Japan
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Snowflake導入事例
日本電気株式会社
データドリブン経営を支えるNECのOne NEC Data プラットフォーム
全社横断でのデータ利活用を促すSnowflakeの有効活用法とは
課題背景
・データが散在しており必要なデータが見つからない。どれが正しいものかもわからない
・データ活用基盤を構築するも、データの集約に時間がかかる上、簡単に拡張もできない
・現場に積極的にデータを活用してほしいが、システムの事情が制限となっていた
成果
次世代データプラットフォームOne NEC Data プラットフォームを構築
One NEC Data プラットフォームをベースに「One Data」「One Place」「One Fact」を柱とするデータドリブン経営を実践
データ活用基盤の「時間」「コスト」「拡張性」の課題を解決
Snowflakeの特長を活かし、既存のデータ活用基盤が抱えていた課題を解決。データ収集の工数を削減した上、柔軟な拡張性も実現できた
現場主導のデータ活用文化を醸成
現場に性能などによる制限を強いることがなくなった。ほかの部門に干渉せずに利用できるSnowflakeの仮想ウェアハウスなども活用し、業務の高度化や新たな価値創出に向けた取り組みが拡大している
One NEC Data プラットフォームのイメージ

導入前の背景や課題
データ活用基盤の課題が価値の創出を阻む
NECは、トップマネジメントから現場まで、あらゆる人がデータ、つまり「ファクト」をもとに意思決定を行う「データドリブン経営」を実践しています。とはいえ、これまでの道のりは決して平坦ではなく、試行錯誤の連続。システム面でもさまざまな挑戦がありました。

「そもそもNECのデータ環境は、データを活用しようとしても、さまざまなシステムにデータが散在しており必要なデータが見つからない。同じ『売上』を見ているはずなのに、複数のデータがあり、どれが正しいものかわからないという問題がありました。その状態では意思決定が混乱したり、方向性がぶれたりしてしまう。そこで全社のデータを1カ所に統合し、ガバナンスを効かせる中央集権的なデータ環境を目指しました。インメモリデータベース、データレイク、DWH、BIツールによって、そのためのデータ活用基盤を構築しましたが、いざ運用を開始してみると、新たに『時間』『コスト』『拡張性』の課題に直面し、あまり機能しませんでした」とデータドリブン基盤グループ ディレクターの秋田 和之は説明します。
まず時間の課題の原因となったのが、データ統合の複雑さです。データを物理的にデータレイクに統合するには、人・部門・システムの間でさまざまな調整が必要。その調整に時間がかかり、なかなかデータの統合が進まなかったのです。「我々が引退するまで時間をかけても終わらないのではないかと感じました」と秋田は当時を振り返ります。
また拡張するには、大きなコストがかかる上、当時のデータベースはデータベース管理者によるパラメーター・パフォーマンス調整が必要など、専門的な管理が必須。人材の確保から計画しなければなりませんでした。
そんな中、社会ではDXという言葉が急速に広まり、データの価値が一層注目されるようになりました。「現場からデータ提供を求められる機会が増えましたが、部門やシステム間の調整を図ってデータを集め、やっと加工にとりかかるようでは、提供までに数カ月かかることもある。当然、“旬”は過ぎてしまっています。拡張性も同じです。簡単には拡張できないため、基盤の性能限界などでユーザーに我慢を強いなければならない場面がありました。時間、コストや拡張性の課題がデータからビジネス価値を創出することを阻んでいたわけです」(秋田)。
選択のポイント
次世代データプラットフォームにSnowflakeを採用
そこで、NECは新しいデータ活用基盤の構築を目指しました。現在のNECのデータドリブン経営を支えているのが「One NEC Data プラットフォーム」という次世代データプラットフォームです。データを「集める」「貯める」「活用する」という大きな役割は、以前のデータ活用基盤と同じですが、新たに登場した技術を積極的に取り入れ、従来の課題を克服しています。
One NEC Data プラットフォームは、以下の5つを基本方針としています。
(1)Global Standard:グローバルスタンダードなソリューションを中核にする
(2)Cloud Native:SaaS、PaaSを優先採用する
(3)Best of Breed:業務/機能領域ごとに最適なソリューションを選定し組み合わせる
(4)Fit to Standard:経営の要請や環境変化に柔軟に対応するため、つくり込みを最小化、共通サービス利用を徹底する
(5)データ一元化:すべての業務/機能をデジタルにとらえ、共通認識とする
この5つの方針に沿って、NECはさまざまな製品・サービスを比較し、最適と判断した製品・サービスを組み合わせてOne NEC Data プラットフォームを実現しています(図1)。

