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【Oracle×生成AI 第3回】新機能 Select AI Agent を試して分かった AI エージェントの使い道

生成AIの活用は、ここ数年でビジネスの現場にも急速に広がってきました。

メール作成や議事録の要約、資料のドラフト作成など、現場で生じた個々のタスクを効率化する生成AIの使い方は、すでに多くの企業で実践が始まっています。一方でタスクを分解し、振り分け、次にどのタスクを実行すべきか、といったことを状況に応じて判断し実行する――これは依然として人が担っている部分が多くあるのではないでしょうか。生成AIが単なる「タスク処理代行」だけではなく、こうした「一連の業務プロセスに対して自律的に判断し行動」できるようになると、よりいっそう業務全体の効率化・最適化が期待できますよね。

昨今注目を集めている AIエージェントは、その進化を象徴する技術です。AIエージェントが人の代わりに目的を理解し、必要な情報を収集・分析、最適なアクションを自ら考えて実行する。複雑な手順を伴う業務も一連の流れとしてAIが自走できるようになると、仕事のあり方が根本的に変わっていくかもしれません。AIエージェントが企業内にある情報を踏まえた比較や予測、最適なアクションの提案など、自ら判断し改善してくれたらどんなに素敵でしょうか。

2025年10月、OracleはこのAIエージェント技術をデータベースに統合した新機能「Select AI Agent」を発表しました。データベースの中でAIエージェントを動かし、業務ロジックと直接連携できる仕組みは、企業データ活用のあり方を大きく変える可能性を秘めています。

本記事では、実際に確認したSelect AI Agentの振る舞いを通して、その特徴と業務活用の可能性について考察します。

 

目次

  1. 実際に動かしてみた
    ・確認①:タスク失敗時の修正とリトライ
    ・確認②:複数タスク分割実行
    ・確認③:対話による深堀

1 Select AI Agentとは

Select AI AgentはOracle AI World 2025で発表された新機能で、Oracle Autonomous AI Database上でAIが自律的にタスクを実行できるようにした新しい仕組みです。ユーザーの指示や質問に対し、AIエージェントが目的を理解し、必要なデータの取得や分析、さらには後続処理までを段階的に行うことができます。

Select AI Agentは、以下の4つの要素で構成されています。
構成要素 役割
エージェントチームアイコン 複数のエージェントを束ねる。
複数のエージェントに役割分担させて、一つのワークフローを実現する。
エージェントアイコン エージェントの役割や目的を定義する。与えられた目的に合わせてタスクを実行する。
タスクアイコン どのツールを使ってどのような処理をするかを定義する。
ツールアイコン 以下5つのツール種別から選択し、具体的なアクションを定義する。
  • SQLツール:自然言語をSQLに変換する
  • RAGツール:ドキュメントなど非構造化データからデータを取得する
  • Web検索ツール:Webから情報を検索する
  • 通知ツール:Slackチャネルにメッセージを送信する、SMTPを使って電子メールを送信する
  • カスタムツール:PL/SQLプロシージャまたはファンクションを使ってデータベースに問い合わせる

売上分析の例を挙げて、Select AI Agentの動作フローの概要を見てみましょう。

Select AI Agentの動作フローの概要

① ユーザーによる自然言語リクエスト
ユーザーは通常の会話のように、自然言語でSelect AI Agentにリクエストを送ります。
例:昨年と今期の売上トレンドを分析して、売れている商品の特徴の違いを簡単にまとめてください。

② チームによるエージェント開始
リクエストを受けた営業サポートエージェントチームは、チーム内にいる「売上分析エージェント」と「ナレッジ検索エージェント」を実行します。

③ タスクの実行
「売上分析エージェント」は、目的を達成するために必要なタスクを洗い出します。今回のケースでは売上データを分析したのち、売れている商品の特徴を比較するため、まずは「SQLツール」を実行し、売上上位の商品データを取得します。そのデータをもとに、その後「ナレッジ検索エージェント」が「RAGツール」を用いて、対象商品の情報をドキュメントから取得します。

