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売上予測とは?ビジネス活用のメリットや、精度向上のポイントについて徹底解説

「売上予測」と聞いてどのようなイメージを持つでしょうか。売上予測の考えかた、算出方法は会社や業界によって多種多様なため、人によって解釈が異なるかもしれません。本記事では、客観的なデータに基づく売上予測について解説します。また、そもそもなぜ売上予測を行うのか、ビジネス活用のメリットは何か、どうすれば売上予測の精度が上がるのかといった部分についても触れていきます。

売上予測について基本から知りたいかた、今後実務で売上予測に関わっていくかたに読んでいただきたい内容です。この記事をとおして売上予測についての理解を深め、ビジネスに役立てていただけますと幸いです。

売上予測とは

ここでは、売上予測とは何か、基本的な概要や売上予測を行うための方法、必要なデータについて解説します。

売上予測の概要

売上予測とは、客観的なデータによって将来の売上を詳細に予測することです。一方で、個人の経験、勘、目標に基づいて算出されたものは売上予測ではなく、単なる予想に過ぎないことを覚えておきましょう。

企業において、売上は経営上もっとも重要な数字のひとつです。特に上場企業であれば、精緻な売上予測に基づいて将来的な業績を投資家に説明する義務があります。そのため、売上予測は客観的なデータに基づき、正しいプロセスで導かれた数値でなければなりません。

また、売上予測によって算出された数値は、在庫管理、財務管理、人的リソースの確保といった広い分野で活用されます。正確な売上予測が企業の経営を支えているといっても良いでしょう。

売上予測の方法

売上予測を行うためには、大きく2つの方法があります。

ひとつは、過去の売上実績をベースに予測する方法です。これは過去の売上や市場全体の成長率を加味して将来の売上を予測する方法であり、多くの企業が実践している一般的な手法です。

もうひとつの方法は、営業パイプラインの活用です。営業パイプラインは、案件発掘から成約までを含む一連の商談活動を表すプロセスを意味します。営業パイプラインを使うことで、見込み案件数から過去の成約率を参考に売上予測を算出できます。

売上予測に必要なデータ

売上予測では、事実に基づいたデータを準備することが重要です。たとえば、過去の見込み顧客数、目標数値よりも実際にいくら売り上げたか、実績成約率などの事実に基づいた数値が売上予測のインプットになるでしょう。

また、営業パイプラインを採用している企業であれば、案件発掘から成約までのリードタイム、成約までの進捗率(コンバージョン率)なども参考にすることができます。

売上予測データの用途

ここでは、売上予測の結果得られたデータがどのように使われるのかについて解説します。

事業計画の策定

企業の事業計画において、売上予測によって得られたデータは必要不可欠です。複数の事業を持つ企業であれば、事業ごとの売上予測を分析することで、今後注力すべき事業を戦略的に決めることができます。

また、資金調達においても精緻な売上予測に基づいた事業計画が求められます。金融機関や機関投資家から資金調達を受ける際には、事業計画を元に融資や投資の判断がされるからです。

特に上場企業であれば、投資家に将来性を感じさせる内容になっているかどうかが株価や時価総額に影響します。正確な売上予測に基づく事業計画は、まさに企業の価値を決める重要な要素といえるのです。

在庫管理の精度向上

製造業や小売業にとって、正確な在庫管理はビジネスを推進する上で不可欠な要素です。過剰在庫が発生すると保管や廃棄にコストがかかり損失の原因となる一方で、在庫不足に陥ると本来発生するはずの売上がなくなってしまい機会損失につながります。

このようにかじ取りが難しい在庫管理ですが、精度の高い売上予測を行えれば、必要な商品の量がわかり、在庫のコントロールもしやすくなります。来店客の動向に左右されやすい飲食業やサービス業においても、売上予測に基づいて準備すべき材料や商品の量を調整できます。

適切な予算管理

売上予測によって、予算を適切に管理することも可能になります。企業が売上を出すためには、必ず原材料や人件費などの原価が発生します。将来期待できる売上が適切に予測できていれば、必要となる経費の見通しも立てやすくなるのです。

将来的にどの程度のコストがかかるかを予想できれば、費用対効果の高い部分に予算を振り分けられるでしょう。たとえば、製造業において複数の商品を製造している場合、より売上の見込める商品の生産ラインを強化して原材料の調達を増やすといった施策が可能になります。

人材マネジメント

売上予測は人材マネジメントの観点でも役立ちます。売上や来店客数に応じて業務量が変動する飲食業や小売業はもちろん、製造業においても生産ラインの要員計画で売上予測が重要な役割を果たします。また、将来的なビジネス拡大を見据えた採用計画を立てる際にも、売上予測に基づいた見通しが必要となります。

キャッシュフローの管理

企業が安定してビジネスを推進するためには、キャッシュフローの適切な管理が欠かせません。仮に将来性のある事業計画を持っている、決算で黒字を出しているといった企業でも、キャッシュフローが悪化すると倒産のリスクが高まります。

現状の把握に留まらず、先を見据えたキャッシュフローを計画するには、支出の管理に加えて収入にあたる売上を正確に予測する必要があります。精緻な売上予測は、事業拡大や資金調達といった企業経営の攻めの部分に留まらず、守りに相当するキャッシュフローの分野でも真価を発揮します。

売上予測を立てるメリット

ここでは、売上予測を立てることのメリットについて、いくつかの観点から解説します。

売上拡大の施策が立てやすくなる

売上予測を立てることで、戦略的に売上拡大に向けた施策を考案できます。複数の事業や商品を持つ企業では、各領域の売上予測を分析することで、限られた人的資源や資金を適材適所に振り分けられます。

また、売上予測のために収集したマーケットに関する情報も役に立ちます。過去からの市場成長率などがわかれば、今後攻略すべき領域や徐々に手を引くべき領域が明確になり、メリハリの効いた事業展開を進められます。