「集める」レイヤーは、データ仮想化技術を活用した「Denodo」によって、データとアプリケーションが密結合ではなく疎結合でつながる仕組みを実現。システム開発、およびデータ活用のスピードアップを図っています。
「活用する」レイヤーには、データ可視化のためのBIツール「Tableau」、AIデータ分析プラットフォーム「dotData」など、データ活用に役立つ多様なツールを標準的に整備しています。
そして「貯める」レイヤーにはSnowflakeを採用。従来、抱えていた時間、コスト、拡張性などの課題を解決し、DX推進にふさわしいデータ活用基盤を実現しました。

Snowflakeは、クラウドベースのデータプラットフォームです。ベンダーを限定せず、主要なクラウドサービス上で稼働させることができ、データレイクやDWHにあたる役割を担います(図2)。「One NEC Data プラットフォームの基本となる5つの方針に合致していました。中でもマルチクラウドである点については、複数の選択肢を持つことができ、特定のベンダーへの偏った依存を避けたいと考えていた私たちにとっては好都合でした」とデータドリブン基盤グループ 主任の木ノ嶋 崇は語ります。

(図2)データプラットフォームSnowflakeの概要
Snowflakeの特長をOne NEC Data プラットフォームの強みに変える
NECは、Snowflakeの特長をうまく活用し、One NEC Data プラットフォームの強みに変えています。
有効活用している特長の1つがデータを統合するための工数を削減できる点です。Snowflakeは、さまざまなシステムからデータを収集するための豊富なコネクタを備えており、データ統合のためのシステム間の調整を大幅に効率化できます。
従来のデータベースのような特別な管理が不要な点もOne NEC Data プラットフォームの運用管理のしやすさにつながっています。具体的にSnowflakeは「ニアゼロメンテナンス」をうたっており、管理者の作業がニアゼロ(ほぼない)状態を実現します。「データベースの運用に求められていた管理業務をほとんど意識しなくなりました。セキュリティパッチの適用やバージョンアップのようなプラットフォームの管理だけでなく、データ分散設計やインデックス作成など、性能を維持するためのデータに関する作業も不要です」と木ノ嶋は強調します。
さらに拡張性の高さとシンプルなコスト体系は、システム的な事情によるユーザーへの制限を取り払い、データを積極的に活用する文化を支えています。
例えば、ユーザーが大規模な処理を行う場合でも、Snowflakeが自動的にリソースをスケールアウトし、パフォーマンスを落とすことなく処理を支えます。「一方、コスト面では、ID数でコストが発生するサービスもありますが、Snowflakeのコストはシンプルに“使った分だけ”。初期投資を抑えることができる上、業務時間外や深夜など、利用されていない時間帯にコストが発生しないのは非常に合理的です。無駄なコストがかからないので、さまざまなデータ活用に挑戦しやすい環境が整います」と木ノ嶋は言います。
またNECは、データ活用を従来の中央集権的なアプローチから、現場主導にシフトしようとしています。「Snowflakeは、1つのアカウントから処理リソースを仮想ウェアハウスとして切り出し、各部門に割り当てることができます。それぞれが独立した処理環境として機能するため、他部門の処理と干渉せず、自由にデータ活用を進められます」と秋田は話します。
導入後の成果
データを汎用的に扱い、さまざまな用途に活用できる
Snowflakeでデータを集約したOne NEC Data プラットフォームの構築により、NECでは部門横断的なデータ活用が可能となり、業務の高度化や新たな価値創出に向けた取り組みが広がりを見せています。
こうした取り組みの成果を象徴しているのが、社内の様々なデータを一目で確認できるダッシュボードです。「経営、営業、人事、経理など、複数のダッシュボードがあり、目的ごとに可視化しているデータは異なりますがデータの源泉は、すべてOne NEC Data プラットフォームです。データドリブン経営の大きな柱である『One Data』『One Place』『One Fact』を具現化しています」と秋田は説明します。
例えば、「DID Data Platform」という社内の働き方を可視化する仕組みもその1つです。
現在、NECは、リモートワークとオフィスワークを組み合わせたハイブリッドな働き方を採用しています。DID Data Platformは、新しい働き方の中で直面しがちな困りごとの解決や、リーダーのチームマネジメントを支援することを目的としています。

