グローバル業務システム標準化のポイント

生産・販売物流、経営管理、会計

グローバル標準化の必要性

日本の製造業を取り巻く経営環境は、国内市場の飽和・縮小、新興国企業の台頭によるグローバル競争の激化、顧客優位の市場、国際的な環境規制の強化など、日々厳しさを増す一方であり、少しでも舵取りを誤れば企業の存続が脅かされかねません。

かかる環境下においてビジネスを継続的に成長させるためには、販売・生産・調達拠点とそのネットワークをグローバルに展開・拡大することが必要不可欠であり、多くの製造業者がグローバル化を進めてきました。

その結果、電機業界に代表的なスター型サプライチェーンモデルを取る企業はグローバルでの需給調整に困難を抱えています。また、OEMメーカに追従し急速にグローバル展開を進めてきた自動車部品業界に代表的な地産地消型サプライチェーンモデルを取る企業は、かつて国内特定拠点では出来ていた、製造業として付加価値を生むための基本業務の判断(何を受注して、どこでどう開発し、どこから買って、どこで作り、どこに置いて、お客様に届けるのか)がグローバル全体規模では困難な状況となっています。

グローバル標準化の着眼点

これらの課題に対応するためには、グローバルでの業務実態を鮮度・精度高く把握し、経営判断のスピードアップを図ることが不可欠ですが、企業文化や事業特性、海外現地法人に対する統制レベルなどに応じ、目指すグローバル標準化のレベルは一様ではありません。

企業文化として既に標準化が根付いているケース・グローバル統制が既に機能しているケースにおいては、「戦略」「組織体系」「業務プロセス・ルール」「コード体系」「ITシステム」を一体なものとしてグループ・グローバル全体で標準化し、グローバルOne経営を一気に推し進めるべきです。

一方で、緩やかな統制強化を目指すケースにおいては、PDCAマネージメントサイクルを確立するためにグループ全体を串刺しで把握可能な正確で鮮度の高い情報の見える化を軸とした経営管理基盤の確立が急務となります。

グローバル標準化成功のカギ

グローバル標準化の課題

  1. 標準化プロジェクトがはじめられない
    グローバル標準化は、事業や部門、国を跨いだ大がかりな取り組みであるというイメージから、その意義を理解しつつも、「具体的な進め方がわからない」(何を、どのような順序で、どうやって標準化するか)、「そのためのリソース(ヒト・モノ・カネ)の配分をどうすべきか見当がつかない」等の理由で、二の足を踏むケースが少なくありません。
  2. プロジェクトが止まる
    標準化プロジェクトの開始後も、社内のステークホルダーの利害の衝突、適切な意思決定機構・検討体制構築の失敗といったプロジェクトの推進課題に起因し、途中で遅延・頓挫するケースが少なくありません。
    • 要件検討における海外拠点キーマンの反発
    • HQの展開リソース不足による展開の長期化 など
  3. 期待した効果が得られない
    特にERPパッケージを適用するケースにおいて、標準化プロジェクトの目的が途中で「ITシステム(ERPパッケージ)の導入」にすり替わり、導入後に期待した効果を享受できないケースが少なくありません。

対応策

「経営視点での標準化目的の明確化」「確立された標準モデル」「標準を確立/維持する強力なガバナンス体制」が、上記課題を乗り越え標準化プロジェクトを成功させる3大要素です。

  • グローバル業務システム標準化に向けては、各拠点の事業環境や運営上の想いがある中で、何故その取り組みを推し進める必要があるのか、経営視点からその目的を明確に示し、周知徹底させることが重要です。
  • また、グローバル各拠点でそれぞれの運営実態がある中で、グローバル標準としてどういうモデルを規定するのか、本当にやるべき要件基準を明確にした標準モデルの確立が重要です。
  • さらにこれらの標準化の取り組みを推し進め、一過性の取り組みに終わらせることなく維持していく協力なガバナンス体制・コミュニケーション計画を確立することが成功のカギとなります。
    -海外拠点のキーマンには論理的にFace To Faceで繰り返し説明

    -プロジェクトの初期段階でリソース制約を考慮した現実的な展開計画を立案 など

NECは、製造業者である自身および多数のお客様で標準化やERP統合に取り組んできた実績をもとに、お客様の実態に合った改革プランを策定し、プロジェクトの開始から完了まで業務・IT一体でご支援いたします。

グローバル経営管理基盤の確立(見える化)成功のカギ

グローバル経営管理基盤の確立(見える化)の課題

  1. グローバル経営管理で実現すべき内容自体が変化している
    グローバル経営管理として、見えていないわけではなく、グローバル各拠点の月次財務データは見えているのですが、市場の変化を即座に捉えた迅速な判断を行うことが難しい実態や、部門別のKPIを設定・可視化するものの活用されないケースが少なくありません。
  2. データ可視化・分析のニーズが満たされていない
    グローバル指標可視化のために、分散した情報を集約し、開示するも活用されないケースや、業務部門から必要なデータ可視化要素を募り、集約して公開するも「使い勝手が悪い」 など評判が悪く、未活用に終わるケースが少なくありません。
  3. グローバルの情報がとれない
    グローバルに展開した各拠点のデータを収集するも、データの欠損や、単位の違い、意味の違い、サイクルの違いなどから、そのままではデータの可視化・分析には使えないケースが少なくありません。