④ツールによるデータ取得
自然言語リクエストの内容をもとに、「SQLツール」は、昨年と今期の売上を抽出するためのSQL文を生成・実行し、データベースから得られた実行結果は売上分析エージェントに返します。「RAGツール」は、SQLツールで得た売上上位の商品情報を抽出するために、ドキュメントに対するベクトル検索を実行します。得られた結果はナレッジ検索エージェントに返します。

⑤LLMによる回答の作成
LLMは、各エージェントから受け取ったデータを統合し、ユーザーの意図に沿った形でわかりやすい回答を作成します。

⑥ユーザーへの回答
Select AI Agentは、最終的な回答をユーザーに返します。
例:今年は特定の製品群で販売が伸びており、主要要因は~

このように、Select AI Agentでは、ユーザーが自然言語で質問するだけで、ユーザーの目的に応じたエージェントが自律的に計画・実行します。エージェントはタスクを分割・再試行しながら回答を生成することで、ユーザーは目的に合う回答を得やすくなります。

Tips! Select AIとSelect AI Agentの違い

Oracle Autonomous AI Databaseには、以前のバージョン(Oracle Database 23ai)より「Select AI」が実装されていました。
名前が似ており混同しやすいため、以下に両者の特徴を整理します。

  Select AI Select AI Agent
計画の作成 できない 質問を解釈し、エージェント自身がタスクを分割
SQLの実行 1回の質問に対し、1つのSQLのみ 複数のSQLの実行も可能
計画の修正 できない 失敗した場合、方針を修正してリトライ
人間の介入 できない 対話の中で介入が可能
使える機能 Text to SQL Text to SQLに加えてRAG、Web検索など

Select AI AgentはSelect AIの特徴であるText to SQL(自然言語からSQLを生成する)機能を単にエージェント化しただけでなく、RAGツールやWeb検索ツールなど、対応可能なユースケースが拡張されています。また、ReAct(Reasoning and Acting)のロジックが組み込まれており、より高度で複雑なタスクが実行できるようになっています。

2 実際に動かしてみた

本章では、1章で説明したSelect AI Agentの特徴について検証するために、動作確認の結果をご紹介します。一般的な販売履歴データを保持する表を用意し、SQLツールを用いたデータ分析を行うユースケースで確認しました。

SQLツールを用いたデータ分析を行うユースケース
Select AI Agentの設定は以下の通りです。
構成要素 主な定義
エージェントチームアイコン 「データ分析エージェント」を含めた「売上分析チーム」(エージェントは1つのみ)
エージェントアイコン 上級のデータ分析コンサルタントとして、売上表に対するデータ分析の問い合わせに回答できる「データ分析エージェント」
タスクアイコン SQLツールを使って売上表に対するデータ検索を行うタスク
ツールアイコン データベースの売上表からデータを取得するSQLツール

なお、LLMはOCI Generative AIサービスで提供されている「xai.grok-4-fast-reasoning」を使用しています。
生成AIサービス | オラクル | Oracle 日本

・確認①:タスク失敗時の修正とリトライ
タスクの実行に失敗した際、どのように処理されているのかを見てみます。

社員別の売上Top5について質問

自然言語で社員別の売上Top5について質問すると、上記の結果が見られました。
一見何事もなく回答が出ているように見えますが、Select AI Agent内部でどのような処理が行われたのか確認しました。Select AI Agentではエージェントチーム、タスク、ツール単位でログをデータベース上に格納しています。今回はツールの実行履歴を格納しているUSER_AI_AGENT_TOOL_HISTORY表より、SQLツールの入出力(INPUT、OUTPUT列)を確認しました。

INPUT OUTPUT
{“TOOL_NAME”: ”SQLTOOL”, ”QUERY”:”社員別の売上Top5を取得”, ”ACTION”: ”RUNSQL”} {“status”: ”success”, ”result”: ”Sorry, unfortunately a valid SELECT statement could not be generated for your natural language prompt. ...”}
{“TOOL_NAME”: ”SQLTOOL”, ”QUERY”: ”売上表から社員別の売上を集計し、降順で並べ替えて上位5件を抽出”, ”ACTION”: ”RUNSQL”} {“status”: ”success”, ”result”: ”[{“社員ID”: “2”, “売上”: “4500”}, {“社員ID”: “8”, “売上”: “3000”}, ....]”}

