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「三層の対策」の今後(その2)
~令和7年度検証事業等から考える想定論点~
デジタル・ガバメントコラム
2026年5月26日公開
本コラムでは、デジタル庁の国・地方ネットワークの将来像に関する検証事業の最終報告書を踏まえ、今後の想定論点と重要な検討項目について解説します。
INDEX
1 国・地方ネットワークの将来像に係る4つの想定論点
前回のコラム(「三層の対策」の今後(その1))では、デジタル庁「国・地方ネットワークの将来像及び実現シナリオに関する検討会」(※1)の報告書(2024年5月31日公開)から、検証事業に至った経緯について、公開資料をベースに内容を確認していきました。
今回のコラムでは、「令和7年度 国・地方ネットワークの将来像の実現に向けた検証事業の最終報告書」(2026年3月31日公開)(※2)の内容を中心に、今後の検討が予想される論点を考えていきたいと思います。
- ※1「国・地方ネットワークの将来像及び実現シナリオに関する検討会」(デジタル庁)
https://www.digital.go.jp/councils/local-goverments-network - ※2「令和7年度 国・地方ネットワークの将来像の実現に向けた検証事業の最終報告書」(デジタル庁)
https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/3fcb7ad0-50b3-4abe-b2ab-de16ab1488b3/76f6c5ec/20260331_policies_national-and-local-networks_outline_02.pdf
まず、「国・地方ネットワークの将来像」を考えた場合に、大きく4つの論点が存在すると筆者は考えます。現在の国・地方ネットワークのイメージは以下ですが(ネットワーク構成には様々なパターンがあり、このイメージ図はあくまで一例となります)、この図に筆者の考える4つの論点を位置づけると下図の通りとなります。


筆者の考える4つの論点:
- (1)国・都道府県・市区町村間の広域ネットワーク(LGWAN等)の在り方
- (2)自治体情報セキュリティクラウド(インターネット接続ポイント)の在り方
- (3)地方公共団体内の庁内ネットワーク(三層の対策)の在り方
- (4)オフィスソフトウェア・コミュニケーションツールの在り方(Microsoft 365、Google Workspace等)
それぞれの論点について、簡単に説明します。
(1) 国・都道府県・市区町村間の広域ネットワーク(LGWAN等)の在り方
現在、都道府県・市区町村間の広域ネットワークとしては、LGWAN(総合行政ネットワーク)が整備されています。LGWANは47都道府県、1741市区町村を専用線網で接続していることに加え、府省間ネットワークであるGSS G-Net(旧 政府共通ネットワーク)とも相互接続を実施しています。またLGWAN-ASPという、民間事業者や国の機関等がLGWANを利用して地方公共団体向けにサービス提供できる環境も整備されています。
このLGWANをGSS G-Netと共用するかどうかという点が1つ目の論点になります。あくまで筆者の想定となりますが、この論点における今後の検討ポイント3点を以下に挙げます。
- 国と地方公共団体での光ファイバーネットワークの共有について
例えば、GSS G-Netの国の地方機関向け光ファイバーネットワークの一部を地方公共団体間のバックボーン回線と共有する等の検討が想定されます。併せて、一部の県で整備されているいわゆる「情報ハイウェイ網」との接続等バックボーン回線と地方公共団体を結ぶアクセス回線の在り方の検討も必要でしょう。 - 広域ネットワークの運用主体について
LGWANは、J-LIS(地方公共団体情報システム機構)を運用主体として地方公共団体が共同で運用をしており、国と共用した場合、運用主体をどうするかの検討が想定されます。 - LGWAN-ASPの在り方について
LGWAN-ASPは、民間事業者や国の機関がLGWANを利用して地方公共団体向けに各種サービスを提供するための仕組みです。前回のコラム(「三層の対策」の今後(その1))で触れたように、地方公共団体の基幹系システムはインターネットから分離されているため、インターネット上のSaaS等は庁内の基幹系システムと接続できません。このため庁内の基幹系システムとLGWAN上のSaaS等を接続するためには、LGWAN-ASPを利用する(特定通信による接続)必要があります。
