方ネットワークの将来像