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カーボンフットプリント(CFP)とは?
算定方法からその課題までわかりやすく解説

GXコラム

カーボンニュートラルを実現するためには、個々の企業の取り組みのみならず、サプライチェーン全体でCO2排出量の削減を進めていく必要があります。そこで昨今、注目されているのが、製品・サービスのライフサイクル全体で出たCO2排出量の総量を指す「カーボンフットプリント」です。本コラムでは、「カーボンフットプリント」の概要と算定方法、NECでの取り組みについて紹介します。

INDEX

  1. カーボンフットプリントとは
  2. カーボンフットプリントの算定が求められている背景
  3. カーボンフットプリント開示のための基本ステップ
  4. カーボンフットプリントの算定方法
  5. カーボンフットプリント算定にあたっての課題
  6. NECにおけるカーボンフットプリント算定の取り組み
  7. [まとめ]カーボンフットプリントの算定に向けて

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1. カーボンフットプリントとは

カーボンフットプリント(CFP:Carbon Footprint of Product)とは、製品・サービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに⾄るまで、ライフサイクル全体で排出される温室効果ガス(GHG)排出量から、除去・吸収量を除いた値をCO2排出量に換算したものを指します。

CFPの算定に取り組むことにより、製品のライフサイクルの中でCO2排出量が多いポイントを把握し、効果的な排出削減対策の検討や、排出削減効果のモニタリングが可能になるといった効果が期待できます。

2. カーボンフットプリントの算定が求められている背景

カーボンニュートラルを実現するためには、個々の企業の取り組みのみならず、サプライチェーン全体でGHG排出量の削減を進めていく必要がありますが、そのためには脱炭素・低炭素製品が選択されるような市場を創り出していく必要があります。そのような市場を実現するための基盤として、製品・サービス単位のGHG排出量であるCFPの算定・表示が進められています。

【カーボンフットプリントについての国内外の動向】

CFPの見える化・削減は、法律条件や調達条件にもなり始めています。特にヨーロッパでは、欧州電池規制やエコデザイン規則など様々な製品分野でCFPの申告が義務化されてきています。申告できないと、EU内での製品取引において高税率や罰金、取引停止といったペナルティを受ける可能性があり、企業にとっては大きなインパクトとなるでしょう。

日本でもグリーン購入法(国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律)において、コピー機3品目※1、タイルカーペットについて、CFPの算定・開示等を2024年度より判断の基準として設定しています。

このように、CFPの見える化・削減への重要性が高まってきています。では、CFPの開示に向けて、具体的に何を実施すればよいのでしょうか。

3. カーボンフットプリント開示のための基本ステップ

「カーボンフットプリントガイドンライン」において、CFP開示のための基本ステップが定義されています。

<算定方針の検討>

  • 目的の明確化
    どのような目的で、誰に向けて公開するか
  • 算定方法の具体化
    製品別算定ルール作成、算定対象とする製品単位の粒度、CFPの有効期限、
    対象となる温室効果ガス、CFPの経時比較

<算定範囲の設定>

  • バウンダリー設定
    算定単位、ライフサイクルステージとプロセス、データ収集期間
  • カットオフ基準(バウンダリー内の算定対象除外)の検討
  • 個別考慮事項
    リユース・リサイクル、マスバランス方式、バイオマス由来炭素、土地利用、土地利用変化

<CFPの算定>

  • データ収集
    一次データ・二次データ、サプライヤへのデータ提供依頼、データ品質、配分回避
    配分する場合の計算方法、エネルギーの使用
  • 計算
    再エネ証書等、CO2以外のGHGのCO2換算
  • 算定結果の解釈
    算定の目的・範囲に従った解釈

<検証・報告>

  • 検証
    内部検証・第三者検証の実施、検証者の適格性の考慮、検証の水準・手法、一次データ検証
  • 報告
    報告するGHGの数値、GHGに関連する報告情報
  • カーボンオフセット
    算定後のCFPに対して、オフセットする場合、カーボンオフセットした旨とその詳細を明⽰
  • 継続的な取組み

4. カーボンフットプリントの算定方法

製品のライフサイクルはさまざまなプロセスから構成されていますが、各プロセスの GHG 排出量は、「活動量」×「排出係数(あるいは排出原単位)」で算出されます。

「活動量」とはマテリアルやエネルギーの投⼊量で、例えば電気の使用量、輸送量、廃棄物の量等を指します。「排出係数」は活動の単位量あたりのGHG排出量で、例えば電気1kWhあたり、貨物の輸送量1トンキロあたり、廃棄物の焼却1tあたりのGHG排出量を指します。なお、排出原単位に使用するデータは、1次データ(直接測定または直接測定に基づく計算から得られる値)、または2次データ(外部データベースや論⽂等の値)のどちらかを用いることになっています。

そして各プロセスのGHG排出量を合計することによって、CFPが算出されます。

5. カーボンフットプリントの算定における課題

Scope1, 2, 3は組織単位のGHG排出量を算定するのに対して、CFPは製品単位でGHG排出量を算定します。そのため、算定対象製品が増えると負荷が増大し、データ収集に多くの時間がかかる、算定ミスが発生する、といった可能性も出てきます。

また、企業が排出削減目標を達成するには、排出量の集計・算定方法にも大きな課題があります。排出削減の努力を正しく評価するためには、一次データを活用し、実際の削減実績を反映できる仕組みが不可欠です。そのためには、部品単位や製造・物流などの各プロセスで発生する排出量を積み上げて算出するカーボンフットプリントのアプローチを導入し、より精緻な排出量の可視化と削減の最適化を図ることが求められます。

6. NECにおけるカーボンフットプリント算定の取り組み

NECでは、約20年前から製品のライフサイクル全体でのCO2排出量の算定を実施していますが、カタログに掲載されている消費電力値などを使って算出しており、実際との差異が存在しています。カーボンニュートラルの実現に向けて、今後は実データの収集および各プロセスで発生する排出量の積み上げによる算出が必要となりますが、どこまでできるのかをまずは社内実証により検証しました。2024年度の社内実証では、NECグループ会社で生産しているB to B製品を対象とし、原料調達から生産、製品出荷までに関わる製品CFPを算出しました。社内実証によって浮かび上がった課題を洗い出し、解決に向けたアプローチを検討することで、より効果的な削減策を講じる取り組みを実践中です。

7. [まとめ]カーボンフットの算定に向けて

CFPとは、製品・サービスのライフサイクルの各プロセスにおける GHG 排出量(「活動量」×「排出係数(あるいは排出原単位)」)の合計を、CO2排出量に換算したものです。そして、排出削減の努力を正しく評価するためには、一次データを活用し、各プロセスで発生する排出量を積み上げて算出していく必要があります。自らも製造業であるNECは、カーボンフットプリント算定の手法を導入し、より効果的な削減策を講じる取り組みを実践中です。

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