具体的には、無線LANアクセスポイントを介して、出社している従業員のデバイスやユーザー、組織の情報を収集。また、認証システムから認証情報、会議室関連システムからは予約・利用情報も収集し、それらを用途に応じて加工してデータセットを構築します。構築したデータセットは、BIツールに連携され、そこで“役立つ情報”としてダッシュボードに表示されます。「従業員は、フロアの混雑状況などを視覚的に確認し、どのフロアの、どのあたりで仕事をするかを決めたり、リーダーは、チームメンバーの出社状況を確認したりできます。会議室も同じです。予約システムなどにアクセスしなくても、利用状況を一目で確認でき、どこでミーティングを行うかをすぐに判断できます」とデジタルID・働き方DX展開グループの千葉 淳は話します(図3)。


(図3)フロアの混雑状況と会議室の利用状況の可視化イメージ
Snowflakeは、データの収集・加工からBIツールへの提供まで、一連の処理フローを担っています。「以前は、データをBIツールに直接取り込んで、そこでつくり込んでいました。目的に合わせてつくり込んでしまったデータは、汎用性が低く、ほかの用途には簡単に使えません。同じデータを使っていても、用途ごとに、何度も加工することになります。そもそもBIツールは、基本的にデータを貯めるためのシステムではありませんから、データを取り出したり、再利用したりするための機能は充実していません。一方、現在はSnowflakeの中に一度データを取り込めば、用途ごとのデータセットを作成するなど、データを汎用的に扱えます。コネクタも充実していますから、『どんなデータでも持ってこられる』という安心感があり、データをどのように活用するかにフォーカスできます」(千葉)。
フロア混雑状況など、リアルタイム性が求められる情報は、5分に1回、15分に1回などデータの同期頻度を速めていますが、Snowflakeは問題なく処理を行っています。(図4)
データを汎用的に利用できること、リアルタイム処理が可能なことなどを活かし、千葉はDID Data Platformのさらなる活用を進めています。
「例えば、会議室は、予約システムの情報にWebカメラなどの情報を組み合わせれば、何人で利用しているかなどまで可視化できます。適切な広さの会議室を選ぶきっかけにできるかもしれません。また予約されているのに、実際は会議室が使われていないことがわかれば、システム上の予約を解除し、新たに利用できるようにすることもできます」と千葉は言います。ハイブリッドな働き方の中では、誰がどこの席で働いているかがわからず、オフィス内で人探しをすることもありますが、DID Data Platformを見れば、いずれ目的の人をすぐに見つけられるようになるかもしれません。

(図4)DID Data Platformの概要
ServiceNowへの負担を高めることなくデータを有効活用
NECは、SnowflakeをServiceNowのデータの有効活用にも役立てています。
ServiceNowは、さまざまな業務をデジタルワークフローによって統合・自動化するプラットフォームです。その中にもさまざまなデータが蓄積されており、ぜひ有効活用したいと考えていました。