しかしながら、地方公共団体情報システム標準化・共通化において、地方公共団体における基幹系システムのガバメントクラウド移行が進んでおり、ガバメントクラウド上のSaaSであれば、ガバメントクラウド移行後の基幹系システムとシームレスに接続が可能な状況となってきています。つまりLGWAN-ASPからガバメントクラウド上のSaaSへの移行計画の検討も想定されます。また、ゼロトラストアーキテクチャ導入後であれば、業務によってはインターネット上のSaaSを利用できるものもあると思われます。この移行計画も並行して検討することが必要でしょう。
(2) 自治体情報セキュリティクラウド(インターネット接続ポイント)の在り方
現在、地方公共団体においては、インターネットへの接続ポイントを、各都道府県が市区町村をまとめて整備しセキュリティを確保する建付けとなっています(東北・新潟7県は共同調達・運用)。あくまで筆者の見解ではありますが、国のGSSのインターネット接続ポイントを共用する、もしくは、全都道府県で共同調達・運用を行う等の検討が考えられます。総務省から公開されている資料によると(※3)、東北・新潟7県共同調達ではコスト面で大きな効果が出ているため、全国で1つにすることで更なるスケールメリットが見込めそうです。但し、多くの都道府県のインターネット接続ポイントの契約が2026年度で満了となるため、次回の調達時期をターゲットとした検討となることが想定されます。
- ※3自治体情報セキュリティクラウドについて(総務省)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000992130.pdf
(3) 地方公共団体内の庁内ネットワーク(三層の対策)の在り方
本論点が、デジタル庁「令和7年度国・地方ネットワークの将来像の実現に向けた検証事業」において検討された内容のメインになります。次章で詳しく見ていきたいと思います。
(4) オフィスソフトウェア・コミュニケーションツールの在り方(Microsoft 365、Google Workspace等)
GSSでは、オフィスソフトウェア・コミュニケーションツールはMicrosoft 365を利用しています。地方公共団体は、Microsoft 365に加えてGoogle Workspace等を利用している団体も存在します。このため、Microsoft 365のみとするか、Google Workspace等その他のソフトウェアも選択肢とするか、の検討が必要と想定されます。単純な価格比較であればMicrosoft 365とGoogle Workspaceには価格差がある場合もあり、地方公共団体の選択肢が増えるという点からも、Google Workspaceも選択肢とする方がメリットが大きいと想定されます。しかしながら、例えば、国から地方公共団体への一部の調査・照会業務では「マクロ付きExcel」が配付されており、Google Workspace等ではそのまま動作しない等の課題もあります。そのため、追加でかかる職員の工数(手作業による変換等)やライセンス併用の経費面も考慮して選択する必要があります。あくまで筆者の考えですが、この論点については、国・地方公共団体としてオフィスソフトウェア・コミュニケーションツールを統一するのか、選択肢を設けるのかの検討が必要です。選択肢を設ける場合、国から地方公共団体への調査・照会業務等で特定ツール依存のマクロ等を排除できるのか等の検討も併せて必要と想定されます。
2 デジタル庁 令和7年度国・地方ネットワークの将来像の実現に向けた検証事業について
この章では、前章で挙げた「(3)地方公共団体内の庁内ネットワーク(三層の対策)の在り方」について、デジタル庁「令和7年度国・地方ネットワークの将来像の実現に向けた検証事業 最終報告書」を基に見ていきたいと思います。
前回のコラム(「三層の対策」の今後(その1))で触れたように、この検証事業では、2030年頃を目途とした「新たな国・地方ネットワークの実現」に向け、以下の2つの検証方式について、その実現性や導入効果の確認、課題抽出等が行われました。
- GSS試用型検証
国が整備・運用中のGSSと同様の環境を実証団体向けに整備して試用を行う検証 - 自治体提案型検証