資金繰りの安定化

売上予測は、企業の生命線である資金繰りを安定させることにもつながります。ビジネスを推進するためには、売上によって得られる収入から、人件費や設備費といった経費、借入金の返済分などを支払う必要があります。

もし売上の予測が甘く、想定した売上に達しない時期が続くと、月々の支払いに必要な資金が次第に枯渇し、経営状況が悪化していってしまいます。一方、売上予測の精度が高ければ、事前に資金繰りのリスクを把握でき、経費削減や借入などの対策を練ることができます。

売上は計上されてもすぐに現金として回収されるとは限らず、売掛金として事後に支払われるケースがあります。その間も月々の支払いは発生するため、正確な売上予測とともに売上の入金タイミングについてもきちんと管理する必要があります。

客観的な人事評価

売上が評価につながる営業職においては、売上予測が客観的かつ公平な人事評価につながります。

営業職としての評価は多くの場合、目標として設定された売上に対して実績がどれだけ上がったかに着目して行われます。売上予測の精度が低いために目標数値が甘すぎる、あるいは厳しすぎるといった場合、公平な評価ができなくなってしまいます。

正確に売上を予想できれば、組織として目指すべき目標が明確になり、社員への評価基準を主観に基づかない公平なものにできます。これによって、各社員に目標を達成しようとするモチベーションが生まれ、健全な競争が生まれます。

売上予測を行う際の注意点

ここでは、売上予測を行う際の注意点について解説します。

客観的なデータを使う

売上予測の大原則は、客観的な数値や事実を元に将来の予測を立てることです。

一方で、売上目標を立てる際には、経営目標として掲げた売上や利益率から逆算して数値が算出されます。組織のモチベーションを高める、あるいは投資家の期待に応えるという意味では売上目標も重要ですが、あくまで売上予測とは分けて考えるべきです。

売上予測は、過去の売上成長率、顧客数、市場の伸び率といった実績が重要であることを覚えておきましょう。

主観的な期待を加味しない

よく見られる失敗のひとつとして、個人の期待を込めた売上予測をしてしまうことがあります。未来の売上に対し、目指すべき目標や期待を加味してしまうのはしかたがないことですが、売上が経営指標の一部である以上は、客観的な数値に基づいて算出されるべきです。

特に組織全体で厳しいノルマを課している場合、売上目標の数値が予測の根拠となってしまうリスクがあるため注意が必要です。

変動要因を明確にする

売上予測においては予測を立てるだけではなく、実績との比較を行い、なぜ予測から変動したのかを分析することが重要です。

ビジネスの世界では社会情勢や顧客の嗜好が目まぐるしく変化するため、過去に立てた売上予測どおりに進むことのほうが少ないでしょう。そのため、予測との差異が出た場合には、何が原因となったのかを分析し、次の売上予測に生かしていく姿勢が求められます。

売上予測の精度を上げる方法

売上予測の精度を上げるために何ができるのでしょうか。ここでは、いくつかの方法を紹介します。

試行錯誤を繰り返す

売上予測の精度は一朝一夕では高められません。特に開始して間もない事業や前例のない領域のビジネスにおいては、過去の実績を参考にする手法が通用しません。日々の実績集計を怠らず、あらゆるケースを考慮した上で予測を立てる必要があります。

当然、予測が外れてしまうこともありますが、予測が外れた理由を分析して次につなげることが重要です。試行錯誤を繰り返す中で、そのビジネスにおける知見が蓄積され、売上予測の精度が上がっていくでしょう。

ツールを導入する

売上予測を立てる作業においては、大量の過去データを収集し、いくつもの仮説を立てる必要があります。また、必要に応じて過去データとの比較を行うこともあります。もし、これらの作業すべてをエクセルなどによる手作業で行う場合、作業に携わる担当者の負荷は非常に大きくなります。

規模が大きな企業である、過去データが大量に存在するといった場合はツールを導入することもひとつの手段です。ツールの中には営業パイプラインの機能が備わったものもあるため、営業プロセスの可視化と並行して、売上予測立案にかかる作業を効率化することも期待できます。

ツールの価格帯もさまざまなものがあるため、費用対効果を加味した上で導入を検討すると良いでしょう。

予測の基準を統一する

売上予測においては、予測に利用するデータや予測方法の基準について、全社で統一することが重要です。

たとえば、ある部署では過去の売上実績のみで予測を立てている一方で、別の部署では独自に営業パイプラインのツールを使って予測している場合、売上予測の精度に差が出てしまいます。このような事態を防ぐため、組織全体で共通のルールを作り周知徹底する必要があります。

また、予測の基準を統一するためには、組織内で売上予測に関する情報がオープンに共有されていなければなりません。もし、売上予測にあたって必要なデータを一部の部署だけで保持していた場合、各部署が独自に集めたデータから売上予測が立てられてしまい、収拾がつかなくなります。

売上予測に使うデータの保持と予測の立案は全社で統一のツールを導入するなど、部署によってばらつきが出ないようにすることが重要です。

まとめ

売上予測は、企業がビジネスを進めていく上での羅針盤となり得る重要な活動です。事業計画の策定、資金の調達といった局面では、売上予測によって算出された数値が根拠となります。また、在庫やキャッシュフローの管理、人材マネジメントの観点でも売上予測は重要と言えます。

売上予測において重要なことは、客観的なデータや事実に基づいて予測を立てることです。特に、個人や組織の目標と予測が混在しないよう注意しましょう。

売上予測の精度を上げるためには、組織で共通の基準を準備する、ツールを導入して作業を効率化するといった工夫が必要です。今回の記事で紹介した内容を今後の売上予測に役立てていただければ幸いです。