1回目(1行目)は「社員別の売上Top5を取得」という自然言語からSQLを生成しようとした結果、「”result”: ”Sorry, unfortunately...」が返っており失敗しています。それを受けて、エージェントは質問文を「表からの社員別の売上を集計し、降順で並べて上位5件を抽出」といった形でより具体的な内容に書き換えており、2回目(2行目)で、「社員ID:...」とSQLの生成に成功しデータの取得ができています。

このように、エージェントがSQL実行結果を踏まえて軌道修正し、リトライにより期待する回答を得ることに成功しています。

・確認②:複数タスク分割実行
次は、一度の処理で結果が取得しきれないリクエストがあった場合の挙動を見てみます。

複数タスク分割実行

今回の質問では一度に複数のリクエストを行っています。具体的には、以下4つのリクエストを一度のプロンプトで行っています。
 ・2021年4月に収益の多かった都市Top10
 ・2021年4月に注文の多かった都市Top10
 ・実行したSQLの表示
 ・実行結果からわかるインサイト

実行結果から、エージェントはまず収益Top10と注文数Top10を抽出するためのSQLをそれぞれ実行しています。その後、実行結果を生成AIへのインプットとして、自然言語によるインサイトを提示していることがわかりました。

このように、Select AI Agentでは、リクエストに応じて人がタスク分解せずとも、自律的にタスクを実行可能な処理単位に分割し、適切なツールを選択、実行できることが確認できました。

・確認③:対話による深堀
次に、プロンプトで取得したデータから、さらに深堀して分析を行う場合の挙動を見てみます。

対話による深堀1

1つ目のプロンプトでのリクエストを整理すると、以下の通りです。
・売上表から出荷遅延の原因を分析する
・遅延とは、出荷日が注文日より著しく遅い注文のことである
・遅延が特定の配送ランク、地域または商品カテゴリに偏りがあるかを調べる
・分析は段階的に進め、途中の考察と次のアクションを提示する

1つ目のプロンプトでは、遅延の定義が「出荷日が注文日よりも著しく遅い注文」と曖昧だったため、エージェントは「著しく遅延」=「7日超の遅延」と定義し、その前提での考察となっています。
2つ目のプロンプトでは、遅延の定義を「5日超」と具体的に指示し、さらに遅延の原因を深堀りするため、詳細データの抽出を指示しました。その結果、指示に合わせてデータを再抽出、遅延の要因を考察しています。曖昧な要求に対して前提を補完し、対話を通じて分析方針を調整しながら分析を進められることが確認できました。

また、今回「分析は段階的に進め、途中の考察と次のアクションを提示する」というプロンプト指示を行い、エージェントがどのような分析プロセスを踏んでいるのかを可視化しています。ログからも分析は可能ですが、プロンプト指示を工夫することで、自然言語でより理解しやすい形で流れを示してくれる点は非常に有益です。

なお、曖昧な質問は具体化するよう指示を入れておけば、エージェントはタスク実行前に不明点を確認します。以下の例を見てみましょう。

対話による深堀2

1つ目のプロンプトでは複数のリクエストを行っていますが、「あいまいな点は必ず質問してからSQLを確定してください」という指示を追加することで、SQL生成における不明点をユーザーに確認しています。「どの期間の商品カテゴリの売上なのか」「利益率の計算式は利益/売上でよいか」という点について、ユーザーの回答を得てからSQLを生成し実行しています。

このように、ユーザーのリクエストに対してSelect AI Agent自身が考え行動し、人と対話しながら段階的に深堀りして回答にアプローチできる点は、さまざまな分析業務において強力なツールとして活用できそうです。