対策と進め方の視点

グローバル経営管理の実現に向けては、あるべき指標を定め、PDCAを回せる状態を生み出すことがカギとなります。そのためには、下記のような「見える化」のしくみの実現が求められます。

  • 情報が串刺しで見られる/ブレークダウンできる/時系列で把握できる/おかしいところが直感的に分かる/パラメータ要素を変えることで影響度が分かる

階層や部門ごとに見る人の用途に合わせた可視化・分析が可能な仕組みを提供する
会社全体を俯瞰し事業の時系列変化を把握すべき経営層に対しては、定められた経営指標を見せることが求められます。一方で事業の状況をモニタリングし改善策を打つべき管理層には、発生している問題事象にフォーカスして課題特定につながる情報を読み取れるようにすることが求められます。
これらのニーズに応えられるBI基盤の確立が成功のカギとなります。

今あるデータから見ることが出来るものを精査しながらスモールスタートをする
「見える化」の活動においては、見るべきものが必ずしも定めきれないケースがあります。また一度定めた見るべきものも状況に応じて変わってきます。さらに見るべきものが定まったとしても、現状のデータから全てが見せられるとは限りません。
実態をふまえて、理想に対して少しずつ「見える化」を実現していくスモールスタートが、活動を成功に導くカギとなります。

特定の業務ではなく、コーポレートのマネジメント情報に関するレポーティングを決定するためには、組織役割の定義と利用に関する自由度の容認をうまく組み合わせて進めることが肝要です。情報活用ニーズは時間とともに変化するものであり、またさまざまな組織が関与するレポートについては要件決定に困難を伴います。そのため”Hard”=定型的なレポーティングと、”Soft”=自由度の高いレポーティングを織り交ぜたアプローチが有用なのです。

Hard:定型的なレポーティング

  • 情報やレポートの活用シーンのシナリオに関する責任者を定義します。このオーナーがレポーティングに関する承認者となります。さまざまな部門・関係者が要望を出すような場合でも、決定があいまいになることを防ぐことができます。
  • この責任者を中心に、情報やレポートを誰がどういうタイミングで見て、どういうアクションをとるのか、活用シーンを検討します。そこでは現状の問題や経営に求められる事項などをディスカッションしながらシーンと必要な情報概要を整理します。
  • 関連するデータの定義・維持に関する責任者、システムに関する責任者も設定し、三者が連携しながらプロジェクトを進めます。

Soft:自由度の高いレポーティング

  • 責任体制を定義しても、さまざまな組織・階層の社内要望を一元化することは困難なことが多いです。そのため、ひな形となるレポートとは別に、それらをもとに自由に使える分析環境を提供することを前提に進めることが重要なポイントになります。
  • 標準のデータに加えて、既存の基幹業務システム等のデータはすべて提供できるような情報基盤を構築し、セルフBI活用による現場レベルでの情報活用推進を並行して進めます。

NECではお客様の状況に応じて、ビジネス特性からみたマネジメントモデルと情報体系を導くモデルドリブンの要素と、まずは取れるデータから可視化を狙うデータドリブンの要素の両要素を踏まえた進め方が可能です。
また指標可視化や業務分析に適した柔軟性あるツール活用を前提とした検討も可能であり、貴社の経営情報管理高度化に向けた企画推進をトータルにご支援させて頂きます。

事例

電機電子部品メーカー様 グローバル基幹業務システム展開プロジェクト

背景 単一事業集中と海外生産進出により高収益事業を展開してきたが、昨今の事業環境変化(車載用途の急拡大、特殊仕様の増加、地産地消への対応、海外人件費高騰など)への対応が必要であった
目的
  • グローバル標準の基幹業務システムを展開し、情報・物的スピードの倍速化、情報精度向上を達成し、サプライチェーンの競争力強化を図る
内容 グローバル21拠点を対象とした標準業務システム確立と導入展開
  • 経営視点でのグローバル業務システム標準化目的の明確化化
  • 海外拠点巻き込んだ検討とグローバル標準業務システムの確立
  • 標準を確立/維持する強力なガバナンス体制の確立
    • グローバル統合ITの定義とITガバナンスの考え方明確化
    • 標準を維持運用する組織・機能プロセスの定義
    • プロジェクトの初期段階からの実行計画策定
    • 海外拠点とのコミュニケーション計画の策定
    • 展開タスクやリスクをふまえた要員別実行計画の具体化

自動車部品メーカー様 グローバル開発原価見える化プロジェクトNEW

背景 顧客の品質を満たす製品設計を行うために、グローバル品質保証体系の定義の定着化を進めていた。一方で製品開発のグローバル分業化が進む中で、開発にかかるコスト構造の現状把握が困難になってきており、最適開発アロケーション管理に向けた開発原価の見える化が課題となっていた。
目的
  • グローバル品質保証体系に基づく開発コストの見える化を可能にすることで、開発業務の最適分担・生産性向上や、開発コスト分析業務の効率化を図る。
内容
  • 開発コスト管理ダッシュボード構築に向けた企画立案と要件整理
    • 開発コスト管理における問題・ニーズの整理
    • 情報の活用シーンシナリオ整理(閲覧シーン、主体、タイミング、想定アクション 等)
    • 各画面イメージと必要なインプット/アウトプット情報種の定義
    • お客さまと共同でのプロトタイプ画面の構築

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