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軽減税率と消費税増税に向けたシステムの対応
[2018年9月版]第7回「補足:適格請求書等保存方式」(4)第7回「補足:適格請求書等保存方式」(4) (2018年9月5日公開)
淺海克人
(ウティルコンサルティング コンサルタント)
【プロフィール】公認会計士・税理士
NECにて主に民需系の情報システムの販売・構築に携わった後、公認会計士試験に合格、監査法人に入所。監査法人にて会計監査、内部統制監査、IT監査などに従事。現在、ウティルコンサルティングを立ち上げ活動中。
(4)適格請求書等保存方式の下での仕入税額控除の要件
原則として、一定の事項が記載された帳簿及び請求書等の保存が仕入税額控除の要件とされる。
1.適格請求書の記載事項
発行者の氏名又は名称及び登録番号/取引年月日/取引の内容(軽減税率対象である旨含む)/税率ごとに合計した対価の額及び適用税率/消費税額等/交付を受ける事業者の氏名又は名称
2.帳簿への記載事項
課税仕入れの相手方の氏名又は名称/課税仕入れを行った年月日/課税仕入れに係る資産又は役務の内容/課税仕入れに係る支払対価の額/軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである旨
尚、請求書等の交付を受けることが困難である等の理由により、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合もある。この場合には、通常必要な帳簿への記載事項に加え、「帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められるいずれかの仕入れに該当する旨(例えば3万円未満の鉄道料金)」及び「仕入れの相手方の住所又は所在地(一定の者を除く)」を記載することが求められる。
<帳簿保存のみで仕入税額控除が認められる例>
- a)適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の公共交通機関(船舶、バス又は鉄道)による旅客の運送
- b)適格簡易請求書の記載事項が記載されている入場券等が使用の際に回収される取引(a)は除く)
- c)適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の自動販売機及び自動サービス機からの商品の購入等
- d) 適格請求書の交付義務が免除される郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ホストに差し出されたものに限る)
- e)従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当)
適格請求書等保存方式の下では、適格請求書発行事業者以外の者(消費者、免税業者又は登録を受けていない課税事業者)からの仕入れについては、仕入税額控除のために保存が必要な請求書等の交付を受けることができないことから、原則、仕入税額控除をすることができない。
ただし、適格請求書等保存方式導入の一定期間は、適格請求書発行事業者以外の者からの仕入れであったとしても、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置が設けられている(前半3年は80%控除、後半3年は50%控除。区分記載請求書等保存方式と同様の請求書等を保存の上、帳簿記載事項として、区分記載請求書等保存方式の記載事項に加え、経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨の記載が必要)。
消費者からの仕入れについては一部、帳簿保存のみで仕入税額控除が可能となっているものもある(宅地建物取引業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの建物の購入等)。
タクシーを利用しても適格請求書発行事業者か適格請求書発行事業者以外の者かにより扱いが異なり、ペットボトルの水を購入しても適格請求書発行事業者から購入したのか適格請求書発行事業者以外の者から購入したのかで扱いが異なる等(自動販売機で購入した場合も扱いが異なる)、適格請求書等保存方式の下では、帳簿保存のみで仕入税額控除が認められる要件と相まって、業務上混乱しそうな点もなくはない。こうしたことも検討しておくことが必要と思われる。
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