今回ご紹介した売上分析ユースケースにおける3つの動作確認結果は、いずれもデータベース上のデータを検索する「SQLツール」を使うタスクでしたが、「RAGツール」や「Web検索ツール」などを活用することで、ドキュメントやWeb上のデータソースとも連携し、より高度な分析が可能になります。

3 業務活用の可能性

2章で確認した、Select AI Agentによる修正とリトライ、タスク分割、対話による深堀といった特徴を活かすことで、これまで以上に人の業務をAIに任せられるようになってきたと感じました。
これらの特徴を、どのような業務で活用できるか考察します。
(検証結果をもとに考察したものであり、効果を保証するものではありません)

アイデア①:データ分析の代行
企業のデータベースには、売上や在庫といった基幹データをはじめ、さまざまな情報が蓄積されています。ChatGPTのような一般的な生成AIアプリケーションでは、企業データは連携されておらず、大量の企業データ取得やそれを基にした分析はできません。一方でSelect AIによってデータの取得や分析が容易になりましたが、どのデータソースを見るべきかの判断や、分析の方針立案、次のアクションの検討のような詳細なタスクは、依然としてユーザーが担う必要がありました。

データ分析の代行1

そこで、Select AI Agentに、こうした判断の一部を代行してもらいます。ユーザーの問いに対して、AIエージェントが必要な情報を自ら選定し、複雑な質問を複数のタスクに分解しながら、段階的に分析を進めます。さらに、分析結果を踏まえて次に取るべきアクションや追加調査の方針の提案など、細かい指示を対話を通して進める事ができます。

データ分析の代行2

例えると、Select AI Agentは目的達成までの分析プロセスを自律的に計画・実行する「データサイエンティスト」のような存在と言えます。マーケティング分析や経営判断といった、試行錯誤を伴う業務を支援する手段として、多くの企業での活用が期待できます。

アイデア②:問い合わせ対応の高度化
生成AIが単なる「タスク処理代行」だけではなく、「一連の業務プロセスに対して自律的に判断し行動」できるようになると、よりいっそう業務全体の効率化・最適化が期待できます。
例えば、問い合わせ対応業務に着目すると、契約内容のチェックや問い合わせ内容の確認、必要な情報の収集、回答のレビュー依頼などさまざまなタスクがあります。生成AIにこれらのタスクを代行させるだけでも効率化を見込めますが、依然としてタスクの分解や振り分け、結果の確認、次のタスクの選択などは人が担う必要があります。

問い合わせ対応の高度化1

Select AI Agentを活用することで、このような個々のタスクの効率化ではなく、業務全体の効率化を実現できる可能性があります。問い合わせ対応であれば、例えば、契約情報の照合→社内データの横断検索→回答レビュー依頼通知、といった一連の処理を実行し、情報不足時にはお客様への追加質問や他部署への照会を行う、といった判断をエージェントに任せる事で、更なる業務負荷の軽減が期待できます。

問い合わせ対応の高度化2

このようにSelect AI Agentはプロセス全体を自律的に計画・実行するカスタマーサポート担当者として、オペレーションの人手の負荷を下げつつ、問い合わせ対応のスピードの向上も期待できます。

4 おわりに

今回は、Oracleの新技術であるSelect AI Agentを実際に動かしてみました。
Select AI Agentは、リクエストに対して「どのタスクをいつ実行すべきか」を自ら判断し、複雑な業務プロセスを自動化に近づけている点で、一般的な生成AIアプリケーションや従来のSelect AIと大きく異なります。自動修正&リトライ、複数タスクの自律分割、自然言語での対話的深掘りといった特徴を活用することで、まさにエージェント(代理人)として今後さまざまな業務への適用が期待できると感じました。

まだ新しい技術であるため、NECでも検証を進めながら、業務への活用やお客様へのサービス提供へ向けて検討を進めていきたいと思います。
本記事が、皆様の業務効率化や新しい価値創出の一助になりましたら幸いです。

本記事の内容について詳しく知りたい方は、以下よりお問い合わせください。

次回もOracle Databaseと生成AI活用に関する情報をお届けする予定です。

【参考】
・Select AI Agent
 Select AIエージェント
・Select AI
 Select AIについて

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