しかし、データを参照するためにServiceNowへのアクセスが増加すると、サーバ負荷が高まり、求められる性能を維持できない可能性が出てきます。「ServiceNowでは重要システムのワークフローなども稼働しており、性能の劣化は事業に影響してしまうため、絶対に避ける必要がありました」とServiceNowグループ シニアプロフェッショナルの武田 亮介は話します。
データは活用したいが、負荷の増加は避けたい。それをまさに解決するのがSnowflakeでした。Snowflakeを介することで、データの直接参照によるServiceNowの負担増加を防ぎながら、ServiceNowのデータを活用できるようになったのです。
現在、NECはSnowflakeを活用し、ソフトウェア資産管理の高度化を実現しています。ServiceNowは、購買システムからソフトウェアの購買情報を受け取り、購買数や利用数、在庫数などを管理する「ソフトウェア管理レポート」を作成していますが、購買システムから受け取るデータは、発行元や製品名、バージョンがアルファベットで記載されていたり、カタカナで記載されていたり、表記に揺れがありました。そこで、Snowflake上のAIを活用して購買情報に対して名寄せ処理を行い、表記を統一。ソフトウェア管理レポートの精度を向上しています(図5)。

「データの直接参照を回避できただけでなく、AIによる重たい処理をSnowflakeに委ねることができました。また、まだ実装にはいたっていませんが、ServiceNowとSnowflakeの間でデータを複製せず、双方向かつリアルタイムにデータ共有が可能な『Zero Copy』機能に大きな可能性を感じています。Snowflakeが提供するAIプラットフォームからServiceNowのワークフローを直接起動できる点、両システム間での双方向データ共有がサポートされている点を活かし、SnowflakeとServiceNow のデータ統合によるデータ活用範囲の拡充やServiceNowワークフローとの連携による業務効率化に積極的に取り組みたいと考えています」と武田は言います。
このように、データをSnowflakeという1つの基盤に集約し、データ活用の共通土台をつくることが、全社単位でデータをもとに意思決定を行うデータドリブン経営のさらなる前進につながると考えています。
NECの経験をサービス化してお客様に還元
単に環境を整備するだけでなく、Snowflakeを現場に有効活用してもらうためには、さまざまな施策も実施しました。「無償で利用できるキャンペーンを企画したり、安全に利用するための初期設定は管理側で行って仮想ウェアハウスを提供したり、わかりやすいガイドを用意して配布するなど、さまざまな施策を用意してスムーズな展開とデータ活用文化の定着を図りました」と木ノ嶋は語ります。
NECは、自身をゼロ番目のクライアントと位置付ける「クライアントゼロ」の考え方のもと、自社の経験を活かしたお客様支援を行っており、このようなOne NEC Data プラットフォームおよびSnowflakeにおけるさまざまな経験もお客様に還元しています。
具体的には、複数のメニューからなる「Snowflakeサービス」を用意し、設計や構築だけでなく、トレーニングや利用開始後の運用改善までを支援。例えば、トレーニングでは、トライアル環境を用意して実際の操作を確かめながらスキルを習得。運用改善支援サービスでは、ユーザーや接続先のシステムが増加した際には設定をどのように見直すべきかなど、既にSnowflakeを運用しているお客様が直面している課題の解決を支援します。また、保守や監視、定期診断のすべてに対応する運用保守支援サービスも用意しています(図6)。

(図6)NECのSnowflakeサービスメニュー
このような幅広い支援を行えるのは、NECが実際にSnowflakeを利用しているユーザーだからこそ。
自身がさまざまな成功・失敗体験を積んだことが、Snowflakeの各機能の有効活用につながる構築・運用支援サービスだけでなく、より大きな視点でのデータ活用基盤の設計支援、さらには価値創出のための支援につながっています。今後は経験をよりダイレクトにお客様に伝えるべく、NECのOne NEC Data プラットフォーム構築にかかわったメンバーがお客様支援に加わることも視野にいれています。
データドリブン経営の実践やデータ活用基盤の構築で課題を感じている方は、ぜひ経験に裏打ちされたNECのベストプラクティスをご活用ください。
ご参考
NECが自らの数万人規模の社内変革で培った実践知をもとに提供する、データドリブン経営実現のためのアプローチとしてBluStellar Scenarioをご用意しています。成功の鍵となる「戦略」「仕組み」「ガバナンス」の3要素を継続的に進化させることで、組織文化の変革を支援します。
NECは、戦略構想から基盤構築、人材育成・定着までを一気通貫で伴走。実績あるプロセスにより、遠回りせず着実な成果創出を実現します。