地方公共団体独自でゼロトラストアーキテクチャの考え方に対応したシステムを導入する検証(GSSを利用せず地方公共団体庁内にゼロトラストアーキテクチャの考え方を導入できるかの検証)
それぞれ、下図にあるように前者は3グループ、後者は4グループの地方公共団体が参加し、検証が行われました。

(
https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/3fcb7ad0-50b3-4abe-b2ab-de16ab1488b3/f829a9a8/20260331_policies_national-and-local-networks_outline_01.pdf)をもとにNECにて作成最終報告書によると、両検証方式ともに技術的に実現が可能であることが確認されている一方、導入や運用における課題があるという指摘がされています。例えば、GSS試用型検証では、一律の基準のものを個々の自治体に適用する際の難しさ、自治体業務・環境の特殊性への対応等が挙げられています。また、自治体提案型検証では、職員のセキュリティに対する意識醸成や変革の必要性、専門人材の不足、単独導入によるコストの懸念などが挙げられています。これらの課題は、地方公共団体の人口規模や財政力、デジタル人材の在籍状況等よって、コインの裏表のようにメリットともデメリットとも受け取られるのではないでしょうか。

https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/3fcb7ad0-50b3-4abe-b2ab-de16ab1488b3/f829a9a8/20260331_policies_national-and-local-networks_outline_01.pdf)をもとにNECにて作成最後に、今後の更なる検討に当たり筆者目線で重要と思われる検討項目について、以下の2つを挙げたいと思います。
(1)マイナンバー利用事務系の在り方
今回のGSS試用型検証では、二層(マイナンバー利用事務系、一般事務系)のSSIDを1台の端末の無線LANを切り替えることで対応しています。検証に参加した地方公共団体からは、国と同様に一層にすべきとの意見がある一方、情報漏洩の懸念から二層とすべきとの意見もあがっています。また、庁外での事務に関し、マイナンバー利用事務は法定調書等の書面が残っており、庁外での事務は困難という意見、逆に収滞納事務等での庁外からの情報閲覧が有効であるという意見もあります。この点について地方公共団体のマイナンバー利用事務を詳細に分析し、今後どのように整理していくのかは重要な検討項目であると考えます。
(2)共用端末の在り方
国のGSSでは共用端末は存在しませんが、地方公共団体においては、住民と直接対面する窓口での運用や、会計年度任用職員や非常勤職員等用に1台の共用端末を用意して複数人で利用する運用が行われているケースがあります。例えば、基幹系システム端末を複数人で共用している場合、基幹業務アプリケーション用のユーザーアカウントを1人1ID配付していれば、Windowsのユーザーアカウントは共通で支障がないため、このような運用になっているケースが存在すると思われます。しかしながら、GSS等のゼロトラストアーキテクチャにおいては、Windowsのユーザーアカウントをベースに構築しており、複数人が利用する共用端末では正しくリソースやアクセス監視、ログ管理等ができません。この共用端末の運用を地方公共団体の現場に合わせてどのように変更していけばよいのか、こちらも重要な検討項目となると筆者は考えます。
以上、「国・地方ネットワークの将来像」の4つの想定論点と、「令和7年度 国・地方ネットワークの将来像の実現に向けた検証事業の最終報告書」から考える今後の重要な2つの検討項目を中心に書かせていただきました。今後の検討の参考になれば幸いです。
執筆者紹介
小松 正人 (こまつ まさみ)
NEC官公インフラDX事業部門 常務理事
国際社会経済研究所(IISE) 研究主幹
NECにて国内の中央官庁・地方公共団体市場における営業、事業推進業務に携わる。2026年4月からNEC官公インフラDX事業部門 常務理事に就任。NECグループで、国内行政DXにおけるソートリーダーを務める。

- ※本コラムは、政府が公表している資料等に基づき、現時点での検討状況を整理したものです。実際の制度運用やシステム構成については、今後の政策決定や各団体の業務特性・環境により異なる場合があります。